練習が終わって皆がそれぞれ、明日の試合に備えて帰途に着く頃、水野竜也は一人、いつもの河川敷に来ていた。
いつもの...と言っても、水野ではなく、風祭の方がここにはよく来ている。

――― 水臭いなぁポチのやつ ドリブルの練習くらい なんでオレに言わん

いくらでも付き合ってやるのに....ってオマエの気持ち代弁してんねん...

ふと、川から吹いてきた風にのって、さっきのシゲのセリフが聞こえてきたような気がした。
竜也は、思わずため息をついてしまう。時折...どうしようもなく切ない気持ちになる。

(オレのこと、どう思ってるんだろう...あいつは...)

では、自分は? 自分にとって、あいつは、何なんだ? 友達??ただの友達なのか?シゲに対する気持ちとも異なっている。高井達とのつながりとも異なっていると思う。友達には違いないが、どこかが違うと思う。何が違うのか...友達という関係だけではない、何かが違う。

竜也は、自分で自分の感じている、その違いが分からなかった。
あまりにも漠然としていて、それでいて、明らかに違うと言いきれる何かが...確かにある。
そう、自分の中には...。

――― 過保護はいかんなぁ うかうかしてると、追いつかれるでぇ...

また、風にのって、シゲのセリフが聞こえてきた。

(過保護...じゃないよなぁ)

しかし、シゲの言おうとしていることは、何となく理解できる。傍から見れば、竜也の風祭に対するものは、手のかかる子供の世話を喜んでやっているような『過保護』な親に似ていると思われるかもしれない。

だが...違う。

確かに、あいつは、まだまだ手がかかるけど、シゲとは違った意味で、頼りになるやつだ。あいつが、桜上水に来てくれなかったら、オレは今頃、どうしようもなく無駄な時間を費やしてしまっていたことだろう。サッカーを...辞めていたかもしれない。サッカーが楽しいって、自分はやっぱりサッカー大好きだってことを思い出させてくれたのは、風祭、おまえなんだ。

そんなおまえに、誰かが...オレじゃない誰かが、側にいるのが嫌なんだ、きっと...。
これは...この思いは...一体、何なんだ?
自分でも理解できない感情が膨らんできて、自分の中を虫食んでいくような錯覚を起こしてきた。

(独占欲...っていうのか、これは...)

自分でも初めて意識した感情だった。

そうか、だから...あいつが、先輩と練習してるって聞いた時、妙な気持ちになったんだ...
多分、これは...嫉妬...先輩達に対して...嫉妬している...

(えっ...? 何??)

行き着いた思いに、今度は戸惑った。

(誰に嫉妬してるってぇ!?)

一人で赤面している竜也の側を、他の通行人達が不思議そうな顔で通りすぎていく。だが、そんな他人の目も、竜也には気遣う余裕がない。

(違う!独占欲でも嫉妬でもない!じゃぁ...じゃあ、何なんだ!?)

ふと、火照った頬を、冷たい風が撫でていった。竜也は、ようやく我に返ると、いつのまにか、河川敷は夕闇に包まれていたのに気が付いた。さっきまで、河川敷で遊んでいた小さな子供たちも、すで帰ったらしく、人気がほとんどなくなっていた。

(今日は...さすがに来ないな、あいつ)

明日は試合だ。ついに、明日から、始まるんだ。オレ達の夏が。

(そうだよな、風祭...)

そう、ここにいつまでも立ち止まっている場合じゃない。こんな出口のない思いに縛られている時間はない。
だけど...これだけは、しっかりと分かる。

風祭...、おまえはオレにとってかけがえのない存在だということを...。
かえがえのない、唯一無二の存在なのだと...。

今は、それだけでいい。

いつか、おまえはオレに追いついてくるだろう。
けど、オレはさらにおまえより先に行ってやるさ。
だから、オレの...側から離れるなよ、風祭...。

河川敷の外灯に灯が点った。
竜也は、ようやく家路へと足を動かした。

明日は頑張ろうな...今日はゆっくり休めよ...今夜は...お休み...








☆ ―――――――――― ☆

あとがき

初めて書きました。水野くんのつもりなんですけど...
タイトルは、福山雅治氏の曲から頂きました。
不破くんモードとちょっと前後してます。
シゲモードも書きたかったのですが、ネタが浮ばないのと、力不足のため...断念しました。
修行せねば...

☆ ―――――――――― ☆

戻る