Happy Happy Greeting




12月31日 / 00:01


「不破くん!お誕生日おめでとう!!」

そう言いながら、にこやかに笑う風祭。
彼から差し出された綺麗な包みを、不破は戸惑いながらも受け取った。
リボンが掛けられたそれは...

「風祭、コレは一体...」
「ん?それね、何にすればいいのか分かんなくて、実は功兄に選んで貰ったんだ!」
「...」
「不破くんへの...誕生日プレゼントなんだけど...」

風祭が頬を赤らめて言うので、不破はようやくこの包みの意味を理解した。

真夜中のベランダでの会話。

風祭の家に「夕飯でも一緒に」と、呼ばれた不破は、そのまま強引に勧められるまま、泊まることになった。
今は、深夜の...そう、ちょうど、12月31日になったところだった。

東京の夜空でも、冷たい真冬の空気のせいか、冬の星座は綺麗に輝いて見える。
冴え渡る星空の下。二人は夜着の上にコートを羽織って、ベランダへとこっそり出たのだった。

誘ったのは、風祭の方。
何故、こんな夜中に...不思議がる不破だったが、まだ眠っていなかったので、これまた言われるままに、風祭と外へ出たのだった。

そうして、いきなり手渡されたものは...誕生日プレゼント。
それも、日付が変わった瞬間に、だ。

「風祭...」
「ん?」

不破は今まで誕生日プレゼントなど貰ったことがなかった。
家族や親戚の京介からは、時折、思い出したようにプレゼントを貰うことはあったが、それ以外の人間から、プレゼントを貰った経験は無い。

だからこそ、不破は物凄く戸惑っているのだった。

「不破くん?」
「...」
「もしかして...迷惑だった?」
「!? ち、ちがう!!」
「???」
「その...こういった経験は今まで無かったから...オレはこの場合、どうすれば良いのだ?」
「どうすればって...その...じゃあ、どう思ってる?」
「...」
「迷惑? 要らない?」

不破はゆっくり首を横に振った。

「それは...」
「???」
「...多分...嬉しい...と思う。」

風祭が笑った。

「良かった!! じゃあ、開けてみてよ!! その...気に入ってくれるかどうか心配だから...」

不破はこくりと頷くと、がさがさと包みを開けてみた。
箱の中から出てきたのは、真っ白い...マフラーと手袋。

「どう?? 気に入ってくれた??」

風祭が不安そうな顔をして、不破を覗き込んだ。
不破はじっとそれを見つめていたが、ふい顔を上げると、今度は風祭をじっと見た。

「...この場合...礼を言わなければならないのだな...」
「不破くん?」
「ありがとう、その、とても...嬉しい...気に入ったぞ...」

寒さのせいだろうか?
不破の頬がやや赤くなっているように見えた。

「ホント? 良かった!! すっごくウレシイ!!」
「風祭?」
「あのね! ボク...誰よりも早く不破くんに渡したかったんだ、プレゼント!」
「???」
「誰にも先を越されたくなかったんだ! だって、そうしないと...その...」

風祭が最後の言葉を喉に詰まらせる。
一番、伝えたい言葉。
けれども、いざとなると怖じ気ついてしまう。

「風祭?」

黙り込んだ風祭の顔を、不破が覗き込んだ。


(言わなきゃ...今、言わないと...)


本当に、誰かに先を越されてしまう...

意を決して、風祭が口を開いた時だった。


「将?」
「うわっ!?」

突然、窓が開いて、功兄が顔を出した。

「何やってんだ? 二人とも? こんな夜遅く、おまけに、こんなに寒いのに外で何を...」

其処まで言って、功兄は、不破が手しているものを目にするなり、はっとした。
見れば、可愛い弟は、口をぱくぱくさせて、顔を真っ赤にしている。
そしてその瞳は...困ったような...恨めしそうな...

しまった

さすがの功兄も、これには、しくじったと思った。
弟の気持ちを知らない兄ではない。

まずいことをしてしまった...功兄がどうしようかと思案している時だった。


くしゅん...


不破がくしゃみをした。
どうやら、寒くなってきたらしい。

風祭が慌てて、「部屋に入ろう!」と言うと、不破もすぐに、それに同意した。
ようやくこの奇妙な沈黙はなくなったのだが...部屋の中に入った三人はまたしても無言のまま。

しかし、今度は不破が欠伸をするので、「お休みなさい!」と互いに挨拶して、各自の寝床へと潜り込んだ。

不破の布団は、風祭の部屋のベットの横に敷かれていた。
不破は風祭から受け取ったプレゼントを枕元に置くと、ベットに潜り込んで不破をじっと見ている風祭に振り返った。

「ありがとう、風祭...」
「う...うん...」

「...お休み。」
「うん、お休みなさい。」

布団に潜り込もうとして、ふと、不破はベランダで風祭が何かを言おうとしていたことを思い出した。
何か大切な事を言おうとしていたような...だが、不破は本当に眠くなったらしい。
するりと布団へと潜り込むと、数分後には、軽い寝息を立て始めた。風祭はそれを聞いて、深い深い溜息を吐いた。


伝えられなかった言葉

けれども、いつか...そう来年には必ず...!!


ベットの中で、一人、拳を握りしめながら、風祭も瞬く間に深い眠りに落ちていった。










12月31日 / 09:00


風祭の家で朝食を摂るとすぐに、不破は風祭から貰ったプレゼントを手に帰宅した。
残念がる風祭と、それをこっそり窺っている功兄に、不破は礼を言うと、足早に家へと戻ったのだった。

急いだ理由は...今日は、やたらと人に逢わなければならないからだ。
もっとも、口止めされていたので、名前は告げることは出来なかった。

それを風祭に言うと、露骨に嫌な顔をした。
どうしてそんな顔をするのか?と問いただせば、別に...と、今度は功兄のことを、恨めしそうな顔をして見ている。

さっぱり、わからん...

よく話を聞きたかったが、本当に時間が無かったので、仕方なく風祭の家を後にしたのだ。

家に辿り着き、早々に部屋のパソコンのスイッチを入れる。
軽い機械音が聞こえてきて、そのうち起動画面が表示されてくる。


『メールが届いてます』


メールの着信メッセージに気が付いて、受信ボックスを開くと、十数通のメールが届いていた。
不破は国内外を問わず、様々な大学の研究サイトに顔を出していたので、メールの大半は返答やら質問といったものだった。
その中の一通に...ふと、不破の目が止まる。

それを真っ先に開封すれば、そこには...


『お誕生日おめでとう。また、いつか試合をしよう。必ず会おう。』


簡潔なメッセージは...ドイツからのものだった。


「天城...」


不破は驚いた。
風祭はともかく、天城が自分の誕生日を知っていたことに、
自分は天城の誕生日を知らない、それなのに...。

とても、不思議だったが、不破は、すぐにそれに対して返事を書いた。
急いでいたので、内容はとてもカンタンなものになってしまった。


『ありがとう。オレもおまえに会いたいと思う。』


これが、思いっきり誤解されるであろうとは、不破は全く気が付いていなかった。

まさに天然ボケ(?)の不破であった。











12月31日 / 10:00



「こんにちは、不破!」

にこやかに玄関先で挨拶する水野に、不破も「あぁ...こんにちは?」と、とりあえず挨拶を返した。
日頃、自分が持っている水野の印象と、今、目の前にいる水野の印象が異なって思えるような気がする。
気のせいだろうか? 今日の彼は、いつになく機嫌が良さそうな...そう、びくびくしていない。
水野は自分と接すると必ずと言って良いほど、怯えているような態度をとっていたからだ。
その水野が、今日はにこやかに不破に微笑みかけている。不破は正直に言えば...面食らっているのだ。

「くぅ〜ん...」

水野の足下で動物の鳴き声が聞こえたので、ようやく不破は其処に何がいるのか気が付いた。
彼の愛犬、ホームズだった。風祭にやたらと懐いているそのイヌは、いつの間にか不破にも懐いていた。
動物は嫌いではないが、好きでもない。無表情にホームズの顔を見ると「ワン!」と元気良く吼えて、しっぽを振っている。

ホームズにとって、風祭はご主人様の大切な友人かつ、とっても優しい遊び相手。
しかし、不破は...ご主人様の大切な大切な...想い人。大好きなご主人様に、ホームズは協力的である。
もう一度、元気良く吼えると、今度は不破も、玄関の外まで出てきて、ホームズの頭を撫でてやった。
ホームズが気持ち良さそうに甘える声をだすので、

「ホームズは、不破のこと大好きなんだよね。」

そう水野が笑った。

本当は自分の方がもっと...不破のこと好きなのだけど。

「ふむ? 懐かれるのは悪い気はしないな?」
「そ、そう?」

不破はしゃがみ込んでホームズの頭を撫でながら、水野のこと見上げてくる。
その瞳は、ほんの少しだが、笑っているように見える。

こんな柔らかい瞳は、ホームズと接しているからだろうが...水野はとても嬉しくなってしまう。

水野がまた笑うので、不破はちょっと不思議そうな顔をした。
今日の水野は、本当に、違った印象に思えた。

水野にしてみれば...今日は一大決心で、此処にやってきたのだった。

そう、今日こそは、不破に自分の気持ちを正しく伝えたいと思っていたのだ。
自分がいつも怯えているような態度をとってしまうのは、不破に嫌われたくないと思っているからなのだ、と。
不破の瞳は、物事を、人の本質を、見抜く力を持っている。
その瞳の前では、自分など、ちっぽけで大した能力を持たない人間だと、思い知らされてしまう。
だからこそ、不破の前では虚勢を張って、さらにそれを見破られることに怯えてしまって、水野は素直になれないのだった。
けれども、このままではいつまでたっても、自分は不破に近づくことすら出来ない。それでは嫌だ。もう我慢できない。
ありのままの自分を見て欲しい。それで、ダメなら...悔しいけど...でも、諦めないけど...。
水野は、不破に対して、背伸びをしない、無理しない、カッコつけない、そう思って、今日は不破の家にやってきたのだった。

