必殺仕事人X
1985年1月11日〜1985年7月26日 全26回
☆オープニングナレーション
お医者様でも草津の湯でも
恋の病は治らねえ
恋の闇よりなお暗い
恨みの夜の稲妻に
姿が浮かぶ仕事人
顔は見ねえでおくんなせえ
心の闇を晴らして見せやす
(作:山内久司 語り:中村梅之助)
☆主題歌
「さよならさざんか」
作詞:宇山清太郎、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎孝路、歌:藤田絵美子
作品を重ねるたびに人気を向上させていった「仕事人シリーズ」も、21弾「必殺仕事人W」の終了によって一旦の沈静化を見た。そして人気キャラである勇次のみをスピンオフして制作した前作「必殺仕切人」に続き、メンバーを刷新して新たな人気を獲得しようと制作された作品が、シリーズ第23弾となる本作「必殺仕事人X」である。新春スペシャル「必殺仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と戦う・大利根ウェスタン月夜」を事実上の第1話としてスタートした。
今作では既に不動の人気を誇っていた秀と勇次という二大キャラクターを変更し、新たに花屋の政、組紐屋の竜という2人の若手仕事人をメンバーに加えた事が第一の注目点である。「新仕事人」以降、ほとんどメンバーに変更がなくマンネリ気味に陥ってしまっていたシリーズへのカンフル剤になるであろうこと、今までとは異なるシリーズの魅力が見えてくることを期待するファンは多かった。しかしこの2人の新キャラクターにおいては、結局番組全体を牽引するような強い個性は最後まで発揮されず、悪い言い方をすればとことんまで人気キャラである秀と勇次のキャラクター性の模倣に終始してしまっており、このことが政と竜の没個性化のみならず、作品全体の低評価にまで繋がっているというのが現状である。
ドラマ部分も従来の仕事人シリーズを完全に踏襲した形になっているため、展開そのものにも新味は少なく、必殺ファン、特に黄金期を知る古参のファンからは厳しい評価を下されてしまうことになる。しかし同時に仕事人シリーズの特徴であるバラエティ路線は、「W」で達成したものをさらに発展させるための盛り込みがいくつもなされており、ビジュアルと爽快感を重視した殺しのシーンを始め、序盤に集中した様々な有名人やベテラン俳優のゲスト出演、中村家コントなどのコミカル面強化などがあり、それらはコアではない一般層のファンから絶大な支持を受けた。その「バラエティ重視」の方向性は、本放送当時に公開された映画第二作「ブラウン館の怪物たち」において改めて確認する事ができる。加えて政や竜を演じた村上弘明や京本政樹のセックスアピール面においても市民権を得たという事実は認めなければならない。
だがそれら新規要素をふんだんに盛り込んだ本作であっても、もはやブームの過ぎ去った時期においてかつてのような人気を得る事は既に難しくなっており、結果この段階の時点では歴代仕事人シリーズの中で最も短い話数で幕を閉じる事になる。尤もこれは鮎川いずみや京本政樹の撮影中の事故による負傷も関係している事はいうまでもないが、それでもストーリーの単調化や各キャラの無個性化など、批判される対象は多い。その意味では本作を成功作と呼ぶ事は出来ないだろう。そして本作の終了後、制作陣は初期、黄金期のシリーズが内包していたハードな空気を回帰するべく、模索する事になるのである。
☆登場人物
中村主水(演・藤田まこと)
「仕事人W」での解散以降は例によって裏稼業から手を引いていたが、いつしか江戸に戻っていた加代との再会、そして若い仕事人の竜や政と出会ったことから再び復帰、西部開拓時代のアメリカへ行ってしまうという前代未聞のタイムスリップを経験した後、江戸で裏稼業を再会する。
