自分勝手に思い込んで
裏目に出ることよくあるけど
生きてゆきたい 今日より明日へ

ひとりじゃない 君が希望(ゆめ)に変わってゆく
向かい風も羽ばたける 微笑っていておくれ
ひとつになろう

確実なものは 何もない世紀末(よのなか)だけど
君と笑い君と泣いて 僕は僕に戻る

素直になれず 励ましさえ拒んでいた夜も
こんな僕を 包むように見守っていてくれた

ひとりじゃない.....



「素直じゃないよな!あのクソ親父!!」
「それはお前もや」
「...悪かったな」

昨夜から降り続いていた雨がいつしか止んで、雲の切れ間から見えてくる蒼い空に、桜上水サッカー部の笑い声が響いている。雨の中、泥だらけの試合。けれど、苦しかったのは天気のせいだけじゃない。

昨夜、母から告げられた真実に、困惑した自分。それを引きずったまま試合に出た。意外なポジションチェンジにも驚いたが、それ以上に驚いたことがあった。いや、気が付いたこと、だ。

そうだ...考えさせられた。自分のこと。自分自身のこと。

どうして素直じゃないんだろう。
心の奥でどうにかなってくれればいいと思いながら、自分からは...何もしなかったこと。
傷つくのが嫌で、自分の中に踏み込まれるのが嫌で。そんな素直じゃない自分に気が付いた。
気が付かせてくれたのは...おまえだ、風祭。

おまえのおかげで俺は...。
だけど、それだけじゃない。おまえだけじゃない。俺には...

――――― 俺には頼もしい仲間がいる

ひとりじゃない。

サッカーはひとりじゃできない。そんな当たり前のことに今更ながら気が付いて。俺はうれしくなって、泣きたくなって。けど、そんな自分が恥ずかしくて。

試合が終わって、母から父の病気が大したことないって聞いて、安心した。

「悔しかったら勝ち上がってこい!」

父の憎まれ口も相変わらずだったが、試合の前とは全然違う自分の気持ちに、なんていい加減なヤツだなんて、自分で自分に苦笑いした。だから...。


「風祭」

洛葉との泥だらけの試合を終えて帰り支度をしながら、水野竜也は風祭将に話し掛けた。昨夜、母から渡された彼のTシャツを返すためだ。

「これ...夕べ、母さんから渡しておいてくれって言われた」

差し出されたTシャツに、あっと驚いた将は、急に顔を赤くして下を俯いてしまった。その様子に、サッカー部全員の視線が集中する。

これから、何が始まるんだろう...??

昨日の事といい、水野と将の間に何かあると心配しているメンバーは、ハラハラしながら二人の様子を窺っている。

「ごめん。水野くん。黙っていてごめん!」
「風祭?」
「ぼくは...ずるい。本当にごめん!」
「どうして?」

何故、風祭が謝るのか...?、水野が不思議そうな顔をした。謝るのは自分の方だ。将に苦しい思いをさせてしまったのは、自分だ。自分の素直じゃない行動に、言動に、将を苦しめてしまったのは、自分だからだ。水野は、そう思っている。

だから...どうして風祭が謝るのか?
どうして自分をずるいと感じているのか?

「何で、おまえが謝るんだよ」

ちょっと怒ったように水野が言うと、将は受け取ったTシャツを握り締めながら、迷いを振り切るように大きな声で話し出した。

「監督から口止めされていたから、話さなかっただけじゃない。水野くんに本当のこと話したら、監督の本当の気持ち話したら、水野くんが武蔵野森に行っちゃうんじゃないかって...。ぼくは、水野くんが苦しんでるのに、自分の都合で話さなかった。だから...ごめんなさい、水野くん」

真っ直ぐに将に見詰められて、今度は水野の方が下を向いてしまった。

「それから...殴ってごめん」

駄目押しの一言だと、水野は思った。水野だって、将を殴った。正確に言えば、シゲを殴ろうとして間に将が入ってきただけなのだが、それでも将を殴ったことには違いない。

将のように素直に謝れない自分は、なんてみっともないんだろう。
素直に自分の気持ちを言えない自分は、なんて人間が小さいんだろう。

――――― お前にとっての友達ってなんや?

