by 夢缶様




うーさぎうさぎ なにみてはねる?

おつきさまのうさぎU


とんとん。
乾いたノックの音が2回響き、続いて、
「師匠―ただいま帰りました」
 と凛々しい青年―楊ゼンの声。
「師叔、まずは玉鼎師匠に相談して、明日の朝四不象の捜索を開始しましょう」
 青年は、自分が腕に抱き抱えている子供に呟きました。太公望です。
 なんでまた楊ゼンが桃入りの籠を腕から下げながら、太公望を抱えているのかというと・・・。
再現スタート↓
 四不象がいなくなっていることに気づき、辺りを見回したものの発見できず、やはり一端玉鼎真人師匠の所へ、という楊ゼンの当初の提案通り、てこてこ帰り道を歩いている二人。
 てくてくてくてく。
 てっく てっく てっく てっく・・・・・。
「おいこら楊ゼン!!もっとゆっくり歩かぬか!!」
 これでもゆっくり歩いてるんですケド。っていうか・・・・・・。
 遅い。
 楊ゼンの長い足と、ちっちゃくなってしまった太公望とでは歩幅の長さが違いすぎです。いっくら楊ゼンが気を使ってゆっくり歩いても、いっくら太公望が急ぎ足でも、その差は歴然。
 このままの調子で歩いていては、玉鼎真人師匠の家に着くのは真夜中どころか、太陽さんがこんにちわしてからになってしまいます。
「・・・・・・仕方ないですね」
 少し考えて、楊ゼンは最初太公望に会った時のように太公望をひょい、と抱えました。
「こっこら何をする!!降〜ろ〜せ〜!!!」
「はいはい、でもこのままでは一晩中歩き続けることになりますよ、師叔」
 うぐぐぐぐ・・・とそれでもまだ暴れる太公望に、
「・・・桃食べますか?」
 楊ゼン、必殺の一言である。
 ↑再現終了。
 そうこうしているうちに、目の前のドアがばたん、と開き、中から黒い長髪でスラっと背が高く、かなり渋めな顔の、それでいてとても優しそうな、年上好みの女の子をキャーキャー言わせそうな、まさしく大人の男性といった人が出てきました。が、何故かその容姿に似つかわしいエプロンを腰に巻いて、完璧「休日お父さんスマイル」といった格好をしていました。ご丁寧に、手にはおたま付きで。
『楊ぜんか、お帰り』
 優しく微笑んで出迎えてくれる師匠に対し、楊ゼンも同じように微笑みを返しました。まさに親子、といった感じです。
『少し遅かっ・・・』
 ぴき、という効果音が入りそうなほど、瞬時に笑顔がそのまま固まりました。
「すいません、実は・・・・って師匠?どうしました?」
 様子がおかしい。なんだかびみょ――っに肩の辺りとかが震えているような・・・・。楊ゼンがもう一回声を掛けようとした瞬間っ!
『〜〜〜〜楊ゼンっ!!そんなに私が信用できなかったのか!?』
 はぁ?という顔を思わずしてしまった楊ゼン。
『いいなさいっ!!相手は誰だ?籍はいれているのか?美人なのか?イヤ、それはどうでもいいとして・・・ともかく私に一言も相談もせずに子供なんて子供なんて・・・』
 目の前で玉鼎真人師匠が暴走しているのを、半ばボーゼンと見下ろしていた楊ゼンでしたが、やっと自分が腕に抱えている、ワケあって子供姿になってしまった太公望の事を誤解していることに気づいて、なんとか弁解をしようとしました。
「ちっ違いますよ師匠!これは・・・」
『私はお前が幼い頃から、いつかお前に結婚を申し込む輩が現れたらまず私に紹介するようにと言っていたのに・・・・』
「結婚を申し込むのは僕の方からじゃ・・・・」
思わずつっこんでしまって、僕の子供じゃなくて太公望師叔なんですよ、というセリフは空しく掻き消されてしまいました。
『楊ゼンっ!!その相手は誰だっ!?まずは私の残仙剣を受けてそれから・・・・!!』 
 玉鼎はゆぅっくりと懐から残仙剣をとりだして構えた。長年の生活から、楊ゼンには玉鼎の気が本気と書いてマジだということがすぐに解りました。
「しっ師匠〜〜〜!!とにかく落ち着いてくださいっ!!師匠が本気になんかなったら誰も敵いませんよ!!」
 玉鼎真人は崑崙12仙の一人、相手が勤まるのは弟子の楊ゼン、その他の12仙、向こうの金鰲島に住む聞仲くらいでしょう。(もちろん元始天尊さまもはいるでしょうが、あまりいれたくないのでカット)。
「だぁぁ〜〜〜いい加減にせぬかっ!!わしだっ!!玉鼎!!」
 先程までの流れに着いてゆけず、黙りこくっいた太公望がついに口を開きました。
 が。
『楊ゼン!初対面の人に呼び捨てをするような育て方をしてるのか!?』 
 ダメだこりゃ、と楊ゼンと太公望は心の中で呟きました。
「師匠よく見てください!僕の子供がこんなんなるハズないでしょうっ!?」
 そういって思いっっきり!!玉鼎真人の目の前に太公望を突きつけます。
『そういえば・・・・楊ゼンの子供にしては顔が貧相すぎる・・・』
 殺気だっていた目つきが、だんだんと穏やかになっていきます。
「やっと解っていただけましたか」
『私としたことが・・・そうだよな、お前は私の自慢の弟子だ。そんな安易に子供なんて・・・』
 ほっと、安堵の息を漏らす玉鼎真人。どうやら危機は去ったようです。
 それはそーと、かんなり非道いことを言ってることに二人とも気づいていない様子。これも子は親に似ると言うことかなのか・・・・。
『じゃあ・・・この子は一体?』
「こーのダァホが!!!わーしーだっ!!太公望だっ!!」
 楊ゼンは、これからまた状況を説明しなければ・・・と、一人肩を落としました。