水野の印象がいつもと違って穏やかに感じられるのは、そのせいだった。
つまりは、素直になった=開き直った、ということらしい。

不破が不思議がるのも無理はない。

「不破、お誕生日おめでとう。」
「ん?」

目の前に差し出された包みに、不破はまたしても、きょとんとしてしまった。
そういえば確か、昨日の午後、風祭の家に行く前に、水野から電話がかかってきて「明日、会えないか?」と聞かれた。
会えなくはないが...何かと人に、特に午前中は京介に会いに行く用事があったので、それを告げると、

「じゃあ、出掛ける前に、ほんの少しだけ、会えないかな? 渡したいものがあるんだ。」

水野にそう言われた。渡したいもの...一体、何だ? 不破は考え込んだが、断る理由がなかったので、

「では、明日の10:00に。」

と答えた。水野は時間通りにやってきて、そして、不破の目の前に、綺麗にラッピングされた包みを差し出したのだ。
『渡したいもの』は、どうやら風祭同様『誕生日プレゼント』らしい。

ホームズの傍にしゃがみ込んでいた不破は、立ち上がると、しばし、それを受け取るべきか否か、考え込んでしまった。
昨夜...いや、早朝に引き続いての、事である。しかし、風祭から受け取って、水野からは受け取らない、はヘンな気がする。
けれども、水野は、どうして自分にこれを渡すのだ? いつも怯えている彼が、どうして...

「あのさ、実は、ウチの母さんが作ったんだよ、これ。」
「???」
「近頃、編み物に凝っててさ。オレに編んだつもりが、少し大きかったんだ。それで、母さんが編み直すのも何だから、サイズが合いそうな友達にあげてくれないかって...あっ!自分の要らないものをあげるって言うんじゃなくて! その、不破に似合そうなセーターだと思ったから...」
「セーター?」
「う、うん、そう...良かったら、着てもらえないかな?」
「...」

不破はちょっと首を傾げていたが、足下のホームズも「くぅ〜ん」と、まるで「受け取ってよぉ!」と声を出したように聞こえたので、不破は水野からその包みを受け取った。
不破に受け取ってもらえて、水野は俯いていた顔をぱっとあげた。その頬は幾分、紅潮しているかのようだった。

「確認してもいいか?」
「へっ?」
「サイズ。」

不破はそう言うと、その包み解いて、中身を取りだした。
出てきたのは、真っ白いセーター。手作りらしく、とても暖かなカンジだった。

自分の身体にあてがうとそれは、ちょうど良いサイズだった。
それも、そのはず。水野が、母親を上手く言いくるめて、不破のサイズに編んで貰ったからだった。

「ふむ、確かにちょうど良い...かな?」
「そうだろ! だって、それ、オレが...」
「ん?」

本当にことを言いそうなって、慌てて水野が口を押さえた。
不破はまた、きょとんとしているが、水野は誤魔化すかのように、今度は手をぶんぶん振った。

「あっ! 何でもない! その...サイズがあって良かったよ。受け取ってくれるよね?」
「あ? あぁ...貰ってよいのか、本当に?」
「うん! 是非!!」
「そうか...それは...ありがとう。」

少しだけだが、不破が嬉しそうに笑ったように見えて、水野も微笑んだ。

(良かった...受け取ってくれて...)

不破に誕生日プレゼントをあげたかった。けれども、適当な理由が思いつかなくて、結局は強引にこじつけた内容になってしまった。
それでも、不破にこうして渡せたこと、不破が喜んでくれたことが、やはり、水野にとってはとても嬉しかった。

ホームズも、ご主人様がにこにこしているのが、嬉しいらしく、水野の足元で喉を鳴らしている。

「誕生日に...」
「えっ?」

不破がぽつりと呟いた。

「プレゼントを二つも貰ったのは初めてだ。」
「二つ?」
「あぁ、昨晩、風祭の家に泊まったのだが、日付が変わった瞬間、風祭から誕生日プレゼントを貰った。」
「...」
「身内以外の人間からプレゼントを貰ったこと自体も初めてだ...結構、嬉しいものだな。」
「う、うん...」

水野の表情が微妙に曇った。
風祭が、不破に...自分が一番のりだと思っていたのが、すでに先を越されていたのか...
かなり複雑な心境だった。

ということは、まさか...!?

「あ、あのさ! 不破、風祭から...何か言われてないか?」
「ん?」
「い、いや、その...」

告白されたのか? などと、ズバリ聞くわけにはいかない。しかし、気になる。気になるが...

「何かとは? 何をだ?」
「い、いや、あのさ...その...」

上手く喋れなくなって、水野は赤い顔して口をぱくぱくさせている。

「ふむ?」

昨晩の風祭に似ているな...そう、思っていると。

「もしかして、まだ何も言われていない?」
「ん?」
「だったら! オレのこと、今まで誤解してたと思うけど、本当は...っ!!」
「???」


(言わなきゃ...今、言わないと...)


本当に、誰かに先を越されてしまう...


意を決して、水野が口を開いた時だった。


「ワン!!」


ホームズが急に吼えた。そして、突然、ご主人様を勢い良く引っ張り始めた。

「えぇっ!? 何だよ、ホームズ!? 急に...」

驚いて水野は、ホームズが行きたがる方向を見ると、其処には...散歩している、ホームズの恋人(恋犬?)がいた。

「ちょ、ちょっと、待ってくれよ! ホームズってば! まったく、もう!?」

懸命に水野引っぱるホームズ。いくらご主人様思いとはいえ、やはり自分の恋も大切である。吼えたり、唸ったりと、忙しい。
相手の犬も気が付いたらしく、こちらに向かって吼えている。向こうのご主人様も(父親くらいの年輩の男性か?)水野とホームズに気が付いて、遠くから軽く会釈して、彼らが来るのを待っているようだった。

「もう! 仕方ないな...」

水野は盛大に溜息を吐くと、

「すまない、不破...また...」
「あ、あぁ、オレの方こそ、すまなかったな...ありがとう、水野」
「う、うん! じゃあ、また!!」

不破から礼を言われて、水野はいくらか気を取り戻せた。
ホームズに引っぱられながらも、水野は笑顔で不破に手を振ってくる。

水野とホームズの後ろ姿を見送りながら、不破はふと、玄関の壁にかかっている時計を見上げた。


まずい...遅くなった...


京介との待ち合わせ時間に、遅れそうだ。
不破は慌てて、自室へ戻ると、身支度を始めた。

水野から貰ったセータと、風祭から貰ったマフラーと手袋を身に着けると、どことなく気持ちが暖かくなった。

「ふむ? なかなか...嬉しいものだな...」

天城からのメールも嬉しかった。
身内以外の誰かに祝ってもらうことが、これほど嬉しく暖かくて...心地良いものであることを知らなかった。
不破にとって、初めての経験だった。初めて知った...感情だった。










12月31日 / 10:35


「遅かったな、大地。」

京介にじろりと見られて、不破は「すまん」と軽く詫びた。予定の時間は「10:30」だったから、5分の遅刻だった。
これくらいは誤差で...と許してくれる相手もいるかもしれないが、黒須財団の若き党首、黒須京介にとっては貴重な時間だ。
不破もその点はよく理解しているので、本当にすまない、ともう一度謝った。

すると、京介は不破に近づいて、不破の格好をじろじろ見てくる。

「なんだ?」
「...」

怪訝そうな顔をする不破に、京介は「ふん、生意気な...」と鼻で笑った。
どうやら、不破の身に着けているものが、誰からかのプレゼントであると察知したらしい。
自分よりも先に、可愛いはとこに誕生日プレゼントと渡す輩がいることに、京介は何となく面白くない。
だが、それだけ、このはとこが人気があるということは、「さすがはオレのはとこ」などと嬉しくも思える。
やや複雑な面持ちの京介に、不破は首を傾げている。京介はくすりと笑うと、不破の掌に一つの鍵を手渡した。

「なんだ? これは?」
「この部屋の鍵だ。」
「ん?」
「今年の誕生日プレゼントだ。」

京介と不破がいる部屋は、とあるマンションの最上階の一室。この地区でも、かなり高級なマンションである。
セキュリティ対策も万全で、此処には有名な政府高官の一家が住んでいる、といった話も聞いたことがある。

「この部屋をオレにくれるというのか?」

すでに必要な家具やら何やら、今すぐにでも住めそうに取り揃えてあるこの部屋を、不破の誕生日プレゼントにやると、この金持ちのはとこは言っているのだ。

「ああ、そうだ。来年はおまえも中学3年であろう? そろそろ、本格的に私の片腕になる勉強を始めて欲しい。」
「此処で?」
「そうだ。不破の家では手狭であろう? ここなら、黒須の家にも近いからな。オレの目も届くというのものだ・」
「オレはまだ、おまえの片腕になるとは決めていないぞ?」
「では、オレの仕事に興味はないのか?」
「いや、そうではない。興味はあるが...」
「サッカーを、このまま続けるのか?」
「...」
「まぁ、まだ1年ある。その間、よく考えて欲しい。」
「...わかった。」
「では、この部屋は大地の好きに使っても良いが...但し!!」
「ん?」

京介がにやりと意地悪く笑った。

「この部屋にはやたらと人を入れるなよ。」
「ん?」
「特に...っ! 男はダメだ!」
「?? 何故 ??」

普通は「女人禁制」だろ? そう言いかけた不破に、京介は腕組みをしてまた笑った。

「おまえの場合は、『女』より『男』の方が危険だ。」
「???」
「ふん、十分、気をつけろよ。」

不思議がる不破を横目に、京介は「では、またな。」と軽く手をあげると、この部屋から出ていった。
一人取り残された不破は...さらに首を傾げて考え込むが...やはり、よく分からない。

もっとも、不破がこの言葉の意味を理解できたら、彼を想い慕う連中は、これほど苦労はしないであろう。

不破は考えながら部屋の中を歩き回った。
京介が用意してくれた部屋は、本当に今日からでも、此処で暮らしていくことができるくらいだ。
いろいろと部屋の中を物色していると...


