「明けましておめでとう!、大ちゃん」
「あぁ、おめでとう」

いつも通り、起床して階下に降りてキッチンに入ると、テーブルの上には豪勢なおせち料理が並んでいた。乙女にしては、随分と頑張ったようである。しかし...。

「おい」

思わず発した声に、乙女がにっこりと微笑んだ。

「どーお?、こういう格好も、たまには悪くないでしょう??」

乙女はそう言いながら、くるりと自分の身体を一回転させて、大地にむかってポーズをとった。その瞬間、大地の口から、盛大な溜息が漏れた。

「乙女...歳を考えろ」
「えっ?、これくらい...ダメ?」

目をくるくるさせながら、乙女はまたしても、にっこりと微笑む。大地も、もう一度盛大なため息を吐いた。そう、乙女の着ているのは『晴れ着』しかも『振袖』という代物だった。それも、かなり派手な色合いのものである。

「これ、オヨメに来る時、持ってきて、そのままタンスにしまってあったのよ」
「...」
「可愛い女の子が産まれたら、着せてあげようと思ってとってあったんだけど...大ちゃん、着る?」
「...」

大地が腕を組んで、ぎろっと睨むと、さすがに乙女は首をひっこめて、

「そうよねぇ、いくらなんでも、大ちゃんには、ちょっとねぇ」

と、些か申し訳なさそうに笑ったが、すぐに手をポンと叩いて、

「あっ、そうだわ。お父さんの若いころの着物があったから...それなら着れるかも!」
「おい」
「えっ?」
「正月だからといって、いつもと変わりないであろう。ならば、そのようなものは不要だ」
「そ、そうかしら?、けど、一年の始まりで、特別な日だし...」

そう言って、乙女はカレンダーをちらりと見た。

「あらっ?」

乙女は、目をぱちくりさせた。

「誰がつけたのかしら?」
「むっ?」

リビングの壁に、今年のカレンダーがかかっているのだが、1月1日に盛大な赤丸が描かれている。これには、大地も眉を顰めた。元日なので、日付が赤くなっているのは分かるのだが、この赤丸は...明らかに誰かが書き込んだものである。よく見ると、さらに書き込みがしてあった。それを読んだ大地は、がっくりと首を項垂れた。

「あらあら、今日は藤代くんの誕生日なのね」

乙女はにこやかにそう言うと、

「昨日は大ちゃんの誕生日で、藤代くん、お祝いしてくれたから、今日は大ちゃんがお返ししなきゃね」
「...やはり、そうしなければならないのか?」

大地は面倒くさそうに乙女に呟くと、意外にも乙女はきっぱりとした口調で、大地に答えた。

「当然じゃない!、それに藤代くんだけじゃないわ、他の人達だって...」

乙女がそこまで言いかけると、大地はがばっと顔をあげて、カレンダーを食い入るように見入った。そして、ぱらぱらと月毎のページをめくっていき、最後のページ、つまり12月で、再びがっくりと肩を落とした。

「あらら、もう今年の大ちゃんの誕生日に赤丸がついちゃってるのね」

それだけではない。大地は、これまた盛大な溜息を吐いた。どの月にも、誰かしらの誕生日のマークが、ご丁寧にも書き込まれている。おそらく、昨晩の大地の誕生日パーティー(?)の騒々しさに紛れ込んで、各自が書き込んでいったものであろう。

そこまで考えついて、大地はハッとした。そして、自分の部屋へと駆け込んだ。

予想どおり...大地の部屋のカレンダーにも、それらの書き込みはされていた。それも、リビングのものより、相当派手に、だ。

さらに。

大地の机の上に、真新しい手帳が置かれていた。

年末、大地が購入したものだったが、これが此処に置かれているということは...。

大地は恐る恐る、手帳の予定表を一枚ずつめくっていくと...これまた予想どおりだった。真新しい手帳には、まだ予定が書かれていないにも関わらず、カレンダー同様、赤丸やらシール等といったもので、昨晩、否それだけではない連中の誕生日が、華々しく彩られて記されていた。

思わず、頭を抱え込む大地。すると、階下で乙女が大きな声で大地を呼んだ。

「大ちゃん!、おせち料理、早く食べないと、藤代くん達が来ちゃうわよっ!!」

そうだ、昨晩の騒ぎも何のその、あの連中なら有り得るだろう。
新年早々、大地は軽い眩暈を感じながら、自室を出て行った。


今年も...賑やかな一年になりそうだった。




おしまい


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新年あけましておめでとうございます!(激遅...滝汗)
更新が滞っておりますが、今年も何卒宜しくお願い致しますデス!!


date:2004.1.5


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