三国志の兵法


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駆虎呑狼の計
虎を駆って狼を呑む

三人の敵を三つ巴で戦わせる策略

駆虎呑狼の秘策は"二虎競食の計"に失敗した曹操が、再びジュンイクを召して、その知恵を借りた一計である。
「第二の計ーー」
としてジュンイクは次のような謀略を曹操に献策した。
テーマは前回と同様、労せずして劉備と呂布を葬ることを目的としたが、先の"二虎競食の計"が、両者の鞘当であったのに対し、このたびは三人をもって構成するところが異なっていた。
三人目の人物に、ジュンイクはエン紹の異母弟で、独自の勢力をもっていたエン術を登場させる。
まずはエン術のもとへ使者を送り、劉備が近ごろ帝に奏請して、南陽を攻め取るべく願い出ていると知らせた。その一方で劉備のもとへも使者を出し、エン術が帝に子違勅の行為をおこなったと報じ、南陽征伐を命じる。
劉備には、帝の命に背けないという弱点があったから、これを受けるに違いなかった。
「豹にむかって虎をけしかけ、虎の穴を留守にさせます。すると、留守中の虎の穴へ餌を狙って狼が現れるわけです。」
豹はエン術、虎は劉備、狼は呂布ということになる。
「呂布には狼性があります。」
とジュンイクはいう。このたびの作戦の要は、呂布であった。前回は劉備の徳性が危機を察知してかわしたが、もしもあの計略を呂布を中心としていれば、あるいは呂布は劉備を討ったかも知れなかった。
二度目の勅使を迎えて、徐州城は出陣すべきか否かで紛糾する。 ビジクなどはこれを明らかな曹操の陰謀と看破した。にもかかわらず劉備は、勅命には抗し難いと南陽をめざして出陣してしまった。
劉備も後顧の憂いがなかったわけではない。だが、自薦してきた張飛を残したのは、やはり失敗であった。張飛は諸将の面前で、杯を砕いて禁酒の誓いをたてたが、なんのことはない。酒の誘惑には勝てず、部下を労うために出した酒樽に、自らも一杯ぐらいは、と口をつけ、ついに泥酔に陥ってしまう。
その結果、小ハイの懸城にいた呂布にその隙を衝かれ、奇襲されて徐州城を落とされる羽目となった。
呂布は本性をさらけだしたわけだが、その"狼性"は予知できぬものではなかったはずだ。それでいて、劉備はまんまと呂布に城を奪われ、命生こそ奪われなかったものの、せっかくの徐州という拠り所をなくし、流浪することになる。
この秘計は、策を施す相手の性格を見極めることがポイントとなりそうだ。生真面目で、帝に忠勤を励む劉備には、勅命をもって "狼心"の呂布には格好の餌をぶらさげて・・・。
登場する人物の性格を読み誤っては成功はおぼつかない。


なお、"駆虎呑狼の計"は第三者をうまく巻き込めるかどうかが、成否のカギとなっている点も、忘れてはならない。一見、一枚岩にみえる組織やチームであっても、予想外の外部アプローチには分離、反目しやすいものだ。