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「すっげぇ、雨だったすねぇ」 体育館のドアから外を見上げて、藤代誠二は、キャプテンの渋沢克郎に声をかけた。 「雨降ってきたから、練習中止になると思ったのに…」 そう、ぶつぶつ言い出す藤代に、苦笑しながら渋沢が答える。 「昨日の天気予報で、今日の午後、夕立が降りそうだって聞いていたからな。コーチが体育館を使えるように手配しておいてくれたんだ」 「ちぇっ!手回しがいいんだから、もう...はぁ〜」 盛大に溜息を吐くので、渋沢が少し眉をひそめる。こんな藤代は珍しい。サッカーが好きで好きでたまらない藤代が、練習が中止になることを望んでいるとは...。 「藤代、今日は何の発売日だ?」 藤代がサッカーの次に好きなのはゲーム。また新しいソフトでも発売になって、それを買いに行こうとしているとか...渋沢には、それぐらいしか思い付かない。すると...。 「別にぃ〜なんでもないっすよ...」 これまた珍しい、藤代の元気のない返事。ますます首を傾げる渋沢だったが、コーチに呼ばれて仕方なく、その場を離れた。藤代は、渋沢が離れていったことにも気づかずに、また窓から空を見上げて...溜息を吐いた。 (練習中止、とか、いつもより早く切り上げて、みたいなことになったら良かったのに...) サッカー少年は珍しく、練習が早く終われば...などと考えていた。早く練習が終わったら何をするかというと...正確に言えば、何処に行くかというと。 (この雨だったら、上水、練習終わっているかも) 藤代は、また小さな溜息を吐く。 (せっかく、ゆっくり会えるチャンスだったのに〜!!) 先週末に行われた岩工と桜上水の試合を見に行けなくて、藤代はひどくがっかりしていた。見に行こう!、そう思って寮の玄関を出たところで、藤代は三上先輩と同室の笠井につかまってしまい、どういう訳か?そのままゲームセンターに連行されてしまったからだ。せっかく練習が休みで、桜上水が試合だなんて、こんなチャンスは滅多にない!そう意気込んでいたのに...。そう、せっかく会える口実を向こうから作ってくれたのだから、このチャンスを逃す手はなかったのに...。 会えるチャンス...そう、彼に...不破大地に会えるチャンスだったのにぃ!! 岩工との試合前に、突然、ウチにやってきて、練習に入り込んできたと思ったら、目的が渋沢キャプテンに会うためだった...そう後から聞いて、えらくびっくりした。「えっ〜!オレじゃなかったのぉ〜!!」などと笠井に話していたら、「何故だ?」って真面目な顔をした、渋沢キャプテンにツッコミを入れられた。 (何故って...俺が上水の練習に割り込んだから、もしかしての俺の真似して...とか、あの時のPKの決着をつけにきたとか...とにかく!絶対、俺に会いにきたと思ったのに〜!!、それがなんで、渋沢先輩に???) 不破が渋沢を訪ねてきた理由は、結局教えてもらえなかった。おまけに、練習を邪魔されて渋沢が怒り出すのかとおもったら、不破に対してものすご〜く穏便に対応するものだから、良かったと思う反面、ちょっと納得いかなかったのだが...。 (あ〜ぁ...つまんないなぁ...) サッカーの練習がつまんない、なんて感じたことは、藤代にとって、ここしばらく無かったことだ。それほど、不破に会いたいなんて...。どうして、会いたいのか?、理由は...う〜ん!考えただけでハズカシイ!! そう、そうです!一目ぼれなんですぅ!!...なぁ〜んて、絶対、人には言えないよなぁ。 親友の笠井にだって言えなくて、悶々としてるから、すっげぇ嫌がられてんだよなぁ。だってさぁ、相手は、不破で、しかも男だぜ。こんなこと、そうそう軽く言えない。絶対、おかしい。自分はどーかしてしまったのだろうか!? この気持ちを確かめたくて、不破に会いたいのだ。