新必殺からくり人

1977年11月18日〜1978年2月10日 全13回



☆オープニングナレーション
人の一生は旅に似ていると言いますが
ほんとにそうでございますねえ
わたくし安藤広重が旅を描きました東海道五十三次
綺麗ばかりで少しも人のため息が
聞こえてこないとか・・・・・・
そんなことはございません
一枚一枚にせっぱ詰まった怨みとつらみ
つまりは殺してもらいたい人間を
そっと描きこんである仕掛け…
お艶さん よっくご覧の上東海道五十三次殺し旅
よろしくお願い致します
(作:早坂暁 語り:緒形拳)

☆主題歌
「惜雪」
作詞:喜多条忠、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:みずきあい


 前作「新必殺仕置人」が、必殺シリーズという範疇においても、代表キャラクターである中村主水の人生においても総決算を迎えてしまったため、今までにない様々な新機軸を導入して、新たな路線の開拓を模索したシリーズ第11弾。
 ケレン味溢れる脚本で人気を博した第8作「必殺からくり人」のメインライター・早坂暁を再び迎え、さらに同作の主要メンバーを演じたキャストを再び揃えるというファンサービスの側面もさることながら、今作最大のトピックスはサブタイトルに使われている言葉・「東海道五十三次殺し旅」という言葉通り、東海道五十三次を旅しながら悪人を殺していくという、まったく新しい趣向を設定したことである。毎回ドラマの舞台が変わるという構成上、画面にも自然と各話ごとに変化が生じ、視聴者を飽きさせない構成となっている。
 早坂が「からくり人」で描いたケレン味もしっかり守られており、実際に東海道五十三次を描いた絵師・安藤広重が登場して、彼の描いた作品のうち13枚に、各地の悪人達に対する怒りを謎解きとして描きこんでおいたり、お艶が座長を務める天保太夫一座に転がり込んできた謎の男・蘭兵衛が実は蛮社の獄を逃れて逃亡中だった蘭学医・高野長英であったりと、虚構の中に現実の歴史を織り交ぜた秀逸な世界観は今作でも健在である(ちなみに高野長英は設定的には「仕留人」糸井貢の師でもある。師弟そろって裏稼業の道を進んだとも言える)。
 このように様々な新趣向を凝らしてはいるものの、やはり必殺は必殺。話数が少ないながらも重厚な人間ドラマを展開し、人間の情念とそれによって生み出される悲劇を見事に描出した。主人公であるからくり人の方も歴代に劣らぬ個性を発揮。裏稼業の宿命に殉じて死んでゆく塩八や、自身を陥れた時代への怒りとも思える蘭兵衛の仕置などがその代表である。最終話におけるどんでん返しなど、作劇上のギミックも随所に盛り込まれており、既存の劇伴音楽を大量に流用した点も忘れてならない事項である。
 過去二作の13回シリーズに比べるといささか派手さに欠ける作品ではあるが、最終回での大どんでん返しを始め、今作につぎ込まれた新趣向は作品世界の中で見事なまでに消化されており、黄金期ほどの勢いほどはないものの、忘れられない秀作であることは論を持たないであろう。


 ☆登場人物

 蘭兵衛(高野長英)(演・近藤正臣)
 捕方に追われていた際に一座に転がり込んできた謎の男。当初は一座の面々にも正体を隠していたが、その正体は蘭学医・高野長英。蛮社の獄における蘭学医の弾圧を逃れ逃亡中であったが、お艶達と出会ったことから、身を隠すという理由もあって共にからくり人として悪党達と戦ってゆく。
 得物はお艶から与えられた細身の仕込杖。武術の心得もあるらしく、これを縦横にふるったダイナミックな殺陣で悪人を攻撃する。時には抜刀することなく、そのままで相手を殴りつけることもある。医者であるために当然医学知識は豊富であり、怪我をした仲間や被害者の治療や手術をする事もしばしばあった。暇な時は常に本を読んでいるような博識であり、世間に対しては冷めた視線を向けてはいるものの、素顔は不正を許せない熱血漢。
 最終話で役人に顔を見られたことから自分の所在が知られることを恐れ、ブラ平によって顔に炎を浴びて火傷を負い、その顔のままで姿をくらます。

