第一印象は「可愛い」だった。
 我ながら随分と珍しいこともあったものだといまだに不思議な気分になったりもする。
 別に自分としていたわけではない話を聴くつもりもなくきいてしまっていて、その中身に思わず感心してしまっていた。
 殺された一族の復讐をしたいなんて自分なら絶対考えない。
 目の前で誰かが殺されてその相手を殺したいと思うとするなら、きっと、自分の獲物を誰かに横取りされた時くらいなものだろう。
 でも、それは殺された者のためではなくて、自分の気がすまないからか、自分が殺したいとまで思った相手を仕留めたものへの興味と執着。
 そんな相手との闘いは、きっととても気持ちがいいだろう。
 だからハンター試験のときも一番興味があったのはキルアで、将来が一番楽しみだったのはゴン。
 でも、それはあくまでも闘いを前提にしたときのことで、実際にちょっかいをかけてしまったのは、いま現在目の前に居るクラピカ。
 だって、そうでもしないと自分の事など試験会場を出たらすぐに忘れられてしまいそうだった。
 自分を含めた他のハンター志願者達と違って、あまり誰かと闘う事が好きそうじゃなかったから。
 だから一番興味の有りそうな話題をふっておいて、更に一番嫌がりそうな不戦勝という形で勝負を終わらせた。
 これで、嫌でも自分を追ってくるのがはっきりしていたから。
 でも、それでどうしたいのかと言われると、正直言葉に詰まる物があった。
 闘っていて楽しくなかったとは言わないが、ゴンの将来との勝負を想像する方がよっぽどゾクゾクしたし、命懸けで闘いたいというわけでもない。
 それは今も同じで、一緒に居て闘いたくなるどころか不思議と穏やかな気持ちになったり、笑った顔をされると自分まで 何故か嬉しいような気がして、今まで一度も過ごしたことのない妙に静かな、というか満ち足りた日々が続いている。
 自分でも本当に不思議で、さっきから端末に向かって何か調べているらしい姿を見つめていれば、さすがに視線が気になったのか、画面から顔を上げてこっちを向いてくる。
「いったいどうしたんだ。私の顔に何かついているのか?」
 首を傾げながら微かに笑みを浮かべて聴いてくる姿は、ハンター等という職業がにわかに信じられない程、本当に可愛らしい。
「なんでもないよ。本当にいつ見ても可愛いと思って。」
 考えていた事とは違うけれど嘘でもない。
「また、そう言う…」
 呆れたようなため息と一緒に、いつもと同じ言葉が返される。
 そして、薄く頬が染まっているのもいつもと同じ。
 最初のうちはこんな事を言うと
「はぐらかすな」
 なんていう台詞と一緒に睨まれたけれど最近はそんなこともない。
 飽きるほど何度も同じ事を言ったのと、こんな事を云われて睨んでくるのははずかしがっているからだと解かっているのをクラピカのほうでも知っているから。
「本当だよ。いつまでも厭きないから、ついじーっと見ちゃうんだ」
 云いながらこっちへ来るよう手招きすれば素直に傍らへ立つから、その手を引いて自分の膝の上へと座らせてしまう。
「どうしたんだ?本当に」
 別に、本当になんでもなくて考え事をしながらその姿を眺めていただけだったのだけれど、こんな風に云われるとつい
「言っても怒らない?」
なんてからかってみたくなる。
「何が?」
 思った通り、明らかに『警戒しています』という顔になって問い返してくる。まぁ、前科が山積みだから当たり前かもしれない。
「可愛いなぁって思いながら見てて、最初は本当にそれだけだったんだけど・・・」
 次ぎに云われる事の想像がついたのか、さり気なく、けれどしっかりと逃げの姿勢に入った身体を、態勢と腕力に物をいわせて腰に回した腕で押さえ込んで続ける。
「見てるうちにさわりたいなぁ、とか思いはじめたらちょうどこっちに来たからさぁ」
 いいながら、首筋に鼻先をすりつける様にして強く身体を抱き寄せれば見事なくらいに目の前の肌が泡立つのが判る。
「して、いい?」
 からかってみるだけの心算だったのに、こんな風に反応されるとつい本気になってしまう。
「やだって言ったら、やめるのか?」
 ふるえを無理に押さえた擦れた声で返されて先刻までの『つもり』は忘れる事にする。
「本当に、いや?」
 耳に息だけで囁いてやりながら、もうやめるつもりは全然なくて。
 服の上から身体を撫でてやれば、腕の中の身体はくったりと力を抜いてもたれ掛かってきた。
「嫌じゃ、ないの・・・?」
 肯定の返事こそ返ってこなかったけれど嫌がっている素振りもなくて、それどころか力の抜けた腕を回して抱きついてくる。
 本当に珍しいこともあるものだと思いながら、せかっくお許しが出たのだからと服をはだけて、直に肌に触れ、本格的に その身体を煽っていけば、肩に顔を埋めながら吐息をこぼしてくる。
 顔を見られたくないのと声をあげたくないのとたぶん両方なのだろうけれど、生憎と顔も見たければ声も聞きたくて顔をあげるよう促せば、嫌がりながらも力の抜けた状態でどうにかなるものでもなく、微かにではあるが顔を上げて、細く声を零してくる。
「あっ…ん、や・・・」
 薄紅く染まった肌に触れて、接吻て、そのたびに零れる声に鳥肌が立つような興奮を覚える