今作では通常の小刀による一突きの他に、刀の束に仕込んだ仕込み刃を使用しての仕置も披露。相手を油断させ一瞬の隙をついて悪党を闇に葬る。裏稼業での経歴も既に長く、先年は強大な外道集団・六文銭一味を秀や勇次達とともに壊滅させた事もあり、裏稼業の世界でも有数の実力者として認識されている。
最終話では正体が知られてしまった政の線から自分たちに被害が及ぶ事を憂慮し、再び仲間を送り出して平凡な日常に戻って行った。
組紐屋の竜(演・京本政樹)
主水の新たな仲間となった若手仕事人。若いながらも相応の腕を持っており、主水と出会う以前から相棒の政と組んで仕事をしてきたらしい。
表稼業は組紐屋であり、問屋におろしている組紐は出来も良く、若い娘からの人気を集めている。殺し技もその組紐を生かし、先端に重石として鈴をつけた組紐を敵に投げつけて首を締め、腕力で吊り上げる事で絶命させる。それ以外にも紐を張り巡らせてロープウェーのように移動したり、紐を数本利用して敵の動きを拘束するなど、状況に応じて臨機応変に使いこなす。
端整な顔立ちなので女性からの人気も高いが、普段は無口でクールを通し、必要以上に何かを語ろうとする事はあまりない。しかし人並み以上の人情も持ち合わせているようで、長年の友人や相棒の政を気遣ったり、「やるしかねえ」と熱い言葉をしばしば口にするなど、人間味溢れる一面もある。その前身は伊賀忍者であり、忍者としての過酷な試練に耐えながらも、人間らしい生活に憧れて抜け忍となった経緯を持つ。その後どのように仕事人の道を歩み、どこで政と出会ったかということについては不明。
21話では標的に反撃されたために右足を負傷、さらに殺し屋としての悲しい因果も経験した。最終話ではお庭番に追い詰められた政の無事を見届けた後、江戸を去って行った。
花屋の政(演・村上弘明)
主水の新たな仲間となった若手仕事人。かなり前から竜と組んで仕事をしてきており、闇の世界においてもその名はかなり知れ渡っていたようで、初対面の主水は政と竜の名前を一発で見抜いている。
出身は相模で表稼業は花屋を営んでおり、花や植木の販売や庭木の手入れを行う事もある。加代の住んでいる借家の二階を間借りしており、店もそこに設けている。殺しの際の得物は出陣の際に手折った季節ごとの花木の枝であり、その鋭利な切り口部分を首筋などの急所に刺しこんで、相手を地獄に送る。枝を使用する事が出来ない状況では、例外的に氷柱を使って仕留める事もあった。また独自の格闘術にも長けており、強烈な蹴りで相手の動きを牽制した後に止めを刺す手法も随所で見せている。さらに死の商人・ブラウン一味との死闘の際は、ハングライダーのような凧を操って奇襲をかけたこともある。
父親も仕事人であったが、幼い頃に奉行所に捕まり眼前で処刑されており、以後は父の仲間であった女仕事人・お京が母親代わりとして政を育て、殺しの技を伝授された。普段は静かで優しい性格で、人当たりもいいので男女問わず慕われている。人情家でもあるので被害者に同情する事も多く、必要以上に関わったために主水に注意される事もあった。女性に関してはかなり純情な一面を持つが、同居人である加代には微妙な感情を持っていたようである。
最終話で将軍家の人間を仕置した際、お庭番にその顔を見られたことから命を狙われるが、最終的には無事な姿をみんなに見せて、笑顔で江戸を離れて行った。
西順之助(演・ひかる一平)
主水の仲間である「受験生仕事人」。政や竜との出会いを機に、主水と共に裏稼業に復帰した。
「W」に続いて仕事における役回りは、自作の投石器を用いてのサポート。今作では投石器もダイヤルによって飛距離を調節する事ができるように改良されており、さらにライデン瓶の知識を生かしたと思われる電磁石も併用、敵の武器を使用不能に追い込むことも多かった。
