朝方、夢を見て、目が覚めた。

彼が笑っていた...彼が生きていた頃の、幸せな笑顔だった


「大丈夫」


そう言って笑っていた...彼の夢


幸せな夢をみたはずなのに、目が覚めて、急に心が重苦しくなった。





おまえがいなくなって...何が大丈夫だと言うのだ....





駅に降り立つと、東京に比べて、随分と寒いものだと思った。思わず、背中を丸めていると、渋沢がそっと、上着を肩にかけてくれた。はっとして振り返れば、渋沢は、自分の上着をちゃんと着ている。渋沢が、くすくす笑った。

「念のために、予備を持ってきたんだよ」
「ふむ、用意がいいのだな」
「うん、関東とはいっても、結構、気温差がありそうだからね。ほら、トレセンの時、覚えている?」
「あぁ、確かに、あれは寒かった。しかし、あれは福島であろう? 此処は、一応、関東だが...」
「うん、けど、東京とは、やっぱり随分、違うよね、片道2時間程度だけど」

そう言って、渋沢が歩き出したので、不破も後をついていった。

1泊2日の小旅行。

多忙な渋沢が、時間をやりくりして、不破のために計画したものだった。二人でのんびりと温泉でも...と、渋沢が言い出した時、不破はくすりと笑った。実年齢と、見た目の年齢が、かけ離れている渋沢である。この提案は、見た目年齢に則していると言うべきか?、これには、渋沢も苦笑いしていた。

二人で計画を立てているところへ、渋沢は、母が親戚の法事で、北関東の温泉近くまで行かなければならなくなった、と母親から聞かされた。だが、彼女母は持病の腰痛で苦しんでいたので、時間があるのならば、と、渋沢に代理を頼んだのだった。日帰りも十分可能な距離だったが、息子のために、母は気を利かせて、温泉宿の手配をしてくれた。それも、不破の分まで、だ。

自分の息子と、不破の関係を知る由もない母親である。しかしこれでは、まるで、息子の恋路の後押しをするような形となった。多少、不本意な気もするが、渋沢はこれを承諾した。母親の代理出席は、かなり窮屈だが、数時間の辛抱だ。それが終われば、不破と二人っきりで、ゆっくりとした時間が過ごせる。不破も賛成してくれた。こうして二人は、東京を離れたのだった。

「まだ、桜が咲いているんだね」
「あぁ、そうだな」

田舎の駅ではあるが、駅前どおりは、観光地らしく賑やかであった。荷物を抱えながら歩いていると、間もなく目的の場所へと辿り着いた。今晩、泊まる宿である。温泉宿といっても、湯本から十数キロ離れている市街地なので、湯の成分は、単純泉らしい。硫黄のにおいが、ほとんどしない。それでも、案内された部屋の窓の外、垣間見えた露天風呂らしき場所から、微かだが独特なにおいがして、不破は口元を手で覆った。

「どうしたんだい? 気分でも悪くなったのかい?」

渋沢が、すぐに気がついて、不破の顔を覗き込む。高校に入学して、さらに3センチも、渋沢は身長が高くなった。それに対して、不破はほとんど伸びていない。身長差だけではなく、サッカーをやめた不破は、ますます華奢になって、渋沢との体格差も広がるばかりだ。覆い被さってくるような渋沢の身体に、思わず不破は、背中を仰け反らせる。そして、「何でもない」と、俯いてしまった。微かに頬が赤くなっているように見える。渋沢も、つい照れ笑いをしてしまう。

部屋は、こじんまりしているが綺麗で、床の間には、ありきたりな山水画の掛け軸が飾られ、水仙の花が生けてある。
その前には、二人分のタオルと洗面道具、そして浴衣。

今夜、ここで、二人っきりで、夜を過ごす。

渋沢も、咄嗟に口を押さえてしまった。頬が赤く染まる。

「渋沢?」

今度は、不破が渋沢の顔を見上げた。黙り込んだ渋沢に、不思議そうな顔をしている。渋沢は、軽く咳払いをすると、

「そろそろ、支度して、行ってくるよ」
「あぁ、そうだな」
「不破くん、ごめんね、ちょっとの間、一人にしてしまうけど」
「あぁ、問題ない、適当に近くを散歩でもしているから」
「うん、帰ってきたら、一緒に風呂に...」

そこまで言いかけて、渋沢は、とうとう顔を真っ赤にしてしまった。
一緒に風呂などと...想像してしまって、かなりヤバイです。

渋沢は慌てて、カバンから着替えを取り出すと、バタバタと支度を始めた。その間、ちらりと不破の方を振り向けば、彼は、窓の外をじっと見ていた。部屋は3階の、川に面した日当たりの良い場所だった。河川敷に、ちらほらと桜の大樹が見えている。それを見つめながら、不破の頬が、少し紅潮しているのが、渋沢にも分かった。不破も...分かっているらしい。今夜が、渋沢と過ごす、初めての夜になるであろう事を。ますます慌てふためきながら、渋沢はどうにか支度を終えた。

