番外三国志の兵法


メニューへ

諸葛亮集

兵法書
「諸葛亮集」とは孔明の残した兵法書といわれるものである。元々全部で24篇、およそ十万四千字余りあったといわれるが、時代とともに、そのほとんどが散逸し、現在に伝えられる「諸葛亮集」は後の人があらためて編集したものである。しかしその内容はすばらしくここに一部を紹介したい。

将苑

「将苑」50篇からの抜粋である。約半分が将帥論で、残り半分がいわゆる兵法論といった内容である。数ある中国の兵法書のなかでも、これほど詳細かつ多面的な将帥論が展開されている例は、まれであるといってよい。将帥論を現代風にいえば、指導者論であり、管理職論であってそれを微にいり細をうかがって説き明かしている

。 将帥のタイプ

将帥には次の9のタイプがある。
1、仁将ーー徳と礼をもって部下に臨み、飢えにつけ寒さにつけ 、部下と労苦を共にする。

2、義将ーー旺盛な責任感をもって将たるの務めを果たし、一身 の利益をかえりみない。名誉のためには死をも辞さ ず、生きて辱めを受けることをいさぎよしとしない。

3礼将ーー高い地位にあっても鼻にかけず、敵に勝っても得意顔しない。賢明ではあるが腰が低く、剛直ではあるが忍ぶべきところはよく耐え忍ぶ。

4、智将ーー奇略縦横、いかなる事態にも対応でき、禍を福に転じ、危機に立たされてもよく勝ちを制する。

5、信将ーー信賞必罰をもって部下に望み、しかも、賞するときはすぐさま賞し、刑は身分高き者にも公平に適用する。

6、歩将ーー軍馬よりも早く走り、闘志満々、よく国境を固め、剣戟(けんげき)にたけている。

7、騎将ーー高山、険阻の地をものともせず、馬上から放つ矢は飛ぶがごとく、進撃するときは先鋒、後退するときは殿をつとめる。

8、猛将ーー先頭に立って全軍を叱咤し、いかなる強敵にもたじろがず、相手が大敵であればあるほど闘志を燃やす。

9、大将ーー相手が賢者とみれば辞を低くして遇し、快く諌言に耳を傾ける。寛容なうえに剛直さを失わず、勇敢なうえに奇略にも富んでいる。

将帥の器
一口に将帥といっても、その器量には大小の違いがある。
腹黒い人間を見分け、危機を未然に察知し、よく部下を統制することができる。これだけなら、十人の将にすぎない
朝早くから夜おそくまで軍務に精励し、ことば遣いもいたって慎重である。これはまだ百人の将にすぎない。
曲がったことがきらいでしかも思慮に富み、勇敢かつ戦闘意欲が旺盛である。これは千人の将といえる。
見るからに威たけく、内には満々たる闘志をひめ、しかも部下将兵の労苦、飢寒を思いやる心をもっている。これなら一万人の将といえる。
有能な人材を登用するとともに、みずからは毎日、怠りなく修養につとめる。信義に篤(あつ)く寛容性に富み、治乱に心を乱されない。これなら十万人の将といえる。
人民に仁愛をたれ、信義をもって近隣諸国を心服させる。天文、地理、人事の万般に通じ、全人民から敬慕される。これなら天下万民の将たる器である。

将帥のつとめ
将帥ののつとめは、つぎの「五善」「四欲」にある。
五善(五つのポイント)
1、敵の情報を把握する。
2、進退の判断を的確にする。
3、国力の限界をわきまえる。
4、天の時を知り、部下を把握する。
5、地形の険阻を調べあげる。

四欲(四つの心得)
1、戦いは相手の意表をつく。
2、謀(はかりごと)は秘密を厳守する。
3、兵の統制に意を用いる。
4、全軍の心を一つにまとめる。

将帥の「五強」「八悪」
将帥には「五強」、すなわち5つの必要条件と、「八悪」、すなわち八つの欠格条項がある。
五強(五つの必要条件)
1、高節であること。そうあってこそ部下の奮起を促すことができる。
2、孝悌であること。そうあってこそ名を挙げることができる。
3、信義を重んじること。そうあってこそ友人と交わることができる。
4、深慮であること。そうあってこそ包容力を身につけることができる。
5、全力を傾注すること。そうあってこそ軍功をたてることができる。