ボーン


軽やかな音楽とともに聞こえてきた時計の音。
11:00になってしまった。


しまった! 次は...っ!!


不破は次に会う約束をしている相手を思いだした。


年末、大忙しの不破である。











12月31日 / 12:10


「いらっしゃい! 不破くん!!」

満面の笑顔で迎えてくれる渋沢に、不破は肩で息をしながら「お...遅れてすまない..」と、どうにか喋った。

「大丈夫? そんなに慌てて来なくても...」

そう言いながらも、実は渋沢は心配で心配で仕方なかった。約束の時間は、12:00。時報が鳴ってから今まで、わずか10分間だったが、それでも、事故になったのではないか?とか、誰かに拉致されたんじゃないか?とか...まぁ、それはそれは様々な憶測を思い浮かべて、一人焦りまくっていたのだった。

「...はとこのトコロから、こちらへ向かうことが遅れてしまって...申し訳ない...」

ひとしきり、ぜぇぜぇ言うと、今度は深呼吸した。どうにか、不破の呼吸は整い始めたようだった。

「こんなところでは何だから、どうぞ上がって、ね?」

此処は、渋沢の自宅だった。さすがに年末では、寮生も皆、帰宅して新年を迎える。
渋沢の家は、武蔵野森から電車を乗り継いで、小一時間程度の距離にある、閑静な住宅街の一角にあった。
学校へは通えなくはない距離ではあるが、一軍でキャプテンの渋沢には、通学時間さえも無駄になる。
そこで、やむなく寮生活を送っているのだが、趣味が『料理』の渋沢は、時折、寮の厨房を借りて腕をふるうことはあるが、それはほんの気晴らし程度のものだった。
ようやく自宅へ戻れて、存分に腕をふるいたい。そして...それを、愛しい彼に食べてもらいたい。
今日は12月31日、彼の誕生日。年末大晦日で渋沢宅も忙しかったが、昨日までにどうにか一通り片付けて、今日を万全の体勢で迎えたのであった。

「...では、邪魔をする...」

小さな声で挨拶して、不破は渋沢の家へと上がり込んだ。
すでに新年の支度が整った渋沢宅は、不破の家とは似ても似つかぬほど綺麗に片付けられていた。

掃除したてのリビングに通されると、テーブルの上に料理が並んでいる。
一体、何人でこれを食べるのだ? そう思うくらい、テーブルの上は多品種大量の豪華な手料理だった。
しかし、渋沢宅には、渋沢以外に人がいる気配がない。
不破はちょっと躊躇しながらも、勧められるままに席に座ると、対面に渋沢も腰を下ろした。

「では、不破くん、お誕生日おめでとう!」
「あ...ありがとう...」

不破にはミネラルウォータ、渋沢は烏龍茶の注がれたグラスを、互いにカチリと合わせる。
つまり乾杯なのだが、不破はこういった事をほとんどやったことがない。
何しろ、誕生日を祝ってもらったこと自体がないのだから、何となく落ち着かない様子だ。

「不破くんは、何でも食べれたよね?」
「ん? 好き嫌いというものか? それはない。」
「じゃあ、どんどん食べてね! 久しぶりに作ったから、ついつい作り過ぎちゃってね。」
「ふむ、渋沢の作る料理は全部旨いが...これだけの量を全て食べることは難しいぞ。家族はどうした?」
「両親は親戚の家にちょっと用事があって出掛けちゃってね...弟は、多分、友達の家じゃないかな?」
「弟? 渋沢は弟がいるのか?」
「うん、3歳年下でね。小学6年生だよ。」
「ふむ...兄弟がいたのか...」
「うん、オレと同じGKやっててね、来年の4月には武蔵野森に入学するんだ。」
「ほう、それは凄いな。」
「けど、何となく、照れくさくてね。」
「何故?」
「いや、その...あっ! それより!」
「???」
「これ、良かったら使ってもらえないかな?」
「ん?」
「誕生日プレゼントなんだけどね。」
「...」
「オレも3年間、同じ種類のものを使ってたんだ。不破くんに、どうかなって思って...」

手渡された包みは、風祭や水野がくれたものに似て、綺麗にラッピングされている。
一瞬、どうすれば良いのか躊躇っていると、渋沢が「GKの...グローブなんだ」と照れくさそうに喋った。

「そうか...開けて見ても良いか?」
「うん! どうぞ!!」

がさがさ包みを開封すると、中から見覚えのある色のグローブが出てきた。
確かに、渋沢が使っているものと同じだった。新品らしく革の匂いが真新しい。
手にはめてみると、それは不破にしっくりと馴染んできた。

「どう?」
「...そうだな...確かに使いやすそうだ...その...」
「ん?」
「...ありがとう...おまえにまで気を遣わせてしまって、すまないな...だが、凄く嬉しいゾ...」

渋沢とは他校生で、しかも突然、「GKは楽しいか?」と図々しく訊きに行ったことがある不破である。
本来なら相手にされないところを、何故か? 渋沢は自分を助けてくれて、その答えも教えてくれた。
すぐにはその意味を理解出来なかったが、試合経験を重ねていくうちに、渋沢の言った言葉をほんの少しだけ分かってきた。
不破にとって、渋沢の存在は一つの目標だ。風祭の笑顔の真相を知ること以外の目標。
その渋沢から渡されたものは、GKにとって大切なものである。不破の表情が柔らかく微笑んだ。

「不破くん!」
「ん?」

不破の笑顔を見てしまった渋沢。
心臓が一気に高鳴った。


今しかない...


渋沢が両手の拳を握りしめる。


(言わなきゃ...今、言わないと...)


誰かに先を越されてしまう...


意を決して、渋沢が口を開いた時だった。


「ただいま!!」

玄関から元気な声と、ウチの中へドタバタと勢い良く駆け込んでくる足音が聞こえた。
と同時に、「ええっ!?」、渋沢の絶叫にも似た大声が不破の耳を貫いて、不破は驚いて目を丸くしていると、

「あれっ? お客さん??」

渋沢によく似た人懐っこい笑顔が、ひょいとリビングの中を覗き込んできた。

「克彦...」

渋沢は不破以上に目を丸くして驚いていると、彼は、はぁはぁ言いながら部屋の中へ入ってきた。
小脇にサッカーボールを抱えている彼は、外から帰ってきたばかり故か、頬や鼻の頭を真っ赤にしている。

「誰? 兄さんの友達??」

渋沢の傍らに歩み寄ってきて、不破を見ながらにこにこ笑っている。

「あ、あぁ...そう、友達だよ、友達。不破大地くんていうんだ。克彦、挨拶は?」
「あっ! こんにちは!」

ぺこりと不破に頭を下げる彼は、よく見えれば、不破より若干低いくらいの身長の持ち主だった。
渋沢そっくりの笑顔で、表情に子供らしい、あどけなさがあるが、身長同様、体格も不破よりしっかりしているようだ。
おそらく、彼が渋沢の弟であろう。しかし...これが、小学6年生か? と、思わず目を疑ってしまう。
不破がきょとんとしていると、渋沢が慌てて彼を紹介してくれた。予想どおり、彼は渋沢の弟で、名を『克彦』という。
ぎこちなく挨拶し返す不破に、克彦はにこにこ笑って、そのまま渋沢の横に座り込んだ。

「克彦、今日は...一日、友達の家にいるって言っていなかったか?」

歯切れ悪そうに渋沢が、克彦に問いかける。おそらく、渋沢としては、家人が全て留守になるのを期待していたらしい。
いや、留守になるようにわざと仕向けたのだった。これで、ゆっくりと不破と一緒に...などと目論んでいた渋沢。
それが、突然、克彦が帰宅したので、内心、物凄く驚いているのだ。それに、せっかくのチャンスを...潰された。

「う〜ん、やっぱ、大晦日だからね...マサノブんち、忙しそうだったから、悪くなって、帰ってきたんだ!!」

克彦は子供らしくけらけら笑いながら、膝の上に抱え込んでいたサッカーボールを、数回、空中に放り投げた。
手持ち無沙汰の行動だったようだが、ボールに水滴が付いていたらしく、テーブルの上に料理に飛び散った。

「こらっ! 克彦!!」

渋沢が怒ってボールを取り上げると、克彦は「ごめんなさい!」と素直に謝ったが、すぐに、「どうしたの? これ?」と、テーブルの上に並べられた料理やケーキを指さして、目をぱちぱちさせた。
瞬間、返答に喉を詰まらせる渋沢に、克彦は、「もしかして、忘年会?」と、また笑った。

「克彦、あのな...今日は不破くんの...その...誕生日なんだよ。」

克彦は目の前にいる不破の顔を、きょとんとした表情で見つめてきた。
不破も黙って、克彦の顔をじっと見返している。その不破の手にはめられたグローブに気付いた克彦。

僅かな沈黙の後、克彦は不破に、にこっと笑った。

「へぇ、そうだったんですか! お誕生日、おめでとうございまーす!!」

そして、

「どーも、お邪魔しましたぁ〜!!」

兄に向かって元気に挨拶すると、イスから立ち上がって部屋を出ていこうとする。
どうやら、子供なりに、この状況を察知したようだった。
だが部屋を出る瞬間、渋沢によく似たキャプテンスマイルで、しかも渋沢の予測しなかった爆弾を投下した。

「兄さんの趣味って、ボクと同じなんだよね!」


なに...っ!?