会えば、この気持ちが何なのか、...多分...いや、絶対、分かるはず。会うためには...そう、何でこの間ウチに来たのか、渋沢先輩に会いに来たのか、それを聞くのを口実に桜上水まで会いに行こう!、藤代はそう考えていた。 それには、あまり時間が経っては、会いに行きにくい。だから、岩工の試合に...それが行けなかったから、今日の練習が早く終わる日に...。だが、結局、その思惑も、スコールにような突然の雨に阻まれてしまった。せっかく、早く終わるハズが、体育館で練習続行されるものだから、かえって長引きそうだ。 (う〜ん、神様のいじわるぅ!!) なんて、外を見ながら、一人悶々としてたら... 「本当にどうしたんだ?藤代。具合でも悪いのか?」 「へっ?」 何時の間にか戻ってきた渋沢に、いきなり顔を覗き込まれた。ちょっと驚いて、後ろに引くと、背中に何かがぶつかった。 「...おい、何一人で百面相やってんだよ、このタコ」 藤代がぶつかったのは、武蔵野森司令塔の三上だった。 「えっと、その...なんでも無いですけど...」 でへへ、とテキトーに笑ってみせたけど、気が付いたら、三上の後ろには笠井も立っていて、笠井はタオルで汗を拭きながら、いささか呆れ顔だ。 (そんなにヘンな顔してたかな...) ぽりぽり、頬をかいてたら、集合の合図が鳴った。渋沢は、ちらっと藤代を見たが、特に何も言わずにコーチの所に走っていった。 (あ〜ぁ、まだ練習あるのかなぁ...。) のろのろと、藤代もコーチの元に歩いていった。藤代の横に笠井が並んできたが、笠井も何か言いたそうに...でも何も言わない。とりあえず、コーチの前に整列したけど、藤代は話しを聞く気になれない。どーせ次の練習メニューは決まっているんだから、わざわざ集合させなくても…。 「...とうことで、今日はこれで解散!」 (へっ?) 「ありがとうございました!!」 皆一斉に挨拶をすると、急にあたりは騒がしくなって、皆、帰り支度や後片付けを始めた。一人、間抜けな顔でぼけっとしていると、 「藤代、どーしたんだよ」 笠井に声をかけられた。 「...あっ、あのさ..」 「練習終わりだって。聞いてなかったのか?」 「えっ?」 びっくりして、体育館の時計を見上げる。時計はちょうど5時になったところだ。 「監督とコーチがなんか用事あるって...おまえ、何聞いてたんだよ」 眉をひそめながら、笠井は更衣室に向かおうと、くるりと後ろを向いた途端、 「やったぁ――――!!!」 「なっ!?」 急に大声を藤代が出すものだから、笠井はびっくりして、手に持っていたタオルを落としてしまった。 「よっしゃ!!」 そう叫ぶと、藤代は疾風のごとく、笠井の横を駆け抜けていく。 「???なんだ、あれ???」 藤代の後ろ姿を見送りながら笠井がタオルを拾いあげていると、三上が近づいてくるのが見えた。 「おい...」 「あ、はい、何ですか?」 「あいつ...何、慌ててんだ?」 「さぁ...何でしょうね?」 「おまえも知らないのか?」 「ええ、近頃、あいつヘンなんですよ。へらへら一人で笑ってたり、急に落ち込んだり...」 「ふ〜ん」 三上が怪訝そうにしているので、笠井はちょっとためらったが、それでも思い切って口を開いた。 「あの...三上先輩。ちょっと聞きたいことがあるんですけど...」 「あん?何だ?」 三上にじろりと見られて、あいつより...この前、ウチに不法侵入(?)した...不破大地より目つき悪い...なんて絶対言えないようなことを笠井は思いながら話しを続けた。 「この間のことなんですけど...何で、藤代が桜上水の試合、見に行っちゃ行けないんですか?」 「...」 「先輩...?」 黙り込まれて、笠井は何やら危険なものを感じてきた。 (あれって、藤代を行かせないようにってわざとゲーセンに連れ出したんだと思うんだけど...もしかして...