キャンドルも 十字架も 愛に力を与えてよ
聖なる夜まで堕天使は 恋に遊ぶ



「突然、来てすまない」
「別に...オレは、いつでもかまわないぜ」

ソファーにどっかりと腰掛けていた三上。煙草に火をつけようとして、ふと、ライターを落とした。拾いながら、こっそりと彼の顔を盗み見る。

彼の横顔。とても綺麗だった。

窓辺に立って、外を見つめている。その瞳は、誰を想っているのだろうか...三上は、軽く舌打ちして、煙草に火をつけた。

「今晩...」
「あん?」
「三上は、予定があるのか?」
「...そうだな」

三上も立ち上がり、彼の横で煙草の煙をふぅっと吐き出した。煙に、一瞬だけ、彼の綺麗な顔が歪む。

「今晩は、クリスマス・イヴだせ?、お前の方こそ予定は、どーしたんだい、あん?」
「...」
「痴話ゲンカの巻き添えはゴメンだぜ」
「何のことだ?」

素知らぬフリをしながらも、三上を見上げる彼の瞳は、心の乱れをはっきりと表していた。随分と変わったものだ。初めて彼と出会った時は、こんな目をした事はなかった。無表情で、無機質で。感情など全く無い機械のような印象を受けた。

それが、今じゃ、これだ...。

あの男の存在ってヤツを、思い知らされる。彼と...不破と会う度に、だ。

「誰とも何も約束などしていない」

不破がゆっくりと喋り出した。

「ただ...」
「ただ?」

不破は窓に広がるイルミネーションに視線を移して、ふっと息を漏らした。

「星さえも見えないほどの、街の光や騒々しさに、目が冴えてしまった」
「...」
「いつもと変わりない夜のはずなのに、どうしても其れが気になって、眠れなくなった」
「そんで、放っつき歩いて、オレんちにあがりこんこんできたワケってか?」
「....」
「オレがいなかったら、どーする気だった?、別な誰かを...誘ってたのか?」
「別な誰か?」

小首を傾げる不破。不思議そうに見上げてくる。

「藤村と約束してなかったのかよ?」
「シゲか?、何故、ヤツと約束していなければならない?」
「そりゃ、おめぇ...」
「誤解するな、あの男とは、何もない」
「おいおい」

三上が苦笑した。

「今更、何言ってんだよ、このタコが。おまえらの仲を、知らねーワケねぇだろうが」
「...やはり、誤解をうけているようだな」
「へっ?」

ふぃっと、顔を窓の外に向けた。本当に綺麗な横顔だった。

「オレが、その気になるまで、待つそうだ」
「はぁ?」

素っ頓狂な声を三上が出したので、クスッと不破が笑った。

「渋沢に申し渡されたそうだ」
「...」
「強引な行動を起こしたら容赦しないと」
「つまりは、『不可侵条約』みたいなもんかよ」
「そうらしい」

不破が、珍しくまた笑った。

「おあずけ喰ってるのか、二人とも」

三上は、がりがりと頭を掻いた。

「らしくないな」
「ん?」
「藤村も、渋沢も、らしくないぜ」
「そうか?」
「『イイヒト』ぶるなんざ、あの連中らしくないってことさ」
「だが、そのおかげで...オレは今夜一人だ」
「あん?」

不破はテーブルの上に置かれたグラスを手に取った。三上が用意した...中身はブランデーだ。不破がグラスを軽く揺さぶれば、きらきらと、窓から射し込むイルミネーションが反射して、その輝きがさらに、不破の瞳に映し出されて、三上は条件反射的に、ごくりを生唾を飲み込んだ。


ただずっと見つめていた、その綺麗な横顔を。諦めて時は流れて、『イイヒト』やるのが限界なのは、三上のほうだった。


「三上は、不可侵条約とやらに入っていないのであろう?」
「不破、おめぇ...」


誘ってんのかよ...っ!


三上の心臓が高鳴る。何を考えているのだ、不破は?、何を計算している...打算してる?
窓の外、どこからか、鐘が鳴り響いているのが聞こえる。否、これは三上の胸の遠くから聞こえてくるのか?

このまま不破の身体を抱き寄せることは簡単だ、でも、それは出来ない。それは勇気ではない、むしろ...。
ぐるぐると三上の思考はかき乱されて、今度は不破を心の中で責めてしまう。

何故、今夜、オレの部屋に来たのだと!


「飲まないのか?」

不破は三上の様子に気がつかないのか、もう一つのグラスを、テーブルから取り上げて、其れを三上に差し出す。思わず三上は、不破の綺麗な指先に見惚れてしまう。ぼんやりと機械的に、其れを受け取った瞬間、互いの指先が触れ合った。


びくり...っ!


何か強い衝撃のようなものが走った。それが何なのか、ただの静電気だったのか...否、違う、そんな生易しいものじゃない。その衝撃に、互いの視線がぶつかり合った。強い視線...熱い視線。

「マジかよ...」

三上呟きに、不破は黙って睨み付けているだけだ。

「後悔するなよ」
「それは、おまえ次第ではないのか?」
「てめぇ...」


不破の考えていることが、よく分からない。不破の行動パターンは、全く意味不明。


それでも。


三上は不破との距離を詰める。誰よりもさきがけで、三上とこじれて、何の得があるというのだろうか?
それとも、これは、本気なのだろうか?、まさか...三上は、不破の顎に指をかけた。



何かが終わって弾ける...そして、何かが始まる瞬間。



聖なる天使のあやまちよ 奇跡になれ



おしまい


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今頃、クリスマスネタを書きあげる自分を激ハズカシイとおもいつつも、これも自己管理ができていなかった事への反省として、あえて、この時期に、乗せました。ウチの地方では、まだ辛うじて冬ですが...すでに、南の方では、春の便りが届く季節になってますな。ニュースで聞いて、びっくりしましたが、ウチの地方では、まだまだ夜空の星達が綺麗です。

冬の星座って、オリオン座ぐらいしか分からないのですが、他にも、肉眼でナントカ星群とか、一等星で物凄く輝いている星(北斗七星か?)とか、とにかく、星が綺麗です。星座早見盤でしたっけ?、そんなものが欲しくなります。この、降り注ぐような星空は、今の寒い季節にしか見れません。これが。田舎の特権でしょうね。ちなみに、夏は、天の川が綺麗に見えます。その下を蛍が飛び交って、ちょっといいカンジです。

でも、やっぱり田舎は不便で、住みにくいっす。

自分の愚痴になったしまいましたが、今回の駄文は、どうでしょうか?、不破が、シゲや渋沢をさしおいて、自分から三上を誘っているようなんですが...こーいうパターンもありでしょうか?、如何ですか??


date:2002.12.30


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