庭に座り込んでボーっとアリを眺めるのび太。だがのび太は草むしりの途中だったのでママに注意されて草むしりを急いで始める。しかしママはさらにいろんな用事を押し付けてくるのでのび太は怒り出してしまうが、実はこれは小遣いと引き換えにのび太が頼んだものだった。超人気のゲームソフト・「紅帝伝説」が発売されるので、まとまったお金が必要だったのだ。そんなのび太の所にやって来たジャイアンとスネ夫は今買ってきたばかりの「紅帝伝説」を見せ、もうすぐ売切れだと脅かす。それを聞いて慌てるのび太は小遣いだけを前借りしようとするがママに叱られてしまう。貯金箱を見てもいくらも入ってはいないので悔しがるのび太をドラえもんはやんわりと諭すが、のび太はやる気をすっかりなくしてしまう。ドラえもんはこれで叩けばその時考えていたことを忘れてしまう「ワスレバット」でのび太を叩こうとするが、のび太は急に何かを思いついたようで、タイムマシンに乗っていずこかへ向かった。行き先は一ヵ月後の未来で、未来の貯金をもらってこようという考えだったのだが、果たして貯金はたくさん貯まっていた。しかしのび太は自分の部屋に緑色のじゅうたんが敷かれていることに疑問を抱く。しかものび太の目の前を魚が飛んでいったので、のび太は急いで後を追うが見失ってしまい、今度は逃げたと思われるしずかのカナリヤを見つけたので捕まえようとするが、なぜかカナリヤのくせにイヌのように吠え、しかも網を破って逃げていってしまう。しずかに知らせるために家に向かったのび太だが、なんと出てきたのはアリのような姿をした人間の親子だった。町中がひっそりして誰もいないことを怪しむのび太は、さらに空き地に止まっているUFOを見つけ、ただ事ではないと直感。現代に戻ってドラえもんに相談することにするが、ドラえもんはのび太の思い付きを忘れさせるためにワスレバットを持って待ち構えており、のび太が話そうとした瞬間にバットで叩いたためにのび太は未来での事をすっかり忘れてしまう。ドラえもんに言われるままに草むしりを始めるのび太だが、どうも釈然としない。
だがすぐに草むしりに飽きてしまったのび太はドラえもんに頼もうとするがドラえもんは厳しく突き放す。そこへしずかから電話がかかってきた。困っていることがあるので相談に乗って欲しいと言うしずかの頼みを聞いて、家の仕事をほっぽって駆けつけるのび太。ノラネコがしずかのカナリヤを狙ってきてしつこいので何とかして欲しいというのがその頼みだったが、のび太はドラえもんに相談してみることにする。一方ドラやきを買ってきたドラえもんはまたのび太がいなくなっているのを見て、のび太がタイムマシンで未来の自分の貯金を取りに行ったのだと推測。またワスレバットを持って机の前で待ち構えるが、なんとそこからもう一人ののび太が出てきて、ドラえもんはそののび太もバットで叩いてしまう。そちらののび太はママにお使いを頼まれてすっきりしない気分ながらも出かけ、現代ののび太と道一つ挟んだ所ですれ違う。現代ののび太と話をしたドラえもんは先程ののび太が過去か未来からやってきたのび太だと気づき、急いで探しに行く。しかしカナリヤの件は話せずじまいだったのでのび太も困ってしまうが、部屋に置いてあったワスレバットを使ってネコにカナリヤのことを忘れさせる作戦を思いつく。しかしそこにドラえもんが戻ってきてワスレバットを取り上げてしまったため、のび太はスペアポケットからバットを取り出すがその時一緒に封筒のようなものが出てきた。開けてみるとその中には掌大の機械が入っており、未来デパートからの秘密情報をお知らせすると言う。秘密の漏洩がないことを確認した上でその機械は実感映像を作り出し、その中でのび太を宇宙の惑星・ガラパ星に連れて行った。そこにはフライングマンタや音楽を奏でる花、巨大な虫や葉緑素を持っている豚や牛が存在していた。話によるとここは未来デパートの新商品開発の一環として作られた星で、ここにいる生物はみんな地球の生物を遺伝子的に改造して作り上げたものだと言う。遺伝子を操作して思い通りの生物を作れるというわけである。のび太はキノコのモデルハウスに案内され、そこで綺麗なじゅうたんのような芝生と、芝生を刈る芝刈り魚を見せられたのでのび太はこれを買うことにする。代金はドラえもんのカードにつけておき、早速芝刈り魚を使って庭の草を刈り、部屋には芝生の種を蒔いておく。
その時しずかから、またノラネコがカナリヤを狙っていると連絡が入った。のび太はしずかからカナリヤを借りて、カナリヤを強く進化させることにする。のび太は実際に宇宙船に乗ってガラパ星に向かい、生物進化研究所で新製品セールス部のウランカナに案内されて中に入る。中には開発技術部長のダイウィン博士がいたが、博士は自分の研究に没頭しているのでウランカナが進化させてくれることになり、のび太はカナリヤを進化タンクに入れてカナリヤを強く進化させる。地球に戻ってきたのび太は早速実験してみることにするが、カナリヤはネコを追い返したものの、今度はどこかへ行ってしまった。探しに行くのび太だが、その頃空き地ではもう一人ののび太が何かを忘れている感じがして悩んでいた。そこにやってきたドラえもんに何かを話そうとするがどうしても思い出せない。バットを使えば思い出せるのだがそのバットがポケットの中にないので二人は急いで家に帰る。