「あ、あの....」
「ん?」

渋沢に声をかけられて、不破は振り向いた。そして、目をぱちくりさせた。

「そろそろ、行って来るよ」
「あ、あぁ...」

生返事の不破の態度に、渋沢が軽く苦笑いをする。それもそのはず。渋沢の来ている服は、黒い正装用のスーツ。通常、学生ならば学生服で十分のはずであるが...あえて、これを着てしまった渋沢は、どう見ても、高校生には見えない。

「28歳、既婚者、今年、幼稚園生になる子供が一人」
「えっ?」
「そう言っても、通用しそうだな...と」
「...」

笑えない冗談を言う不破に、渋沢もがっくりと肩を落とす。母親に言われるまま、これを持ってきたが、やはり、高校の制服を持ってくるべきだったと、溜息を吐いた。

「それじゃ...」
「あぁ、オレも此処を出る」

部屋を出ていこうとする渋沢の後を、不破も一緒に出てきた。部屋にカギをかけて、二人は玄関先まで来ると、

「克郎、用意はいいのか?」

受付の奥、事務所らしい部屋から、此処の主人が出てきた。30代前半というところだろうか、面差しが渋沢に似ている。

「はい、近江さん、宜しくお願いします」

渋沢が頭を下げる。近江さん、と呼ばれた彼は、「ガキの頃みたいに、俊くんでいーよ」と笑った。此処は、渋沢にとって、遠縁にあたる旅館だったのだ。彼は、渋沢の母方の従兄弟にあたるのだと、不破は此処へ来る途中、渋沢から説明を受けていた。

「ところで、克郎?」
「はい?」
「おまえ、本当に高校生か?」
「...」

突然、近江に聞かれて、言い返す言葉に困った渋沢が苦笑いする。すると、彼の後ろに立っていた女性も、口元を押さえて笑っている。彼女の足下には、小さな女の子が、目をきょろきょろさせて、渋沢のことをみていた。二人は、近江の家族らしい。

「まっ、いいか、じゃあ、行ってくるよ、佳代子」

近江が大きな声で、玄関を降りようとした時だった。

「あっ! 大っきな、おばあちゃん!」

小さな子供が、部屋の中へ、ぱたぱた走っていった。微かだが、うめき声が聞こえたからだ。佳代子も、すぐに子供の後を追って、姿を消した。

「んー? どーしたぁ?」

近江が、姿を消した二人に向かって、また大きな声を出した。すると、すぐに佳代子が出てきて、

「大ばあちゃん、お水が飲みたかったみたいなの。今、佳奈が飲ませてあげてるわ」
「そうか、それなら、心配ないな、じゃぁ、今度こそ、行こうか、克郎」

「はい、あの...」
「ん?」

渋沢が何か聞きたそうな、けれども質問するのに困っているような表情をしたので、近江は一瞬、目をきょとんとさせたが、すぐに、渋沢の聞きたいことを察したらしく、答えてくれた。

「大ばあちゃんって、オレのばあさんだよ。克郎、覚えているか?」
「はい、やっぱり、その方ですか?」
「あぁ、今年で90歳になるんだ。まだ、生きてたんだよ」
「あ、いや、その...」

近江は軽く笑いながら、

「びっくりだろ? 田舎じゃ、年寄りは長生きなんだ。けど、寝たきりってやつでね、言葉もほとんど不自由になっちまった。だから、家族の目が届くように、其処の部屋に床のべてんだよ」
「そうなんですか」
「そうそう、ウチは4世代の大家族ってヤツだよ、東京じゃ、滅多にないだろ?」
「はい...」

二人は喋りながら、並んで靴を履き替えている。その横で、不破も同じように靴を履いていると、

「あれっ? 克郎の友達って...」
「ん?」

渋沢の肩越しに、近江が不破を指さして、じっと見ている。何事か?と、不破が訝しげな表情をしていると、

「まさか、女の子じゃないよな?」
「なっ!?」

さすがに、不破がむっとして大きな声をあげた。すると、後ろから、

「ええっ!? 克郎さんのお母さんからご連絡頂いた時は、克郎さんより一つ年下の男の子って聞いたんですけど...同じ、お部屋じゃまずかったのかしら?」

急に、慌てだした佳代子に向かって、不破は溜息を吐きながら、口を開いた。

「女に間違えられたのは、これが初めてだ」
「そうよね! ごめんなさいね! でも、後ろ姿が華奢だったから、つい...もう! お父さんも、ヘンなこと言わないで下さいよ!」
「あぁ、すまん、すまん、克郎の横にいると、誰でも、細っこくて、ちっちゃく見えるからなぁ」

顔を真っ赤にしながら、不破に謝る佳代子と対照的に、近江は楽しそうに笑っている。その笑顔の中に、渋沢の笑顔と同じものを、微かに感じ取れた。

「で、克郎がいない間、どうしてるのかな?」
「はい、適当に散歩でもしてます」
「そうか、此処からなら、東照宮も近いし、大谷川の河川敷も、今ちょうど桜が見ごろだからな。天気がいいから、数時間くらい、あっという間だろう。何なら、オレの自転車を貸してもいいよ」

