「不破くん! あのさ...」
「なんだ? 鈴木?」
「あの...何でもない...」
「???」

練習の合間の休憩時間。自分から話しかけておいて、何でもないとは失礼である。新太郎は自分でもそう思いながら、けれどもやはり不破に聞くことができなかった。というよりは聞かなくても分かることなので、会話を一方的に始めて、一方的に終了させてしまったのだ。盛大に溜息を吐く新太郎。この状況に慣れてきたとはいえ、やはり、気になってしまう。不破はそんな新太郎の様子を一瞥すると、すぐにウォーミングアップを開始した。新太郎も軽く身体を動かし始める。

(まいったなぁ...けど、ものすごく気になっちゃうよ...)

何がそんなに気になるのか?気にするなって言う方がムリかもしれない。新太郎がちらりと横目で不破のことを見ると、今日はかなり身体のキレが悪いように見える。時折、額に脂汗のようなものをうっすらと浮かべているようだ。不破の不調の原因は、言わずと知れたことである。そう、これだけでも、十分、その原因が分かってしまうのに、さらに、新太郎は見てしまったのだ。服の下、不破の素肌に無数につけられた痕。あれは、そう...キスマーク。たまたま不破の着替えに遭遇して見てしまった新太郎は、動揺が隠しきれない。

(大会中は控えろ!って、田中や中野に言われているはずなのに、シゲさんって...)

今度はちらりとシゲのことを見る新太郎。シゲは、他のFW連中と何やら打ち合わせ中だ。そのシゲの首筋に、なにか赤い糸のようなものが見え隠れしている。髪の毛で上手く隠しているが、あれは多分、ひっかきキズだ。ということは...新太郎はまたしても考え込んでしまう。

(不破くんは真面目だから、多分、田中や中野に言われたこと守っているはずで...ということは、つまり、これって抵抗した痕?)

咄嗟に、新太郎の頭の中にとんでもない光景が浮かんできた。

厭がる不破を押さえ込むシゲ。抵抗をねじ伏せて不破の素肌に、シゲが口唇を這わせていく。不破の口唇から熱い吐息が漏れてくると、それに触発されるようにシゲの指が動き始めて、苦し紛れに不破の指がシゲの首筋を引っ掻いて...

「...って、なに、一人で突っ走ってんだ!! 自分!!」

はっとする新太郎。気がつくと、サッカー部員全員、新太郎を注目している。それもそのはず、突然、大声で、ワケもわからないことを叫び出せば、何事かと皆から注目を浴びるのは必須だ。

「鈴木?」
「新太郎、どないしたんや?」

見れば、シゲと不破が仲良く寄り添いながら、こちらを見ている。
それもゴールポストに寄りかかった不破の両肩に、シゲが両手を添えながら。

(白昼堂々、サッカー部員のいる前で、なにやってんだぁ〜!! この二人はぁ!!)

またしても叫びだしそうになった新太郎。だが、次の瞬間、何やら気味の悪い感覚に襲われる。

「あっ...」

咄嗟に新太郎は、両手で鼻と口を押さえると、猛然と校舎裏へとダッシュした。全くもって、新太郎に何が起きたのか、誰一人、理解できない。ひたすら、新太郎が走っていった方向だけを、皆は呆然と見つめていた。

すると、部員の一人が、新太郎が立っていた位置に近づいて、「おい?これ何だ?」と不思議そうな声をだした。何か見つけたようだ。田中も近づいて、地面に落ちたものを首を傾げながら、しばらく観察していたが、それが何であるか分かると、にかっと笑った。

「田中、何やねん?」

シゲは、今度は不破の額に手を当てながら、田中に声をかけてきた。すると、田中は、シゲと不破を交互に見ながら、にかっとまた笑った。田中の態度に、シゲと不破が怪訝そうな顔をすると、田中はますます、けらけら笑い出した。

「新太郎、悩み多き青春!...ってトコかなぁ?」
「???」

新太郎の奇怪な行動の次は、田中の言動が理解できない。サッカー部員は皆一同、首を傾げて考えこんでいると、練習再開のホイッスルが鳴った。部員達が、皆グランドに散らばっていく。

「おい、田中?」
「あ? あぁ、新太郎のことなら大事ない。オレが後で面倒みといてやるから。シゲは不破の面倒みてやれや。」

気を利かせたのか、田中が軽く片目を瞑ってみせる。シゲも口の片隅をあげて、「ほな、お言葉に甘えて」と言って、不破を連れて部室へと引き上げていった。



校舎裏の水飲み場。新太郎は思いっきり勢い良く、顔を洗った。
突然の出血。つまり『鼻血』は、どうにか止まってくれたので、新太郎はひとまずほっとする。

(まったく、もう...なんだってこんな...)