「じゃーねぇ! また、お会いしましょー!!」


克彦は手をひらひらさせて出ていった。


「何のことだ??」


不破は克彦の言った言葉の意味が分からない。首をしきりに傾げている。
渋沢は...真っ赤になっているだけで何も喋れないようだ。


不破がこの言葉の意味を理解できたら、渋沢は...彼を想い慕う連中は、苦労はしないであろう。


思いもかけない恋敵の出現に、渋沢克郎、あえなく撃沈されてしまったようである。











12月31日 / 15:20


渋沢宅で手料理を馳走になり、またしても誕生日プレゼントを貰ってしまった不破。
今までの記憶の中で、誕生日というものを祝福された経験がないだけに、戸惑いもあるが嬉しさの方が勝っている。
出来ればもう少し、渋沢の家でゆっくり過ごしたかったのだが、次の予定が控えていた。
渋沢に理由を話すと、とても残念そうにしていた。不破とてそれは同じなのだが、母親の乙女と待ち合わせをしていたので、仕方ない。
不破にしては丁重に渋沢に挨拶すると、これまた猛然と、乙女との約束の場所まで走り込んだ。

「大ちゃ〜ん!! こっちよぉ〜!!」

やや気の抜けた声が、遠くから聞こえた。
自分をこんな恥ずかしい呼び方するヤツは、世界中でただ一人だ。

ようやく辿り着いて、呼吸を整えると、「その呼び方はヤメロと、いつも言っているハズだぞ!」と一喝した。
かなりキツク睨み付けたのだが、乙女はけろっとしていて気にする気配がない。

「随分、待ったわよ!」
「うっ...それは...すまなかった...」

待ち合わせの時刻は『15:00』。
確かに、忙しい母親を待たせてしまったのは、不破の方に非がある。
しかしだ。いくら母親とはいえ、公衆の面前で、『大ちゃん』はなかろうが!?

やや肩で息をしている不破に、乙女はふふっと笑うと、「時間あったから、先に見繕っておいたわよ!」と言った。
「何をだ?」不破が首を傾げながら聞き返すと、乙女は愛息の腕を引っぱって「こっちよ!」と有無を言わさず連れていく。

此処は、駅前とあるデパートの入り口。
待ち合わせ場所として、乙女が指定してきた場所だった。
その中へ、乙女はずんずん、不破を引っぱって行く。

傍目から見ると、とても仲の良い親子に見えるらしく、店員などがこちらを見て微笑んでいる。
不破としては乙女の腕を振り払いたいのだが、乙女がにっこり笑って見上げてくるので、無下にも出来ない。
自分が弱い笑顔の一つだからだ。風祭と渋沢と...そして母親の笑顔。

ふと、水野のことを思い出した。
彼の母親も、彼のことを『竜っちゃん』と呼んでいて、ひどく怒られていた。
だが、両親の離婚で、水野は母親の家に行った。父親との確執もあったようだが、それでも彼は母親を選んだのだ。
何処の家の息子も、年頃になれば親へ反発するが、母親だけには何となく弱いのかもしれない。

「これっ! 大ちゃんにどうかなって思ったの!!」

連れてこられたのは、コート売場。
乙女が手にしたそれは、不破が好みそうなコートだった。

「去年のコート、もう小さくなっちゃったでしょ?」
「あ? あぁ、そうだな。」
「大ちゃん、2年生になって急に背が伸びちゃったから...けど、体重は減った?」
「あぁ、だが問題ない。この程度であれば...」
「そうかな?背が伸びて、細くなって...なんだか、モデルさんみたいね?」
「乙女...」
「はい?」
「おまえは、自分と大陸の顔を、正面から見たことあるか?」
「勿論あるわよ。でも、それが何?」
「おまえ達の子供の顔が、人並み以上になれるわけなかろう?」
「う〜ん...そうかな?」
「...もう、いい...」

不破は軽く溜息を吐くと、乙女が持っているそれを指して「これで良いゾ」と言った。
すると、「一度、着てみなさい。」と、乙女に試着させらて、鏡の前に立たされた。
ややサイズが大きめなのか、身ごろ部分が余っていた。

「少し、大きい方が長く着られると思うけど...ホント、痩せちゃったのね?」
「...」
「でも、腕の長さとか、丈の長さは丁度良いみたいね。」
「...」
「今、着ているセータと、それからマフラーに手袋、何とな〜く、このコートに合ってるわね。」
「...」
「見覚えないけど、それ、もしかした誰からか貰ったプレゼントかな? 手に持っている紙袋の中身も...」
「...」
「じゃあ、先を越されちゃったわね! これが、私からの誕生日プレゼントなんだけど...」
「...」
「大ちゃん、どうしたの?」
「...そんな事よりも、いい加減、脱いでも良いか? 恥ずかしいゾ?」
「そう? じゃあ、これにしましょう!」

乙女はやんわり微笑んで、ようやく不破を解放してくれた。不破としては、鏡の前に長い時間立つことは、あまり好きではない。
近頃、確かに体重が減って、どことなく貧相な身体に思えていたからだ。GKを続けるならば、渋沢ほどではなくても...

「はい、お誕生日おめでとう!」

ぼんやり考えている不破の目の前に、大きな紙袋が差し出された。先程の品物を、乙女が手早く購入してきたのだ。
覗き込めば、そこには大きな箱が綺麗にラッピングされて入っている。

これで...4個めだな...

「ありがとう..」

そう言いながら、乙女からそれを受け取ると、ふとある事を思い出した。

「しまった...言い損ねてた...」
「ん? なに? 大ちゃん?」

店員達の「ありがとうございました!」の合唱を背中に受けながら、乙女と一緒に歩き出した不破は、ポケットから一つの鍵を出した。

「何? それ?」
「京介からだ。」
「???」
「誕生日プレゼントだと言って、黒須の家の近くにマンションを一室、オレにくれたのだ。」
「あらま? 相変わらずねぇ、京介くんは。」
「礼を言い損ねていたことを思い出した。」
「あら? それじゃあ、家に帰ってから電話するといいわ。」
「あぁ、そうする。」

これから、家に帰る...そこまで考えて、不破は、まだ他に大切な何か忘れているような気がしていた。
二人でデパートを後にしようとした時、正面玄関に飾ってあった大きなからくり時計が、時報を賑やかに告げる音楽を鳴り響かせた。

時計の針は『16:00』をさしていた。


「しまった!!」

「ええっ!? 何、急に...」


突然、乙女の耳元で大きな声をだしたものだから、彼女は驚いて、自分のカバンを落としてしまった。
慌ててそれを拾い上げながら、「どうしたの? 急に?」と、乙女は愛息を顔を見上げた。


「先に帰っていてくれ!」
「えっ? なんで?」
「これから、別なヤツと待ち合わせをしていたのだ!!」


不破は荷物を抱え込むと、今日で3回目のダッシュで走り去っていった。

一人取り残された乙女は、不破の後ろ姿をぼんやりと見送っていたが、からくり時計が鳴り終わって、それを見ていた人混みが散らばるのを合図に、乙女はようやく我に戻った。

「また、これから、誰かに会いにいくなんて...大忙しね、大ちゃん。」

ふうっと大きな溜息を吐いた。去年までは、愛息の誕生日を祝うのは、京介と乙女だけだった。それが、今年は大変な変貌ぶりである。
愛息は『人並み以上の...』などとぼやいていたが、自分の容姿がどれほどのものであるか気付かないなんて...。

「似てるのは目つきと、すこーし理屈っぽいトコロだけ。あとは...鳶が鷹を生んじゃったのよ、大ちゃん...なぁんてね!」

自分の容姿だけではない。おそらく、自分を慕う彼らの気持ちなど、あの愛息は気付くハズもないであろう。お気の毒な話である。


年末大晦日の街中は、人の流れが途絶えることなく、喧噪さをさらに増してくる。
その中を、乙女は一人、足取り軽く、家へと帰っていった。


さて、あの子は、今度は何を貰ってくるのかしら...彼らも大変ね? などと、呟きながら。











12月31日 / 16:10


駆け込んだ店内は、大晦日故か、此処も人が多かった。年末の買い出しで一休みしている人ばかりだ。
不破がきょろきょろ見渡していると、

「おい。」

やや怒気を孕んだ低い声が聞こえてきて、思わず身体をびくりと震わせた。
声のする方に振り返れば、其処には、腕組みをして明らかに不機嫌そうしている相手と視線がぶつかった。

「遅れてすまない! 三上!」

がさばる荷物を抱え込んで、不破が三上の対面に座ると、すぐにウェイトレスが寄ってきた。
慌てて、「ペリエ」と一言告げて、彼女が立ち去るの確認してから、三上にもう一度向き合った。
すると、

