今日もジャイアンに追いかけられて慌てて逃げ帰るのび太。のび太はドラえもんにケンカに勝つための道具を出してもらおうとするが、なぜかドラえもんの様子がおかしい。話を聞いてみると、なんとドラえもんは突然未来へ帰ることになったと言うのだ。あまりのことに仰天したのび太はパパたちにドラえもんを引き止めるよう懇願するが、パパもママものび太の勝手な都合で引き止めてはいけないと叱咤する。その夜、野比家ではささやかなお別れパーティが開かれるが、そんな中でものび太はドラえもんと目を合わせられなかった。
ドラえもんが帰る最後の夜、眠れない2人は夜通し話をすることにし、「ねむらなくてもつかれないくすり」を飲んでから夜の町に出かけた。時間が止まったような夜の町を、街灯に照らされた二人の影だけが動いていく。自分がいなくなってからののび太が心配なドラえもんはその心情を正直に話すが、のび太はドラえもんに心配をかけまいと『1人でちゃんとやれるよ!約束する!』と力強く答える。その言葉に感激したドラえもんは涙を見せまいとその場を走り去った。
一人になったのび太は空き地の土管の上に座るが、そこへ寝ぼけてふらふらと散歩するジャイアンが現れる。それに気づいたジャイアンはのび太が自分の秘密を目撃したことに怒り、のび太に襲いかかってくる。思わずドラえもんを呼びそうになるのび太だが寸出のところでそれを抑え、土管の後ろに隠れてやってきたドラえもんをやり過ごす。のび太はドラえもんの助けを借りずに一人でケンカを始めるが、そんな簡単に勝てるはずも無くジャイアンにメタメタにされてしまう。そんな事とは知らないドラえもんは家に戻ってみるが、のび太はもちろん家にはおらず、のび太の身を案じるのだった。
何度倒されてものび太はたちあがり、しつこくジャイアンに食い下がる。すでに体中がボロボロになりながらも必死にジャイアンにしがみつくのび太。『ぼくだけの力できみに勝たないと・・・・・・ドラえもんが・・・・・・安心して・・・・・・帰れないんだ!』。心配したドラえもんはもう一度外へ探しに出かけ、ようやくドラえもんが空き地に辿り着いた時には、ジャイアンはしつこいのび太に負けを認めて逃げ帰る所だった。ボロボロになりながらも自分が勝った事をドラえもんに伝えるのび太。ドラえもんに支えられながらのび太は『もう安心して帰れるだろドラえもん。』と呟いた。のび太は一人でも十分やっていけるということを、自分自身の力で証明したのだ。家に帰り布団で眠るのび太の寝顔をドラえもんは涙を流し、しかし微笑みながらいつまでも見つめていた。
そして翌朝、のび太が目を覚ますと部屋にはもうドラえもんの姿は無かった。『ドラちゃんは帰ったの?』というママの問いに、静かに『うん』と答えるのび太。のび太は再び一人だけになった部屋に座り込んで、去っていった一番大切な友達のことを想い、穏やかな笑顔を浮かべるのであった。
『ドラえもん。きみが帰ったら部屋ががらんとしちゃったよ。でも・・・・・・すぐになれると思う。だから・・・・・・・・・心配するなよドラえもん。』
(解説)日常世界に紛れ込んできた異分子を中心として描く藤子Fマンガの場合、必然的にそのラストは「異分子との別れ」になります。かつての藤子F作品の代表的キャラクターも最後には皆それぞれの場所に戻っていきました。そしてそれは「ドラえもん」においても例外ではなかったのです。
ドラえもんはダメな少年ののび太を成長させるためにやって来ました。だがいつしか二人は「守り、守られる」の関係ではなく、分かちがたい友情を育んでいたのです。しかしいつかは別れなければならない。それは二人も心のどこかで覚悟していること。この話では「その時」が訪れた時のドラえもんとのび太の心の機敏を丁寧に描出しています。
未来に帰ると決まっても最後までのび太の心配をし続けるドラえもん。そんなドラえもんのために無理をしてでも自分一人で困難に立ち向かえることを証明しようというのび太。互いに誰よりも想いあっている友のために全力を尽くす姿は、嫌でも見る者の心を打ちます。そしてのび太は自分一人で困難に立ち向かえることを自ら証明し、そんなのび太の決意と自分への想いにドラえもんは万感の涙を流します。疲れきって眠るのび太を、涙を流しながら見つめるドラえもんの顔は笑っています。未来と過去。おそらく永遠の別れになるであろう瞬間にもドラえもんは笑っています。まるでこれからもいつまでも自分がそばにいて見守っていくかのように。
そしてドラえもんはのび太の前から去りました。誰よりもそれを悲しみながらも笑顔でドラえもんのいない寂しさを乗り越えようとするのび太。それは「別れはただ寂しいだけではない」というメッセージがこもっているような気がしてなりません。二人は永遠の友情を築き、そして互いを信じあって笑顔の別れをしました。もしかしたら、いつかまた会えるかもしれない、そんな日まで・・・・・。
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