必殺仕事人V
1982年10月8日〜1983年7月1日 全38回
☆オープニングナレーション
世の中の善と悪とを比べれば
恥ずかしながら悪が勝つ
神も仏もねえものか
浜の真砂は尽きるとも
尽きぬ恨みの数々を
晴らす仕事の裏稼業
お釈迦様でも気がつくめぇ
(作:山内久司 語り:古今亭志ん朝)
☆主題歌
「冬の花」
作詞:石坂まさを、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎孝路、歌:鮎川いずみ
全国的に巻き起こる「仕事人ブーム」の勢いに乗って制作されたシリーズ第19弾。82年10月1日放送のスペシャル「仕事人大集合」を事実上のプロローグとすることで今作はスタートした。
今作最大のトピックスはやはり新規に参入した仕事人・西順之助の存在である。人間的にもまだまだ未熟な未成年の少年は仕事人を「正義の味方」として捉えており、自分の中で抱いていた憧憬を消す事が出来ていないままで本当の仕事人として裏稼業に身を投じていく。「仕事人未満」というこれまでにない異色の設定を持って誕生した順之助と言うキャラクターは、今までにないほどの賛否両論を今もって巻き起こしている。
仕事人を「正義の味方」と見て憧れる順之助。それは仕事人ブームに乗って新たに参入した(黄金期を知らない)視聴者達の代弁的な設定であり、そういう意味では順之助は極めて視聴者に近い立場の存在として創造されたキャラクターということが出来るだろう。それ故に理想を抱いていた順之助が現実とのギャップにぶつかり、涙を流して苦悩する姿に視聴者は容易に感情移入が可能となる。それが今作の狙いの一つでもあり、今までにない等身大の設定を与えられた順之助と言う人物を通して、改めて「仕事人」と言う世界を描くこともテーマに込められていた。また順之助の殺し技もライデン瓶による感電という、リアル性よりもビジュアル的な面白さを重視したものになっており、これも視聴者の興味を買った。
だが本作に込められるはずであったテーマが実際に作品内で表現されたのは初期数話にとどまり、それ以降は「新仕事人」で確立された「1話完結の単純明快なストーリー」が全体を占めるようになっていく。本来ならば裏稼業の現実を知った順之助が、今度は真の仕事人として成長していく様を丹念に描いていくはずだったのであろうが、結果的に今作もドラマ性を重要視しない、ビジュアルの派手さと明快さを軸とした娯楽時代劇として制作されていく事になる。それが時流のせいだったのかスタッフの意向だったのかはもはや確かめる事すら出来ない。
しかし現実的に仕事人ブームは拡大の一途を辿り、ついには過去最高の視聴率を獲得。そしてこのようなバラエティ路線は、それの完成形態である次々作「仕事人W」へと受け継がれていくのである。
☆登場人物
中村主水(演・藤田まこと)
「新仕事人」最終回後は裏稼業から完全に手を引いており、「仕事人大集合」におけるセクンデ一味の悪辣な殺しに対しても当初は静観を決め込んでいた。しかし上方の大元締・虎とその部下・天平の死に様を知り、再び闇の世界に身を投じる決意をする。
自分たちの殺しの現場を目撃した順之助を始末しようとするも、仕事人に純粋な憧れを持つ順之助をなぜか始末する事が出来ず、そして自分たちが殺人機械にならないように、悲しいからと涙を流す事ができる普通の人間としての感覚を持つ人間が1人はいてもいいと、順之助を仕事人として迎え入れた。甘ちゃんである順之助には基本的に厳しい態度を取り、わざと痛烈な現実を突きつけることもあるが、内心では純粋な気持ちをまっすぐにぶつける順之助に複雑な思いを抱いているようである。
殺し技は小刀による「せこ突き」がメインとなっており、太刀を用いての仕置は本作以降はほとんど見られなくなっていく。最終話では仕事人狩りから逃れるためにチームを解散し、涙ぐむ順之助を優しい言葉で見送った。
秀(演・三田村邦彦)
「新仕事人」最終話で江戸から旅立っていった秀は、舞坂においてかつての仕事屋・知らぬ顔の半兵衛と共に仕事を行っていた。しかしカピタンの妹であるマリアを偶然に救出した事から主水らかつての仲間たちと再会し、長崎の出島で大仕事を敢行した後、江戸に戻って裏稼業を再開する。
江戸では再び飾り職人として働いており、殺しの得物も今まで通りの簪。止めを刺す直前に行う簪を指で一回転させる行為は、その冷たい音と相まって標的に最大限の恐怖を与える。今作では夢遊病の気があったり、人殺しという己の行為に迷いだしてしまったりと、より様々な一面を見せていた。
順之助についてはあまりいい印象を持っていないようで、時々主水に命じられて順之助の監視役をすることに不満を持ったりもしていたが、次第に仲間意識を持ち始めていったようだ。最終話で幾度目かの解散劇を経験し、再び旅立って行った。
勇次(演・中条きよし)