カナリヤを探しているのび太は適当な理屈をつけて探すのを止めてしまい、芝生の生えた部屋でゆっくり寝転がるが、ママに手伝いのことでまた怒られてしまい、その時のび太はアリを進化させてどんなに働いても文句を言わない生物を作ろうとする。のび太は再びガラパ星に出かけるが、そこにドラえもんたちが帰ってきた。バットを使って全てを思い出したのび太は、自分が未来からやってきたこと、そして地球は進化したアリ人間に征服されてしまうことをドラえもんに話した。ガラパ星で進化させたアリが強くなりすぎ、逆に人間を支配してしまったのだと言う。二人は現在ののび太を追いかけて、ガラパ星でアリを進化させるのを止めさせようと考えるが、タイムマシンの超空間を泳いできたアリ人間たちの攻撃によって、二人は繭の中に閉じ込められて連れて行かれてしまう。
再びガラパ星にやってきたのび太だが、研究所には誰もいない。仕方がないので勝手に進化タンクを使ってアリを進化させることにしてしまう。進化するには一ヶ月かかると聞いて喜んで帰ろうとするのび太だが、途中で全長一キロのミミズに絡みつかれたり、人間も溶かす食虫植物に食べられてしまい、服の一部を溶かしてしまう。急いで地球に戻ったのび太は服を着替えて一ヵ月後を楽しみに待つが、さらに労働力を増やそうともっとアリを集めることにする。その時カナリヤを探しているしずかと出木杉を見かけたのび太は、アリを進化させるという話をするが、出木杉はこのアリは他のアリを捕まえて奴隷にするサムライアリなので、進化しても他の生物を奴隷にして働かせると言い、それを聞いたのび太はにわかに不安になってきた。のび太は一ヵ月後の世界に行ってみるが、別段変わった様子はない。そこにのび太を追って客急便が届き、危険生物を生み出す恐れがあるので研究所を閉鎖したという通知と、今までのお金が返ってきた。ドラえもんを探すのび太だがなぜか誰もおらず、外に出てみると空からUFOが降りてきて、そこからアリ人間たちが降りてきた。ネコを繭に閉じ込めてしまう所を見たのび太は恐怖のあまり大声を出してタイムマシンに逃げ込み、一ヶ月前のドラえもんに助けを求めようとするが、出てきたところをワスレバットで叩かれたためにそのことを忘れてしまい、ママに言われるままに買い物に行ってしまう。空き地で思い悩むのび太の所にやってきたドラえもんはバットを使って記憶を戻そうとするが、ポケットの中にバットがないので家に戻って記憶を戻し、のび太はアリ人間のことを話す。ところがその時間ののび太を止めようとしたところに、超空間をつたってアリ人間がやってきて、二人を繭の中に閉じ込めて一ヵ月後の世界に連れて行ってしまう。繭をのび太の部屋に置き去りにし、アリ人間は再び町へと向かった。
だがアリ人間たちは付近に人間が誰もいないことを不思議がっていた。とりあえず仲間を増やすために近くでサムライアリを集めることにする。その頃のび太の元に客急便が届き、それがぶつかったので目を覚ましたのび太は繭を破って出てきた。封筒の中には「退化放射線発生ガン」が入っており、これを浴びせれば進化した動物を元に戻せるのだという。急いでUFOが止まっている空き地へ向かうのび太とドラえもん。サムライアリを大量に採取したアリ人間たちはUFOに乗ってガラパ星に向かい始め、二人は全速力で追いかけるがどうしても追いつけず、ついに諦めてしまう。しかし突然UFOが空中で何かにぶつかった。それは進化したままのしずかのカナリヤで、カナリヤはぶつかった腹いせにUFOを蹴っ飛ばし、UFOはこっちに戻ってきてしまう。すかさずのび太が退化放射線を浴びせると、UFOはコントロールを失って裏山に墜落した。中のアリ人間がみんな元のアリに戻っているのを見て安堵する二人。しかし町の人間はいないままなので二人は不思議がるが、その時ざわめきが聞こえてきて、一ヵ月後ののび太とドラえもんが家に帰ってきた。なんとのび太たち町の人間は、駅前で撮影されていた日米合作の超大作映画の撮影を見に行っていたのだ。その話を聞いてやるせない表情を見せる一ヶ月前ののび太とドラえもんであった。
(解説)ご存知の通り、今話は連載25周年記念作品として、小学三、四、五年生に三ヶ月にわたって掲載された、大長編を除けば唯一の連作形式のストーリーです。ファンの間では「大中編」として位置づけられていますが、「短編」という括りで見れば、これこそが藤子F先生が最後までご自分で書き上げた作品ということになります。
肝心のお話ですが、ドラ世界十八番のタイムパラドックスを用いた伏線に次ぐ伏線、進化した生物が地球侵略を目論むという大長編並みの恐怖感、遺伝子科学の光と闇の部分をくどくならない程度に描いたその筆致、そして脱力することしきりのラストのオチと、ドラ世界を形成するあらゆるエッセンスが盛り込まれていると言っても過言ではありません。これら全ての要素こそがドラの真髄であり、ドラの魅力なのだということを改めて認識させられます。同時にまだまだこれだけのストーリーを描くことが出来た藤子F先生の力に改めて敬服させられます。のびドラ以外のレギュラーの活躍が少ないといった不満もなくはないですが、この完成度の前ではそんなものは霞んでしまうほどです。まさしく「ドラえもん」のエッセンスを受け継いだ、最高の「ギャグ」作品です。同時に、これを無理に改変してアニメ化してしまった今のスタッフには…(以下略)。
|