近江はもう一度笑うと、「行ってくる」と、佳代子に、軽く手を上げた。「行ってらっしゃい」と、彼女も明るく答えた。

先に近江が、正面玄関を出る。その後ろを、渋沢、不破が、続いて表へと出た。外は、眩しいほどの晴天だった。この土地に初めて降り立った時よりも、日差しが春めいて暖かく感じられる。思わず、不破は目を細めた。

「じゃあ、また」

すでに、車は用意されていて、近江が運転席に乗り込んだ。渋沢も助手席に乗り込んで、不破に向かって軽く手を上げた。不破は、こくりと頷き返すと、車は静かに走りだした。その後を、暫く見送っていたが、不破は軽く息を吐いて、車が走り去った方向とは反対方向へと向かって、歩き出した。

さすがに、世界的文化遺産の街らしく、道行く観光客や、車の多さは、かなりなものだ。電車に乗っていた間は、都会の喧噪が遠ざかっていたように思えたが、こうして降りたって歩いてみれば、それほど寂れた雰囲気もない。門前町としての面影を色濃く残しながらも、街は、そこそこの賑いぶりだった。

その世界的に有名な、文化遺産とやらを拝観しても良いが、一人で行くのも、面倒な気分だ。それに、一度、小学校の修学旅行で、此処には来たことがある。不破は、ふと視界に入った、河川敷に向かって歩いていた。

此方は、市内よりは、人も車も、さすがに少なかった。それでも、春の気配に誘われて、あちらこちらに、家族連れやら、犬の散歩やらで、とても一人になれるような雰囲気ではなかった。

旅館の主人が言っていたように、河川敷の桜の大樹は、今が見ごろと言わんばかりに、満開だった。
東京では、すでに散ってしまって、葉桜になっているというのに...。

(河川敷か...風祭とも、暫く会っていないな...)

サッカーをやめて、ほとんどの人間と交流が無くなっていた。
あの頃を思い出すと、不思議な気持ちになる。

人付き合いが苦手というわけではないが、孤立しやすかった自分が、よく、チームプレーが基本というサッカーを続けていたものだと。自分の努力以上に、周囲の協力もあったからだろう、自分がGKとしてフィールドに立てたのは。

ふいに、風が吹いてきて、頭上の木々を揺らした。花びらが、不破の肩に零れ落ちれくる。
不破は其れを、暫く見上げていた。風の音を聞きながら、舞い降りてくる桜の花びらの中、不破は静かに佇んでいた。



大丈夫...



朝方の夢を思い出す。彼は笑っていた。ほんの1週間前、別れを告げて、本当に逝ってしまったのに。その彼が、何故、夢の中で、自分に、「大丈夫」と告げたのか?、あれは自分の夢であって、彼ではない。そうだ、彼は、本当に消えてしまったのだから。


もう二度と、彼にあうことはない。


あの桜の舞い散る中、死んでしまったはずの彼に会えたことも、自分が作り出した妄想なのかもしれない。
今朝見た夢だって、きっとそうだ。全ては、自分の思いこみだ。感じていた彼の気配も、全ては...。

不破は、大きな溜息を吐いた。

渋沢が傍にいると、彼を思い出すことは、ほとんど無かった。気が紛れているから、とでも言うのだろうか。
けれども、こうして一人になると、ましてや、彼が好きだった花の下に佇んでいると、自然と、想いは彼へと向けられる。



後悔しているのだ...きっと。



彼に対して、素直になれなかったことを。
彼に気持ちを、伝えなかったことを。



彼が自分を誤魔化していると、疑っていたことを。
本当は、自分の方が誤魔化していたのだということを。



目の前に広がる川は、ゆっくりと、静かに流れていく。その流れを見つめながら、不破は、去年の事を思い出す。
風祭に突き落とされた橋の上で、あの時と同じように、ぼんやりと、川の流れを見つめていた時の事を。

風祭と出会うきっかけになった、あの時は、自殺が多いと噂されていた場所を、確認していただけだった。
その1年後、今度は、其れを、試したくなっていた。つまり...自分を消してしまいたかった。


彼の死に、自分の生きている意味を見失ってしまったから。


彼が京都に戻った時、彼の後を追いかけようなどとは考えなかった。それなのに、彼の死に、動揺して...。
自分を好きだと言った、彼の言葉を信じなくて、其れに答えることをしなかった自分を、思いっきり悔やんだ。
後悔...今まで知らなかった、未知の感情だった。彼は自分に、多くのことを、大切なことを、教えてくれた。



だから、彼の死に...