聞いちゃまずかった???) びくびくしていると、三上が...彼にしては珍しく、溜息を吐いた。 「へっ?」 笠井は、思わす拍子抜けしたような声を出してしまった。 「あの...どーしたんですか?先輩??」 「んー...別に行ったっていいんだよ...」 「...」 「ただ、あの日だけは、ちょっと遠慮してもらおうかって...この俺様らしく無いことしたんだよ!!」 最後の方は急に大きな声を出すものだから、笠井はせっかく拾ったタオルを、また落としてしまった。 「まぁったく、やんなるぜ!なぁんで、このオレが気を利かせてやらきゃいけないんだっ!!」 「あ、あのっ...」 話が見えないんですけど...そう聞き返したい笠井だったが、三上の発する怒りのオーラに巻き込まれたくなくて、こっそり三上から離れようとしたら、 「おい!!まさか、藤代も...なんてこたぁ無いよな!?」 腕をがっしり掴まれてしまった。 「えっ!?何の事ですか??話が見えないですよ〜!!」 泣き出しそうになった笠井の顔を、三上はじっと見詰めて、またしても盛大に溜息を吐いた。 「おめぇの方がよっぽど可愛いのにな...」 「はぁ!?」 ぽいっと掴んでいた笠井の腕を離すと、三上はさっさと更衣室に歩いて行った。 「??????????」 何が何だか状況を理解できない笠井は、一人取り残されてしまいそうになったが、どうにか正気を取り戻し、落としたタオルを拾い上げた。そして、三上のあとを追い駆けて更衣室へ向かおうとした、その時... 「あれっ??」 ふと、視界の隅に入ってきた黒い物体に気が付いて、笠井は立ち止まった。そして、視界に捕らえた物体を確かめようと、窓の外をよく見ると... 「えっ...ええっ!?」 あいつ、確か...そうだ!桜上水の不破大地だ!! 思わず、指差して、大声をだしそうになった瞬間、誰かの手で、口を塞がれた。 「んぐっ!?(誰!?)」 笠井の口を塞いでいるのは、とっとと先に行ってしまったはずの三上。どうやら、三上も不破が居る事に気が付いて引き返してきたらしい。 「大きな声だすんじゃねーよ」 三上に耳元で囁かれて、何やらイケナイ事をしているような気分になった笠井は、顔を赤くしながら、仕方なくコクコクと肯いた。それで、ようやく手をはずしてもらえたわけだが、赤くなった顔は、すぐには元に戻らない。そんな笠井の様子に全く気が付いていないらしい三上は、窓の外に後ろ向きで立っている不破に近づいていった。 「...おい...」 三上は低い声で、不破に声を掛けた。しかし、不破は気付く気配がない。よく見ると、不破は両耳にイヤホンを付けている。音楽か何か聞いているようだった。 「おい!!てめぇ!!シカトすんじゃねーよ!!」 とうとう三上は、大声をだしてしまった。ようやく、不破が気付いて振り返った。 「??????????」 誰だ?おまえ??そんな感じの不破の表情に、三上はますます腹を立ててしまったようだ。 「おい、ここで何してんのかって聞いてんだよ!!」 不破はゆっくりとイヤホンを耳からはずすと、 「ラジオを聞いていただけだが?」 しれっと答えるもんだから、三上の怒りは頂点に達してしまった。 「こんなところでラジオだと!?ざけんな!!てめぇ、また練習の邪魔しに来やがったのか!?」 今にも殴りかかりそうな三上だったが、不破は窓の外。正確に言えば、体育館の外の、さらにフェンスの外。体育館のすぐ脇にあるフェンスの向こう側の道路に、フェンスにもたれかかるように不破は立っている。つまり、三上はどう頑張っても不破を殴ることは出来ない。 「せ、先輩...」 ようやく、顔の赤みが取れた笠井が近づいてきた。状況がよく理解できない笠井だが、他校の生徒相手に三上が暴れだしては...そう思って止めに来たのだが。 「いってぇ!!なんでオレのこと殴るんですか!?先輩!!」 「あのやろーが殴れないから!!」 