必殺仕切人
1984年8月31日〜1984年12月28日 全18回
☆オープニングナレーション
花が咲いても人は泣き
その泣き声は蝉時雨
月は晴れても心は闇で
逃げてさまよう雪の中
一年三百六十五日
鴉の鳴かぬ日はあれど
悪人笑わぬ日とてない
恨みを断ち切る仕切人
浮き世の気晴らし なすってくだせえ
(作:山内久司 語り:市川段四郎)
☆主題歌
「櫻の花のように」
作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし、編曲:竜崎孝路、歌:中条きよし
シリーズ初の音楽集が発売されたり長編映画が制作されたりと、いわゆる仕事人ブームは前作「必殺仕事人W」によって一つの頂点を迎えた。それらを背景として、中村主水と共に作品人気の牽引役となっていた中条きよし演じる三味線屋の勇次をスピンオフする形で制作した作品が、シリーズ第22弾の本作である。これは言わば本流である主水シリーズ以外に「13回シリーズ」の顔として、当時既に市民権を得ていた勇次を主役に据えてさらなる安定路線の確立を図ったとも考えられる。
今作の基本コンセプトは仕事人シリーズとほぼ同じものであり、かつての仕舞人シリーズのような全国行脚など、全編を通して描かれるイベントと言うものはなく、基本的には江戸を舞台に仕事人シリーズで描かれたお定まりパターンのドラマと、ビジュアル重視の殺しのシーンをメインに据えていた。そういう意味では「渡し人」に極めて近い作風と言える。ただ殺しの演出はますますエスカレートし、殺しのシーンのみにカタルシスを見出す事を基本としていた後期シリーズにおいてはバラエティの点において「W」を凌駕していたと言っても過言ではない。また、中条きよし以外の主役連もほとんどが歴代の必殺作品に出演した経験のある、ベテラン俳優陣で固められた事もこの時期の作品では特徴的である。
本作開始直後はそのわかりやすい作風で好評を得たが、今作の最大の特色は鳥人間大会や狼男、ターザンもどきや「ベルサイユのばら」、「忠臣蔵」のパロディなど、各話のモチーフをすべてパロディとしている点である。仕事人シリーズに端を発した必殺シリーズのバラエティ路線もここに極まれりという印象さえ受けるが、さすがに今作におけるパロディは行き過ぎとの反論も多く、さらにドラマ的深みのある話も初期数話にとどまってしまったため、結果的に大部分のファンから反感をかうこととなってしまう。さらに京マチ子や高橋悦史がスケジュールの兼ね合いで一時降板状態になってしまい、そのためレギュラー陣の揃う機会が減ってしまった事も、本作の評価を下げる要因となっている。
このような作り手側の安易な作りが反映されてしまったような作品となってしまったためか、今作は今現在においてもあまり客観的な評価はなされていない。確かに今作が後続作へと受け継がれるような個性溢れる独特の何かを構築したかと言うと、そういうことはない。しかし必殺ブームの過度期において「ビジュアル重視と迫力の強化」を追求した当時の制作陣の作劇論も決して間違っていたわけではない。しかし同時に今作は「新仕事人」あたりから始まった一連のバラエティ必殺の限界を露呈した作品でもあった。今作は次作「仕事人X」と同様、後期シリーズの中での転換点に位置する作品とも言えるだろう。
☆登場人物
お国(演・京マチ子)
元々は大奥中老頭であるが、その精錬潔白な性格ゆえに存在を疎まれ、商人の贈答を受けたとの濡れ衣を着せられて、腰元のお清と共に大奥を追われる。その後は四谷・九兵衛店に居を構えるが、大奥での黒い陰謀に巻き込まれて裏稼業の存在を知り、勇次に命を狙われながらも共に真の悪を仕置する事を願い出る。
表稼業は大奥内で覚えた易占いで、的中率は高いようで常連客もいる。仕置の際にもその技量を生かし、敵に筮竹を一斉に投げつけて怯ませた隙をついて、鋼の筮竹を敵の頚椎に刺し込む。筮竹で相手の運命を占い、止めを刺した後に「お命、終わります」と決め台詞を言うのが毎回の定番パターン。
