新必殺仕置人

1977年1月21日〜1977年11月4日 全41回



☆オープニングナレーション
のさばる悪をなんとする
天の裁きは待ってはおれぬ
この世の正義もあてにはならぬ
闇に裁いて仕置する
南無阿弥陀仏
    (作:早坂暁、野上龍雄 語り:芥川隆行)

☆エンディングナレーション(13話のみ)
仕置き
法によって処刑することを
江戸時代こう呼んだ
しかし ここにいう仕置人とは
法の網をくぐってはびこる悪を裁く
闇の処刑人の事である
ただし この存在を証明する
記録 古文書の類は
一切残っていない
(作:早坂暁、野上龍雄 語り:芥川隆行)

☆主題歌
「あかね雲」
作詞:片桐和子、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:川田ともこ


 再び中村主水を主役に据え、さらに第2作「必殺仕置人」で人気キャラクターであった念仏の鉄も復活させ、その他様々な趣向を盛り込んで製作された、黄金期必殺シリーズの集大成とも言えるシリーズ第10弾作品。本来は「必殺からくり人」の後を受けて放送されるはずであったが、中村せん役の菅井きん氏との契約交渉が難航したため、急遽「血風編」が製作されたという経緯を持つ。
 今作の一番のトピックスはやはり念仏の鉄の復活であろう。主水サーガの前作「仕業人」において闇の稼業の因果と業苦を身をもって体験した主水は完全に足を洗っており、その主水を再び裏稼業に引き戻すには鉄の存在が必要不可欠であったのだろう。しかも鉄さえもそのメンバーの一員であるという巨大な闇組織「寅の会」が存在、殺しの依頼を競りにかけるという新趣向は、主水チームが初めて特定の元締を持ったということ以上にファンを驚かせた。
 さらにその寅の会の元締である男・虎には、往年の阪神タイガースの4番打者であった藤村富美男を起用、スタッフの遊び心と、素人を闇世界の大元締に仕立て上げてしまう力量を見せ付けられる。その他虎の右腕である死神、鉄が新たに連れてきた巳代松、正八、おてい、さらに正体不明の人間・屋根の男と、とにかく作品世界がにぎやかで、それぞれが強烈な個性を放っているのである。さらにファンサービスの一環として、「仕留人」から妙心尼、「仕置屋」から亀吉が一話限りのゲスト出演を果たしている。
 肝心のストーリーの方も、これまでのシリーズの良い所だけが結集したと言われるほどの充実した作品世界が展開し、各話がそれぞれ高密度の話を展開していき、どれもが見ごたえある良作、佳作となっている。特に「仕業人」で監督デビューを果たした高坂光幸の活躍は顕著で、いくつもの傑作を連発している。もちろん他のスタッフも従来以上に活躍しており、必殺世界の根幹をなす仕置描写、男女の性、世間の皮肉などをある時は冷徹に、ある時は暖かく描き、バラエティーに富んだ作品世界となっている。
 そんなスタッフの頑張りがあってか、出演陣も良い意味で自然体で演技しており、実に軽快である。話とは直接連鎖しないながらも、アジトや往来での鉄たちのバカ騒ぎは実に面白く、ブラウン管の中の人物に「生」を感じさせている。これこそが「新仕置」の隠れた魅力の一つでもあるのだ。
 そして、裏稼業に生きるものの死に様と生き様を完璧に描ききった40話「愛情無用」と最終話「解散無用」は、全必殺シリーズのみならず、テレビ時代劇史においても屈指の傑作として高い評価を得、ファンの語り草となっているのである。


 ☆登場人物

 中村主水(演・藤田まこと)
 牢破りを防いだ功績で再び定町廻に復帰した今作の主水。「仕業人」での赤井剣之介の死にショックを受けてからは完全に足を洗い、上司に目をかけられたことから表の稼業も順調だったが、寅の会で主水が標的となったことから鉄が主水と連絡を取り、しかもその依頼主をだまして主水を仕置しようとしていたのがその上司であったことを知り、苦悩の末に裏稼業に復帰する。
 かつての悪友である鉄と再会したことで、主水もいつになく楽しげに仕事をこなしている印象が見受けられるのが興味深い。鉄が連れてきた仲間ともいつしか気のおけない仲間同士の関係となり、その想いは最終話で主水に仕置人としての正体を明かす覚悟まで決意させる。
 最終話では、自らの立場から「三人目の仕置人」として外道を葬り、悪友の最期を看取ることなく、平穏な日常に戻っていった。