新太郎は顔をぶるぶると振って、水滴を四方八方に飛ばしまくる。ようやく、さっぱりすると、新太郎は、盛大に溜息を一つ吐いた。脱力しながらもグランドへ戻ろうとして、新太郎がとぼとぼ歩いていくと、すでに練習が再開しているのが見えた。

(う〜ん...どうしよう...なんだか入りにくいなぁ...)

仕方ない。とりあえず部室に行って、タオルでも取ってきて...と考えながら、新太郎が部室の中へ入りこむと、

「えっ?」

視界に飛び込んできた光景は...上半身、裸になっている不破と、それを抱きしめているシゲの後ろ姿。つまり、これって、真っ最中に遭遇してしまったのでしょうか???? 新太郎は震えながらシゲと不破と指さして、口をぱくぱく動かしている。

「新太郎?」

新太郎が入ってきたことに、シゲが気がついて振り返った。
不破もシゲの肩越しに顔を覗かせて、目をぱちくりしていると、

「おい! 不破!! どうだ? 具合は??」

中野が部室の中に入ってきた。そして、新太郎がいることに気がつくと、

「おーい!! 田中!! 新太郎、此処にいたぞ!!」

と、大声で田中を呼びつけた。間もなく、田中が部室の中へと走り込んできた。

「おぉ! 此処にいたのか! 新太郎!! 探したぞ!!」

ぺしっと田中が新太郎の背中を叩く。その時、突然、新太郎が両手で鼻と口を押さえ込んだ。

「ん?」

皆一同に、新太郎の顔を覗き込む。すると、新太郎のTシャツの胸元が真っ赤になっているのに気がついた。

「おい? 鼻血か?」

中野がすぐに手元にあったテシュを箱ごと、新太郎に渡すと、新太郎は物凄い勢いでテシュを引き出して、鼻にあてがう。
この素早い行動に、田中も呆れて声が出ない。

「ホンマ、大丈夫かいな? どこぞにぶつけてもしたかいな?」

新太郎の身を案じたのか、シゲが不破のそばから離れて新太郎に近づいてきた。新太郎の目の中に、不破の全身が飛び込んできた。

「ふぁれっ?(あれっ?)」

鼻を押さえてまともな声が出ない新太郎。思わず、間抜けな声が出てしまった。
何故ならば、不破の左肩は、ぐるぐる巻きにテーピングされていたのだから、これには新太郎も驚いた。

「ふぁふん、ふぉーしぃたふぉ?(不破くん、どーしたの?)」

新太郎が鼻血で真っ赤に染まった指で、不破を指さした。不破は左肩だけではない、額にも大きな絆創膏を貼っていた。

「なに、しゃべっとんや? 新太郎は?」

シゲが腰に手を当てて、新太郎の顔を覗き込む。新太郎は顔の半分以上をテシュで覆い隠して、目だけきょろきょろさせていた。中野が呆れながら、新太郎に説明した。

「不破がシゲのシュートをセーブしようとして、ゴールポストに激突したんだ。」
「ふぇっ? ふぉーだったふぉ?(へっ? そーだったの?)」

「そーそー、それを何を勘違いしたのか、新太郎ってば、出血大サービスだな!!」
「ふぁってぇ!! ふぁふんがぁ...( だってぇ! 不破くんが...)」

「「えっ?」」

新太郎が不破を指さすので、田中と中野も不破へ振り向いた。
不破は「?」顔で、三人の視線を受け止めている。すると...

どばっ!