幼少の頃から大奥の中で過ごしてきたために世俗的なことには疎く、当初は米の炊き方さえも知らなかった。男性経験もまったくないために、しばしばその手の話題を振るお勝を困惑させている。少女のような純粋な心を秘め、弱者や子供に対しては深い慈愛を示すがその反面、悪に対しては激しい怒りを覚える事もある。
意外なようだが合気道の名手で、大奥時代に培ったと思われる見事な舞も披露した。最終話では偽物一味を倒したものの、人相書きが出回ったことから手が回るのを警戒し、仲間と笑顔で別れてお清と共に旅立って行った。
勇次(演・中条きよし)
「仕事人W」最終話における仕事人狩りの災禍を逃れ、メンバーの中でただ1人江戸に残った勇次。その後は裏稼業から足を洗っていたが、元締・鬼アザミ(菅貫太郎)の頼みを受けてお国殺しを遂行せんとする。しかし夕陽を見つめるお国の姿を前になぜか躊躇してしまい、外道元締であった鬼アザミの一派を仕置した後、仲間になることを懇願してきたお国と龍之介を仕切人として迎え入れる。
表稼業は相変わらずの三味線張替えであり、女性に人気なのも相変わらず。必殺の三の糸殺しも一層の冴えを見せ、今作では鉄鋲を用いて任意の場所に支点を作る事で、地形的に標的を吊る事が出来ない場所においても吊り上げることができるよう改良している。必殺の糸を切られてしまい、絶体絶命の窮地に陥る場合もあった。
素人同然であるお国と龍之介や、半ば成り行きで仲間としてしまったスキゾーには、幾度もの修羅場をくぐり抜けた裏稼業の人間として厳しく当たることもあったが、次第に仲間意識を持っていったようで、表での付き合いも豊富になっていく。新吉とは性格こそ正反対であるものの年齢も近いことから、気の置けない悪友同士となっている。
最終話では人相書きが出回ってしまったことから、今度こそ江戸を離れる選択を迫られ、束の間出会った優しい仲間に別れを告げて旅立って行った。
新吉(演・小野寺昭)
勇次の家の近くにある仕立屋の主人だが、裏では鬼アザミ配下の手練の仕切人。勇次と共にお国殺しを引き受けるが、以前から元締には不審感を持っていたようで、勇次と共に元締を始末してからは新たなる仲間と共に裏稼業の道を歩みだす。
殺しの得物は仕立てに使う物差しの中に極薄の刃を仕込んだ仕込み物差で、暗闇で敵を補足するために蛍光色を塗ったマチ針を敵に投げつけて目印とし、それを頼りに標的を始末する。仕込み物差は普段でも持ち歩いており、不測の事態に備えている。
普段は温和で生真面目な性格で、仕立屋ではかしましいお針子たちを相手に四苦八苦する一幕もある。しかし幼少の頃に両親に捨てられ、のたれ死ぬ寸前だったところを旅の仕立屋に助けられたと言う悲しい過去を秘めている。裏稼業に入った経緯は語られていないが、裏稼業に対する強い自負と信念を持ち合わせているようで、そのため裏稼業についての勇次の心構えを批判する事もあった。
仲間とは私生活においてもよく交流しており、中途では勘平の髪結で髪型を変更したりもしている。勇次とは気の置けない友人同士であったが、最終話では笑顔で別離、訪ねて見たい織元があるという上方へ旅立って行った。
勘平(演・芦屋雁之助)
お国達の引っ越してきた長屋に住んでいる髪結の亭主。そのどっしりとした風貌に似合わず、女房のお勝に頭が上がらない恐妻家であるが、その裏は一匹狼の仕切人。裏稼業での経歴は長く、それゆえの迫力や凄みも備えており、勇次や新吉を黙らせてしまうほどの貫禄の持ち主。お国達の参入には当初反対するものの、その決意の固さと本人の持つ実力に折れ、仲間入りを承諾する。
怪力無双を誇り、それを生かして殺し技は当初は小指につけた指輪型の剃刀で敵の元結を切り、その乱れた髪を掴んで壁などに激突させると言う荒技を使用していたが、中途からはロープを携行するようになり、敵地にプロレスのリングのようなものを作り、標的をそこに誘導して格闘技で相手を仕留める。