不破のかわりに殴られてしまった笠井だった。殴られた後頭部を押さえながら、涙目になっていると、 「おい!何を騒いでいるんだ!三上!!」 後ろからの天の助けが聞こえた。 「キャプテ〜ン!!」 騒ぎに気が付いて近づいてきたのは、渋沢だった。助けてもらおうと、渋沢の後ろに隠れようとした笠井だったが、逆に渋沢に突き飛ばされてしまった。 「不破くん!?不破くんじゃないか!?どうしたんだ!!また何かあったのか!?」 さすが、渋沢。密かに『象』と呼ばれているだけのことはある。今度は、窓の近くにいた三上さえも突き飛ばした。 「渋沢!てめぇはぁ!!」 三上のグーパンチが渋沢にヒットするかと思ったが、あっさりかわされて、空しく三上の拳は空を切った。 「渋沢。練習は終わったのか?」 不破はよりかかっていたフェンスから離れると、渋沢の方に真っ直ぐ向き直った。 「不破くん...」 どうしたのか? もう一度、そう聞こうとして、渋沢が口を開きかけた、その時。 「うわーいぃ!!不破だぁ〜!!!」 いきなり不破に抱きつく一匹の犬...もとい、一人の人間。 「藤代?」 突然登場してきた藤代に、不破は驚いた。もちろん、体育館の中からその光景を見ていた三人も、声も出せずに驚いていた。藤代はいつのまにか、しっかり着替えて、すでに私服姿になっていた。 「オレ、今から上水に行こうと思ってたんだ!!そしたら、不破がここにいるんだもん!!びっくりしたよ!!」 「こっちに、はとこの家があるので、ここには、たまたま通りがかっただけなのだが」 「へぇ〜、そーなんだぁ。でも...もしかして誰かの事待ってた??」 何かと期待しているような藤代の表情に、思いっきり『?』の表情の不破だったが、仕方なさそうにポツリと喋った。 「グランドに誰もいないので、練習はもう終わったのかと思ったが、体育館から声が聞こえた。覗いてみると、丁度練習が終わって解散するところだった。だから...」 藤代に抱きつかれたまま、不破は、くるりと顔を渋沢の方に向けた。 「渋沢と話がしたいと思って...待っていた」 天国と地獄とは、まさにこの事。渋沢は天まで一気に昇りつめ、片や、藤代は一気に地の果てまで追いやられてしまった。不破の爆弾発言もどきに、しばし、ぼーぜんとしていた三上だったが、ハタと気が付くと、今度こそ渋沢の背中に蹴りを一発食らわした。しかし、天に昇りつめてしまった『象』には、さすがの三上の蹴りも効かないようだ。 「不破くん!!」 今にも窓をぶち破り、フェンスさえも押し倒しそう『象』の勢いを止めたのは... 「渋沢キャプテン、監督がお呼びです」 窓の下、渋沢と不破の間に何時の間に割り込んでいた人物、それは... 「間宮?」 辺りの空気が一斉に凍りつく。とんでもない奴が出てきてしまった。 「ミーティングルームで待っているとの事です」 間宮はそう言うと、にやりと笑った。何で笑うんだ〜!!背筋が完璧に凍りついてしまった武蔵野森メンバーは微動だに出来ない。そんな周囲の変化にやや満足げな表情の間宮は、スタスタと立ち去っていった。この凍り付いた空気の中、誰一人動き出せないはずなのに、やはり彼は強かった。 「では、帰る」 凍り付いた空気を破ったのは、不破。彼は、間宮の作り出した異様な空間を見事に打ち砕いた(単に間宮を知らなかっただけだが)。不破は、抱きついている藤代を引き剥がすと、ゆっくりと駅に向かおうとした。すると。 「帰るの?じゃぁ、送ってくよ!!」 これまた、間宮の呪縛に容易にかからない藤代が、すかさず申し出る。地獄まで落とされたハズの藤代だが、引き返してくるのも早かった(さすが武蔵野森のエース??)。 「渋沢キャプテンは監督に呼ばれちゃったからね。オレ、送っていくよ!!」 下心みえみえ。なんて立ち直りの早いヤツ。これには、三上も何も言えない。ようやく、状況が見えてきた笠井もぽかんと口を開けていた。 