 おつきさまが沈んでいく先で。
「ただいま――っ☆妲己姉―様っ☆」
 と、甲高い可愛らしい女の子の声がしました。
 その子は、さっきの楊ゼンのように腕に何かを抱えています。もっとも、それは子供どころの大きさではなく、人間ではなさそうですけど。
「おっ帰りぃんv喜媚v」
 妙に艶めかしい声でお出迎えしたのは、これまた艶めかしいないすばでぃなお姉さん。
 齢1000年を越える女の狐の妖怪、みなさまご存じの、妲己です。
「あらんv喜媚何を拾ってきたのんv?」
「えへへー白カバさんだりっ☆」
 白カバ、と呼ばれた可愛そうなこの物体はもちろん白カバではなく――もちろんそれに大分近い生物でほとんどみんな空飛ぶカバだと思っているだろうけど――太公望の乗り物、霊獣の四不象です。
 落下したときの衝撃で、気を失ったままのようです。
「へー、喜媚姉さまそれが今日の晩ご飯?」
 綺麗な顔をして怖いことを言うのは妲己三姉妹の一番下の、王貴人。
「いいわねんv丁度お腹もすいてきたし・・・・・v」
 そんな今自分に迫りつつある危機を察してか、四不象が目を覚ましました。
「たっ食べないで欲しいッス!!ボクより御主人の方がおいしいッスよ〜〜〜!!」
「あ☆気が付いたりか?☆」
 何故自分がこんな美人姉妹の所にいるのか今一つ理解できない四不象はただただウロウロするばかり・・・。
「あ、あれ?ボクどうしてこんな所にいるッスか?」
「白カバさんは道の真ん中で気を失って倒れてたり☆そのままじゃ風邪ひいちゃうから喜媚がここまでつれてきたりよ☆」
「そ、そうだったんスか・・・どうもありがとうございます」
 それは少し間違えれば誘拐になるというのに、お人(?)好しの四不象は素直にお礼を言っています。
「それはそうと御主・・・・」
「ね☆妲己姉様この子飼ってもイイ?☆」
「あら、晩ご飯にするんじゃなかったの?」
 誰もそんなこと言ってないのに・・・どうやら彼女はお腹が空いているとみた。
「ちょ、ちょっと待ってく・・・・」
「名前は何がいいり?☆ポチ?☆カバ吉」
「ボ、ボクには四不象っていう名前があるッス〜〜!!」
「じゃあスープーちゃんだりねっ☆」
 ぎゅうううう〜〜〜〜!!と力いっぱい抱きしめられて、四不象は身動きがとれなくなってしまいました。可愛い女の子が相手なもんだから、ちょっちフクザツな心境。が、いくら可愛い女の子でも、自分には御主人の下で働くというお仕事があります。ここで負けたら、男がすたる・・・・のカナ?
「ボクは御主人の所へ帰らなくちゃいけないんスよ!えぇと・・・喜媚さん?ボクはペットになるわけにはいかないッス。それにカバじゃないし・・・とにかくごめんなさいッス!!」
 と、やっとの思いで腕を振り払います。すると・・・・。
 じわっ。
 喜媚の目が、涙でどんどんどんどん潤んでいきます。
「スープーちゃん・・・喜媚のことキライだり・・・?☆」
 う゛!!!
(女の子泣かしちゃったッスか!?)
 ぐさぐさと、良心に涙が突き刺さるぅ〜〜。
「イ・・イヤそういうことじゃ・・・ボクは太公望という人の霊獣だから・・・」
 うりゅりゅりゅりゅ〜〜〜。
 今にも涙が溢れんばかりの喜媚の目が迫ってきます。
 ずきずきと、良心が痛むぅ〜〜〜。
 別に四不象が悪いわけではないのだけれど・・・やっぱ何か自分が悪いことをしているようで・・・。お人好しなのが災いしてか、迷っている様子。
(でも、ここはやっぱり御主人を――――!!)
 と、遂に四不象が覚悟を決めた時!
 と、事の成り行きを見ていた妲己の目つきが変わり、廻りを纏っていた羽衣から、ふわわぁぁ〜んと、何か甘い匂いを出しました。
「うぅ〜〜ん・・、じゃ、じゃあ・・・ココにいることはできないケド、今日一日くらいなら・・・」
 急に、四不象の態度が変わりました。それどころか。
(そうッスね。御主人が今ドコにいるかよく解らないし、どうせあの御主人のことだから大丈夫だろうし、やっぱ可愛い女の子がいっぱいいる方が・・・)
 と、あらぬ事を考え出す始末。さっきの四不象はどこへ?
 そう、これが妲己の得意技、紂王さまをも誑(たぶら)かした、誘惑―テンプテーションです。