自分の中にあった、何かが壊れてしまった



大切な何かが



それなのに、今、自分は生きている



あの時、ぼんやりと橋の上で佇んでいた時、ふいに後ろから腕を捕まれた。風祭だった。今度は、突き落とされなかった。風祭の腕の強さが、不思議に思えて、首を傾げていると、瞳を潤ませながら、風祭は言った。

「考察なら、1年も前に、とっくに、終わっているでしょ?」

風祭は気がついていたのだ。不破が何を考えて、其処に立っていたのかを。けれども、彼は、はっきりと其れを言わなかった。不破の気持ちを察してくれていたのだろう、風祭が不破を引き止めてくれたのだ。


だから、今、自分は、此処にいる...こうして生きている。


けれど...



「...何が、大丈夫だと言うのだ」



不破は、ぽつりと独り言を言った。草むらに、ごろりと寝転んで、目を閉じる。遠くから聞こえる車の音と、近くを流れる川のせせらぎと、時折、吹き抜ける風の音と、不破は、それらを子守歌のように訊いて、ウトウトと、微睡みかけた時だった。

がさがさっ!

すぐ近くから、草をかき分ける大きな音が聞こえて、不破は、ぱっと上体を起こした。

「あっ...」

小さな女の子が、其処に立っていた。突然、草むらから、人が起きあがったので、とても驚いた顔をして、今にも泣きそうになっている。けれども、少女の顔に見覚えがあったので、不破は、これ以上、少女を怯えさせないように、可能な限り、優しく話しかけた。

「すまんな、驚かせて」

少女は、びくりと身体を震わせた。不破なりに頑張ってみたのだが、やはり、目つきが悪いと、よく言われる不破である。小さな肩を震わせて、少女は本当に泣き出しそうだ。(困った...)、勝手に、少女は驚いただけなのであるが、これでは、不破が悪いことをしたように思われる。オロオロしていると、少女は、ようやく不破のことを思い出したようだ。

「おにーさんのお友達?」
「ん?」

少女は、警戒心を完全に解いてはいないものの、不破に対して、微かに微笑みかけてきた。旅館を出るとき、奥座敷から顔を覗かせていた少女である。確か、名前は...。

「佳奈...だったな?」
「うん!」

幼稚園、もしくは小学1,2年生という年齢であろうか、佳奈は、不破から名前を呼ばれると、ますますにこにこ笑って、警戒心を解いてくれた。そして、不破のそばまで歩いてくると、

「こんなトコで寝てると、カゼひくよ」

と、無邪気に心配してくれた。すっかりうち解けてしまった佳奈の態度に、今度は不破の方が困ってしまった。どちらかと言えば、子供は苦手な方だ。けれども、佳奈は、無邪気に不破に微笑みかける。その笑顔に、つい、不破も口元を緩めた。
すると...

「おにーさん、背、高い?」
「ん?」

突然、何を言い出すのか...不破は怪訝そうな表情で、でもすぐに、寝転んでいた草むらに、すくっと立ち上がった。

「あっ! 届く!!」
「???」

佳奈は、不破の頭の上を指さした。不破が見上げると、其処には、低く伸びていた桜の枝があった。

「これが、欲しいのか?」
「うん!!」

不破は、その枝を指さしたが、すぐに、ほうっと溜息を吐いた。

「桜、切る馬鹿、梅、切らぬ馬鹿」
「えっ?」

独り言のように呟いた不破の台詞に、佳奈は、きょとんと目を丸くした。
不破は、軽く息を漏らすと、

「桜は、切り口から腐ることがあるので切らぬほうが良いのだ。梅の場合、剪定(せんてい)しないと枝が伸びて花が咲かなくなるから切った方が良い、という意味だ。桜と梅の剪定法の違いを言った言葉だが...必要なことを行わずに、不要なことをやってしまう、といった戒め的な言葉の意味だが...」

小さな子供に、このような言葉を説明しても...だが、佳奈は頭の良い子のようだ。深い意味合いは理解できなくても、感覚で理解できたようだ。すぐに、悲しそうな顔をした。これには不破も、大人げない態度をとってしまったと反省した。佳奈は、純粋に花が欲しかっただけなのだろう。三度目の深い溜息を漏らすと、

「何故、これが欲しいのだ?」

と、佳奈に聞いてみた。佳奈は、ちょっと困った顔をしたが、はっきりとした声で答えを返した。

「昨日は、水仙でね、今日は、菜の花と桜なの!」
「ん?」

しかし、何を言っているのか、不破には理解できない。やはり、まだ小さな子供だ。不破は肩で、思いっきり呼吸すると、頭の上に伸びていた、小さな一枝を、ぽきっと折った。そして、それを、佳奈に手渡してやった。

「きちんと水やりをしなければ、桜の花は、脆いのだぞ」
「うん! ありがとう!!」

河川敷とはいえ、これは公共の花である。いけない事だと思いつつも、幼い子供の願いなら、多少は目を瞑ってもらおう、などと、不破は自分の中で言い訳を始めたが...ふと、佳奈が手にしているものが、目に入った。