「ふむ。別に送ってもらわなくても一人で帰れるのだが」 「えぇ〜!!そんなぁ!!オレさぁ、不破と話したい事いっぱいあるしぃ〜!!」 「藤代、オレに話があるのか?」 「うん!!話したい事いっぱい!!」 「そうか...では、渋沢とはまたの機会にしよう」 そう言うと、不破と藤代は二人仲良く(?)歩いて行った。だが、ふと何か思い付いたように不破が振り返った。 「渋沢、この間、試合を見に来てくれて、ありがとう」 ぽつりと言うと、すぐに回れ右をして、怪訝そうな顔をしている藤代と一緒に駅の方角に向かっていった。 残された三人はというと...。 かなり状況が把握できた笠井と、やっぱりそうかと腕組みをしている三上と、そして...。 思いもかけない恋敵の出現に、化石となってしまった渋沢と...。 「渋沢??」 全く動く気配のない渋沢に、思い切って声をかける三上。 「ミーティングルームだったな」 いつもキャプテンスマイルで振り返る渋沢。だが...目は全然笑ってないゾ。むしろ、すっげぇ殺気だっているんだけど。三上でさえもたじろぐほどのオーラを発している渋沢だった。だが、渋沢は、そのままスタスタとミーティングルームを目指して歩いて行った。とうとう、笠井と三上だけが残された。無言の二人。だが、さすがにこの沈黙を破ったのは年上の三上。 「...帰るぞ...」 そう言って、三上は笠井に、この場を動く事を提案した。笠井も黙ってこくこくと肯くと、二人揃って更衣室へと向かっていった。 「三上先輩...」 二人だけになった更衣室で、笠井は三上に話しかけた。三上から返事はない。だが、笠井は構わず話し続けた。 「この間、藤代を引きとめたのは、渋沢キャプテンが行くのを知っていたからなんですね?」 笠井は汗で濡れたシャツを着替えながら、 「藤代がいたんじゃ邪魔だったからですよね?つまり、その渋沢キャプテンって...」 つい口篭もる笠井に、三上が重い口を開いた。 「藤代も同じじゃねかよ...」 二人同時に盛大な溜息を吐く。 「渋沢の場合、まぁ、こういった事もありかよ?ってぐらいで大して気にもならなかったんだが...むしろ、仕方ねぇかぐらいで、かえってこっちの方が気ぃ使ってやったんだけどな」 三上もアンダーシャツを着替えながら、 「藤代のバカも絡んでくるとなると、もう...オレは知らねぇよ」 「先輩...」 「勝手にやってくれってんだ」 さっぱりと着替えが終わると、三上は笠井の方を向いて 「不破よりおめぇの方がよっぽど可愛いと思うんだけどな」 「なっ!?」 「まったく、あの連中の美的センスってぇいうの?オレには理解できねぇよ」 三上は自分のスポーツバックを抱えると、 「おい、ここ、オレ達が最後だぞ。早く着替えろ」 「は、はい!!」 笠井も慌てて荷物をまとめる。だが、笠井は心臓がばくばくしてるのが分かる。まいったなぁ...これじゃ藤代のこと言えないぞ...密かに、焦り捲くる笠井だった。そんな笠井の様子に全く気づく気配のない三上は、 「お互い、とんでもない同室を持った者同士、協力しようぜ」 「へ??」 「何しろそーいう連中だからな。下手にこっちに被害っての?そういう考えがもこっちに向かないようにしねえとな」 「あ、あの...」 「おまえ、藤代にやられたくねぇだろ?」 「なななっ!!」 真っ赤になった笠井に、にやりと笑うと、 「そういう可能性もあるってことよ、おめぇの場合はよ」 オレの場合は大丈夫だろうけどよ、そう言うと三上は、バックを肩に引っかけて出ていった。残されてしまった笠井は... 「どーなるんだろ?オレって...」 情けなくなって泣きたくなったが、とりあえず帰るとするか。 今夜は大荒れになるであろう武蔵野森の寮に...。 FIN(ようやく終わった...)
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