「うわっ! 新太郎!! また出すなよ!!」
「おまえ、そんなに出血して...貧血になるぞ?」

「ふぁっふぇぇー!! ふぃんふぁ、ふぃふふぁふぁふぃふぉぉ!! ( だってぇー!! みんな、気付かないのぉ!!)」

「今更、何を驚いているのだ? 新太郎?」
「そうそう、シゲだってなぁ...我慢するのは身体に良くないことだから。」

「しかし、こうも正直に、そっこーで行動に移されるとこちらとしても、目のやり場に...」
「そうか? オレ、慣れたから、そーでもないぞ。」

「ふぇぇー!? ふぉんふぁぁー!!( えっー!? そんなぁー!! )」

新太郎が不破をまた指さす。新太郎の言いたいことはこうだ。部活が始まる前にみた、不破の素肌につけられた痕が、今見るとその数が増えている。しかも、生々しく赤みを帯びて、たった今、つけられたことがあからさまに分かってしまうのだ。つまり...不破の手当と称して、シゲがこの部室の中で不破に何をしていたのか、容易に分かるわけで...

その事実を、田中と中野も認識しながら、特に見咎めないわけで...

どばっ!

またしても出血する新太郎。とうとう、ぐったりと長イスに寝転んでしまった。

「すっげぇ、なぁ...さすがのオレも、これは真似できないな...」
「あぁ、この芸当は、誰にも真似できんだろう...」

新太郎の行動に感心する田中と中野。その背後から、シゲがぽつりと呟く。

「オレから見れば、新太郎の言葉が理解できるおまえらもすごいと思えるんやけど...」

「そりゃ、オレ達、幼稚園、年少組からの付き合いだから!」
「あっそ...」

得意げに笑ってみせる田中。シゲが頭をがりがり掻いている後ろで、不破がようやくTシャツを身に着けた。
不破の露わになった素肌が隠れて、新太郎が少しほっとしていると...、

「おい、シゲ!」
「ん? 何や?」
「今はともかく...せめて、大会中は控えろと、言ったハズだぞ?」
「へっ? あぁ、それやったら、オレが近づかなければって話やろ?」
「そうだが...まさか...」

中野がメガネをくいっとあげて、不破へと顔を向けると、不破が片手で口元を押さえて少し俯いた。
やや頬を赤らめているその仕草が、妙に艶っぽい。

シゲが、にかっと笑った。

「オレからやなくて、不破からならええんやろ?」

「「「えっ?」」」

意味ありげに笑うシゲ。もしかして、それは...さすがに、これには三人同時に気がついた。
つまり、シゲからではなく誘ったのは不破からだ、ということだ。

どばっ!

「おわっ!? 新太郎! 大丈夫か!?」
「あーぁ、こりゃ、完璧、貧血起こしてるよ。」

出血多量で、とうとう目を回した新太郎。起きあがるところか、話す気力もないらしい。

「中野くん! いる!?」

部室のドアを開けて勢い良く、香織が入ってきた。

「おお、いるぞ。」
「頼まれたもの、買って来たわよ!! はい!」

香織は、中野が座っているテーブルの前に、がさがさとビニール袋を置くと、中から、テーピングやら消毒液やら、クーリングに使うスプレーやら、細々としたものを並べていった。手にした紙切れを見ながら、香織が一人で頷く。

「これで、頼まれものは全部、ね!」
「ご苦労さん。ウチはマネージャーがいないから、香織が手伝ってくれて助かるよ。」
「どういたしまして! はい、これ、領収書とお釣りね。それから...不破くん、大丈夫?」

香織が不破のことを見ると、不破は、香織が買ってきたクーリングのスプレーを早速使って、脇腹などに当てている。

「やっぱ、痛い?」
「あぁ、そうだな。一時期よりは痛みが引けたが、鈍い痛みがまだ残っている。」

「あまり、ひどかったら、医者に行った方がいいな。まだまだ、大会は長いからな。」
「あぁ。そうする。」

スプレーの煙でもうもうとした空気の中、不破の素肌の一部が見え隠れている。
それをじっと見ていた香織が、急ににっこりと笑った。

「これは、私から! シゲちゃんって気がつくようで、結構、気がつかないこともあるから、ね!」
「???」

香織から、不破に差し出された小さな紙袋。不破が不思議そうな表情でそれを受け取る。がさがさと中身を出してそれをじっと見ると、不破が思いっきり首を傾げた。不破の手に握られた小さな二つの箱を、シゲや中野達も覗き込む。

パッケージに書かれた説明を読んで、皆が目をぱちくりさせる。一つは「頭痛、○理通、諸症状の痛みに...総合痛止め顆粒薬」と書かれていた。これは何となくわかるが、もう一つは...「○には塗って直す×××」。この「×××」はクスリの商標みたいなものだから、特に気にしなかったが、皆の目を引いたのは「○には...」の部分。

なんで、不破にこんな塗りクスリを...?