八悪(八つの欠格条項)
1、謀(はかりごと)に欠ける。したがって是非の判断を下すことができない。
2、礼に欠ける。したがって有能な人材を登用することができない。。
3、政治能力に欠ける。したがって法を適切に執行することができない。
4、経済力はあっても、貧民を救済しようとしない。
5、智恵に欠ける。したがって未知の事態に備えることができない。
6、思慮に欠ける。したがって極秘事項が外に漏れるのを防ぐことができない。
7、栄達しても、旧知の人々を推薦しようとしない。
8、敗戦したとき、国民の非難にさらされる。

腹心、耳目、爪牙
将帥は、「腹心」、「耳目」「爪牙」を持たねばならない。
「腹心」がなければ、暗い夜道を手探りで歩くようなもので、思い切った行動がとれない。
「耳目」がなければ、暗闇のなかに座っているようなもので、からだを動かすことすらできない。
「爪牙」がなければ、餓死寸前の人間が毒物に手を出すようなもので、身の破滅を招くことになる。
では、「腹心」、「耳目」、「爪牙」とするには、いかなる人物が適しているか。
「腹心」には、広く学問に通じ知能すぐれた人物を選ばなければならない。
「耳目」には、沈着冷静にして口の堅い人物を選ばなければならない。
「爪牙」には、勇猛果敢にして敵を恐れぬ人物を選ばなければならない。


「腹心」、「耳目」、「爪牙」の軍における役割については「六トウ三略」で詳しく述べられている。

腹心・・・戦略計画の策定を助けて突発事態に備え、天象をはかって異変を解消し、作戦を統括して国力の保全にあたるもの。
耳目・・・足で歩いて世間の風説を聞き、動向を観察し、外国の動きや味方陣内の情報を集める役目。
爪牙・・・全軍を督励(監督して励ます事)して士気を高め、いかなる困難にもたじろがず、勇敢に戦わせる役目。



将帥の心得15ヶ条
敗戦を招く原因は、すべて敵の力を軽視するところから生じる。したがって将帥が軍事行動を起こすさいには、つぎの十五の心得を肝に銘じなければならない。
1、慮(りょ)ーー間諜の活用をはかる。
2、詰(きつ)ーー敵情の把握につとめる。
3、勇(ゆう)ーー大敵といえどもひるまない。
4、廉(れん)ーー利益に心を動かさない。
5、平(へい)ーー賞罰が公平である。
6、忍(にん)ーーよく恥辱にたえる。
7、寛(かん)ーー太っ腹である。
8、信(しん)ーーウソをつかない。
9、敬(けい)ーー人材の登用をはかる。
10、明(めい)ーーざん言に耳をかさない。
11、謹(きん)ーー謙虚にふるまう。
12、仁(じん)ーー兵卒をいたわる。
13、忠(ちゅう)ーー一身を投げ出して国に尽くす。
14、分(ぶん)ーー限度をわきまえる。
15、謀(ぼう)ーーおのれを知り敵を知る。

以上、一五の心得を忘れるならば、敗北は必死である。

三つの「機」
愚者が智者に勝つ。これを「逆」という。智者が愚者に勝つ。これを「順」という。智者が智者に勝つ。これを「機」(変化)という。
「機」には三つある。
1、事機(事態の変化)。
2、勢機(態勢の変化)。
3、情機(情勢の変化)。

「事機」が有利に展開しているのに、それを生かせないのは、智者とはいえない。
「勢機」が有利に展開しているのに、それに乗ずることができないのは、賢者とはいえない。
「情機」が有利に展開しているのに、ぐずぐずためらっているのは、勇者とはいえない。
すぐれた将帥は、かならす「機」に乗じて勝利を収めるのである。

幕僚の構成
軍団の編成にさいしては、かならず幕僚をおいて作戦計画の得失を検討させ、将 帥の参考としなければならない。
幕僚には、高級、中級、下級の別を設ける。
1、よどみなく弁じたて、奇謀湧くがごとくにして知らざることなく、多芸多才 の人物がいる。このような人物は万人のあこがれの的である。招いて高級幕僚と するがよい。
2、熊や虎のように荒々しく、岩をかけ登る猿のようにすばしっこく、鉄石のよ うに強く、名剣龍泉(りょうせん)のように切れ味鋭い人物がいる。このような人 物は一方の雄といえる。招いて中級幕僚とするがよい。
3、おしゃべりでたまにはまともなことを言うが、格別の技能も才能もない。こ れは並の人物である。招いて低級幕僚とするがよい。