普段はのんびりしていて人当たりも良くお客からも人気が高いが、女房のお勝にはまったく逆らえず、毎晩のしつこい求めに四苦八苦している。一方で好奇心が非常に旺盛であり、様々な物が流行る江戸の流行物に対してすぐに飛びついてしまうこともままあった。裏稼業に関する様々な情報にも精通しており、闇の世界に関しては素人同然であるお国をサポートする。
最終話では以前の自分の仲間であった青年を殺され、その仇である偽物たちを始末した後、江戸を去る仲間たちと別れてお勝のいる江戸に残った。
虎田龍之介(演・高橋悦史)
元々は御広敷添番であり、大奥に勤める武士であったが、側室達の不可解な死に疑問を抱いて独自に調査をしていたのが仇となり、お役御免となってしまった。市井に身を投じてからは趣味を生かして小鳥屋を開業するが、以前知り合いとなっていたお国から仕切人の存在について質問を受けたために命を狙われる事となり、お国と共に仕切人として活動する決意を固める。
得物には通常のキセルよりもずっと大きい鉄のキセルを使用。これを使って相手の頭部を殴打して絶命させる。その直前に相手の頭に布をかぶせるのは、血を見るのが嫌いな彼のポリシーゆえ。その威力は絶大で、キセルを使って木の幹を叩き折ると言う荒技も披露した。
沈着冷静でありながら人並みの人情を忘れない好人物であり、大奥を追われたお国達に当座の金と着物を渡した事もあり、お国とはその時以来の付き合いである。武士社会にはまったく未練はないようで、若いスキゾーとも気さくに話をすることもある。
最終話では飼っていた小鳥たちを大空に戻し、自分もそのまま江戸を離れて行った。
日増(演・山本陽一)
現在修行中の身である若い僧だが、修行はまったく行っておらず、現在は寺にも住まずに気ままな一人暮らしをしている若者。「スキゾー」と言う愛称で呼ばれる。1話のラストでお国達をつけていたところを捕らえられて勇次に始末されかかるが、お国の助言もあって見逃してもらい、さらに仲間として活動する事も認めてもらった。
殺しは直接行わないものの、仲間の敵地潜入を有利に遂行させるために爆裂機を制作。離れた場所から目的場所を爆発させる事で敵側に隙を作り、その間に仲間を侵入させる。
見た目とは裏腹にかなりの博識家であり、自宅には山のように詰まれた蔵書が置かれている。基本的にはお調子者だが不思議と嫌味を感じさせない性格のようで、勇次もかつての順之助とは違い、気軽に話をする時があった。お清にぞっこんで「おネエ」と呼んで慕っており、体よく同棲にまでは持ち込んだもののお清には袖にされっぱなし。
江戸に流行る様々な物に敏感な対応を示し、それに便乗したインチキ商売で日銭を稼ぐ事もしばしばあった。その点で勘平とは結構馬があっていたらしい。最終話ではお清からも離れて一人旅に出るはずであったが、結局お清のあとを追いかけてくるのであった。
お清(演・西崎みどり)
元はお国に仕えていた大奥部屋方。反対派の謀略によってお国と共に大奥を追われ、それからはお国と一緒の長屋に済んで町暮らしを楽しむようになる。お国の裏稼業の事は当初は知らなかったが、2話における事件を経てその事実を知り、仕切人の仲間として協力することになる。
仕事での主な役目はスキゾーと共に行う、爆薬での敵地破壊。普段は茶屋娘として働いており、大奥時代から自分の事を世話してくれたお国のことを実の母のように慕っている。現在はスキゾーの家に同棲の形で住んでおり、スキゾーの熱烈なアプローチに困ることが多いものの、内心ではスキゾーの優しさにほだされているようである。
明るく気丈な娘で、時として尻込みするスキゾーにハッパをかけて敵地に向かう事もあった。最終話ではお国と共に江戸から旅立っていく。
お勝(演・ひし見ゆり子)
勘平の女房で、元気のいい女髪結。長屋の中でも人気者のようで、しばしば女同士で集まっては下の話題で盛り上がったりしている。夜な夜な勘平に濃厚に迫るが、いつものらりくらりとかわされてしまっている。
面倒見が良い性格で、長屋に着たばかりで何もわからないお国の世話をしたりもしていた。亭主の裏稼業のことはもちろん知らない。
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