若者らしい明るさとマイペースさを持ち合わせた性格は相変わらずだが、今作では以前からの付き合いであるオカマの玉助に加え、親が決めた許婚のお新も加わって、騒がしい日常を過ごしていた。仲間が負傷した際には医学の知識を生かして治療にあたる事も多く、科学的知識への造詣が深いためか、自分たちが超自然現象に巻き込まれた際も瞬時にその状況を理解する発想の柔軟さも併せ持つ。まだまだ甘さは抜けきれていないようだが仕事人としての覚悟は心中に備わっているようで、強敵・ブラウン一味との最後の戦いにも同行を許されている。
最終話で念願の学問所に合格を果たし、それを知る主水たちによって強引に足抜けさせられてしまい、去り行く仲間達を1人遠くから見送った。
おりく(演・山田五十鈴)
勇次の母親で、その裏は凄腕の仕事人。「W」最終話において息子の勇次とも別れ江戸を離れ、現在は下総で瞽女として過ごしていたが、そこで知り合った百姓一家の悲劇を知って江戸に舞い戻り、主水や新たな仲間達と超自然現象を経験した後、新たに江戸で裏稼業を再会する事になる。
今作では歳の離れた仲間達を一歩引いた視点で見守る事が多く、登場回数の少なさもあって目立った活躍はしていない。裏稼業の師匠である浦島亀吉のサポートや、京でのブラウン一味との死闘を経て、その後はまた旅に出て行ったらしく、以後の去就は不明。当時江戸を離れていた勇次と再会したかどうかもわからないままである。
加代(演・鮎川いずみ)
「W」最終話での解散以降は上方に旅立っていたようだが、いつの間にか江戸に舞い戻っており、主水と再会した頃には既に政に自分の住む借家の一階を間貸ししていた。当初は同居人である政の裏の顔は知らなかったが、超自然現象絡みの事件ですべてを知り、それ以後は今まで通り情報役として裏稼業に携わる事になる。
裏の仕事においては情報収集と共に、順之助の投石器の照準あわせを手伝っている。中途では事故に遭ってむち打ち症になったとのことで、首にギプスを巻いた姿で登場していた。政に対しては女性として複雑な思いを抱いてもいたようだが、最終話では政の無事な姿を見届けた後、再び江戸を離れて行った。
最終話ではチームの解散に伴い、再び笑顔で江戸を去っていく。
筆頭同心・田中(演・山内としお)
「新仕事人」以来ずっと残留し続けている、南町奉行所の筆頭同心。今作では優秀な部下である溝呂木を可愛がり、今まで以上に主水を軽視するようになっているが、主水を出張のお供にしたりと完全に毛嫌いしているわけでもないらしい。
そのオカマ振りにもますます拍車がかかる一方、同心としてはかなり軟弱な人物にもなってしまっている。
溝呂木頼母(演・妹尾友信)
南町奉行所の同心で主水の同僚。田中のそばに常に仕えている腰巾着で、「おっしゃる通りです」を口癖のように使って田中に合わせている。同心としても優秀なようで、いつも比べられてしまう主水にしてみればいい迷惑な人物だが、本人は主水に対しては特別嫌っている様子はない。
玉助(演・梅津栄)
前作「W」から登場しているオカマのおじさん。順之助に惚れこんでおり、毎回様々な所で色々な扮装をして順之助に迫ってくるので、順之助も困り果てている。今作では許婚であるお新も絡んで騒ぎを大きくする事も多かった。
最終話では順之助が学問所に合格し、もう塾にくる事もなくなるので会う事が出来なくなり、その事を悲しみながらも花束を渡して祝福した。
お新(演・灘陽子)
大店・港屋の娘で、親同士が決めた順之助の許婚。まだ15歳でありながらも「お医者さんごっこしましょ」などと大胆な発言を繰り返し、その気のない順之助を困らせていた。
基本的には明るく元気な少女だが、ライバルである玉助に対しては敵対心を露わにして、乱暴な言葉をかけたり蹴っ飛ばしてしまうなどのおてんばな一面も見せた。最終話以降、順之助とどういう関係になったかは未詳。
中村りつ、中村せん(演・白木万里、菅井きん)
主水をいびるのはもはや相変わらずだが、それ以外にも美容運動や金魚の購入など様々な流行物に敏感な一面を見せ、さらに主水をゲンナリさせる場面も多くなった。
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