kiss
聖地の時間の流れは緩やかだ。
誕生日はきちんと一年毎にやってくるが、自分の成長を顧みると、やはり特殊な時間が流れているとゼフェルは思わずにいられない。
外界と隔てられたこの聖地では、誕生日が来ても当分18歳にはなれないのだ。
「なぁ、オスカー」
6月4日の朝。執務服に着替えているオスカーをベッドの中から見上げながら、ゼフェルは声を掛けた。
「ジュリアスって、今25じゃん?」
「ああ。それがどうした?」
「子供の頃に聖地に来てさ、今の25になるまで何年かかった?」
「さあ、何年だろうな。はっきりとは俺も知らんな」
「ふーん…」
シーツの上に頬杖をついて、襟のホックを止めているオスカーを横目で見る。
自分の頭は、ちょうどあの辺り、オスカーの喉仏辺りだろうか。
「ゼフェル、どうした?」
「…でもよー、何年かかったか知んねーけど、最終的にあそこまでデカくなったんだよな?」
「何だ、身長の話か」
オスカーがニヤリと笑い、こちらを見た。
「身長の話で悪いかよ」
「いや?昔ほど身長身長うるさくないしな」
「だろ。先は長いんだから、焦らねーことに決めたんだよ」
「心境の変化か?」
「まーな」
高くなるに越したことはないけれど、あまり身長にこだわる必要はないのだ。
そんな心境の変化に到達したのも、この背のおかげだ。
「オスカー」
ブランケットを裸の体に羽織って、ベッドを抜け出す。
正面に立てば、目の前にはちょうどオスカーの喉仏。
そっとなぞり、そこから首の後ろへと指を這わせて。
そして、緋色の髪を後頭部から鷲掴みにする。
挑発的な仕草でオスカーの頭を引き寄せ、自分は少しだけ背伸びをしたら、もう唇が重なっている。
こんな風にキスできるのは、きっと自分くらいのものだ。
18センチの身長差だからこそ、こんな風に仕掛けるキスができる。
いや、きっと何センチ差でもたいして違いはないのだ。
相手がオスカーで、自分が自分である限り、オスカーとのどんなキスも自分だけのものだ。
見上げるキスで疲れてきた首筋を、オスカーの指が撫でてくれる。
この先、いつ身長が伸びるかは分からない。
どのくらい伸びるのかも分からない。
けれど焦る必要はない。
今は今だ。
とりあえず、今は誕生日を迎えて初めてのキスを楽しむことにした。
聖地の成長システムがよく分かりません・・・・・