シゲに言われた言葉が、ふと頭の中を過ぎる。

――――― 見下してる...

違う!、風祭を見下してなんかいない!、風祭は友達だ!、自分にとって、とても大切な友達なんだ!
大切すぎて...自分の弱い部分をみせることが出来なかった。
風祭にいつも必要とされていたくて、頼りにされていたくて...

それが自分から檻を作っていたことになった。真正面から向き合わなければいけないことも、ナアナアで済まそうとしていた。

――――― そないなやつは、桜上水にはいらん!!

...そんなこと言わないでくれ、シゲ。でも、確かに...認めるよ。今までの自分が素直でなかったこと。無意識のうちに、他人を見下すような態度をとっていたこと。

だけど。

気が付いたよ。
ようやく気が付いたんだ。
今日の試合で。

――――― 何を一人で気負っていたんだろう...って

だから...もう...


「それなら...俺だって謝らなきゃならないだろう」
「水野くん?」
「俺だっておまえのこと殴ってるんだから。」
「それは...」
「すまなかった...それと、ヘンに意地を張って...突っ張って...心配かけたな」


ほんの少しだけど、自分の気持ちを言えて、水野が照れくさそうに顔を上げた。試合中、すでに将とは、お互いの気持ちが分かり合えたように思っていたが、こうしてはっきりと言葉にすると、どこか照れくさいような、けど、もっと分かり合えるような気がしてくるから、気持ちを言葉で伝えるということは、本当に大切なことなのだ。

水野の言葉に、将の顔がぱぁっと明るくなった。いつも、将の笑顔。
今、上空に広がる雨上がりの空のような、明るい奇麗な澄んだ笑顔。

――――― この笑顔を離したくない

素直な水野の気持ち。

(だけど、これは...口には出せないよな...)

少し苦笑いのような表情になった水野の頬を、初夏の風が優しく撫でていく。


「さぁ!帰るわよ!!」

頃合いを見計らったように、香取先生が声をかける。皆、口々に返事をする。何がなんだかよく分からないが、それでも、水野と将の仲が元通りになったことぐらい、皆は理解していた。だから、誰も何も聞かなかった。

「腹減ったなぁ〜」
「帰り、どっか寄ってく!?」

いつも会話をしながら、それぞれ帰路を歩き出す。

「...雨降って地固まる...か」

ふと呟く声が聞こえた。

「なに?不破くん??何か言った??」

将が振り返る。そこには...今日の試合で活躍したゴールキーパの不破大地がいた。

「いや、別に...」
「不破くん?」

将の声に、水野も振り返る。そして、水野は初めて...不破の、微かな笑顔を見た。

「??????????」

思いっきり驚いた水野の横を、将と二人で通り過ぎていく不破。通り過ぎる時、水野にだけ、微かな呟きが聞こえた。

「良かったな...大切な笑顔を取り戻せて...」

二人を見送りながら、一人で顔を赤くしている水野。


どうやら、不破の洞察力には、水野の気持ちは言葉にしなくても...ばれているらしい。




ひとりじゃない もっと自由になれるはずさ
プライドや猜疑心(うたがい)とか もう捨ててしまおう
そばにいる誰かが 喜んでくれること
ひとを信じる始まりだと やっとわかったよ
君に出会って

ひとりじゃない 君が希望(ゆめ)に変わってゆく
向かい風も羽ばたける 微笑っていておくれ
ひとつになろう
ふたりここまできたことが 僕の勇気の証しだから
変わり続けてるこの世界で









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あとがき

ようやく書けた!!「水野×将」って、そんなに甘くないんですけどね。(^^;
洛葉との泥だらけの試合が終わって...の設定でした。
タイトルは、中西圭三さんの「ひとりじゃない」。
劇中にも「ひとりじゃない」って水野くんのセリフがありましたね。
こじつけなんですが、歌詞がとっても水野くんの気持ちを語っているように思えて、所々、引用させて頂きました!
けど、水野は結構、真面目なので難しいです。上手く書けなくて...あぁ...。

実は、この話、まだ続きます。今度は「シゲ×不破」で...(^^;
でも、基本は「不破×将」なので、ちょっと寄り道かな?って思ってます。


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