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青くキラメク空の下。 帰宅途中の河川敷に、両手を広げて寝ころんでみる。 広がる世界はすべて青い。 他には何も見えない。 夏の風が吹いてきて、そっと目を閉じる。 数時間前の出来事を...思い出す。 「不破くん、あのね!」 「ん?」 「あの、これから..」 帰り支度をしている不破の後ろから、風祭が困った顔をしながら話しかけてくる。不破にしてみれば、そんな時の風祭は明らかに不破に気を使っていることがバレバレで...。不破は軽い溜息を吐きながら「なんだ?」と聞いてみる。すると、 「風祭は西園寺コーチに呼ばれているんだ」 部屋のドア付近から声が聞こえた。振り返ると、そこには水野がいた。 「水野くん!?」 「風祭は補欠だが選抜に残った。小岩と一緒にこれから西園寺コーチとミーティングがあるそうだ」 (そうか、なるほど...) 不破は納得した。風祭にしてみれば、選抜に残れなかった不破のことに気遣って一緒に帰れないことを言いづらかったのだろう。風祭らしいが...不破はまた軽い溜息を吐きながら、荷物を肩にかけて立ち上がった。 「そうか、では先に帰る。また明日。風祭」 そう言って部屋から出ていこうとすると、突然右腕を風祭に掴まれた。 「一緒に帰れないけど、家に帰ったら、すぐに電話するから!」 「?????」 「ねっ!電話するからね!!」 風祭の笑顔に弱い不破は「分かった」そう言って部屋から出ていった。部屋には、風祭、水野、小岩、杉原が取り残された。 「...なんか、ヘン」 小岩が口火を切った。 「不破に対して、なんつーかあ、おまえってヘン!?」 痛いところを指摘され、風祭が黙り込んでしまうと水野が代わりに答えた。 「チームメイトを気遣っていけないか?同じ中学から来てたった一人だけ落ちたんだ。不破だってさすがに堪えていると思う」 「水野くん...」 「オレも先に帰るからな。不破のことはオレが見ておくよ」 「えっ?でも...」 「なんだ?」 「水野くんて不破くんのこと苦手だったよね?」 「まぁ...それはそうだけど...」 「そんなに心配するほどじゃねーのぉ?」 また、小岩が口を挟んできた。 「あのむっつりは選抜なんて最初から無関心ってカンジだぜ?」 「そうかなぁ?」 今度は杉原が口を挟んできた。 「不破くんの場合、気持ちが追いついてこないんじゃないのかな?」 「気持ちが追いつかない...」 風祭が杉原の言葉を呟く。杉原は軽く頷くと、話し続ける。 「彼の才能はスゴイと思うよ。けど、今回の選抜に落ちたのは経験が不足していただけじゃないと思う。多分、気持ちが...選抜に残りたいとか、負けたくないとか、あとは...サッカーが好きだとか、そういう気持ちが、彼の場合強く感じとれない。何故だろうね?あれだけ才能あるのに...」 「杉原くん...」 「風祭くんが心配するのもわかるような気がする。不破くんはまだ選抜に落ちたということをよく理解していないと思う」 「.....」 「不破くんがそれをどう理解してどう受け止めるのか...」 一瞬の沈黙。だが、すぐに館内放送が流れ、風祭と小岩が呼ばれる。二人が慌てて出ていく後ろ姿を見送ると、水野も部屋を出ていこうとした。その時、杉原に声をかけられた。 「不破くんのこと、どうするの?」 はっとして振り返る水野。だが、少しだけ口元を緩めると即答した。 「さぁな、あいつ自身の問題だから...」 「えっ?」 「第一、オレが何言ったって聞かないし、不破は考察が得意だから、また自分なりに答えをだすんじゃないのか?」 「ふ〜ん」 「不破には、風祭の言葉しか聞こえないから」 「そうかな?」 「?」 「彼はすっごく素直だよね。ある意味、風祭くんより素直だよ」 「.....」 「素直すぎて、自分の周囲で起こっている出来事を整理するのに苦労しているみたいだよね。だから...」 「皆して不破くんのこと構うんだよね」 「へっ?」 「あれっ?水野くん、違うの?」 「なに...が?」 「えっ?だって、不破くんってすっごく人気あるじゃない?ボクはてっきり水野くんもそうだと...」 「なっ!!」 杉原の細い目がより一層細くなって、ちょっと意地悪そうににやりと笑う。そんな杉原に自分の気持ちが見透かされているような気がして、水野は顔が赤くなった。だが、ここで黙っていては肯定していると取られてしまうので、慌てて叫ぶ。 「オレは違う!あいつらとは全然違う!」 