「おっせぇんだよ! このタコが!」

三上の怒声が先だった。不破はまたびくっとして「すまない...」と俯き加減で呟いた。
いつも三上は怒っているような口調だが、今日は不破が遅れてきたことが原因だ。
明らかに不破に非がある。仕方なく、もう一度素直に謝ると、今度は額を指ではじいた。

「いたい...」

額を押さえて不破が痛がっていると、三上は、それくらい当然と言わんばかりに、「ふん」と鼻息を荒くした。
三上を怒らしてしまった、と思っている不破だが、二人を知らない人から見ればとても仲が良さそうに見えるらしい。
近くのテーブルに座っているOLらしい数人の女性達が、三上と不破のやりとりを見て微かに笑っている。

三上と待ち合わせした場所は、広くもなく狭くもない、落ち着きやすいスペースと雰囲気の良い茶店だった。
時折、女性誌などに穴場の場所として紹介されることがあるこの店は、三上の指定でよく使っている。
不破も結構気に入っていて、一人でゆっくり本を読みに来ることもあるくらいだ。

不破が注文した飲み物がテーブルに運ばれくると、不破はそれをグラスに注がずにそのままビンから飲み干した。
一気に飲み干して、ほぅっと大きな息を吐く。此処へは、かなり急いで来たようだ。よく見れば、額に微かに汗が滲んでいる。
さらに、いつもの鋭い瞳をやや潤ませて、宙を彷徨うように視線を泳がせている。

(まぁったく、こんな艶っぽい顔すんじゃねーよ...、誰かに見られたらどうすんだよ?)

三上は緩くなった珈琲を一口飲んだ。待った、と言っても10分程度だ。持ってきた雑誌でも読んでれば、すぐに過ぎてしまう時間だった。
それでも待たされたことには変わりないし、遅刻はそうカンタンに許せるものではない。ましてや、遅刻の理由しだいによっては...今日こそはっきりさせてやる。

しかし、三上の性格上、それはなかなか難しいのだ。

「ほい。」
「ん??」

いきなり三上から差し出された箱に、不破ははっとして驚いた。
これまた、奇麗にラッピングされた箱。さすがに、不破もこの箱の意味を分かった。
それに、箱の中身も予想がつく。知っている。一週間前のクリスマス、三上と電話で話したのだ。

どーせ、誕生日が近いんだ、まとめてやるよ...と。


冬休みに入ってすぐ、三上と一緒にフットサルをした。近場ではなく、電車を乗り継いで、やや遠い場所だった。
武蔵野森の三上は、渋沢同様、近郊で遊ぶには顔を知られすぎている。だから、いつも二人が逢うのは、武蔵野森とは離れた所が多い。
その日も、見知らぬ場所...というほどではないが、武蔵野森とは別な地区だった。知り合いもいない。
そのせいだろう、三上が別人のように見えるのは。どことなく、生き生きしているようだ。いつもの、どこか刺々しさのある三上ではない。
よく笑うし...とても優しい。多分、彼はいつも気を張り詰めているのだろう。それだけ、武蔵野森の10番を背負うのは大変なのだ。
それが、別な土地で、自分をよく知らない所へ行けば、三上はラクに呼吸ができる。不破はそんな三上と接するが好きだった。

フットサルで汗を流して、そろそろ帰ろうとしていた時だった。
ふと、そこの駅前にあるスポーツ店に何気なく入り込んだ。結構、大きな店だった。
品揃えも豊富で、不破は、シューズに見入っていた。
今年の春、購入したものは、練習の成果か? さすがに痛みがひどくなってきたのだ。
そろそろ新しいものが欲しくなってきた頃である。不破がじっと見ていると...

「これがいいんじゃねーのか?」

後ろから三上が、陳列された中から一つのものを指差した。

「ふむ? これは...」
「オレは、いっつもこのシリーズ、使ってんだよ。」
「そうだったな。確かに見覚えがある。」

それを手にとって、じっくり見ていると、いつのまにか三上が不破の足にあったサイズのものを探してくれた。
試しに履いてみれば、それはしっくりと足に馴染んでくる。

「ふむ...確かに、これは良いかも...な?」
「だろ? オレの愛用だから。」

しかし、値札をみて、今の不破には持合わせがないことに気がついた。

「今日はやめておく。後にする。」

そういって、元の場所にそれを戻すと、

「じゃあ、これがプレゼントだな。」
「ん?」
「まとめてやるって言っただろ? これにしてやるよ。」
「いや、それは...」

これはかなり高価なものだ。そう簡単に受け取れるようなものではない。
躊躇っている不破に、三上は軽く足で背中を蹴飛ばす。

「これがいいんだろ? ヘンな気ぃ、使うんじゃねーよ!」
「三上...」
「そのかわり! 他のヤツから、貰うんじゃねーぞ! わかったか!」
「...わ、わかった...」

そうして、二人はこの店を後にしたのだった。


だから今、目の前に置かれたものが、何であるのか、何を意味するのか、不破は理解していた。

「三上...」
「開けてみろ...って開けなくても分かってんだろ?」
「...」

不破はそれを手にすると、がさがさと包装紙を剥がした。
箱を開けてみれば、中身は予想したものと同じだった。

不破が欲しがっていたものだった。

「おい?」

不破が黙り込んでしまったので、三上はむっとした顔をした。
気にいらねーのかよ! とでも、言い出しそうな顔である。

「...ありがとう...」
「ん?」
「物凄く、嬉しい...本当にありがとう...」

不破の神妙な声に、三上の方が驚いた。不破がとても喜んでくれているのが三上にも伝わってくる。
急に何だか照れくさくなって、三上は軽く咳払いした。そして...

「いたい...」

再び、三上は不破の額に指ではじいた。
咄嗟に額を抑えて、不破が俯いていた顔をあげると、視界の中に三上の柔らかい笑顔に飛び込んできた。

「嬉しいなら、もっと、嬉しそうにしろってんだ、このタコが...」

言葉使いは、いつもの三上だが、口調は信じられないほど優しかった。
不破も、それにつられたのか、微かに微笑んだ。

今、二人が向き合っている店は、武蔵野森からはそれほど遠くはない場所だった。知り合いの誰かに見られる確率は、かなり高い。
だから、いつも待ち合わせするだけで、早々にこの店を後にすることが多い。しかし、今日は長居している上に、こうして二人で微笑みあっている。

互いの知り合いが、この現場を見たら、とても...驚くだろう。

なかなか良い雰囲気の二人である。
ふと、三上は微かな笑い声に気がついた。
また、近くのテーブルに座っている数人の女性達に、この光景を見られていたようだ。
彼女たちは、三上と不破のやりとりを見て微かに笑っていた。

今度は気恥ずかしくなって、三上はまた軽く咳払いをする。
そして、話題を変えようとして、何気なく、不破の持ってきた荷物を指さして、「何だよ? このバカでかいのは?」と訊いた。
ぼんやりしていた不破は、唐突に訊かれた言葉にすぐに反応できず、じっと考え込む。

(何だってんだよ? おい!?)

三上が一瞬、ぎっと口の端を噛むと、不破が「先程、乙女と待ち合わせをして、コートを買ってもらった。」と素っ気なく答えてきた。
拍子抜けした三上に、不破はさらに「誕生日プレゼントだ、とも言われた。背が伸びたので、去年のものでは小さくなったからだ。」と付け足した。

「背? 何だよ、また伸びたのかよ?」
「今年の春頃、一気に4cmほど伸びた。だがそれから、ほとんど変化がないので、これで止まってしまったのかと危ぶんでいる。」
「...それ以上、伸びるんじゃねーよ...」
「ん? 何故だ?」
「オレより背が高いってのは、カッコわりーんだよ...」
「???」
「釣り合いがとれねーって、言ってんだよ!」
「何の釣り合いが取れないのだ? 意味がわからん。説明してくれ。」

飄々と聞き返してくる不破に、三上は軽く舌打ちする。
他校生で、特に繋がりのない間柄。それでも、時折、こうして二人は逢っている。
これが何を意味しているのか...はっきりさせていない、二人の関係。
不破に分かるワケない、それはそうだ、まだ何も言ってないのだから
だが...三上の性格として、そうカンタンに言えるものでもない。

しかし! そろそろ、はっきりさせておかなければ...けれど、何と言って切り出せば良いのか...

不破は三上が何を言い出すのかと、黙りこんで待っているようだ。
二人の間に奇妙な沈黙が流れた。店内の音楽とざわめきが、唯一の救いだ。


くしゅん...


この均衡を破ったのは、不破の方だった。

「おい? 風邪かよ?」
「あぁ、そうかもしれないな。昨晩、風祭の家に泊まったのだが、日付が変わった瞬間、風祭から誕生日プレゼントを貰った。」
「なにぃ!?」
「どうした? 何をそんなに驚いている?」
「おまえなぁ...」
「ん?」
「他のヤツから貰うんじゃねーって言っただろーが!」
「サッカーシューズは誰からも貰っていないゾ?」
「おまえ...オレの言ったこと、わかってねぇな...」
「???」
「...で、風祭から何貰ったんだよ...」
「?? これだが ??」

三上に真っ白いマフラーと手袋を見せると、三上は(気に入らなねぇ)とでも言いたそうな顔をした。
また、緩くなった珈琲に三上が口をつけるのを、不破は三上をじっと見つめた。

何故、三上は怒っているのだろう? むやみに他人からものを貰うな、とでも言いたいのだろうか?