「おい」
「なぁに?」
「これは...」

佳奈が手にしていたのは、菜の花だった。桜と、菜の花。彩り綺麗な取り合わせだが、この菜の花も...公共物ではあるまいか?、否、都会とは違って、自然豊かな、田舎の河川敷である、この程度では、誰に文句は言われないだろうと、またしても手前勝手な解釈をしつつも、不破は佳奈に、「用が済んだのであれば、とっと帰った方が良いゾ」と、誰かに叱られる前に帰れと、忠告した。しかし、佳奈は、もじもじとしているだけで、動き出す気配がない。

「おい」

不破が、佳奈の顔を覗き込むと、彼女は自分の足下を指さして、

「さっきね、サンダル、どっかに落っことしちゃったの」
「なに?」

不破は、佳奈の足下を見て、なるほど、と思った。片方のサンダルが無いのだ、つまり、素足。不破は、これで四度目のため息を漏らした。

「ほい」

不破は、佳奈の小さな身体を抱きかかえた。彼女の片足は、泥で汚れていた。

「どこで落としたか、覚えているか?」
「う〜んとね、多分、菜の花、取ってる時」
「そこは、どこだ?」
「えっとね、あっち!!」

佳奈の指さす方向へと、不破は佳奈を抱えたまま歩き出した。がさがさと草むらを踏み分けて、菜の花が群生している場所へ辿り着くと、忙しなくみつばちや、小さな虫たちが、賑やかに飛び回っている。春満開、といったところであろうか。
不破は足下をきょろきょろ見る、佳奈も同じように、花の下を無くした片方のサンダルを探している。すると間もなく、それは、花の下、やや湿った泥の中にすっぽりと、はまっていることに気がついた。佳奈を抱きかかえたまま、不破はそれをつまみ上げたが、しっかり泥まみれになっていて、洗わなければ、とても履けるような状態ではない。

「おい、帰るぞ」
「...うん」
「まだ、何か欲しいのか?」
「うぅん! 違うの! だって、おにーさん、此処で寝てたんでしょ?」
「あ? あぁ、寝るなら、部屋でも出来るから、戻ってもかまわない」

子供なりに、不破に対して気遣ったらしい。つい、口元をほころばせてしまう。

「それに、その花、きちんと生けなければ、枯れてしまうゾ」
「うん!」

佳奈は、花を抱えて嬉しそうに笑う。不破は、左腕に佳奈を、右手に泥で汚れたサンダルを持って、てくてくと、来た道を戻っていった。





「おかあさんっ!!」
「まぁっ!? 佳奈!?」

佳奈を玄関先に降ろしてやると、佳奈は真っ先に母親に、手にした花を見せた。

「今日は、これっ! 早く、花瓶ちょーだいっ!!」
「こらっ! 佳奈っ!! まったくもう!!」

ぱたぱたと奥へ走っていく子供の姿に、大きな声を上げながら、佳代子は、すぐに不破に振り返った。

「すみません! 佳奈がお世話になりまして...」
「いえ...」

ぶっきらぼうに不破は答えると、佳奈の汚れたサンダルを差し出した。彼女は、佳奈が、どうして不破に抱きかかえられて帰ってきたのか、ようやく気がついて、慌てて不破に「すみません! すみません!」と、盛んに頭を下げて、それを受け取った。

「ただいま」

そんな騒ぎの中、不破の背後から声がした。振り向けば、渋沢と、はとこである此処の主人、近江が立っていた。

「あらっ! 早かったんですね!」
「あぁ、意外と、手短に済ませて貰えたんで、助かったよ」

近江は、そう言って、にこにこ笑った。すると、部屋の奥から、可愛い声が聞こえてきた。

「おかーさんっ! 花瓶!!」
「こらっ! 佳奈!! おにーさんに、ちゃんとお礼、言ったのっ!?」
「ん? どうしたんだ?」

娘と母親の会話に、彼は目をぱちぱちさせた。

「佳奈の面倒を見て頂いたんですよ」
「いや、その...」

別に面倒を見たくて、見たわけではないが...いつも不破なら、率直に、こう言い返すのだが、彼の前では、何故か言い出しにくかった。思わず口籠もっていると、今度は、渋沢が、満面の笑顔を不破に向けてくる。

「おかーさんっ!!」
「もうっ! 佳奈ったらっ!!」

佳代子は、些か怒ったような口調で、佳奈の声が聞こえる方へと小走りに走っていった。すると、近江は軽く頭を掻きながら、ぽつりと呟いた。

「やれやれ、今日は何を摘んできたんだか...」
「えっ?」

驚く渋沢に向かって、近江は、「おいで、おいで」と手招きして、奥の部屋と、渋沢と不破を案内した。

「おっきな、ばあちゃんに見せてあげたくて、佳奈は、毎日、花を摘んでくるんだよ」

近江が指さす方向、渋沢と不破が通された奥座敷には、一組の布団が敷かれていて、其処には、痩せこけた老女が横たわっていた。

「おっきな、ばあちゃん、見て見て! きれーでしょ!! おばあちゃんの寝まきとおんなじだよっ!」

(えっ...)

