生きてく強さ






生きてく強さを重ね合わせ 愛に生きる
努力が実れば そうたやすく もう迷わない





「八戒!!八戒!!」
「どうしました?悟空?」
「三蔵がいなくなった!!」
「あぁ、やっぱり行きましたか...」
「えぇっ!?なんで!!知ってたの!?」

飛び込んできた悟空とは対象的に、八戒は、特に驚いた様子もなく、食事の後片付けをしていた。宿屋の調理場を借りて作った食事を、ようやく悟空に食べさせ終わったところだった。悟空は三蔵が心配なのか、いつもなら八戒の食事をキレイにたいらげるのに、今夜はそこそこに食べると、すぐに三蔵の部屋に戻っていったばかりだ。その悟空は、部屋で眠っているはずの三蔵がいなくなっていたから、大慌てて八戒のところに引き返してきたのに、八戒は全然驚かない。まるで知っていたかのようだった。


「知ってたの!?三蔵の怪我、まだ良くなってないのに!なんで止めなかったんだよ!」
「一応釘さしておいたんですけどね。やっぱりダメでしたか。」
「釘さすって...三蔵、目が覚めていたのか!?」
「えぇ」
「なんで!?なんでオレに教えてくれなかったんだよぉ!」

――――― あんなに心配してたのに!!

「そうですね。でもこれは、三蔵の問題ですから。」
「八戒...」

「あーぁ、うるせーんだよ、チビ猿がよぉ」
「悟浄!!」
「あん?」

寝ぼけ眼で悟浄が、のそりと部屋に入ってきた。

「なんで三蔵、止めなかったんだよ!何のための監視役だよ!!」
「あーそりゃ、わるかったねぇ。なんせ部屋の窓から出てったみてーだからよぉ。気付かなかったワ」
「ごじょー」

悟空の肩がカタカタ震えている。

「なんで...なんで二人とも...オレだけ...仲間はずれにしてぇ!!」

悟空が横っ飛びに悟浄にケリを入れようとするが、悟浄は難なくスルリとかわす。

「悟空」

八戒が悟空の肩をポンと叩く。

「さっきも言いましたよね。自分が誇れるだけの強さで、それに応えると。」
「八戒?」
「三蔵も同じですよ。三蔵は残された『誰か』の痛みが分かるから。
自分の為に生きて、自分の為だけに死ぬ。これが三蔵の応え方ですよ、多分。」

ふと、窓から微かな光が射し込んできたのに、三人は気が付いた。
いつの間にか夜が明けようとしていたのだ。

「あぁ〜、結局のとこ、ろく寝れなかったじゃねかよ...」
「仕方ありませんね。今日は特別、いろんな事がありましたから。」

もう一度、八戒は悟空の肩を叩く。

「そろそろ、三蔵を迎えに行きましょうか?終わっている頃でしょうから。」

ぱぁっと悟空の顔が明るくなる。

「うん!じゃぁ、オレ着替えてくる!!」

部屋から元気よく出て行く悟空の後ろ姿を見送りながら、

「さぁてと、ぼくらも出かける準備をしないと」
「もう?なんか、かったるーいんですけど。ここで待たない?サンゾーちゃんのこと」

悟空のあとを追い駆けるように、部屋から出ようとした八戒の腕を、軽く悟浄が掴んできた。

「まだ貧血気味なのよ」
「...」
「観音様のキスは結構上手かったゼ」
「そうですか」
「って、おまえ何とも思ってないの?オレがチューされたのに?」
「う〜ん、最初は驚きましたが、後から理由を聞けば、なるほどと思いましたからね。血の気は僕より悟浄の方が多そうですし。」
「あっそ。」
「それに...」
「ん?」
「貧血気味のわりには、結構しっかり、やることやっていたみたいだし。」
「へっ?」
「悟空が聞いたら怒りそうだから言いませんでしたけど、監視役なんて言いながら、結局、三蔵の部屋の前に居なかったでしょ?」
「.....」
「住み込みで働いているんでしたね。しっかりどこの部屋か聞いてましたからね。」
「!!」
「かったるいのは、貧血気味だけじゃないでしょ?」

何も反論できなくなった悟浄に、八戒は椅子から立ちあがるように促すと、

「さぁて、それだけ元気なら、荷物をジープに積んでくださいね。」
「おめぇ...気付いていたワケ?」

ようやく口がきけた悟浄に、八戒はくすりと笑う。

「悟浄の行動パターンはカンタンですから。」
「あっそ。オレはどっかのチビ猿より単純だってぇの?」

八戒は黙って、笑っている。
その八戒の腰を、悟浄は軽く抱きかかえると、

「妬かないワケ?」

そう聞いてきた。

「そーですね。いつものことなんで、すっかり慣れちゃいました。」
「あっそ...」
「それに」
「ん?」
「帰ってくるから、あまり心配してないです。」

八戒の緑の瞳が細くなる。
優しい眼差しに、悟浄もつい口元が緩む。
そのまま、八戒の唇に近付こうとした、その時。

「ねぇねぇ!!早く、三蔵迎えに行こうよ!!」

悟空が勢いよく戻ってきた。
先程とはうってかわって、八戒は驚いて思わず悟浄を突き飛ばすように離れた。

「???どーしたの?八戒?」
「い、いえ、何でも」
「???顔、赤いよ??」

良く見れば、突き飛ばされた悟浄の頬も心なしか赤く見える。

「何してたの?二人して???」

悟空がケロッと聞いてくるので、八戒は

「あー、何でもありませんよ!ぼくらも着替えてきますからね。ジープに乗って待っててくださいね。」
「うん!!」

どうにか悟空を誤魔化した。

「って、なんでオレを突き飛ばすワケ?」

ムッとしてる悟浄。
せっかくいいカンジだったのに...。

「三蔵はとっくに気付いているからいいんですけど、悟空はまだまだ全然なんで。」
「ガキだねぇ。三蔵様もご苦労なこった。」

八戒はくすくす笑うと、

「それでも、三蔵の還る場所は、悟空のところですから。」
「...そっか」
「ええ、さぁ、ほんとに僕らも着替えてこないと。悟空がまた騒ぎ出しますから。」
「へいへーい」

ようやく二人は部屋を出て、それぞれの旅の支度を始めた。
二人がジープに来た時には、すでに東の空には太陽が昇り始めていた。

「三蔵、大丈夫だよね?」

ジープに乗り込んできた八戒と悟浄に、悟空が小さな声で聞いてくる。
三蔵の元気な姿を見ないと、やはり不安のようだった。

「...三蔵には還る場所がありますから」

にこりと笑う八戒に、悟空も大きく肯く。

走り出すジープ。
西へ。
三蔵を迎えたら、西へと向かおう。
旅はまだこれからだから。


I can blieve human & Life そう いつまでも いつまでも
悲しみ響く ”あの日”には もう戻らない




FIN




☆ ―――――――――― ☆


第13話「Faith in mind」と第14話「Good night」の間の話...のつもりです。(^^;
本編では皆がカッコ良すぎて、惚れ込みました。
惚れ込みついでこんな話を書いてみたんですが、やっぱ無理があった...反省。
さりげに、悟浄が八戒に手を出していますが、悟空がいたんじゃこの程度が限界かな?


date:2001.03.19


☆ ―――――――――― ☆

戻る