 クラピカに逢って、こうして抱き合ってみるまで考えもしなかったことだった。
 今まで生きてきてSEXに餓えも快感も感じなかった。
 そんなものより、狙った獲物を仕留めた瞬間の快感や、たとえたいして興味のない相手でも闘っている時の興奮の方がずっと、自分にとっては強烈だった。
 なのに今、腕の中にある身体に喉が乾上がる様な餓えを感じる事がある。
 興味はあった。
 伝説の『緋の目』を持つクルタ族の生き残りで、十分に鑑賞に耐えうる姿で、復讐の為にハンターになりたいなんて、ただ金の為だけにハンターになりたい連中とは比べモノにならないほどドラマチックで、更には実際ハンターになれる実力があって、試験の最中だけでも見違える程の成長をした上まだ強くなる見込みがある。
 でも、闘いたい相手としては素材も実力もあの二人の方がずっと上。
 なのに、こうして肌を合わせているだけでゾクゾクしてくる。
「ヒ・・ソカ、もう、ゃ・・・・・・」
 焦れて、欲しがって、泣きながらねだってくる声を聞いているだけで眩暈がするような快感を感じる。
「欲しい・・・?」
 恥ずかしがってなかなか云わない台詞をいわせるのも大好き。
「ほし・・い・・・」
 縋りつくようにして抱きついている腕をはずして、服の上から昂ぶったモノに触れさせれば、限界なのか自分から手を滑らせて直に触れてくる。
 実際、先刻から潜らせた指で愛撫を続けているそこは激しく喘ぎながら次ぎに訪れるものを待ちかねていた。
「いいよ・・・自分で、おいで・・・」
 云いながら、体内から指を引抜き腰を支えてやれば、本当に押さえが効かなくなっているのか、躊躇いながらも自分から手の中のモノを入り口へとあてがい腰を落としてくる。
「っ…ん、ひぁ・・・」
 飲み込まれて行く感触に、脳が白く灼けていく。
 クラピカの中は、いつも熱くて軟らかく、それでいてきついほど絡みついてくる。
 SEXの最中はもちろん、今まで誰と戦っても、感じた事がないような快感。
「そんなに、欲しかった・・・?」
 聞けば、首肯きこそしなかったけれど、否定もしない。
「自分で、動ける?」
 促す声が、自分でも判るほど上擦っている。
「う・・・んっ・・・」
 返答とも吐息ともとれる声をあげて、クラピカがゆっくりと動き始める。

 自分トこうなるまで、その経歴から想像がつく通り色恋沙汰には無縁だった身体はすでに慣れた仕草で快楽を追いはじめている。
「ぁ・・・ぃ、い・・・」
 二人で、互いに思ってもみなかったほど優しい穏やかな時間を過ごして、まるで世間の恋人達のように肌を合わせて温もりと快感を分かち合って。
 けれど、腕の中の身体は復讐を忘れていない。
 そして、自分もそれに手を貸すだろう。
 その後、自分たちはどうなるのだろう?
 復讐の為だけに生きてきたクラピカは、その復習を終えたらどうするのだろうか。
 今、この瞬間の行為は、単に自分がその復讐の役に立つからこそ許容しているだけでないとは云えないか。
 クラピカが単純に自分を道具として見ているというにではなく、それ以上の存在であると考えるのは殺された同朋に対する罪悪感が重いのではないかと感じるのだ。
 別に、クラピカに恋人として扱われたいとかいうことではなく、復讐を終えても普通の生活すら出来なくなっていそうな気がして、それが不安だった。
「ヒソ・・・カ、も・・う・・・」
 その時にはどうしようか。
「あ・・・ぁ、い・・く」
 もう一度、復讐の相手を創ればいいだろうか。
 例えば、この身が裏切ったらどうだろう。
「っ・・・」
 仰け反って達した身体の、痙攣するような締め付けに堪えきれずに吐き出し意識が翔びそうな頭の片隅で考える。
 目の前で、恍惚と潤んだ瞳が美しい緋色に染まって自分を追ってきたら。
 きっと、今以上の快感だろう。
 そんな日が来るのはクラピカにとっては幸せなことではないだろうけれど。
 こんな風に、快感の余韻に浸りながら互いの温もりを感じているのはとても気持ちがいいけれど。
 ちょっと想像するくらいなら、許されるだろうから。


コレは桜のお誕生日のお祝いにもらったのです〜v
同人誌用にもらったんだけどのっけちゃうvえへ。
えりちゃんありがとう!

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