不破が目を見開いた。いつの間にか、不破たちよりも先に、佳奈が花瓶を抱えて、老女の枕元へとやってきていた。

「ねっ! きれーでしょっ!」

花瓶の中身は、先程まで、佳奈が持っていた、菜の花と桜の花。見栄え良く、花瓶に生けられた花たちは、言葉が不自由になった老女の目にとまったようだ。其れを見て、微かに老女は、口元を緩ませて笑った。

「今日は、桜と菜の花だよっ!」

佳奈の様子を、呆然と見ていた不破と渋沢の目の前を、佳代子が会釈をしながら、ゆっくりと通り過ぎていった。

「佳奈、こっちのお花は片づけてもいいわね?」
「えーっ! まだ、いーじゃないっ!」
「あのね、佳奈...」
「おっきな、おばーちゃんに、きれーなお花、いっぱい見せてあげたいのっ!」
「もう...」

佳代子は盛大にため息を吐いた。けれど、困った顔をしながらも静かに微笑むと、佳奈の横に座って、小さな頭を優しく撫でた。老女の枕元には、花瓶が数個、置かれている。その一つに、水仙の花が飾られていた。客室のものと、同じ花だった。佳奈が摘んできたものだった。

「佳奈は、毎日、色んな花を摘んでくるんだ。それを、ばあちゃんの枕元に飾ってくれるのさ」

近江が小さな声で囁いた。それに応えるかのように、不破の口が小さく動いた。

「...寝まきの柄に合わせてか?」

どうして、桜の花にこだわったのか、不破は、ようやく理解した。寝たきりの曾祖母に、自分が着ている着物の柄と、同じ花を見せたくて、小さな身体で其れを集めていたのだ。独り言のように呟いた言葉に、近江は少し、眉を動かした。けれども、すぐに、にっこりと笑うと、

「ああ、そうだな、多分。佳代子が、毎日、ばあちゃんの着替えをさせているから、そうなんだろう」

頬を軽く掻きながら、近江はさらに喋り続けた。

「母親が、厭がらずに面倒みるから、自然と、子供も、そうなっていくんだ。...自然と、優しさを覚えていく」
「...」
「それだけで、ばあさんが生きている意味があるんだ」
「えっ?」



生きている意味がある



不破の瞳が、微かに見開かれた。渋沢が、其れに気がつく。けれども、何も言わずに黙っていると、近江がふっと息を漏らして、二人の顔を覗き込んだ。

「佳奈のやってる事、必要の無いことのようにみえるかもしれないけど、あれは、ばあさんの為にやっている事だ。誰かの為に優しくなれる、誰かを優しくすることができる、どちらも大切な事だと思うよ。だが、正直なところ、寝たきり老人の看護は、大変な重労働だ。佳代子は、本当によくやってくれている。ありがたいと思う。だからこそ、佳奈も素直に育っているワケで...」

急に、近江が、にかっと笑った。

「以上! 自分の女房と、娘の自慢話...ってトコだ!」
「はぁっ?」

目をぱちくりさせている二人に向かって、近江は満面の笑顔で、さらに付け加えた。

「克郎も、早く、いー人見つけろよ...って、おまえ、まだ、高校生だっけ?」
「...はい」
「そーか、そんな格好してると、どう見ても、オレと大して、歳が変わらんように見えるなぁ」

近江は、渋沢の肩をぽんぽんと叩いた。渋沢は再び、苦笑いをしている。法要の席でも親戚中から、実年齢とかけ離れた、見た目の年齢を、散々言われてきた渋沢である。好きでこうなったワケではないが...近頃、自分でも気にし始めているのだ。不破と、釣り合いが取れていないのではないかと。

ふと、横にいる不破の顔を見ると、彼はじっと、佳奈と母親、そして曾祖母を見ていた。その横顔から、不破が何を考えているのか、渋沢には、朧気ながらも其れが読みとれた。急に、胸が苦しくなる。

「おい、どうした?」
「あっ、いえ...」

渋沢の様子に、近江が気がついた。そして、「あぁ、そうか」と、頷いた。

「早く、着替えた方がいいな。堅苦しいだろ?」
「はい、そうですね、着替えてきます」

渋沢も軽く頷いて、「じゃあ、着替えてくるよ」と、不破に話しかけた。

「あぁ、では、外で待っている」
「えっ? 外?」

「そーいえば、克郎がいない間、どこに行ってたんだ?」

近江が、不破に訊ねると、「河川敷です」と、単調に、不破は答えた。

「なら、今度は、東照宮あたりを歩いた方がいいな、せっかく来たんだから、寄らないって手はないだろ?」

ネクタイを緩めながら近江が、そう言うと、渋沢も納得したように、「じゃあ、ちょっと待ってて」と、部屋から出ていった。不破も、近江に軽く会釈をすると、部屋から出ていった。出ていく時、近江の威勢の良い声が、不破の背中にかけられた。

