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「ふむ、今年もこのニュースか」 「ん?」 豪勢なリビングに似つかわしい、巨大なスクリーンのような液晶テレビに映し出された映像を見て、黒須京介はぽつりと呟いた。それに反応して、ノート型パソコンをいじっていた大地の手が止まり、京介に振り返った。 「どうした?」 「...ここ数年、同じニュースだ」 「???」 大地も映し出された映像を見つめた。映像とともに、ニュースキャスターの声がやかましく聞こえてくる。 内容は...各地で行われた『成人式』の話題。そしてそれは、罵声が飛び交い、暴力さえも行われている光景。まるで、ゲリラのようである。 大地は、ふっと息を漏らした。 「『はたち』になれば、酒とタバコが許される。たったそれだけで、この騒ぎだ」 「そうだな...だが、彼らにしてみれば、それなりに意味のある行動かもしれないが...私からみれば、あまりにも無意味でかつ...」 「馬鹿げているとでも?」 「あぁ、そうだな」 16歳でハーバード大学を主席で卒業し、経営学の博士号も持っている京介には、理解不能な行動なのであろう。もっとも、大地もそう思っている。だが、この世には、理解不可解な行動を起こす人間が存在するものだ。 理解不可解。 だが、それには個人差がある。彼らの行動に同意するものもあるからこそ、こうして毎年、このようなニュースが放送されるのだ...このような行動を起こす人間が、必ず現れるのだ。 何が常識で、何が非常識なのか...その分別こそが不透明な現実。 京介や大地にだって、それを決め付けることはできない。しかし自分達には、確かに理解できないのだ。否、無縁のものだと言ってもよい。間違いなく、自分達は、このような行動はしない。有り得ないのだ。 しかし。 「彼らからすれば、京介の存在は、かなり異質なものであろうな」 「何?」 大地は、再びパソコンの画面に目を移し、書きかけの論文を検証し始めた。不破のじぃさんから頼まれたものだった。 「おい」 「ん?」 「オレが異質とは、どういうことだ?」 大地は手を止めて、ふっと息を吐き、部屋の中を見渡した。この部屋は、京介の、否、黒須家のリビングである。一般家庭とは無縁の世界が、此処には広がっている。 「その若さで、すでに黒須の党首を務めている。それだけで、すでに常軌とやらを逸しているとは思わないか?」 「そうか?」 「もっとも、それが京介の...運命なのだからな」 ニュースの映像は、まだ続いている。彼らからすれば、京介の境遇の方がよっぽど『異常』に思えるだろう。そう、人はそれぞれ違う生き方を持つ。違う考え方を持つ。それは当然のことだ。流行歌ではないが...たしかに、それぞれが『世界にたったひとつ』なのであるから。 「おまえが彼らの行動を受け入れられないように、彼らもまたおまえの生き方を受け入れられないであろうな」 「...」 「相反するものが存在していても、何の不思議もなかろう」 「そうだな」 いつしかニュースは他のものに変わっていた。リビングの部屋には、相変わらず騒々しいニュースキャスターの声と、大地のタイピング音が響いている。 「『はたち』か...」 大地がキーボードを叩きながら、呟いた。 「確かに、新成人とはいえ、恥ずべき行為であることには間違いないと思う。馬鹿騒ぎにも限度がある。『自由』とは何をしてもいいのだと取り違えた者があまりにも多すぎる。自由を主張するなら、社会に対する責任も同じだけの重さがあると認識せねばならないはず」 大地は一息に喋ると、編集していた論文の保存ボタンをクリックして、ふっと息を吐いた。 「もっとも、今、此処で京介と論議をしても、この答えはまだ出ない」 「何故だ?」 大地はノート型パソコンの電源を落として、ゆっくりと立ち上がった。両腕を組み、軽く肩をほぐらせる。 「まだ、この先、何が起こるか分からないからだ。オレ達が、その時を迎えるまで、な」 パソコンをカバンにしまい込み、帰り支度を始める。 「では、またな」 「あぁ、気をつけて帰れ」 京介は頬杖をつきながら、テレビモニタを見ていたが、大地が帰るので、ちらりと横目でその背中を見つめた。 幼い頃から、英才教育を受けて育った京介。大地は、京介とは全く異なった家庭で育っていたが、多少なりとも、その影響があったのだろう。京介同様、大地も、どこか冷めた感情を持つ。だが、その大地から、近頃、微かながらも、ある変化を感じ取れる。おそらく、『サッカー』を通して得られたものだろう。『仲間』という存在があるからだろう。 閉じられたドアから、視線を再び、テレビモニタにうつす。そこには、スポーツニュースが放送されていた。 「これは...『やっかみ』というものか?」 運命には逆らえないが、それでも、今しか出来ない何かがあるはず。 京介は静かに目を閉じた。 おしまい ☆ ―――――――――― ☆ ありゃりゃ...取り留めのない文章になってしまいました。 結局、何が書きたかったのか、自分でも見失ってしまいました(おい)。 ただ... 毎年恒例とも思える『新成人』達のニュースに、何となく、書いてしまいました。 あちらこちらで、こういった彼らの行動に対して、世論は賛否両論。色々な意見がでてましたね。 けど、何をどうしたって、来年もあるのでしょうね、これって、きっと。 自分の成人式の時は、中学、高校を卒業して以来の友人達に逢えることが、物凄く嬉しかったという記憶しかありません。 今のご時世は、それだけじゃ足りないのかな??? date:2004.01.12 ☆ ―――――――――― ☆
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