理解に苦しむ不破だったが、風祭のことを話してしまった以上、下手に隠し立てすると後が恐ろしい。
不破は深呼吸すると、三上に全部話すことにした。

「ドイツに行った天城から...」
「あん?」
「誕生日おめでとう、と書かれたメールをもらった。」
「...」
「水野から...正確に言えば、水野の母親から、今着ているセーターを貰った。」
「はぁ?」
「はとこの京介からは、マンションを...」
「へっ!?」
「渋沢からは、GKのグローブと、いろいろと手料理を馳走になった。そして、乙女からは、このコートだ。」
「...」
「以上だ...他に何か聞きたいことはないか?」

次から次へと不破にとんでもない事を言われて、三上が唖然としている。

「三上、どうした?」
「...」
「みか...」
「おめぇ、なぁ...」
「ん?」
「オレに、自分が貰ったプレゼントを見せびらかしに来たのかよ!!」
「何を言っているのだ? 今日、この時間に会う約束は、三上が電話してきたからだぞ。」
「あのなぁ!!」
「...プレゼントを貰ったことだけが嬉しいワケではない。」
「ん?」

不破はテーブルの上で軽く手を組んだ。ほんの少しだけ俯いて、不破は三上に言う言葉を探しているようだった。

「おい?」

三上が不破の顔を覗き込むと、不破の瞳が三上を静かに見つめ返した。

「オレの事を覚えていてくれた...それがとても嬉しかったのだ。」
「!?」

「三上だって、オレの事を覚えてくれていた。」

不破は軽く息を漏らした。

「オレは皆の誕生日を覚えていたが、何もしていない。プレゼントどころか、言葉の一つもかけていない。オレは今まで、身内以外の誰かに、自分の誕生日を祝ってもらうことなど無かった。」
「...」
「そもそも、誕生日を祝う事自体が、不思議で仕方なかった。母親が、自分の腹を痛めて産んだ子供の、生誕を祝うのは理解できるような気がするのだが、その他の...ましてや他人が祝うのは、どうにも納得できなかった。ただの Anniversary 好きとしか思えなかった。」
「...」
「だが、それは違ったようだ。自分がこの世に生まれたことを『おめでとう』と言われることが、自分の事を覚えていてくれたことが、これほど嬉しくて暖かいものだとは...心地よいものだとは、オレは知らなかった。だから...」
「...」
「オレは、これからどうすれば良いのだ?」
「へっ?」

不破は一気に喋ったせいか、ほぅっと深い深呼吸をした。

「祝ってもらうことは嬉しいのだが、このままでは心苦しい。オレはどうすれば良い?」
「そりゃあ...」

言いかけて、三上は言葉を引っ込めた。

そもそも人がプレゼントをあげたくなるのは...相手の気を引きたい、自分の気持ちに気がついて欲しい、といった、いささか疾しい気持ちがある。
だが、不破の言うように、純粋にその人の生誕を祝福する、この世に生まれたからこそ、こうして出会えたことを祝福する意味もある。
そして、プレゼントをあげるのは、何よりも相手の喜ぶ顔が見たいのだ。
笑顔が見たいから、喜んでもらいたいから、皆、必死に何をプレゼントしようかと四苦八苦するのだった。

そうだ、不破の笑顔が見たかった。
喜ぶ顔が見たかった。

ただそれだけだ。他に理由はない。
...まぁ、下心ってやつもちょっとはあるか?

しかしながら、これほど素直に喜んでくれるとは、予想外だった。
今のご時世、不破のように素直に喜ぶヤツがいること自体が....

「奇跡だよな..」
「???」
「おまえって、ホント...奇跡だよ。」
「何の事だ?」

今まで、こういった経験がないという事が、とても不思議だと三上は思った。
サッカーを始める前は、『クラッシャー』と呼ばれて、近寄り難い雰囲気があったという。
今もその名残はあるが、三上は最初から不破を敬遠することはなかった。
ヘンなヤツ、面白いヤツ、それが、次第に、誰もが忘れてしまった無垢な心を持っているヤツなのだと気がついて...。
自分はどうしようもなく、彼に惹かれてしまった。
恐らく、他の連中もそうなのであろう。
今まで、人目に触れることがなかったのだ、彼は。
純粋で、奇麗で、無垢で...けれど、それに気づかれないように、まるで保護するかのように、彼の鋭い眼差しがあったのだ。
だからこそ、今まで、彼は奇跡的に、誰からも邪な感情に左右されることなく、今日まで生きてきたのだ。

奇麗なままで生きてきたのだ。

まさに、奇跡。
自分が彼に出会えたことも...奇跡。

だから...

「別にいーんじゃねぇの? くれるってんだから、貰っておけば?」
「ん?」
「プレゼントだよ。ヘンに気にすんじゃねーよ!」

見返りなんて、最初から要求していない。
おまえが笑ってくれるなら、おまえが喜んでくれるなら、それだけ良い。
そりゃ、おまえがこっちに、気持ちを向けてくれるならば、自分としては、これほど嬉しいことはないが...
まぁ、今のおまえに、そこまで要求したら...バチが当たりそうだ。

三上は、にやりと笑った。
いつもの三上だった。

細い顎に、GKとは思えないほど華奢な指先をあてがって、考え込む不破の頭を、三上はくしゃりと撫でた。

「肝心の言葉を言い忘れてた。」
「ん?」
「誕生日、おめでとう。」
「...ありがとう、これで、1月22日まで、三上と同じ歳だ。」


べしっ!


「い、いたい...三上。」
「おまえはなぁ...余計な事、言ってんじゃねーよ!」


今日で3回目のデコピン攻撃に、不破が痛がると、三上は腕組して鼻息を荒くしている。
ほんの僅かな時間だったが、早生まれの三上は、不破と同じ歳になる期間がある。
それを言われて、三上は何となく面白くない。

しかし。

不破が自分の誕生日を覚えていてくれた。
これは、不破が言うように、とても嬉しいことだと思った。

(まっ、相手にもよるだろけどな?)


店の窓から見える景色は、夕暮れの気配が近づいてきていた。
今年も...静かに終わりを告げる。


(来年こそは...覚悟しておけよ、不破!)


三上の独り言は、胸の中に深く深く、囁かれていた。











12月31日 / 18:30


「おかえりなさい! 遅かったわね!」

乙女が台所から声をかけてくる。
不破は、「ただいま。」と無愛想に答えて、荷物を抱えてまま部屋の戻ろうとすると、

「おう! ようやく帰ってきたか!」

振り向けば、リビングのソファーに、父親の大陸と、じいさんがどっかり腰掛けている。
二人の目の前には、渋沢宅ほどではないが、乙女が頑張って作ったらしい料理が並んでいる。
それをつまみながら、二人は酒を飲んでいるようだった。

「どうした? 珍しいな?」

不破が思わず、率直な感想を言った。
この二人は、一年中、仕事が忙しくて、家にいたことがないのだ。
乙女も仕事が忙しくて家にいることは少ないのだが、それ以上に、この二人と顔を合わすことは滅多にない。
それが、こうして顔を揃えて、ましてや、酒を酌み交わしているところなど、今まで見たことが無い。

「ほんと、びっくりよねぇ〜、大ちゃん!」

乙女が料理を運んできて、二人の前に並べていく。
こうしてみると、全く普通の家庭のように見えるのだが...この光景が普通でないと思えるのは、不思議なものだ。

「乙女、その呼び方はヤメロと言っているだろう。」
「そうね? もう14歳なんだから、そろそろ別な呼び方した方が良いかしら?」

乙女は、「じゃあ、何て呼ぼうかしら?」などと、ころころ笑っている。
その横で、大陸とじいさんは、仕事の話しで盛り上がっているらしく、大騒ぎだ。
賑やかなリビングを横目にして、不破は大きな溜め息を吐くと、再び自部へ行こうと階段を上りかけた。

「大ちゃん! お風呂にはいりなさ〜い!!」

乙女の声が追いかけてきた。
だから、その呼び方は...と、不破はむっとするとが、今度は振り返らずに階段を上っていく。
すると、乙女は、階段下まで追いかけてきて、不破の背中に大きな声で話しかけた。

「初詣、サッカー部のみんなと行くんでしょ? その前に、お風呂にはいっちゃいなさいね!」
「乙女。」
「ん?」

仕方なく、不破は乙女に振り向いた。

「少し風邪気味なので、今日は風呂に入らない。」
「えっ? そうなの? でも、今年のアカは今年中に洗っておいた方が良いわよ。」
「乙女...オレは毎日、風呂に入っているから...」
「でも、今日はおじいちゃんも珍しく入ったわよ。だから、大ちゃんも入っちゃいなさいよ。」
「しかし、夜、出かけるから...」
「暖かい支度していけば大丈夫よ。 今日は、そーいうものが、ぜーんぶ揃ったんじゃないの?」

乙女は不破が抱えている荷物や身につけているものを、ちらっと見ながら、くすくす笑った。

「じゃあ、早く入っちゃいなさいね。それから、ご飯にしましょう!」

乙女は、それだけ喋ると、ぱたぱたと走って台所へと戻っていった。
彼女の足音を聞きながら、不破はまた溜め息を吐いた。

ゆっくりと階段を上って、自室に入る。主人が不在だったので、室内はとても寒く、吐く息が白くみえるほどだ。
エアコンをつけようとしたが、このまま着替えを持って風呂へ行くことにした。
荷物をどさりと床に置いて、クローゼットから手早く着替えを取り出すと、ふと時計に視線を移した。