「あっそ」 杉原は素っ気なく答えると、自分の荷物を整理し始めた。そして、また一言。 「水野くんの場合は、風祭くんだっけ?」 「!?」 「今度は図星みたいだね。あっ、でも不破くんも気になるんでしょ?」 肩越しに振り返った杉原にくすりと笑われて、水野は、今度は何も言い返せずに部屋から飛び出していった。 (まいった...全部バレてる...) この3日間での自分の気持ちの変化に...まさか気づかれているなんて!? 廊下を走りながら、ふと前方を歩いていく不破の姿に気が付く。思わず呼び止めようとしたが、その時、不破に飛びつく人影が目に入った。 「うわ〜いぃ!不破だぁ!!」 武蔵野森の藤代だった。 「藤代...苦しい...」 「あっ!ごっめ〜ん!!ちょっときつかった??」 藤代は不破に抱きついている腕を少しは緩めたようだったが、離す気配は全くなかった。すると、そんな藤代の背中にケリをいれたのは...三上だ。 「痛いなぁ!!何するんですかぁ!?」 「...てめぇこそ、何やってんだよ!」 「何って...あ〜!!まさかっ!三上先輩までぇ〜!!駄目!駄目!絶対、駄目っすよ!不破はオレの...」 そこまで言いかけた藤代の口を塞ぐかのように、三上は藤代を蹴り倒す。不破は巻き添えを喰って、危うく藤代と一緒に倒れ込みそうになった。だが、その瞬間、不破の腕を引っ張って支えてくれた人がいた。 「渋沢?」 「大丈夫かい?不破くん?」 天下無敵のキャプテンスマイル。この笑顔に弱いヤツは数知れない。だが、風祭と同じ笑顔だ、という感想しか持たない不破には通用しなかった。 「あぁ、大丈夫だ。ありがとう」 不破は、相変わらずの無表情で答えると、 「藤代?」 そう言って、廊下に倒れ込んでいる藤代を気遣った。藤代はむくりと起きあがると、 「不破!心配してくれたの!有り難う!!...って、渋沢先輩!どさくさに紛れて何してんですかぁ!?」 渋沢が不破の腕を抱え込んでいるのを、しっかりチェックする。 「まったく、うるせーヤツだな」 三上にまた蹴られそうになる藤代だが、今度は上手く避けられた。 「三上先輩、八つ当たりはいけないっすよぉ!」 「何だと?」 「だってぇ〜」 「おい、藤代」 渋沢にしては珍しく、藤代の方を諌めた。三上の気持ちを考えると、今はそっとしておいてやりたいと思ったからだ。渋沢に怒られたので、仕方なく藤代はむすっとしながら立ち上がった。 「そうか...三上もそうだったな」 唐突に、不破がぽつりと呟く。腕組みをして何事か考え出している不破に、三上は「なんだよ?」とうっとしそうに聞き返した。 「武蔵野森では三上だけが落ちたのだな」 「!!」 「何故だろうな...」 独り言のように呟いて、また首を傾げる不破。三上は、そんな不破を怒るよりも呆れて溜息を吐いた。 「おめぇなぁ...」 「何故、三上が落ちたのか?ウチの水野と大差ないと思うのだが...」 「おい」 一番気にくわない相手の名前が出たので、三上はぴくりと眉をつり上げる。だが、不破は独り言のような呟きを止めない。 「何故だろう?理解できん?」 ぶつぶつ言う不破に、また三上は溜息を吐く。 「実力がないからだろーが」 「実力?三上は十分あると思うぞ」 「おい」 三上は額に手をあてて、苦笑いをした。 (まいったな...) 不破は思ったことを口にする。遜色のない不破の言葉は、ある時には傷つくし、ある時には...とても嬉しくなる。不破の素直さは、風祭以上かもしれない。 三上の心の中にあった霧が、少しだけ晴れてくるようだった。 「わかんねーヤツだな、おまえは」 「?????」 「他人が落ちた理由なんておまえには関係ないだろーが?それとも自分が落ちた理由が知りたいのか?」 「.....」 「知りたいのは自分のことか?」 「オレは...オレが落ちたのは経験が足りないからだ」 「他には?」 「それだけだ」 「へっ?」 「他に理由など無い」 「.....おい」 「?なんだ?」 くすくす... 三上の後ろから微かな笑い声が聞こえた。振り返ると、渋沢と藤代が笑っていた。 「不破くんらしいね」 「ほーんと!不破らしいや」 「何が、だ?」 またしても首を傾げる不破。三上も少しだけ口元を緩めると、軽く息を吐いた。 「調子狂うぜ、おめぇはよ」 「?????」 何故笑われるのか、何が自分らしいのか?、不破は「わからん」といった顔で、渋沢を見る。 「渋沢ばっかに、答えを教えてもらうんじゃねーよ」 こつんと三上に頭を軽く小突かれる。 「?????」 叩かれたところを押さえながら、不破は三上のことをみる。 