用兵の巧拙
一口に用兵といっても、その巧拙に応じて、次の三段階に分けることができる。
1、最善の用兵ーー困難を未然に防ぎ、事態を大事にいたらぬうちに、解決する 。先を読んで手を打ち、刑罰の規定はあっても、それを実際に適用する必要がな いようにとりはこぶ。このような用兵こそ最善である。
2、中程度の用兵ーー敵と相対して布陣し、軍馬を走らせ、強どを射かけ、じり じりと敵陣に肉薄する。この段階で、敵は味方の勢いに恐れをなして、にわかに 浮き足だつ。これは中程度の用兵である。
3、最低の用兵ーー将帥みずから陣頭にたって敵の矢をあび、目先の勝ち負けに 血まなこになる。敵味方とも多数の死傷者をだしながら、勝敗の帰趨(きすう) は定かでない。これは最低の用兵である。


補足
戦わずして勝つ

同じ勝つにしても、さまざまな勝ちかたがある。死力を尽くして戦い、敵には勝 ったものの、味方の損害も少なくない。中国流兵法からいうと、こういう勝ち方 は、ほめられた勝ちかたではない。「戦わずして勝つ」ことが最善なのである。 孫子もこう語っている。
「百回戦って百回勝ったとしても、それは最上の勝利ではない。戦わずして相手 を屈服させる。これこそ最上の勝利なのである。すなわち最上の策は、敵の意図 を見抜いてこれを封じることである。これに次ぐのは、敵の同盟関係を断ち切っ て敵を孤立させることである。第三が戦火を交えることであり、最低の策は敵城 攻撃である。つまり、敵の城を攻めるなどということは、あらゆる手立てを尽く してのち、やむなく用いる最後の手段である。(『孫子』謀攻篇)




戦えば勝つ「禁・礼・勧・信」の大原則
昔の優れた統率者は作戦行動を起こすに当たって、次の4つの基本原則を忘れなかった。

1.適切に前進あるいは後退の命令を発して、部下に命令違反を起こさせない。これを「禁を知る」という。
2.部下に仁義の道を教え、部下に互いに尊敬、互譲の態度をとらせる。これを「礼を知る」と言う。
3.人材の選抜には能力を重視し、部下にその得意とするところを発揮させる。これを「勧を知る」と言う。
4.厳格に信賞必罰を実行して、部下に軍務への怠慢を起こさせない。これを「信を知る」という。


この「禁」「礼」「勧」「信」の4項目は軍の大原則である。この原則を確立できれば、その他の細目はすぐに実現できるだろう。こうして戦えば必ず勝ち、攻めれば必ず破る事ができるようになるのである。
凡庸な統率者は、これと全く逆である。
よく指揮する事ができず、後退すれば止める事ができずにどこまでも後退し、前進すれば止める事ができずにどこまでも前進して、ついには壊滅するにいたる。
また、仁義の道を教えないから、部下はモラルに欠け、賞罰に対して一定の基準がないから、部下の信頼を得られない。有能な人材を優遇する事なく、ゴマをするだけの無能者を重用する。こんな風であれば、戦うたびに必ず敗れる結果となるのである。

欠陥将帥とその料理法
欠陥将帥にはつぎの六種 類がある。

1、勇気にはやって、死を軽んずる者。
2、気短(きみじか)で、せっかちな者。
3、貪欲で、利益をむさぼる者。
4、仁愛にすぎて、厳しさに欠ける者
5、知恵はあるが、決断に欠ける者。
6、計謀はあるが、行動力のない者。

このような将帥を敵に回した時、その料理法は次のとおりである。

1、勇気にはやって死を軽んずる将帥に対しては、そのように仕向けて自滅を待 つ。
2、気短でせっかちな将帥に対しては、じっくり構えてじらし戦法をとる。
3、貪欲で利益をむさぼる将帥に対しては、利益を与えて内通を誘う。
4、仁愛にすぎて厳しさに欠ける将帥に対しては、積極的にしかけて、奔命(ほ んめい)[忙しく行動すること]に疲れさせる。
5、知恵はあるが、決断力の欠ける将帥に対しては、押しまくって窮地に立たせ る。
6、計謀はあるが行動力のない将帥に対しては、一気に襲いかかって決着をつけ る。

攻めていい10の敵と攻めてはいけない5つの敵
敵の状況が以下の10項目の条件に合う場合は、すぐさま攻撃すべきである。

1.長期の遠征で士気が衰え、食料も欠乏している。
2.敵国の人民に厭戦気分が蔓延している。
3.軍令が貫徹していない。
4.軍の火器や武器に損傷があり、あるいは欠乏している。
5.一貫した作戦計画がない。
6.孤立無援である。
7.将校が兵士に対してあまりにも苛酷である。
8.賞罰がでたらめである。
9.軍律が散漫で統制に欠けている。
10.戦いに勝って散漫になっている。

