必殺からくり人

1976年7月30日〜1976年10月22日 全13回



☆オープニングナレーション
(山田) 雨が降ったら傘をさす
(芦屋) 辛い話は胸をさす
(ジュディ) 娘十八 紅をさす
(森田) 魔がさす 掉さす 将棋さす
(緒形) 世間の人は指をさす
(山田) 許せぬ悪に
(緒形) とどめ刺す
(作:早坂暁 語り:山田五十鈴、芦屋雁之助、ジュディオング、森田健作、緒形拳)

☆主題歌
「負犬の唄(ブルース)」
作詞:荒木一郎、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎考路、歌:川谷拓三


 これまでのオープニングナレーションを担当した早坂暁がメインライターを務めることとなった、シリーズ初の1クール(13回)作品となるシリーズ第8弾。文化爛熟期の天保年間を舞台として、その当時の世相と放送当時の現代とを巧みにリンクさせながら、権力者の横暴に立ち向かう裏稼業・からくり人の活躍が描かれる。
 これまでの作品とはまったく異なる展開、演出が今作の最大の特徴で、前述した「天保と現代のリンク」を行うために、なんと現代の場面から物語が始まり、しかもその現代に主役である時次郎が姿を現す。さらにそのバックにかかるBGMはとにかく明るいデキシージャズ。これだけでも「必殺シリーズ」中どころか、時代劇という枠から見ても異質の作品であることが伺えるだろう。
 さらに敵対組織として外道組織「曇り一家」を設定し、彼らとの抗争劇を物語の縦糸とすることで、1話完結という従来のスタイルを保ちながらも、今まで以上に大河ドラマ的様相を呈する作品となった。曇りに対してからくり人・花乃屋一党は決して金に執着するのではなく、「弱者の涙」を依頼料として仕事の遂行に当たる。世間的に見れば些細な事柄ではあるが、その影で涙を流す弱い市井の人々に手を差し伸べるのがからくり人なのである。
 作劇においても、史実と虚構を巧みに織り交ぜた秀逸なストーリーが展開。シリーズとしては「仕事屋」以来の「殺しのない回」も存在している。13回という回数の制限を逆手にとって、綿密な構成によって打ち出された展開は既存のシリーズに慣れてしまった視聴者を混乱させ、そして虜にしていくのである。
 そして11話から最終話までで主人公たちの悲しい過去が明らかになる。彼らは人間以下の扱いを受けながらも、必至に這い上がってきた人間達だったのである。だからこそ彼らは弱者の涙に共感し、同時に弱者の涙を生み出す横暴な権力を憎むのである。最終話、最後の最後まで「弱者の涙と手を結ぶ」をいう意地を貫き通して、巨悪と戦い散っていったからくり人たち。彼らの勇姿は永遠にファンの心から消え去ることはないであろう。


 ☆登場人物

 花乃屋仇吉(演・山田五十鈴)
 先代の元締・蘭兵衛の配下のからくり人だったが、蘭兵衛の死後、裏稼業を引き継いで「花乃屋」を名乗る。「涙以外とは手を組まない」が信条で、その信念のために外道組織・曇り一家と衝突することになる。
 表稼業は三味線の師匠で、深川に居を構えて三味線を教えており、夜は屋形船で流し三味線をしている。殺しの得物は三味線の撥で、それを使って相手の首筋などの急所を切り裂く。飛んでいる蚊を打ち落とすほどの腕前。
 かつては芸者を務めていたが、長崎のオランダ商館長に慰み者にされ、長崎へ向かう一行に襲いかかったために捕まり、これが島送りの原因となった。現在の花乃屋一党は島抜けの際に一緒に脱出した関係である。
 最終話で次々と仲間を失いながらも最後の意地を貫き通すため、娘のとんぼにからくり人の存在を後世まで伝えることを示唆して別れ、曇りと相打ちになって果てた。