「テメーで考えろ」 「.....」 冷たい言葉だったが、三上の口調にはいつも刺々しさはない。むしろ、どことなく優しくも感じられた。 「ふむ。そうか。答えは一つではないのだな?了解した」 不破は軽く頷くと、「では、帰る」と言って、この場を立ち去っていった。 「ヘンなやつだな」 「そうかな?」 「おめぇらも、な」 「三上」 渋沢が笑うと、三上も鼻先で笑った。 不破が答えを見つけられたら、すぐに追いついてくるだろう。 追いつかれて...抜かされるかもしない。 「 立ち止まっているヒマはねぇってことか...」 「何か言ったか?三上」 渋沢には、三上の声がよく聞き取れなかった。 「んー?なんでもねぇーよ」 合宿所を出ると、空が青く輝いている。三上は一つ背伸びをすると、空を見上げた。 ――――― ここから...また始まる かさり 草を踏む微かな音に気が付いて目を開けると、やや沈みかけた太陽を背に立つ人影が見えた。 「天城か?」 不破が声をかける。人影はゆっくりと近づいてきて、寝転んでいた不破の傍らに座り込んだ。 「何を考えていた?」 天城が不破を見下ろしてくる。不破は天城から視線を外すと、青い空をまた見上げた。 「答えを探していた」 「答え?」 天城は不思議そうな顔をする。何の答えを探しているのか?、天城も不破と同じように空を見上げる。 心地よい夏の風が吹いてくる。 「答えはひとつだけではないようだ」 「ん?」 「なかなかの難問だな」 「.....」 「天城」 「なんだ?」 「合格おめでとう」 「不破...」 言い忘れていた言葉。風祭にも言っていないことを不破は思い出した。いろんな事を考えすぎて肝心なことが抜けていたようだった。 「ありがとう、不破」 「.....」 「残念だったな」 「あぁ、そうだな」 不破は身体を起こすと、軽く背伸びをした。 「本当は黙って帰ろうかと思っていたのだが...」 「??」 「なかなかアイツが声をかけそうにないので、オレの方が先に来た」 「??」 「不破、おまえは不思議なヤツだな」 「なんのことだ?」 天城が何を言っているのか分からない。不破が首を傾げていると、天城は少し離れたところにある橋の方へと視線を移した。誰かがこちらを見ている。だが、天城と不破に気づかれて、そいつが慌てだした。 「水野か?」 くすりと天城が笑った。 「ずっと不破のことを見ていたから、声がかけづらかった」 「.....」 「心配だったんだろうな」 「何が?」 「おまえのことが」 「何故?」 天城がごろりと寝転ぶ。 「わからんことが多すぎるぞ」 「ん?」 腕組みをして考え込む不破。そんな不破の様子を見ながら、天城は、武蔵野森の連中との会話を思い出す。一部始終を水野同様、天城も見ていたから。不破がどんな答えを出すのか、一番最初に聞きたくなった。 「天城」 「なんだ?」 「おまえがここに来たので、答えの一つが見つかった」 「えっ?」 「そうだ...多分...」 ――――― オレに足りないもの、それは...「熱意」 FIN ☆ ―――――――――― ☆ あとがき 「Change for GOOD」って多分、MISIA の曲だったと思うんですけど... ちょっと思い出せなくて、でも何故か、歌詞カード(?)だけが残っている?? Change for good 答えは今だけじゃない 明日を変えていく力で 時には迷って悲しくなるけれど 青くキラメク空にキスを どんな夜にも流れ星を 探していける私でいたい I can fly, and catch the sky! 涙では変われない 絡み合った心も きっと結び直せる ふと触れた微笑を つなげ I try Change for good 答えは一つじゃない 笑顔だけが勝利じゃない 時には迷って悲しくなるけれど 青くキラメク空にキスを 言葉にできない言葉を探し そして見つけたの私 I can fly, and catch the sky! ため息の中に 天城と不破の話のつもりが、結局最後にしか、天城ちょっこっとしか出てこなかった。 おまけに最後の「熱意」ってのは、ちょっと強引でこんなオチは...。(苦笑) でも、不破くんは淡泊すぎるので、これぐらいが良いのかな? 「熱意」は、天不破「flower」の花言葉で使ったので、まぁ、使い回しってとこですか? かずえさんのところから出てきている言葉じゃないかと思ってます。 けど、何だったんだろう...力尽きてます、またしても...(^^; ☆ ―――――――――― ☆ |