敵の状況が以下の5項目の条件を備えている場合には、攻撃する事なく、別の計画を立てなければならない。  

1.有能な人材を登用している。 
2.食料が十分で余裕がある。 
3.武器や装備が優れている。 
4.周辺諸国と友好関係を保っている。 
5.背後に大国の支援がある。 

敵の状況の観察法
1.両軍が対峙した時、敵の動く気配も見えないのは、険しい地形によって堅く守ろうとしているからである。
2.しきりに挑戦してくるのは、こちらの攻撃を誘おうとしているのである。
3.風もないのに樹木が動くのは、敵の兵軍が進攻してくるのである。
4.土ぼこりがあまり高くなく広い範囲で上がっているのは。歩兵が攻めてきているのである。
5.敵の使者が口調は強硬、態度は横柄なのは、撤退しようとしているのである。
6.進攻するようでもあり、後退するようでもあるのは、誘い込もうとしているのである。
7.行軍に杖をついているのは、非常に飢えているからである。
8.有利な状況にあるのに進攻してこないのは疲労困バイしているからである。
9.敵陣に鳥が群がり集まるのは、敵がいなくなったからである。
10.夜、大声で呼び交わしているのは、恐怖に満ちているからである。
11.敵軍が散漫なのは、統率者に権威がなく、部下に信任されてないからである。
12.旗幟が揺れ動いているのは、混乱しているからである。
13.将校がよく怒るのは、軍が倦み疲れているからである。
14.褒章を乱発するのは、窮地に立たされているからである。
15.刑罰を乱用するのは、軍に闘志がなくなっているからである。
16.使者が来て礼をいうのは、軍を休息させようとしているのである。
17.使者が手厚い贈り物を持って耳あたりのいい話をするのは誘い込もうとしているのである。

「便宜一六策」
『諸葛亮集』の中の便宜一六策より兵法論を抜粋しました。思想的にも『孫子』 の影響を強くうけているようです。

「九地」と「九変」
戦いには、戦場となる土地の情況に応じた戦い方がある。戦場の情況を九つに分 類することができる。これを「九地」という。「九地」にはそれぞれふさわしい 戦い方がある。これを「九変」という。戦いに臨んで「九地」の別を心得ておか なければ、「九変」、すなわち攻撃の九原則を運用して勝利を収めることができ ない。
戦いにさいしてはまた、陰陽のめぐり、地形の険阻と同時に、相手方参謀の人物 、計謀について把握しておかなければならない。この三つを知ることによって、 勝利を収めることができるのである。
相手方の参謀を知ることは、とりもなおさず、敵を知ることである。参謀を知ら なければ、相手の戦い方を知ることができない。相手の戦い方を知らなければ、勝利もおぼつかない。したがって、戦 闘を交えるまえに、相手の参謀はじめ将卒についての詳しい情報を入手しておか ねばならない。

<九地>『孫子』はつぎのように分類し、あわせて、それぞれの地での作戦 方法を指示している。
1、散地ーー味方の領内。戦いは避けよ。
2、経地ーー敵領内にはいったばかりの地。進行を続行すべし。
3、争地ーー彼我争奪の地。先に占領されたら、攻めてはならぬ。
4、交地ーー双方とも進攻しやすい地。部隊間の連絡を密にせよ。
5、く地ーー数ヶ国の勢力が浸透しあっている地。外交交渉を重視せよ。
6、重地(ちょうち)ーー敵領内に深く進攻した地。現地調達を心掛けよ。
7、ひ地ーー山林、高山、湿地帯など行軍困難の地。速やかに通過すべし。
8、囲地(いち)ーー入り口が狭く、撤退困難の地。計略を用うべし。
9、死地ーー速戦即決が不可欠の地。戦いあるのみ。

<九変>攻撃にさいして、避けるべき九つの原則を指す。同じく『孫子』にこう ある。
1、高地に陣どった敵を正面攻撃してはならぬ。
2、丘を背にした敵を正面攻撃してはならぬ。
3、わざと逃げる敵を深追いしてはならぬ。
4、精鋭な敵をまともに攻めてはならぬ。
5、おとりの敵兵にとびついてはならぬ。
6、帰心にかられている敵をむりにおしとどめてはならぬ。
7、敵を包囲したら逃げ道をあけておくべし。決して完全包囲してはならぬ。
8、窮地に陥った敵にうかうか近ずいてはならぬ。
9、本国から遠くはなれた敵地に長居は無用である。