初詣の待ち合わせは、23:30。場所は河川敷のいつも所。
だが、その前に...。

不破には寄る所があった。
多分、これが、今日の最後の待ち合わせになる。
忙しない一日の締めくくりだ。

かちり。

時計の針が一つ進んだ。そろそろ19時になろうとしている。
あいつとの待ち合わせまでは、まだ時間がある。

風呂に入って、夕飯を食べて、エネルギーを補給しておこう。
これから逢う相手が、今日一番の神経を使う相手なのだから。











12月31日 / 22:00


「こんばんは。」
「やぁ!いらっしゃい!...おい! シゲ!不破くんだよ!!」

寺の境内は、深夜と思えないほど、明るく照らされて、多くの人達が歩き回っている。
年に一度の賑わいだった。除夜の鐘をつくために、この寺には近在に住む人達が訪れるのだ。
境内では、甘酒を振る舞うらしく、寺の兄(あに)さん達が忙しく動き回っている。

その中に...この寺には不似合いな、金色の髪を持つ彼がいた。

「おう! こっちや! 不破!!」

ひょいっと窓から顔を覗かせて、手招きをする。
どうやら、台所にいるらしい。そこは、今時、珍しい土間になっている台所だ。
不破が人の間をすり抜けて、そこへ入り込むと、むっとした空気が鼻をつく。

「すまんな! 実は、まだ手が空かないねん! これでも飲んで、もうちょい、待っててや!!」

手渡された湯飲みには、熱い甘酒が注がれていた。
両手でそれを受け取ると、動き回る人達の迷惑にならない様に、こっそり家の中に入り込む。
廊下はひんやりしているが、人が多いせいか、いつもより暖かく感じられる。
壁によりかかって一口それを飲むと、口一杯に甘ったるい味が広がって、喉がじりじり熱くなる。

「部屋に行っててな、不破! オレも、もうちょいで終わるから...」
「手伝うか?...シゲ?」

廊下に顔を覗かせた彼を、戸惑いながらも、不破は、「シゲ」と呼んだ。
咄嗟に彼の大きな瞳がぱっと見開かれて、くるくると愛敬を振りまく。
すると、シゲの後ろから、一人の兄さんが声をかけてきた。

「シゲ! もういいよ、行っても!」
「へっ? せやけど...」
「学校のみんなと待ち合わせてるんだろ? もう、こっちは大丈夫だから、な?」
「んー、けど、まだ時間はちょっとはあんねん。せやから...」
「不破くん、待たせちゃ悪いだろ? シゲ。」

「オレだったら大丈夫です。」

兄さんとシゲの会話に、不破が口を挟んだ。

「手伝っても良いです。」

不破の申し出に、兄さんは頬を掻きながら、「んー、でも、それは悪いから...」と困った顔をして、少しのあいだ考え込んだ。
けれどすぐに、ぽんと手を叩いて、「じゃあ、せっかくだから、ちょっと頼んじゃおうかな?」と、にこっと笑い返したくれた。

不破もシゲと同じように、頭に手ぬぐいを巻き付けて、コートを脱いでセータの袖を腕まくりしていると、兄さんが、「セーター、汚したら大変だから、ね。」、そう言ってエプロンを貸してくれた。

真っ白いセータ。真新しくて、シゲには見覚えないものだ。
コートも今夜初めて見たものだし、マフラーも手袋も...。

それに、今夜は何処となく、不破の態度が柔らかく感じられるのも不思議だ。
自分のことを、初めて「シゲ」と呼んでくれた。

一つ歳をとったからといって、人間すぐには変わることはない。
もし変わっているのならば、すでにその変化は始まっていたのだ。
不破の中で、何かが変わりつつあったのだろう、いや、変わったのだろう。
自分はそれを見過ごしていたのだ、この微妙な変化を。

何が変えたのか?...誰が変えたのか?

それが自分であれば嬉しいが、多分、自分ではない。
いや、自分も一因であるかもしれない。だが、ほんの少しだけだ、きっと。
自分にはまだ、彼を変えられる力はない。彼のすべてを...得られるだけの力がまだ無い。

「まだまだやなぁ...修行が足りんか...」

呟いたシゲの独り言に、横で大鍋を掻き混ぜていた不破がぱっと顔をあげた。

「修行なのか? これも?」
「へっ?」
「こういった仕事も寺の修行なのか? つまり奉仕ということか?、大変だな。」
「いや、そーいう意味では...」

シゲは苦笑いした。
この、素直で純粋で汚れを知らぬ彼を、手に入れるには、まだまだ自分の修行が足りない、と呟いただけだ。
それを何を勘違いしているのか...まぁ、彼が理解できれば、誰も苦労はしないのだが。

「シゲ。」
「ん?」

不破に呼ばれて、シゲが顔をあげた。今夜は、ようやく名前を呼んでくれた。
随分と前から、不破には、「シゲ」と呼んで欲しい、と言っていたのだが、なかなか聞き入れてくれなかった。
それが、今夜はどうしたのだろうか? 躊躇いながらも、「シゲ」と呼んでくれる。

「おまえは、このまま寺にいるのか?」
「あん?」
「このまま...僧侶になるのか?」
「はぁっ? まっさか! とーんでもありましぇん!!」
「では、いつか...此処を出て行くのだな?」
「あぁ、そのうちな。」

そこまで答えて、はっとした。
シゲが不破の瞳を覗きこむと、彼は静かにシゲを見つめていた。

「そうか...」
「...」
「では、出て行く時には教えてくれ。」
「へっ?」
「挨拶。」
「???」
「別れの...挨拶くらいさせてくれ。」
「!?」

瞠目するシゲ。不破は気づいているのだ、とっくに。近いうちに、シゲが此処から出て行くことを。
そう、遠い話しではない。父親の家に入った時から、それほど遠い話しではなくなったのだ。

京都の戻る。

それが分かるのなら、何故、自分の気持ちに気がついてくれないのか!?

「おい?」

不破が突然、シゲの目の前に大きな木杓子を差し出した。
ぎょっとして不破を見ると、彼は大鍋を指差して、「出来たゾ。どうすれば良い?」とシゲに、いつもの無表情な顔で聞いてきた。

「あぁ、だったらねぇ...」

二人の後ろから、兄さんが話し掛けてきた。兄さんは不破に、てきぱきと指示すると、不破も肯きながらそれに従う。
その様子を、シゲはぼんやりと見ていた。そして、ついつい、手がお留守になってしまったので、しっかりと和尚に叩かれてしまった。
痛がっていると、兄さんが「シゲ、もう大丈夫だから、不破くんと一緒に出かけておいで。」と優しく肩をたたいてくれた。

「おおきに! そんじゃ、まっ! 不破、行こか!」
「あぁ、分かった。」

手ぬぐいとエプロンを兄さんに返して、不破はコートを羽織ると、外へ出ようとした。

「あっ! 不破、ちょっと部屋まで来てくれへんか?」
「ん?」

シゲに呼び止められて、また家の中へと戻ると、

「こっちや。」

シゲに手招きされて、家の奥へと入っていった。

階段を登って、シゲの部屋の中へと一緒に入り込む。主人が不在していた部屋は、とても寒かった。
一瞬、ぶるっと身体を震わして、部屋の中を見渡すと、部屋の隅に置かれた小さなダンボール箱に気が付いた。
シゲに送られてきたそれを、不破は何気なく、箱の上にに書かれた宛名を見てしまった。


『藤村茂樹 様』


そう書かれていた。

何かが...崩れていくような感覚。
けれど、心の何処かで、やっぱり...と肯いている。
それなのに、肯きながらも、『当たってほしくなかった』と呟いている。


「ほい。」

不破の目の前に、シゲが封筒を差し出した。真っ白な封筒。
いつの間にか、シゲはコートを着込んでいて、不破の前に立っていた。
シゲの吐く息が白く見えるほど、この部屋の中は寒々としている。


何故、京都を離れて、此処に来たのか?
どうして、今頃になって、帰るのだ? おまえは...


声にならない言葉を噛み締めて、不破は差し出された封筒を受け取った。
だが、それをどうすれば良いのか、考えていると...

「開けてみ。」

シゲに言われるまま開封する。すると、中から新幹線の切符と旅行会社の宿泊クーポン券が出てきた。

「京都。」
「えっ?」
「一緒に行こ。」
「...」
「約束したやろ? せやから、一緒に行こ、なっ?」
「...」
「日程は変更できへんから、この日の予定はぜーんぶキャンセルせぇや。」
「...」
「オレの生まれ育ったトコ、おまえに見せたいねん。そこ行ったら、オレ...」


全部、おまえに話すから...今までのことも、これからの事も、全部。


窓の外から聞こえてくる話し声が、大きくなる。
そろそろ、本格的に人の波が押し寄せてくるようだった。

何処かの部屋から、TVの音が、年末恒例の歌番組を賑やかに伝えている。
もうじき、一年の中で一番忙しい日が終わろうとしているのだ。

それなのに、この部屋の中の空気は凍り付いてしまったかのように静寂だった。
窓の外の喧噪が、全て遠い世界のように思えてくる。


くすっ...


シゲが笑った。目を細めて、ちょっと照れくさそうに。
けれど、愛嬌のある大きな瞳は、真っ直ぐと不破を見つめている。


「もうじき、今年も終わりやなぁ。」
「...」
「ってことは...不破?」
「???」


誕生日おめでとう...


今日で何度目だろうか? この言葉を言われるのは。
それでも、彼から告げられて、胸の奥が少しだけ熱くなる。

何故? どうして?...怯えているのか?


不安...か。


来年は逢えないかもしれない。
そう思ったからだ。

彼と離れるかもしれない。
彼と逢えなくなるかもしれない。

遠く離れて、もう二度と...