「夕飯は6時からっ! 風呂は、24時間、いつでも入れるからなっ!」

その声に、(雰囲気だけではなく、声も似ているのだな...)、不破は、ふと、そう思った。





「待たせて、ごめん」
「いや、それほど待っていないが」

旅館の正面玄関を出た道路脇で、不破は壁にもたれかかって、ぼんやりと渋沢を待っていた。

のんびりと、くつろぐことが目的だから、焦ることはない。

二人は合流すると、そのまま、目的の場所へと、ゆっくりと歩いていった。道行く人の流れが、多くなってきている。車の通行量も、多くなったように思える。時計を見れば、午後1時を大きく回ったところだった。昼食を終えた観光客が、一斉に路上に出てきた、といった具合だ。皆、目指すところは同じようで、二人も、その流れに沿って、歩いていた。

一ノ鳥居をくぐると左手に、絢爛な極彩色をまとった五重塔が目をひく。その正面には、表門。「阿」「吽」の形相した2体1対の仁王像が、待ち構えていた。表門をくぐれば、右手に三神庫、左手には、「見ざる・言わざる・聞かざる」で有名な神厩舎、さらに、その奥、豪華絢爛な装飾彫刻が施された陽明門、そして本殿へと続くのだが、二人は、混雑を避けるように、奥宮へ続く坂下門へと足を向けた。坂下門をくぐりぬけると、老杉が生い茂る苔むした石段の参道が表れる。「石廊下」とも呼ばれる、この石段は、奥社まで207段続いている。かなりキツイが、この石段を、二人はゆっくりと登り始めた。だが此処でも観光客が多くて、物静かな空気に包まれていながらも、賑やかな会話があちらこちらから聞こえてくる。時々、聞こえてくる鳥のさえずりが、耳朶に心地よく響いて、僅かながらも、ほっと和ませてくれる。ようやく、都会の喧噪から離れられたような気がした。荘厳な山の気配の中、ふと、不破の足が止まった。そのまま、空を見上げるが、樹齢数百年の老杉が、その視界を遮る。微かな木漏れ日だけが、揺れている。

「不破くん?」

前を歩いていた渋沢も、立ち止まった。「疲れた?」、優しく声をかけてくれる。「いや、別に」、不破は単調に答えると、また歩き出した。渋沢も、不破の歩調に合わせてくれる。自然と、二人には会話がなくなっていた。けれども其れは、不思議と、苦ではない。この静かな山の佇まいが、そうさせているのだろう。すれ違う他の観光客たちも、賑やかな家族連れもあるが、無言の者たちも少なくはない。

「不破くん」
「ん?」

石段を登ぼり始めて数分、ちょうど真ん中ぐらいまで登っただろうか、ふいに、この均衡を渋沢が破った。不破は、渋沢より、一、二段、後から登っていたので、渋沢の顔がよく見えない。ととっと、勢いよく登って、渋沢の真横に立つ。一瞬、身体がぐらりと揺れたので、渋沢が不破の腕を掴んでくれた。

「す、すまない」
「大丈夫かい?」


大丈夫...


不破の瞳が、微かに見開かれた。今朝みた夢の中の、彼の笑顔と渋沢の笑顔が、不破の瞳の中でだぶって見えた。

「不破くん?」
「な、なんでもない...っ!」

胸が苦しくなった。


どうして、自分は、素直に彼を受け入れなかったのだろう。
何故、突っぱねてしまったのだろう。
つまらない意地をはってしまったのだろう...。

あんなに...あんなに、彼は優しくしてくれたのにっ!
今、目の前にいる渋沢と、遜色なく接してくれていたのにっ!


「不破くんっ?」

はっとして見上げれば、其処には心配そうな渋沢の顔があった。


今まで、渋沢と一緒にいた時には、彼のことは忘れていたのに...


「すまない、つい...」
「不破くん?」

不破は、大きな溜息を一つ吐いた。

「行こう」

そう言って、一段、足を動かして登ったが、今度は渋沢が立ち止まったままだった。不破の腕を捕まえて、じっとしている。

「渋沢?」

渋沢を見下ろすような格好になって、不破が振り向くと、渋沢が静かに笑っていた。

「さっきね」
「ん?」

渋沢が徐に口を開いた。

「あのおばあさんの事、すごいなって思ったよ」
「えっ?」

何を言い出すのだろうか?、不破が目をぱちくりさせた。

「近江さんが言ったとおり...寝たきりで言葉も不自由なのに、そこにいるだけで、子供が優しさを覚えていく。それだけで、おばあさんが生きている意味がある」


生きている意味


不破の肩が、びくりと震えた。けれども渋沢は、静かに言葉を続けた。

「あんな風にね、誰かを優しくできる俺でありたい、そう思ったんだ。俺の存在が、不破くんにとって意味のある存在でありたいと...」
「渋沢?」
「俺は、こうして不破くんと出会えた」
「...」
「俺にとって不破くんは大切な存在だよ、だから...」


自信もって、此処にいて欲しい
俺のそばにいて欲しい


「渋沢...」


好きだよ...愛してる...