 間諜のはたらき

そこで必要となるのが間諜の活躍である。軍はしばしば「五間」ーーー五種類の 間諜を使用し、将帥もかれらの活躍に大きな期待をかける。しかし、間諜の使い 方はむずかしい。すぐれた知恵と人格をそなえた将帥でなければ、かれらを使い こなすことができないのである。
「五間」が期待どおり敵の情報を知らせてくれば、安心して人民を動員すること ができるし、敵の侵略を許すこともない。そして軍は有利な地形を選んで守りを 固め、出撃は万やむをえざる場合にとどめることができる。守っては一分の隙も 見せず、出撃すれば威武をを示す。敵の進攻がないことをたのみとするのではな く、敵につけ入る隙を与えないわが備えをたのみとすることができるのである。
また「五間」の活躍いかんによっては、つぎのような有利な戦い方も可能となろ う。
1、地の利を得た場所に陣をしいて遠来の敵を待つ。
2、十分な休養をとって敵の疲れを待つ。
3、腹いっぱい食べて敵の飢えを待つ。
4、力を充実させて敵の弱るの待つ。
5、先に有利な地形に陣をしいて、敵が不利な地形に陣するのを待つ。
6、大軍を動員して敵の小部隊を待つ。
7、戦意を高揚させて敵の闘志が衰えるのを待つ。
8、伏兵を置いて敵の襲来を待つ。

かくて旌旗をかかげ、鼓をうち鳴らして堂々の陣をしき、敵の前面に立ちふさが り、背後を撹乱する。そして要害の地によって守りを固め、時には利益を与えて 撤退をさそい、時には深手を与えて敗走せしめるといった具合に硬軟両様の方法 で敵に対処すべきである。
以上のことを肝に銘じておけば、軍事管理は万全である。

<五間>『孫子』によれば、五間とはつぎの五種類の間諜をいう。

1、郷間ーー敵国の住民を使って情報をとる。
2、内間ーー敵国の役人を使って情報をとる。
3、反間ーー敵の間諜手なずけ、こちらの間諜とする。
4、死間ーー死を覚悟で敵国に潜入する。
5、生間ーー敵国から生還し、報告をもたらす。



五危の戒め
統率者は、部下に対する生殺与奪の大権を握っている。意外な危険を起こさない為に次の過ちに注意しなければ、ならない。

1、罪ある者を釈放し、無辜(むこ)の者を陥れる。 
2、いらいらして、わけのわからない怒りを爆発させる。
3、賞罰が公平でない。
4、命令の執行を徹底させず、しかもしばしば変更する。
5、公私を混同する。

この五つの過ちは、統率者の資格喪失であるだけでなく、国を危険にさらす根源でもある。
賞罰に明確な基準がなければ、命令の執行を来さずおかない。
罪ある者を釈放すれば、さまざまな悪事が続出し、無辜のものを陥れれば、兵士の心は離れて、士気は弛緩する。思いのままにわけのわからない怒りを爆発させれば、威厳と権力が失われる。賞罰の基準が明確でなく、公私を混同すれば、軍隊は団結を失い、バラバラになり、部下は全て、一所懸命に働いて功績を立てようとしなくなる。
こんなふうであれば、戦争が起こっても、統率者の命令は貫徹せず、部隊は全て烏合の衆となって闘志も燃やさず、功績を立てるべき機会も失い、国は滅亡に瀕することになる。

後記
政治家としての孔明を「管仲、しょう何に匹敵する」と賞賛した陳寿も、こと用兵の段になると「しかれども、連年、衆を動かし、いまだよく功を成すあたわざるは、けだし応変の将略、その長ずるところにあらざるか」と疑問を投げかけている
たしかに馬しょくの起用、あまりに正攻法に徹した作戦計画等、疑問を感じさせる面も少なくない。しかし、国力の違い(人口比のみでも魏の5分の1)、補給の困難等々の問題点を数えあげれば、そもそもこの戦いは勝利することのきわめてむずかしい戦いであったといえないこともない。結果的に成功しなかったからといって、ただちにそれを孔明の将としての資質問題に結びつけるのは、あまりにも短兵急な見方ではあるまいか。
もっとも、陳寿の父はかつて馬しょくの部下で、馬しょくが敗戦の責任をとらされて斬罪に処せられたときコン(髪を切り落とす)という刑を受けているので、孔明の用兵に対する陳寿の低い評価はそのことが関係しているという見方もある。あるいはそうかも知れない
いずれにしても、その智謀と高節において孔明を越える人物を私は知らない。そしてこれからもでてこないかもしれない。そうした意味ではまぎれもなく千年に一人の人物ではなかっただろうか。


このページは GeoCitiesです 無料ホームページをどうぞ