必殺仕業人
1976年1月16日〜1976年7月23日 全28回
☆オープニングナレーション
あんたこの世をどう思う
どうってことねえか
あんたそれでも生きてんの
この世の川を見てごらんな
石が流れて木の葉が沈む
いけねぇなあ 面白いかい
あんた死んだふりはよそうぜ
やっぱり木の葉はぴらぴら流れて欲しいんだよ
石ころはジョボンと沈んでもらいてぇんだよ
おい あんた聞いてんの 聞いてんのかよ…
あら もう死んでやがら
はあ 菜っ葉ばかり食ってやがったからなあ
(作:早坂暁 語り:宇崎竜童)
☆主題歌
「さざなみ」
作詞:荒木一郎、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:西崎みどり
前作「仕置屋稼業」の最終回にて奉行所に捕まった市松(沖雅也)を何とか救出した中村主水。しかし彼はその咎を受け、同心職では最下級の職である牢屋見廻役にまで格下げされてしまう。いつにない「寒い」設定を前提とし、作品世界全体も重く暗い雰囲気で包み込むことで歴代の作品には存在しなかった独特のムードを打ち出すことに成功したシリーズ第7弾。
主水は仕置屋チーム解散後も細々と裏稼業を続けていたが、ある日市松のつてで主水を頼ってやってきた赤井剣之介とお歌の夫婦と出会い、彼ら二人も加えて「仕業人」チームを結成、本格的に裏稼業を再開する。
オイルショックに代表される「高度成長期の終焉」という放送当時の空気を敏感に感じ取り、本作の世界もこの世の「どん底」を描いた雰囲気があり、全編を重苦しい空気が包んでいるのが本作の最大の特徴である。さらに貧困にあえぐ仕業人は自身の信念よりも裏稼業によって手に入れる「金」にのみ執着し、それゆえに仲間意識というものが育ちにくく、時には強調さえ忘れ去られてしまうという異質のキャラクターシフトが視聴者に大きなインパクトを与え、さらに毎回の事件が終わっても「社会」全体を包む病巣は何も解決していないというアダルトチックなストーリーテリングの冴えが従来の必殺ファンの心を見事につかみ、秀作ぞろいの黄金期作品の中でも傑作として認識されている。
さらに秀逸な設定なのは新たなる殺し屋・赤井剣之介夫婦の設定である。由緒ある武士であったものの、お歌との愛を成就するために脱藩してお尋ね者となる道を選んだ剣之介。それはかつて「仕置人」最終回で主水が抱いた決意に相通ずるものであり、主水のネガティブ像として創造された剣之介のキャラクターは、これまたコアなファンから絶大な支持を得た。さらに夫婦の刹那的な人生とその無意味な末路は、主水の心に今までにない闇を与えることとなる。
裏方の話題としても、新しい殺し屋の名前を一般公募で募集して決定するなどファンサービスも充実。後の大傑作「新必殺仕置人」「翔べ!必殺うらごろし」で活躍する高坂光幸が監督としてデビューしたり、放送200回記念として歴代の出演者がカメオ出演する話(24話)が製作されるなど話題も豊富。最終回の衝撃とも相まって、シリーズ屈指の傑作としてファンに認知されるに至るのである。
☆登場人物
中村主水(演・藤田まこと)
前作「仕置屋」の最終回で、市松の逃亡を防げなかった責任を取らされて、小伝馬町の牢屋見廻役に格下げとなってしまった今回の主水。仕置屋解散後も残留組の捨三、そして新メンバーのやいとやと一緒に細々と裏稼業を続けていたが、自分を頼ってやってきた剣之介を仲間に迎え入れて、本格的に殺し屋稼業をスタートさせる。
今回は突然貧乏になったためか、みすぼらしい風体をしていることが特徴で、後年トレードマークとなるマフラーを初めて着用している。今まで酒は苦手だったものの、今作より飲むことができるようになってもいる。「金」という理由だけで結びついている今の仲間達は心底信じてはおらず、1話のラストにおいてはその胸中をはっきりと仲間達に明言している。だがビジネスライクとして裏稼業を割り切っているものの、かつての熱い感情を忘れているわけではない。
最終話で剣之介夫婦の死を知り、仕業人でも同心でもない、「中村主水」という一人の男として決着をつけた。
赤井剣之介(演・中村敦夫)
本名は真野森之助と言い、上州沼木藩の藩士で将来を有望されていたが、当時旅芸人だったお歌と恋に落ち、お歌を苦しめる親方を殺して脱藩。夫婦となったお歌と共に逃亡の旅を続ける。現在はお歌と共に大道芸人としてその日暮らしの生活を送っているが、その剣技は主水でさえも怯ませるほどの腕前。信州諏訪宿で殺しを行った際に知り合った仕置屋・市松から十手を持つ殺し屋の存在を聞かされ、日々の糧を求めて江戸にやってきた。