 んで、こちらはというと・・・。
「と、いうワケなんですよ・・・」
『やれやれ、太公望にも困ったものだ・・・』
 ようやく楊ゼンが事の成り行きを説明し終わったようです。テーブルには玉サン手作りの料理が食べ終えた跡が残っていました。もっとも太公望だけはまだばくばくと食べているけれど、とりあえずは二人ともほっと一息、お茶をすすっています。お茶の葉は玉鼎師匠が大好きな「極上のかすみ」です。
「全く・・・<願いごとを3つ叶える>だなんて・・・」
『そうだな・・・・。おぉ!そうだ!』
「何か名案でも?師匠」
『家の冷蔵庫がもうそろそろ寿命だしな・・・、それから太乙から貰った掃除機もなんだか壊れかけてきたし・・・』
 だあぁっ。
「・・・なんか僕前回からコケっ放しのような・・・ってそれはいいとして!師匠〜〜主婦じゃないんですから・・・」
『しかしそれが一番てっとり早いだろう?』
 それはそうなんですけどね。もうちょっと他の願い事はないのですか?師匠。
「でも、師叔の話によると・・・」
「願いを叶えるのはわしではなく四不象だ」
 ちょこん、とちっちゃな頭をやっとこさテーブルにだして、太公望がいいます。かろうじて、うさぎ耳のような帽子が見える程度です。やっと食べ終えた太公望の口の廻りに、玉サン印(?)の特製野菜ソースがついているのを楊ゼンは黙って拭いてあげます。
 あぁ、まるでお父さんの様。完全に子供扱いされている太公望に、玉鼎は構わず質問をしました。
『なんだ?お前が叶えるのではないのか?』
「まぁ多分大丈夫であろう。とにかく・・・四不象を見つけない・・・こと・・・には・・・のぅ・・・」
「・・・・・・師叔・・・?」
 だーんだんと瞼が閉じかかっています。表情もどことなくとろとろと・・・。まぁ仕方のないこと。普通良い子のお子さまはもう寝る時間です。
「仕方ありませんね、今日はもうお休み下さい、太公望師叔」
 自分より大分小さい子供に、敬称の「師叔」をつけ敬語を使っている自分が、なんか可笑しいな、と楊ゼンは思いながらも、ほとんど半分夢の中の太公望を抱えて――太公望本人はイヤがりましたが――結局そのまま腕の中で眠ってしまいました。
「もう使っていない部屋の寝室に連れて行こうと思うのですが・・・」
 いいですか、と一応了承をとろうと玉鼎真人の方を向くと、玉鼎はなんだか穏やかな暖かい表情をしています。どことなく、子供を見るような目で。
「・・・・どうしました?」
『いや・・・なんだか昔の自分を見ているようでな』
 昔、まだ幼い楊ゼンを、腕に抱き抱えて連れて行っていた自分と重なる。
『昔はちっちゃかったのにな・・・大きくなったな』
 玉鼎真人、親バカ度200%(当社比)。
(どうやら今日はこれからお酒でも肴に僕の子供の頃の話でもされて夜が明けそうだ・・・・)
 腕の中で心地よさそうに寝息をたてている太公望を少し羨ましそうに見つめ、楊ゼンは完徹の覚悟を決めました。


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作者様のお言葉 / ですます言葉最高潮(笑)の夢缶です。ぢつはこれで封神小説投稿第8作目なのです!!だというのにこの進歩のなさ・・・泣けてきます(涙)どうして私はこんなんなんでしょう(T_T)とにかく「はよー終わらせなさい!」というツッコミが聞こえてきます。はい、そうなんです。でも3話で終わるかな(汗)少なくとも4話以上続くと方野さまに怒られそうなのでがんばって終わらせます!!こんなんでも読んでくれた方、よろしければ感想下さい。本人めっちゃ喜びます。えぇそりゃもうホホをバラ色に染めて両手足がもげるほどの喜びのダンスを踊るでしょう(解る人には解る・笑)。それと方野さま、今回は本当に遅くなってしまって申し訳在りません。それともうすぐ・・これがアップされる頃にはもうかもしれませんが、HP2周年おめでとうございます!!これからも素敵なHP作ってくださいv及ばずながら協力(妨害じゃないのか?)させてもらいます!!

方野の感謝の言葉 / 2周年……本人すら忘れていたものを祝っていただけるなんて夢のようです。ありがとうございます〜。玉鼎師匠がスペシャルステキでしたv 親ばかな師匠と苦笑しながらそれに付き合ってあげる感じの楊ゼンさんの仲の良さが羨ましいです。4話でも5話でもぜひ続けてください!