「新仕事人」最終話での解散後も主水以外のメンバーでは唯一江戸に残っていたが、裏稼業は行っていなかった。しかし仕事人の東の大元締・鹿蔵の死に遭遇し、鹿蔵と母・おりくの関係を聞いてセクンデ率いる外人殺し屋集団との戦いに身を投じる事になる。大坂での戦いで敵に捕らえられてしまうが、長崎で女郎のヒモをしていたかつての仕置人・棺桶の錠に救出され、最終決戦に参加している。
江戸では以前と同じ三味線張替えを表稼業としており、小唄の師匠として中村家へ出入りしている点も相変わらず。以前よりも人間味を前面に出すことが多くはなったが、基本的には感情を表には出さないクールな態度を崩さない。女性にモテるのも相変わらず。
順之助の事は最初から仲間とみなしてはおらず、あまり会話を交わすことさえもない。闇の世界の厳しい現実にぶち当たって足抜けを願う順之助を容赦なく殴り飛ばした事もある。しかしライデン瓶によって自分の負傷を治療してもらうなど、様々な戦いを通じて次第に順之助にも一定の理解を持つようになったようだ。
最終話では被害者と顔見知りになってしまったために仕事人狩りの影響が出るのを危惧し、解散と同時に江戸から離れた。
西順之助(演・ひかる一平)
蘭法医・西順庵(溝田繁)の息子で、自身も医者になる事を夢見て学問にいそしんでいる受験生。医学塾への入学を希望して日々勉学に励んでいる18歳の少年だが、偶然にも仕事人たちの殺しの現場を目撃。以前から仕事人を「悪政を正す正義の味方」として英雄視していた彼はその素直な気持ちを話し、主水達さえも困惑させてしまう。その後は友人が悪人の犠牲になった事を知り、自ら仕事人になる事を志願する。
学問の知識を生かしてライデン瓶(発電機)を制作し、そこから発する高圧電流を相手の体内に流して標的を地獄へと送る。殺し以外にも針金に電流を流す事で凶暴な番犬を牽制したり、弱い電気をツボに流して刺激させ、勇次の腕を治療した事もある。
裏稼業に対する憧れはあるものの、一方で自分の都合を優先させて仕事をすっぽかすと言う、若者らしいマイペースさを持ち合わせているが、基本的には品行方性で世の不正に憤慨しているごく普通の若者。それだけに裏稼業の現実を知った時は涙を流し、足抜けを願う事もあった。基本的に仲間とは表の稼業で会話をすることはほとんどなく、わずかに加代と話をするくらいである。
その豊富な学識を生かして難関攻略の突破策を考える事もあり、それ以外にも様々な知識を随所で披露して、時にはそれが事件解決に役立つ事もある。最終話でチームが解散し、次々に去っていく仲間を涙で見送りながら自分も普通人になる事を約束し、後日、主水と「普通人」としての会話を交わした。
おりく(演・山田五十鈴)
勇次の母親で、勇次と共に江戸で三味線屋を営んでいる女性。その裏は凄腕の仕事人。「新仕事人」中盤から頻繁に旅に出ていたが、かつて夫婦になったこともある鹿蔵の死を知って江戸に舞い戻り、仇を取るためにセクンデ一味と戦う事を決意する。大坂での戦いで惨敗してしまうも、出島での戦いでは錠や主水の助力も得てセクンデを始末した。
順之助の参入についても一定の理解を示し、当初は見張り役程度に留めるはずであった順之助を殺し屋として推挙したのは彼女である。今作でも何度も旅に出てしまっているがその存在感は絶大で、順之助に仕事人の本質を諭す場面も合った。三味線撥による殺しも一層華麗さを増し、撥が使えない状況では臨機応変に得物を選んで標的を倒す。
最終話でも旅に出ていたので、最終話でのチームの状況を知っていたのかどうかは定かでない。
加代(演・鮎川いずみ)
「新仕事人」最終話で五百両当選の富くじを拾い、意気揚々と江戸を後にした加代だったが、「仕事人大集合」において舞坂で主水と再会した時は、一緒になった男に金を持ち逃げされてしまったとのことでみすぼらしい風体になっていた。その後は外人殺し屋集団との戦いを経て江戸に舞い戻り、裏稼業を再開する。
表稼業の「なんでも屋」を営みながら情報を集めたり仕置の段取りを決めたりするのは以前と同じで、今作では素人同然である順之助のサポートをすることもあった。金にがめつく図々しい性格も相変わらずだが、人並みの人情も持っているので被害者に同情する事もままあった。
最終話ではチームの解散に伴い、再び笑顔で江戸を去っていく。
筆頭同心・田中(演・山内敏男)
「新仕事人」から残留した主水の上司。主水の同僚、上司レベルの人物が後続作品に残留するのは彼が始めての事。
昼行灯である主水をことあるごとにいびっているが、以前よりもコミカルさが増したので嫌味さをストレートに感じる事はない。しかし同心としてあまり有能でない面も相変わらずのようだ。
中村りつ(演・白木万里)
主水いびりにもますます磨きがかかってきており、その「中村家コント」は今やシリーズになくてはならない名物の一つとなった。師匠である勇次の中村家通いも「新仕事人」から続いており、勇次と主水を比べていびる様も相変わらずである。
中村せん(演・菅井きん)
いびり度はりつ以上に激しくなっている面があるが、それ以外にも主水と絡まない部分でコメディリリーフ的な役割を演じる事もあった。
必殺紹介に戻る