「ウチのおばあちゃんが使ってるのよね、年寄りって、よく、こういったクスリ使うんだぁ。」

「「「「「?????」」」」」

「切れ○には、このクスリが一番効くんだって! 不破くん、今日は辛そうだから...」
「???」
「あれっ? 違うの?? 場合によっては、そーいう時キレちゃうから、終わった後で、切れ○用のクスリ塗っとくと良いんだって、TVで聞いたことあるわよ!!」

「「「「「なにっ!?」」」」」

「あれ? それとも、もう使ってた?」

香織は、恥ずかしい素振りなど全く見せずに、けらけら笑いだした。つまり、香織は、不破とシゲの関係に気付いているらしい。そして、今日の不破が辛そうに見えるので、気を利かせて、クスリを買ってきてくれたらしい。

呆気にとられる五人を前にして、さらに香織は喋り続ける。

「ウチの美術部でも、シゲちゃんと不破くんの事、気がついてるコ、結構いるのよね。なんてたって、不破くんが転校してくる前まで、シゲちゃんって色んなコと広く浅く付き合ってたじゃない? それが、サッカー部に入って『助っ人家業』止めたうえに、ぴったりとそーいう付き合いも止めちゃえば、誰だって、シゲちゃん、不破くんと怪しい!って思うわよ!!」

「...香織、おまえ、へーきなのか?」

ようやく中野が口を開いた。香織はきょとんして中野を見るが、すぐににっこりと笑い返した。

「わたし的には、そーねぇ...ビジュアル的に良ければOKってトコかな♪」
「ビジュアル的...」
「そーそー!! シゲちゃんと不破くんって結構お似合いよ!!」

屈託のない香織の笑い声に気圧されて、誰も声が出せない。

「...そりゃ、どーも...」

シゲもようやくそれだけ言うと、また黙り込んでしまった。
香織の発言は、部室の空気を凍り付かせるのに十分だったが、香織は全くそれに気がついていない。

「じゃあ、わたし、美術部に戻るね、またね!!」

香織は、ひらひらと手を振ると、元気良く部室から出ていった。
後に残った五人は、香織の走り去る足音が聞こえなくなると、揃ってがっくりと首を項垂れた。

今時のコってヤツは...恐るべし...


「おい、鈴木? もう、大丈夫なのか?」

香織の言動に、先程までの目眩は、どこかへ吹き飛んでしまったらしい。いつの間にか、起きあがっている新太郎の顔を、不破が覗き込んだ。新太郎は相変わらず、テシュを鼻に口にあてがっているが、一時期よりは出血が止まったようだ。だが、こくこく頷くだけで、まだ話すだけの元気が出ない。

「新太郎と不破は、もう少し休んでろ。」

中野が机の上に広げられた薬を、薬箱に詰め込みながらそう言った。

「夏の大会は、始まったばかりだ。まだ、この先、長いのだから、今のうちにしっかり休んでおけ。」

「ふぁひはふぉう...(ありがとう...)」

新太郎の喋っている言葉は聞き難いが、長年の付き合いの田中や中野には理解できている。中野は新太郎のおでこをぺしっと叩くと、「あんまり悩むなよ。」と笑った。そして、くるりと不破に向き返ると、中野は意地悪そうに、にやりと笑った。