伝えられた渋沢の言葉に、その想いに、不破は、全身を震わせた。そして...

「不破くんっ!!」

咄嗟に、渋沢の腕を振り払って、階段を駆け降りてしまったのだ。渋沢が慌てて、不破の後を追いかけてきた。
急な石段を、まるで追いかけっこのように、二人は駆け降りていく。すれ違う人達が驚いて、二人を見送っていた。

「不破くんっ! あのっ!!」

渋沢の声に、不破は振り返った。肩で息をしている。走って、西参道まで、いつのまにか来てしまっていた。表参道と違って人通りは少ないが、走っている二人の姿を、周囲は不思議そうに見ていた。

ようやく追いついた渋沢であったが、何と言えば良いのか躊躇していた。怒らせてしまったのだろうか...渋沢も肩を上下させながら、呼吸を整えていると、いきなり不破が、渋沢の腕をキツク掴んできた。

「えっ!? あの...」

動揺する渋沢に、不破は口唇を震わせながら、小さな声で呟いた。

「狡いぞ...反則だ...」
「はぁっ?」
「渋沢は十分、優しいぞ、オレにとって、渋沢は...」

震える指先を緩めて、不破は渋沢から、そっと離れた。そして、一呼吸して、不破は消え入りそうな声で囁いた。

「消えないで良かった...」
「不破くん...」

渋沢が腕を伸ばして、不破の手を軽く握った。その温もりが全身に伝わってきて、不破は、ふっと涙を流した。


大丈夫


この温もりだけが、今の自分を此処に繋ぎ止めるものだから


もう迷うことはないのだから


だから


大丈夫


自分が此処にいる意味があるから...大丈夫



「オレにとって、渋沢はとても大切な存在だぞ」
「うん」
「渋沢も自信もって、オレのそばにいろ」
「うん」
「ずっとだぞ」
「うん」
「ずっと...」




だから、もう...大丈夫




朝見た夢は、多分、彼からの...




「大丈夫」






FIN

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あとがき

すみません! すみません! すみません!!
書き直そうかと思ったんですが、舞台の検証を十分にしていなかったため、書き直しがきかない!?
数年前に行った記憶と当時のパンフレットなどで書いてしまったのがまずかった、つまり...背景が滅茶苦茶なんです!!
先日、偶然にも『実地見聞』する機会があって...や、やばいっ!!、全然、違うぞ!、おいっ!? 何がまずかったかと白状しますと...まず!!

大谷川!!、これは『だいやがわ』と呼びます、標識見て、びっくりしました。てっきり『おおやがわ』と読んでいたものですから...。此処の河川敷は、岩がごろごろしてまして、桜の大樹を見るには、駅から歩いては行けません。車で、かなりの距離を走らなければならないのです、実は。つまり!!、作品中にあるように、子供が歩いていける距離には、とても、花が咲き乱れているような場所は見あたらないのです!! (いえ、あることはあるのですが、作品中に描いたような場所ではなくて...汗)

さらに!! 日光は、いつでも、どこでも、観光客が多いです!! 二人っきりで、いちゃいちゃ出来るような場所は、ほとんどありません!! (ましてや、★★どうしで...目立ちすぎます)
『本宮神社』とか『小杉放庵記念日光美術館』方面、さらに、『明治の館』付近であれば、ちょっとはレトロな雰囲気で、良いかも知れませんが...やっぱ、観光客はうじゃうじゃいます。
『家光大猷院』の方は、『東照宮』と違ってメインではないせいか(?)、観光客はちょっと少ない。でも、まばら...ってな事もない。昨年(一昨年か?)、家光墓所が公開されていましたが、今では、其処は閉ざされているので(数百年に一度しか開かないとか?)、『東照宮』よりは確実に人は少ないけど、説明員さん(売店の店員さん?)とかも結構な人数がいるので、とにかく、とにかく、何処へ行っても、賑やかです。作品中の『西参道』は広くて、杉の巨木に囲まれて、雰囲気は良かったのですが、此処も人が絶えず歩いていますし...『石廊下』から此処まで走るのは、相当な距離がありますし、階段や人混みもかなりキツイ。

いやはや、もう、大失敗です。作品中では、むぎゅするシーンも描いていたのですが、とても、とても、そんな事、出来ないのが分かってしまったので、取りやめました。涙を流すシーンも大幅にカット。だって、こんな目立つ場所で泣いてたら...もの凄く恥ずかしいですよ、うん。

いっそ、捨てちゃおうかと思ったのですが、これは自作の前置きみたいなもんなので、捨てるに捨てられず...
なんせ次は、念願の...あちゃ★...なもんで(滝汗)。実は、そっちの方に注力しすぎてます(苦笑)。

言い訳三昧で、すみません! 今回のことを教訓として、これからは、ちゃんと実地見聞してから書きたいと反省してます。

こんな拙い作品を、最後まで読んで頂きまして、本当にありがとうございました。


date:2002.04.13(Sat) / 一部改稿:2002.04.30(Tue)


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