桜坂
あれから1年。
もう1年も経ってしまった。
この1年間、沢山の出来事があった。
様々な事を経験した。
でも、抱え切れない程の思い出は、君と過ごした時間が多くて。
いつまで、こうしていられるのだろう、僕たちは。
「わぁ、満開だね!」
学校の門をくぐりながら、風祭将は小さな子供のように歓声をあげた。
大きな瞳を輝かせながら笑いかけてくる将に、不破大地も自然と口元が緩む。
「あぁ、この2、3日、4月にしてはかなり暖かかったから、一気に咲いてしまったらしい。」
「これじゃ、入学式には散っちゃうかもね。」
「ふむ。あと1週間はあるから、葉桜になっているかもれしない。」
「...僕がここに来た時も4月だったけど、桜は散ってたなぁ。」
ふと、将が、桜を見上げながら呟く。
不破は、そんな将の横顔を見つめながら、
「桜上水に来て、1年になるのか。」
「うん...あっというまだった。この1年間、楽しい事も苦しい事も沢山あった。」
桜から目を逸らさない将は、何か感慨に耽っているようで、しばらく声がかけられなかった。
静寂な空気があたりを包む。
時折、微かな風が吹いて、桜の花びらと二人の頬を優しくでていく。
春休みもそろそろ終わる学校は人気が無く、二人の近くには誰もいない。
「...オレとは、まだ1年にならないな。」
「えっ?」
不破が沈黙を破って声をかけてきたので、将は一瞬何を言われたのか理解できなかった。
「おまえに川に突き落とされてから、まだ1年経っていない。」
「あっ!あれは...」
思い出して、将は顔が赤くなる。
あれは...確か、春の大会が終わってからだから、そう、5月が終わる頃だった。
不破と出会った時のことを思い出す。
あの日の記憶が、鮮やかに蘇ってくる。
橋の上でボーとしていた不破が、自殺するんじゃないかと思って止めようとして、そのまま一緒に川に落ちた、あの日。
それがきっかけで、何故か?二人でPKの練習(?)やって、不破に負けた、あの日。
不破に負けたことが悔しくて、不破に勝たなければ、武蔵野森の渋沢に勝てないって思って、アウトフロントキックを
一生懸命練習した。
練習して、もう一度、不破と勝負した。
将は、不破に勝った。
そして、将に負けたことが、不破の将への興味を抱かせ、不破は桜上水サッカー部に入部したのだ。
それから、こうして、二人で過ごす時間が多くなった。
振り返れば二人で、同じ時間の中で過ごす事が多かった。
当たり前のように過ごしてきた二人の時間。
あれから、まだ1年経っていないと、不破が言う。
将は不破と出会って、まだ1年経っていないという事実に少し驚かされる。
こうして、二人で過ごす時間は、今までずっと続いていたような気がしていたから。
二人で刻む、この時間は、これからもずっと続いていくような気がしていたから。
今までもこれからも、ずっとずっと一緒だと思っているから。
1年という時間の単位を意識したことがなかった。
だから...
これから1年後、二人はどうなっているのだろう?
来年は、卒業だ。
高校生になる。
不破とは?
離れてしまうのだろうか?
学校で一番優秀な不破と、ビリから数えた方が早い将とでは、進学する高校は別になるだろう。
けれど、サッカーを続けていれば、決して逢えなくなるわけではない。
逢えなくなるわけではない、だけど...
胸が苦しくなって、将は俯いてしまった。
どうして、こんなに苦しくなるのだろう。
不破と離れてしまうかもしれないと考えただけで。
まだ1年あるというのに。
まだ何も決まったわけではないのに。
だがこれから来るであろう、不破との別れに、将の胸が痛んだ。
いや、別れるわけではない。
逢えなくなるわけではない。
たかが、中学卒業だ。
なのに...。
今から、こんなに怯えてどうする?
将は、自分で自分に叱咤するが、全く効き目がない。
1年後には、不破と離れるかもしれない...その事が、将の心に重くのしかかってきた。
俯いてしまった将の肩に、暖かいものが触れてくる。
「?????」
気が付いて、顔を上げると、不破がそっと将の肩を引き寄せていた。
「...まったく、おまえはわかりやすいな。」
「へっ?」
「何を考えているのか...おまえの考えていることなら、ほとんど分かるゾ。」
「そ、そう?じゃぁ...」
――――― 今、僕が何を考えていたのか、分かる?
そう言いかけて、将が不破の顔を覗き込んだ、その時。
「来年は、ここではない、別な桜を一緒に見よう。」
「不破くん...」
――――― 別な桜って? 何の事?
聞き返そうとした将は、より深く不破の腕の中に包まれた。
「来年は卒業だ。それぞれ進む道が違うかもしれない。
けれど、どこか、違う場所で、こうしておまえと一緒に桜を見たいと思う。
嫌か?」
――――― 嫌なわけないじゃないか!!
即答だった。
けれども、不破の腕の中に抱え込まれて、将の声は小さくてほとんど聞こえない。
将がじたばたと暴れ出すので、不破は将の小さな身体を解放した。
「不破くん!」
思わず叫ぶと、不破は少し驚いたように
「なんだ?」
と、聞き返してくる。
「約束だよ!」
「ん??」
「今、不破くんが言ったこと! 一緒に...来年も桜の花、一緒に見ること!絶対約束だからね!」
将のはっきりとした声に、また驚いた不破だったが、急にくすりと笑い出した。
「不破くん?」
笑い出した不破に、将はおそるおそる話しかける。
「おまえは本当にわかりやすいな。」
「そ、そう....?」
「おまえこそ、来年はオレじゃない誰か他のヤツと見るなよ。いいか?」
「うん!!不破くんこそ、絶対だからね!!」
交される小さな約束。
無邪気な子供同士の約束。
けれども、僕には君じゃなきゃダメだから。
君だけが僕を分かっているから。
どうか、どうか、この小さな約束が涙に変らないように。
どうか、どうか、いつまでもずっと二人で...
Fin(すんません。これで終わりです...)
あとがき
2000ヒット達成に、知夜様から頂いたリクエスト「不破×将」を書きました。
なんか、すげぇ甘くて甘くて、こんなんで良いのでしょうか?知夜様...
突っ返されたらどうしよう...なんか申し訳ないです。
単純に、不破と将が3年生に進級する、桜の咲く季節を書きたかっただけでして...
でもって、さらに卒業して、進学はどうなるのか?ってことを書きたかっただけでして...
原作ではまだまだそこまで書かれていないので、全て憶測なってしまいますが、それでも彼らが
どうなっていくのか...楽しみですよね。
楽しみながら、勝手にこんなものを書いてしまいました!?
すんませんです!!
これに懲りずに、またウチに遊びに来てやって下さい。
拝借したタイトルは...あまりにも知られすぎている福山雅治氏の名曲です。
ついでに、引用している部分も結構あったりして...(^^;