 夢屋時次郎(演・緒形拳)
 安眠枕を売る「夢屋」を表稼業としている男。川を小船で渡りながら歌を歌いつつ枕を売っていく。からくり人の中では行動力に優れており、ねずみ小僧が入牢している牢屋に忍び込んだり、仇吉の頼みで尾張まで飛んで情報収集を行ったこともあった。また作劇上ではストーリーテラーとしての側面も持ち、1話の冒頭で現代の銀座に姿を見せてねずみ小僧の市中引き回しを説明する場面などは良い例である。
 遊び好きで女に手を出すのが早く、お調子者の一面もあるが基本的にはいい奴。得物は枕作りの際に使う鉄製のヘラで、これを用いて額や後頭部を刺したり、首筋を切ったりする。また補助武器として短刀も使用、柔軟な方法で仕置を実行した。
 かつてはかたぎの人間でアキという恋人もいたものの、彼女が男に絡まれているのを助けようとして誤って相手の男を殺してしまい、島送りになってしまう。しかも島抜けして戻ってみればアキは他の男と結婚していた。それでも彼女への想いを捨てきれなかった時次郎は、いつしか彼女にそっくりな女郎・しぐれに肩入れするようになる。
 そんなしぐれが病気になった時に助けてくれた蘭学医者・小関三英が蛮社の獄で自決したことを知り、仇を討つために命をかけて鳥居耀蔵などの幕府要人の暗殺を図る。しかし不幸な偶然が重なって暗殺は失敗。体中に火薬をふりかけ壮絶な自爆を遂げた。

 仕掛の天平(演・森田健作)
 百万坪と言う埋立地に居を構えている若き花火師。血気盛んでぶっきらぼうな所もあるが、優しい性格である。火薬に関しての知識は豊富で、殺しの得物も小型の花火を使用、点火させてから敵に飲み込ませて体内で爆発させるという荒技を用いる。それ以外にも時次郎と同様、短刀を補助武器として使うこともあり、殺し以外の目的で火薬を使うこともある。
 とんぼに惚れられているようだが、実は二人は兄妹であるらしい。へろ松と一緒に掘っ立て小屋に住んでいるが、一緒に住むようになった経緯は不明。しかもその小屋は中に火薬がたくさんしまわれているため、しばしば火付けにあって爆発させられてしまう。
 最終話では家をふっとばされた影響で視力を失ってしまい、それでも花火を持って曇り一家に単身乗り込み、曇りと共に自爆しようとするも叶わず、自分の花火で自爆してしまった。

 八尺の藤兵ヱ(演・芦屋雁之助)
 花乃屋の番頭で普段は屋形船の船頭。仇吉の用心棒も務める。並外れた怪力の持ち主で、家屋を破壊でき得るほどの力を備えている。殺しの技もその腕力を利用したもので、濡れた手ぬぐいでの首締めが基本だが、時次郎や天平と同様、短刀を使う時もある。
 へろ松の父親でもあるが、母親については触れられずじまい。普段は陽気なおじさんだが、甘党で酒が飲めないらしい。文字通りからくり人の重鎮として一党をまとめる役割も担っており、仇吉が自分の心境を吐露することのできる唯一の人物でもある。しかし意外と抜けている一面もあり、狙っていた相手に逆襲されて深手を負ったこともある。最終話では曇り一家との最終抗争の口火を切って、配下の殺し屋に何発も銃弾を浴び、仇吉の下へ船を届けてから事切れた。

 花乃屋とんぼ(演・ジュディ・オング)
 仇吉の実の娘。仇吉が八丈島に流された時には既にお腹の中におり、島で産み落とされた。その後も島で暮らし、その間に生きるための術として学習した読唇術をからくり人の仕事としても利用して、悪人の密談内容を調べたりする。
 天平とは兄妹であるらしいが、仇吉も藤兵ヱも内緒にしているので、天平に恋心を抱いてしまっているらしい。典型的な現代っ子だが純粋な性格。殺しは基本的に行わないが、最終話での全面抗争において花乃屋に侵入してきた刺客を刺殺。仇吉から最後の願いを託されて上方へ渡り、後に清元延寿太夫となる。

 八寸のへろ松(演・間寛平)
 藤兵ヱの実の息子。関西弁を話し、少々間抜けで知恵遅れに見える所もあるが、純情で優しい性格。いまだに寝小便のくせがあり、同居人である天平を困らせている。
 1話では蘭兵衛の営む骨董屋・壷屋で働いていたが、2話以降は様々な商売を実践していき、しかもうまく行かないのですぐに止めてしまう。最終話ではとんぼと共に生き残った。

 曇り(演・須賀不二男)
 「曇り一家」を擁し、裏稼業で蘭兵衛と競っていた元締。権力者と癒着しており、金のためならどのような仕事も辞さない外道。興奮するとドモる癖があったようだが、忘れられてしまったらしい。邪魔者である蘭兵衛を刺客を使って抹殺するが、仇吉率いる花乃屋一党とも敵対するようになり、最終話で仇吉と相打ちになって果てた。

 壷屋蘭兵衛(演・芦田伸介)
 からくり人の初代元締。「銭を持っていない人間から銭は受け取れない」という信念を持ち、そのために曇りと対立しており、1話で刺客の襲撃を受けて殺されてしまう。仇吉らと一緒に島抜けした経験をもち、細い短剣を使用して殺しを行うらしい。


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