「不破も2m、だな?」
「???」

「そーだな、シゲだけじゃ駄目みたいだから、不破からもシゲに近づいちゃ駄目!」

田中もへらりと笑いながら言う。不破が少しむっとした表情をしたが、中野は気にしないでさらに喋り出す。

「とりあえず...香織の『ご好意』とやらを使った方が良いだろうな?」
「ん??」

不破の持っているものを、中野は指さして、

「痛み止めは飲んだ方が良いだろうな、けど、その塗り薬は...一人で塗れるのか?」

「!?」

中野に指摘されて、不破が目を見開く。不破だけではない、シゲや新太郎も。
だが、田中は一人、ぎゃははは...と笑いながら、中野の背中をばしばし叩く。

「っんなこと、決まってるだろ!! シゲがやってあげれば良いのだ!!」

「はぁ!?」

「なるほど。」

シゲがあんぐりと口を開けて田中を凝視すると、その横で中野がぽんと手を叩く。

「では、オレ達は出ていった方が良いな。」
「そーいうこと! じゃあな、シゲ! ちゃんと『手当』してやれよ!!」

中野と田中が、部室を出ていこうとするので、新太郎が立ち上がった。

「ふぉれふぁ、ふぉーふればぁふぃーんふぁよぉ!? (オレは、どーすればいーんだよ!?)」

「新太郎は、鼻血が止まるまで休んでていいゾ。」
「そーそー、休んでろって! けど、此処にいたら、かえって鼻血止まんなかったりしてぇ!」

げらげら笑う田中。中野もくすくす笑っている。

「じゃあ、な。」

結局、笑いながら出ていってしまう二人。新太郎は、シゲと不破と一緒に、部室に取り残されてしまった。

「ほな、『手当』しよか?」

シゲの声に、ぎくりと新太郎が振り返る。

「いい。こんなもの使わない。」
「けど、せっかくやから使こうてみたらどうや? 今朝、ホンマ、ひどそうやったし...」
「いい! 痛み止めは飲むが、こっちは必要ない!!」
「せやけど、やっぱ痛いやろ? かなり、ムリさせたから...」
「おまえがムリさせなければ...済むことだ!」
「けど、こればっかはなぁ...モノは試しに使こうてみれば...」

そう言って、シゲが不破の腕を引っ張った。不破は驚いて、その腕を振り解こうとするが、力はシゲの方が強いらしい。あっさりとシゲの腕の中に引き込まれて、抱きかかえられてしまった。

「いや...いやだ! シゲ! いやぁ!!」
「いやだ言うても、薬塗るだけやし...」
「だから...それが...恥ずかしい...」

顔を真っ赤にして、瞳を潤ませる不破の頬に、シゲが軽くキスをした。

「大丈夫や♪ 痛いことあらへんて、な?」

シゲの指が、不破のズポンを引き下ろそうとした瞬間、

「いー加減にしろっ!!!!」

忍耐の限界。新太郎がついに大声で叫んだ。

「あれっ...て、新太郎、まだおったんかいな?」
「シゲさん、あんたって人は...人の存在、無視して、何て事やりだすんですかぁ!!」

全身をわなわな震わせている新太郎。その形相はかなり怖いのだが、両方の鼻に詰め込んだテシュのせいで、結構笑えたりもする。シゲは思わず吹き出すと、「そんじゃ、あっち向いててな、新太郎?」と軽く言って、さらに続きをしようと手を動かした。

「だから!! いー加減にしてよって、言ってるでしょーがぁ!!」

ついにブチ切れた新太郎。シゲの背中に、思いっきりケリを入れた。

「あいた!! 新太郎!! 何、すんねん!?」

「だからぁ!! 人の存在、無視するんじゃねーよっ!!」

新太郎の迫力には、さすがのシゲもびびってしまった。
性格までの変わってしまったか? 新太郎。
肩を激しく揺らして、乱れた呼吸で、もう一度叫ぶ。


「もーいやだぁ!! オレはフツーにサッカーやりたいだけなんだぁ!!」


初夏の風と蒼い空。
心地よく吹き渡る風と澄み渡る空に、新太郎の声がかき消えていった。

そう...新太郎の悩み事は...まだまだ、尽きない。




FIN(ちょっと強引!?)



☆ ―――――――――― ☆

あとがき

う〜ん、当初のプロットと違って、香織がかなり出しゃばってしまいました。
「切れ○」の○の部分は分かって頂けたでしょうか? ホントに、こーいうの使うそうですよ、あんまりヒドイ時は。
まぁ、使うか、使わないか..って人によるんでしょうけど、ね。他にも治療薬ってありそうだから。
けど、これって、どこの薬局でも手に入りますから、妥当なところでしょうか?
(切れない(?)ために使う、つーか、スムーズにするために使う、潤滑油の方が手に入りにくいかも? 通販で見たことあるけど...)

今回は、田中があんまり出てきませんでした。田中を書くと、かなり体力消耗するようです。
体調の良い時でないと、描くのが結構きびしいキャラだと痛感しました。

後日談を書き始めて、早1ヶ月が過ぎようとしてます。
なかなか筆(?)が進まなくて、こちらもキビシイ...文才の無さを何度も痛感...

相変わらず、進歩の駄文です。こんな拙い作品を、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

☆ ―――――――――― ☆

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