 噺し家塩八(演・古今亭志ん朝)
 一座に所属している落語家。流暢に話されるその落語は評判がよく、本人も明るく口達者な性格である。
 主に目的地への先行役や情報収集を担当しており、女好きなので女遊びをする事もしばしば。殺しの技は巧みな話術を用いて相手に催眠術をかけ、屋根の上などの高所に敵を誘導してそこから落下させるというもの。徳利をキーアイテムとして催眠に使用した事もあった。
 第7話で敵の銃弾を受けて瀕死の重傷を負うが、陽動のために舞台に座って落語を披露し、万来の拍手が巻き起こる幻を見ながら、そのままで死んでいった。彼がれっきとした旗本の出である事は、お艶しか知らない事実である。

 小駒(演・ジュディ・オング)
 お艶の娘で歳は若干17歳。全シリーズ中を見てみても、一番若い仕置人である。だが実際はお艶と血の繋がりはなく、6話では生き別れになり、外道と化した兄と悲しい再会を果たしている。
 小駒太夫という名でお艶と共に舞台にあがり、主に駒を用いた芸を披露するが、裏稼業においてもその駒を用い、回転する駒の心棒を相手の額に突き立ててその命を奪う。しかし実際に殺しに参加する事は極めて稀で、殺しを円滑に遂行する為の準備や陽動に加わる事が多かった。
 普段は歳相応の女の子であり、蘭兵衛に淡い思いを抱いていたが、最後には蘭兵衛とは住む世界が違うという事を認識し、彼とも別れて一座と共に江戸に戻っていった。

 安藤広重(演・緒形拳)
 有名な浮世絵師。この時期は既に「東海道五十三次駅続画」を発表していたが、その中のうち13枚には、各地の悪人達の悪事を証明した秘密を描きのこしており、あぶり出しによってそれが判明する手法となっていた。1話で偶然お艶たちの殺しを目撃したことから、130両の金を出して、13箇所の悪党を葬るよう依頼する。
 最終話で幕府の隠密らしいことが判明したが、真偽の程は不明。

 火ふきのブラ平(演・芦屋雁之介)
 一座を取りまとめるサブリーダー格の男で、お艶のサポートをつとめる。表、裏双方のキャリアも長いらしく、表では火を使った芸を披露し、裏ではその技術を用いて、噴きだした炎で悪人を焼き殺すという大胆な技を使用、その際は炎で自分の顔を焦がさないように、鉄の仮面を装着する。
 大らかな性格でこちらも遊び好きなので、塩八とは馬が合っている。仕事となると厳しい一面を見せる筋金入りのプロで、そのために当初は紛れ込んできた蘭兵衛にも良い印象を抱いてはいなかった。最終話で蘭兵衛の懇願を受け、自分の炎で蘭兵衛の顔に火傷をつけた。

 泣き節お艶(演・山田五十鈴)
 小さな芸団・天保太夫一座の座長。泣き節などの一連の三味線による芸を得意としていたが、天保の改革の煽りを受けて、風紀を乱す興行は厳粛なご時世に合わぬとしてお上から所払いを受けてしまった。1話での殺しを広重に見られたことから殺しの依頼をされ、東海道五十三次殺し旅を行う。
 裏稼業に進んだ詳しい動機は不明であるものの、かなりのキャリアを積んでいることが窺い知れる。得物は表稼業でも使用している三味線の撥。一瞬の早業で頚動脈などの急所を裂き、悪人を地獄へ送る。
 一座では「泣き節」を始めとした三味線引きを行っており、特に泣き節はその見事さから「恨み節」とも呼ばれている。一座をまとめる立場故に仕置に関しては冷静でであるが、人並みの人情も持ち合わせており、にぎやかな一座の日常を好ましく思う一方で、敵地に白昼堂々乗り込む度胸も兼ね備えている。最終話での浮世絵の一件から、広重が幕府の隠密であることを見抜くが、結局はそのまま蘭兵衛と別れて江戸に去っていく。


必殺紹介に戻る