本来は真面目な性格なのだがどん底生活を続けてきたために世間の冷酷さも嫌と言うほど熟知しており、そのため自分の激情をそのまま表現することは少ない。当初は大道芸という不慣れな稼業に不満を抱くこともあった。現在でも沼木藩からはお尋ね者として狙われており、素性を隠すために大道芸を行っているという側面もある。
「殺しに刀は使わない」が信条で、得物は指輪型の仕込みカミソリ。これで標的の元取を切り裂き、乱れた房で標的の首を締め上げる(いわゆる『髪の毛締め』)。
貧乏ではあるものの、共に視線を越えて来た仲間との信頼、そして愛する女・お歌と過ごす日々を得た彼は次第に現在の状況を受け入れていくようになるが、最終話では彼自身にも裏稼業の因果が巡り、妻ともども「無意味な」斬死を遂げた。
やいとや又右衛門(演・大出俊)
仕置屋チーム解散後、主水が新たに仲間とした殺し屋。表稼業は灸師で、貧乏人からは金を取らないという反面、大変なプレイボーイで女性客に目をつけてはしょっちゅう手を出している。
仕置の技も灸師としての腕を生かし、焼き針を標的の急所に突き刺し、相手は熱量と苦痛で身体を痙攣させながら地獄へ落ちていく。だが腕っ節の方はからきしなので、時には相手に逆襲されてしまうこともある。また仕置の出陣前に必ず何らかの占いを行うのも通例となっており、様々な方法を使っては仕置の成功を占っている。
彼も基本的に仲間との繋がりは「金」だけであるが、一方では誰よりも今の境遇、そして仲間に慣れ親しんでいる。彼の両親もまた殺し屋であり、裏切り者として両親を処刑した男に育てられてきた。外道に成り下がったその養父との決着を描いた10話は必見。
捨三(演・渡辺篤史)
仕置屋チーム解散後、唯一江戸に残って主水ややいとやと共に裏稼業を続けていた青年。だがかつての超人仕置屋である印玄や市松がいなくなったために大きな仕事が出来ないことには不満を抱いていた。その機動力、情報収集能力は前作と変わらぬ冴えを見せており、活躍の場こそ減ったものの、重要な戦力として役立っていた。
表稼業は釜番から洗い張り屋(クリーニング屋)に変更。日銭を稼ぐために表稼業にも従事している。
お歌(演・中尾ミエ)
剣之介の妻。月琴の名手でその腕を生かして大道芸を披露する。暗い世界に生きていながらも至って明るい性格で、芸人としては剣之介よりも先輩であるため、剣之介に芸を仕込むこともある。だが夫への想いは何よりも強く、仕置に向かう剣之介と常に行動を共にする。
最終話で剣之介とともに斬られ、その手を握り合うことなくドブ川で絶命した。
島忠助(演・美川陽一郎)
主水の同僚の牢屋同心。引退間近の老同心で、どこまでもマイペースを貫く庶民的な人。「日々是平安」をモットーとして生活している。主水にとっては気軽に付き合うことが出来る数少ない人間だった。
出戻り銀次(演・鶴田忍)
牢屋を天国と考えて、釈放されては軽い罪ですぐに牢屋に戻ってきて、しかもその短い刑期も延長させようと企む小悪党。「がんばりま〜す!」と叫んでは、日々の牢屋暮らしを満喫?している。
お澄(演・二本柳俊衣)
貧困から脱出するために家の一部を間貸しすることにした中村家にやってきた初代間借り人。回船問屋の妾で金回りはいいものの、夜雁声のすごさがものすごいので主水たちも辟易してしまい、やいとやにも協力してもらって6話で家を出て行ってもらった。2話から6話までの登場。
玄覚(演・田淵岩夫)
7話から9話に登場した二代目間借り人。イワシの頭をご本尊として崇める「ヘンな人」で、結局追い出されることになるが、退場する9話では主水の正体を見抜いた?りもした。
千勢(演・岸じゅんこ)
10話から最終話まで登場した三代目間借り人。離れに私塾を開く女教師で、昼は子供達、夜は役人を目指す若者に勉学を教えている。美人でお色気度も高いのだが、自分の魅力が周囲に与える影響を考えていない面もある。趣味は絵草子の収集。
中村せん、中村りつ(演・菅井きん、白木万里)
今作での中村家は大黒柱である主水が左遷されたために貧困にあえいでおり、傘張りなどの内職まで行う始末。離れを間貸しまでして何とかお金を稼ごうとするその姿勢は正しい。しかし主水への厳しい態度も相変わらずである。
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