 念仏の鉄(演・山崎努)
 かつては江戸で「仕置人」として主水や棺桶の錠と共に活躍していた男。手配書が出回ったために江戸を脱出していたが、いつのまにか江戸に舞い戻ってきており、しかも寅の会の一員となっていた。寅の会には常に代表として出席し、金よりも仕事自体を優先して破格の値で競り落としてしまう時もある。
 女好きであることはまったく変わりなく、そのために借金をすることも多いらしい。必殺の骨はずしもますます磨きがかかり、確実に相手を仕留められる必殺技として昇華を遂げている。チームのリーダー格として中心になるのも相変わらずで、大義よりも体で覚えてしまった「仕置」の爽快感や緊張感を何より欲する人物でもある。
 数々の死闘を経てゆるぎない仲間意識を持つことになるが、それゆえに捕らえられた巳代松を救出するべく、最終話では単身敵地に乗り込み、逆に捕らえられて右手を焼かれてしまう。だがそれでも生き長らえ、さらに腹に匕首を刺されるも最後の骨はずしを敢行して外道を葬り、その足で女郎屋に赴き、床の中で息絶えた。

 巳代松(演・中村嘉葎雄)
 鉄が新たに連れてきた仕置人。一見すると善良そうな小市民に見えるが、かつて鉄とも命のやり取りをしたことがあるほどの実力の持ち主。
 必殺の得物は手製の竹鉄砲で、射程距離が二間(約3.6m)しかないため、かなり敵に接近することになるが、一瞬の好機を逃さずに、標的を地獄に送る。鉄砲のバリエーションも豊富で、五発同時発射の短筒、手榴弾短筒、二連射短筒、雨天時に使用の傘付短筒、消音装置付、精密射撃用に銃身を通常より長くした短筒などがある。
 表稼業は鍋や釜を修繕する鋳掛屋で、普段は人情家で気のいい男。客を始め知り合いも数多く、歴代の仕置人では珍しく「善人」風に見える男である。だが激情家の一面を持ち、憧れの女性を助けるために私情丸出しで仕置を行うこともあった。2話で実の兄を、28話で親友を自らの手で仕置するなど、過酷な運命も体験している。
 最終話でおていと恋仲であったことが発覚するが、彼自身は罠にはめられて奉行所に捕らえられ、苛烈な拷問の末に植物人間になってしまう。だがおていや正八のアシストを受けて最後の仕置を敢行し、その後はおていに連れられていずこかへ旅立っていった。

 正八(演・火野正平)
 絵草子屋を営むお調子者の若者だが、裏では仕置人の密偵を務めている。気配を消しての隠密活動なども朝飯前であり、さらにはチーム内のムードメーカーとしても存在している。
 メンバー内では最年少のためか、被害者に同情してしまうことも多く、そのために主水や鉄に殴られることもしばしばある。基本的に殺しは行わないが、30話「夢想無用」では愛した女のために一度だけの殺しを遂行している。ちなみに仕置人のアジトは、彼の店の地下蔵になっている。
 最終話での解散劇を経て、主水以外では唯一江戸に残ることになる。

 おてい(演・中尾ミエ)
 泥棒市界隈を縄張りにしている女スリ。だが彼女も正八と同じく仕置人の情報屋であり、正八のように積極的に行動は取らないものの、色仕掛けで巧みに情報を聞き出すこともある。また、スリの腕を生かして書類を奪ったり仕置料の元手にしたりすることもある。
 気のいい姐さんといった感じの女性で、男っ気はなかったものの最終話で巳代松と恋仲であったことが判明。植物人間になってしまった巳代松と共に江戸を去っていった。

 元締・虎(演・藤村富美男)
 江戸の闇世界に君臨する巨大組織・寅の会の元締。正道の仕置人であり、力で闇の世界を束ねることでその統制を図っている。過去の素性は一切不明であり、過去を詮索しようものならすぐに殺されてしまう。が、過去に娘を一人、仲間の仕置人に預けたらしいが、真偽の程は不明。
 毎月寅の日に「寅拾番会」という俳句会を開き、そこで競りを行っている。表稼業も不明ではあるが、いくつかの話を見ると子供達に好かれる普通のおじさんのようだ。自ら殺しを行うことは滅多にないが、殺しの際の得物は「物干竿」と呼ばれるバットのような棍棒。これで敵の頭蓋を破砕する。
 最終話で側近であった吉蔵(北村光生)の裏切りにあい、駆けつけた鉄に外道の始末を依頼して息絶えた。

 死神(演・河原崎建三)
 虎の右腕として活動する仕置人。その役目は裏切り者の監視と制裁、さらに依頼を受けた仕置人が仕置を遂行するかの監視である。紐付きの銛を得物としており、これを使って裏切り者を容赦なく地獄に送る。
 人間的な感情を持たない殺人マシンだったが、実は北欧の狩猟民族ギリヤク人であり、父親が流刑になった時に一緒に海に流され、虎に拾われて殺しの英才教育を受けたのだ。しかし初めて女を愛することで人間らしい心を知り、その女の死を知って、後を追って自害した。

 屋根の男(演・マキ)
 観音長屋近辺の長屋などの屋根の上に座り、赤ふんどし一丁の姿で釣り糸を垂らしている変人。まったく謎の存在であったが、最終話にて某藩の若君であることが判明する。

 中村せん、中村りつ(演・菅井きん、白木万里)
 毎度おなじみのこの二人。主水が定廻に復帰したことで多少は風当たりがゆるくなったかと思いきや、あまり変わってはいない模様。


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