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happiness ――――― 私 悟能の手 好きだな 貴方の為なら何でもできた 何にでもなれた... 歪んだ愛。 それでも僕は僕の片割れである貴方を愛することで、僕自身を愛せた。 不確かな未来。 それでも、僕が生きていく事が、あなたとともに生きていく事だった。 ――――― 誰か 僕を殺して 雨の音はキライ。 耳鳴りみたいで、気が狂いそう。 ――――― さよなら 悟能 血まみれの僕の手。 今はもう誰も抱けない。 「...だったら、俺に抱かれてろって」 耳元で囁かれて、覚醒する。 「...悟浄?」 暖かい温もりに手が包まれている。 耳鳴りのような感じられた雨音は、よく聞けば微かなものだった。 「どうして?」 「ん?なんだ?寝ぼけてんのか?」 「.....」 「寝る前に雨が降ってきたから、部屋変えたんだろーが」 「あぁ、そうでした。」 雨は三蔵もキライだから。 いつもは、三蔵と八戒が同室で休むハズだったのが、急に振り出した雨に、悟空が八戒と部屋を 交代して欲しい、と言い出したのだ。 雨が降ると三蔵が思い出すから。 三蔵の記憶にある深い傷。 でも、素直に、三蔵に部屋を交代する理由を言えなくて、考えた挙げ句、骨折して動けない悟空と、 胸の傷口がまだ痛む悟浄が同室では何かと不都合かも、などと苦しい言い訳をして、いつも部屋割りを 交代したのだった。 悟空の提案には、意外とあっさり悟浄も賛成した。 三蔵だけではない。 八戒もまた記憶に深い傷があるから。 「あれ?消えてねーな、悟空が書いたヤツ」 八戒の手を握っていた悟浄が、手のひらに描かれた悟空の悪戯書きを見つけた。 「え、ええ。お風呂でよく洗ったんですけど、やっぱ油性ですから。なかなか落ちませんでした。」 「ふ〜ん」 悟空の悪戯書き。 八戒の生命線が短いからと、油性マジックで書き足した。 「消えなくていいんでないの?」 「...そーですね」 しとしと降る雨音。 でも次第に弱くなってきている。 「...いつの間に、ベットをくっつけたんですか?」 気が付けば、二つのベットはぴったりとくっついていた。 「一つのベットじゃ寝づらいだろーが。こーしてた方がいーだろ??」 「...ずっと手を握ってくれていたんですか?」 「あぁ。」 暗闇に悟浄の温もりだけが伝わってくる。 「もう、大丈夫だと思ったんだけどな。」 「えっ...?」 「今日のことで吹っ切れたみてぇだったから、もう心配ねぇって思ったけど...やっぱ念のため。」 「悟浄...」 「っていうかオレがそばに居たかったんよ」 暗闇で悟浄の顔がよく見えない。 どんな顔をして言っているのだろうか。 いつになく悟浄の声が真剣だった。 「悟浄」 名を呼んでみる。 雨音がほとんど聞こえなくなった。 夜の静寂に深く埋もれていきそうだ。 微かな吐息が頬にかかる。 重ね合う口唇。 この愛も...歪んでいる。 けれど、この愛も自分には必要なもので。 互いに心を許し合える、この世で唯一無二の愛。 ――――― 花喃 できればもう少しだけ 自分の為に生きてみたいんだ あともう少しだけ... 雨が...止んだ
FIN |