だからこそ、今日を祝福しよう。
共に過ごせる時間を大切にしよう。

彼に出会えたこと、自分が生まれたこの日があればこそだ。
今日というこの日に、今この一時に、感謝しよう。

彼とこうして一緒にいられることに。


「ありがとう、シゲ。」


そして


冬の京都は綺麗だろうな...


不破が微かに微笑んだ。それに答えるかのように、シゲの瞳が優しく微笑んでいる。


時計の針は、確実に進んでいく。
新しい幕開けが近づいている。

時のページがまた一つ、めくられる。


何かが始まる...











12月31日 / 23:45


「さっすがに賑やかだね!」

河川敷に集合して、ざわつく神社の境内の中を、皆で歩いていく。

「不破くんは、何をお願いする?」

横を歩いていた風祭が、不破を見上げて質問してきた。

「ふむ? 願い事か...」

歩調を皆と合わせながら、不破は夜空を見上げて考え込む。

「特に無いな、思い当たらない。」
「えっ〜! だって、これからみんなでお願いするんだよ!」
「うむ、では、『家内安全、商売繁盛』か?」
「何それ?」
「ヘンか?」
「うん! すっごくヘンだよ!!」
「...そう言う風祭はどうなのだ?」
「ボク? ボクは、『韓国戦に出場する!試合に出れたら点を取る!』かな?」
「ふむ、かなり具体的だが、一年の願い事にしては、狭い範囲のものではないか?」
「そう? だって、沢山お願いしたら、どれも叶えてくれなさそうで...」
「オレは、てっきり『身長』について願うのかと思った。」
「あっ!ひどい!!...でも、本当はそれも考えてたんだけどね、一応。」

てへへへ...と笑う風祭。不破が風祭を見下ろすような格好で、二人は並んで歩いている。
その後ろを、水野とシゲがついてくる。二人の他愛もない話を聞いて、水野はくすりと笑った。

やはり、風祭には敵わないのか...

それでも、諦めきれない。諦めることなど出来ない。
我ながら図太い性格になったものだと、水野は一人で笑った。

「韓国戦か...」
「ん?」

シゲがぽつりと水野に呟いた。

「スターティングメンバーなんやろ?」
「へっ?」
「たつぼんは?」
「...その呼び方、ヤメロって言ってるだろ...」

むっとしながら水野は顔をシゲから背けると、「そうだよ。」と素っ気なく答えを返した。

「さよか、まぁ、あんじょう、きばりや。」
「シゲ?」

今度はシゲが空を見上げて、水野から視線を外す。

「オレも本気やから。」
「えっ?」

境内の混雑がよりひどくなって、次第に、皆一緒に歩くのが大変になってきた。
大勢の参拝客が、新しい年が明ける瞬間に参拝しようと行列を作って並んでいる。


どこからか、賑やかなカウントダウンが始まる声が聞こえてきた。


不破がその声に立ち止まる。不破に合わせて、風祭も立ち止まる。水野も、シゲも。



5...4...3...2...1...0!!



Happy New year! 



街中に響き渡る除夜の鐘の音に混じって、クラッカーを鳴らす音が聞こえてくる。


「新年あけましておめでとう! 不破くん! 水野くん! シゲさん!!」


風祭の元気な声に、ふと不破も口元を緩めた。

「あぁ、おめでとう。」


水野も笑った。

「おめでとう。今年もよろしくな。」


シゲが片目を瞑って笑った。

「おめっとさん! 今年もよろしく頼んまっせ!」



きっといいことある。
そんな予感で胸が騒ぎ出す。


君と一緒だったら、毎日夢が生まれてくるよ...きっと!











1月1日 / 00:15


参拝を無事済ませた桜上水サッカー部は、これから深夜のフットサルを楽しもうと、皆で移動していた時だった。

「ふっわぁ〜!!」
「!?」

突然、背後から大声で飛びかかられて、不破は思いっきり仰け反った。
倒れそうになった不破の身体は、辛うじて横にいた松下に支えられたが、彼がいなかったら本当に危なかったのだ。
松下が、「おいおい、危ないよ、藤代くん」、そう言って、不破にしがみついていた一匹(?)を引き剥がしてくれたので、ようやく不破の身体は自由になれた。

「藤代か?」
「はい、そーです!!」

不破が振り返ると、其処には藤代誠二がへらっと笑いながら立っていた。
藤代の顔を見て、水野やシゲが、ちょっと嫌そうな顔をする。
だが、藤代は全然気にしない。これくらいで、藤代はめげないのだ(単細胞?)。

「不破! ちょっと遅くなっちゃったけど...」
「ん?」
「誕生日、おめでとう、な!!」

藤代はいつもの人懐っこい笑顔で、今にも不破に飛びかかりそうな雰囲気だった。
ホームズみたいだ...思わず、水野が思ってしまうくらい、藤代は元気いっぱいに笑っている。

「ありがとう。」

不破も、いつもの無表情の顔で藤代に答えると、ちょっと首を傾げて考えた。
だがすぐに、口を開いた。

「藤代。」
「なに?」

「お誕生日、おめでとう...」
「へっ!?」
「今日...1月1日は、おまえの誕生日であろう?」
「...不破、知っててくれたんだ...かっ、感激ぃ〜っ!!」

抱きつこうとする藤代に、さすがに堪忍袋の緒が切れたのか、シゲだけではなく水野までも、藤代の背中に蹴りを入れた。

「いった〜い!! 何すんだよ!! オレ、今日、誕生日なんだから、これくらい、いーじゃん!!」
「よくねぇーよ!! 誕生日だからって、どさくさに紛れて、不破に抱きつくんじゃねぇーよ!!」

おい、水野、性格違うぞ...っていうか、その口調、誰かさんにそっくりなんだけど...気のせいか?

さすがのシゲも、それだけはつっこめないようだった。

「ちぇっ、何だよ! 少しくらいいーじゃん!!」

口を尖らせる藤代に、風祭が「藤代くん、何処行くの?」と、訊いてあげた。
藤代は、にかっと笑いながら「笠井んち!!」と答えると、「そっちは?」と聞き返してきた。

「ボク達は、これからみんなでフットサルしに行くんだ。」
「へぇ〜、そうなんだ! 初詣は?」
「もう行ったよ。」
「げっ! そうなの! オレ、まだ行ってないんだ! これから笠井と一緒に行こうかって考えててさっ!!」

藤代は残念そうに、「オレもフットサル、やりた〜いっ!!」と叫んだ。

「でも、笠井とこれから初詣がてら遊びに行くんだよね...残念!!」

拳を握りしめて悔しがる藤代だったが、腕時計を見て「やばい! 遅刻だ! またね! 不破!!」、そう言って元気に走り去ろうとした。

その時。

「藤代。」

不破が声をかけた。
驚いて藤代が振り返る。


「新年あけましておめでとう。」


突然、挨拶されて藤代がぽかんと口を開けている。
すると、不破はさらに、

「おまえには年賀状を出していないから、な?」

と言った。

どうやら、年賀状がわりの挨拶だったらしい。
不破らしいので、風祭が笑った。

水野やシゲも口を押さえて笑っている。

「おまえ達には書いたゾ。」
「えっ? そうなの? 不破くんが!?」

風祭が不破を見上げる。

「あぁ、パソコンなら面倒はないからな。」
「そうなんだ...でも、不破くんから年賀状だなんて、すっごく貴重かも!?」
「ふむ? そうだな...初めて...書いたな...」

首を傾げながら歩き出す不破。藤代は不破の背中をぼーぜんと見送っている。

「どんな年賀状か、楽しみ!!」
「そうか? フツーだと思うのだが...」


不破はふと思い出す。
去年...といっても、つい数時間前の出来事だったが、皆に誕生日を祝ってもらった事がとても嬉しかった。

初めての経験だったからだ。
とても不思議な気持ちがした。

それと同じくらい、不思議だと思ったのは...サッカー部の連中に年賀状を書いたこと。
よもや、自分がこういった年末行事をするとは夢にも思わなかった。

今晩の初詣も、そうだ。


色んな事があった一年だった。
沢山の経験をした。

沢山の想い出が出来た。


今年はどんな一年になるのだろうか?


月並みな事かもしれないけれど...

今年も良い事が沢山ありますように...

皆に沢山の幸せが訪れますように!!



Happy Happy Greeting to you !!




FIN(オチなし?)




☆ ―――――――――― ☆


あとがき


年末から書き始めたのですが...結局、10日もかかってしまいました。
個人的に、いろいろありまして、自宅で書ける状況じゃないなかったものですから、就業時間中、またやっちまいましたね(爆)。
ですから、なんと霧散的な内容なんでしょう!? 何が書きたかったって...もう、目的がなくなってました。
ただひたすら、不破の忙しい誕生日を書いていただけでした。最後におまけ程度に藤代登場。本当におまけでしたね(殴)。
MY設定の渋沢の弟まで登場させちゃいましたし...収集つかなくなりましたので、オチなし、強制終了です(滝汗)。

不破とシゲの京都旅行。書けたらいいなぁ...婚前旅行か!?なぁんて...一人で突っ走るなよ、自分!!


このような駄文を最後まで読んで頂いて、有り難うございました。


また、大変遅くなりましたが、昨年は大変お世話になり、有り難うございました。
このような貧弱駄文サイトではありますが、今年もお付き合いの程、宜しくお願い致します。
ご来訪頂く皆々様方のご多幸をお祈り申し上げます。本年も何卒、宜しくお願い致します。m(_ _)m


2002年1月10日

佐藤圭大 拝



☆ ―――――――――― ☆

戻る