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――――― 文句はフィールドで聞いてやる 傍らを歩く彼の横顔をちらりと見ると、先程の台詞とは無縁のような無表情な顔をしている。元に戻った、ということか?、けれども、あの明星中の鳴海相手に大胆なセリフを吐いたものだ。鳴海にからかわれて困っていた自分を助けてくれた上に、あの捨て台詞。日頃の無表情な彼から想像がつかない。意外と熱くなる性格かもしれない。 不破大地の横を歩きながら、天城遼一はそんなことを考えていた。 「何を見ている?」 急に不破に振り返られて、天城はどきりとする。いつの間にか、天城は不破のことをじっと見ていたらしい。不破は天城の視線に気がついて振り返ったのだが...それはかなり急接近になった。以前、不破に顔を覗かれた時、天城は思わず顔を赤くして後ろに仰け反ってしまった。あの時と同じように顔が赤くなる天城のリアクションに 「?????」 思いっきり首を傾げた不破だったが、すぐに向き直るとあたりをきょろきょろと見渡す。夕方まで練習していたフィールドには、明日の最終選考に備えてか、まだ練習している数名の人影が見える。その中に、風祭の姿を探している不破の横顔を、今度は気づかれないようにそっと見ながら、先程から気になっていることを聞いてみる。 「なんで、さっき、助けてくれたんだ?」 不破が少しだけ天城の方に振り返る。しばらく黙って天城の顔をじっと見ていたが、ふと首を傾げて彼得意の考察を始めてしまった。不破が黙り込んでしまったので、天城も何も話すことが出来ない。少しの間、二人の間に静かな沈黙が流れる。 「...助けたつもりはないが...余計なことをしたのか、オレは?」 ようやく口を開いた不破だったが、自分が責めらていると勘違いしたようだ。天城は慌てて、不破の言葉を遮った。 「いや!違う!!その...とても助かったから...感謝してるんだ!」 「ふむ?」 「正直言って、とても困っていたんだ。なんていうか...」 「でかい図体のくせにやることが子供じみていた」 「えっ?」 「でかい図体とはおまえのことではない。あの明星中の鳴海とかいうヤツのことだ」 「.....」 「それに、風祭にも要らぬちょっかいを出していた。FWとしてはかなり優秀だとは思うが...」 「不破?」 「要するに、オレはアイツが気にくわない。それだけだ」 「.....」 瞠目する天城。だが次の瞬間、天城は笑い出した。 「?????」 また首を傾げる不破。天城は「あっ、すまん...」そう言いながらも笑うことを止められなかった。 「何がそんな可笑しい?」 無表情な彼には珍しく、少しむっとしている。そんな不破の様子に、天城はまた笑い出しそうになったが、どうにか笑うことを止めた。 「す、すまん、つい...」 「つい?何だ?」 「いや、その...」 (不破にもこんな感情があるのか...) いつも無表情な不破。感情の起伏がほとんど感じられない。何に対しても、誰に対しても。唯一、彼の表情が微妙に変化するのは風祭と一緒の時だけ。だが、今夜は不破の意外な一面を見せられて、天城は驚いて、そして少しだけ嬉しくなった。自分の中に生まれた奇妙な感情。 ――――― 不破のことが知りたい お節介な風祭が、何かと面倒をみている不破に、もともと興味はあった。だが、天城自身、身内の、近しい人間以外に、特定の誰かに執着したことはない。その天城の興味が『もっとよく知りたい』というところまで高められたのは、今までにない経験だった。 この想いはどこまで強くなるのだろう? 天城には分からない。何しろ、生まれて初めて感じるこの想い。この感情。 不思議な感覚に捕らわれている天城を、現実に引き戻したのは... 「おい?」 はっとする天城。目の前には無愛想にもとれる不破の顔。 「だから、何が言いたいのだ?おまえは?」 無機質な声。そこからは何も読みとれない。天城は軽く腕組みをすると、小さく呟いた。 「そうだな...オレもアイツが気に入らなかったから」 「ん?」 「不破も同じことを考えていたのかと思うと、妙な気分になった」 「?????」 「不破にもあるのだな、好き嫌い、が」 不破は「好き嫌い」と小さく繰り返して言うと、またしても考察モードに入ってしまった。そんな不破の様子に、これではいつまでもラチがあかないと、天城は不破の気を逸らすことにした。 「不破、風祭はあそこにいる」 練習場の片隅に小さく見える人影を指さす。不破がはっとして、天城の示す方向を見る。そこには数名が何やら動いている。ここからでは何をしているのかよく分からない。 「どうして風祭を捜しているんだ?」 天城の問いかけに不破は答えない。不破は黙っている。不破は風祭のいる方向から目を逸らさない。風祭の姿をはっきり見定めようとしている。そして、ようやく風祭の姿を認識すると... ほんの少しだけ笑った。 不破が笑った。微かだが、確かに笑った。不思議な笑顔だった。 「さっき、水野が風祭を探しに部屋に来た」 不破が話し出す。 「どうやら風祭が心配だったらしく、わざわざ部屋まで探しにきた。風祭は夕飯もろくに食べてないで、どこかに行ったから多少は気になっていた。だが、特に探し出そうとは考えなかった。しかし水野が探しに来たので、気が付いたのだ」 くるりと不破は天城に向き直る。 「消灯時間が近づいている」 「へっ?」 不破は「ふむ」とまた腕を組み直すと、言葉を続けた。 「風祭の場合、サッカーに夢中になると前後の見境がなくなる。多分、明日のために練習して、消灯時間などすっかり忘れているのだろうと思った。面倒が起きないうちに、探しに来た。それだけだ」 「はぁ...」 (それだけ?それだけには見ないが..) 天城は少しだけ口元を緩める。不破にとって風祭の存在はかなりの大きいように思えた。この無表情な彼が微かに微笑んでしまうほど、だ。 「さて、迎えにいくか?風祭の居場所を教えてくれて、どうも、だ」 不破は天城に軽く挨拶すると、風祭のいる方向に歩きだした。だが、その後を天城がついてきた。 「オレも一緒に行こう」 「???」 「飛葉中の連中が一緒だから、な」 「...明星中の鳴海よりはずっとマシな連中だと思うが?」 苦笑いする天城。不破にこれほど快く思われていない鳴海は、ある意味、凄いヤツかもしれない。不破が興味を示す相手など、そうそういないように思える。風祭以外は、多分...。 歩調を合わせて歩いていたはずの不破が、急に立ち止まる。今度は天城が振り返ると、不破は夜空を見上げていた。 雲が流れ、月が顔を出している。 「明日も晴れるな」 「あぁ」 明日は最終選考の日。 熱い一日になるだろう。 FIN ☆ ―――――――――― ☆ あとがき 偽天城だぁ〜!! 何が書きたかったんだか、自分でもわかんなくなりました。 鳴海との事件(?)で急に二人が接近したような気がしたんで...。 次の日の昼食も二人で食べてたみたいだし...。 すみません、今回も途中で力尽きました。(^^; ☆ ―――――――――― ☆ |