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「一人一個ずつね!」 そう言って、小島がお菓子の箱を、皆の前に差し出した。 今日はバレンタインディである。 小島は、一人ずつ小分けするのも面倒だったらしく、チョコレートの大箱を用意して、それをサッカー部の連中に配るだけにしたようだった。一番、手間がかからない手段であるが、 「ちぇ、つまんねーの」 当然、文句が出たが、小島は、「なら、食べなくてもいいわよ」と、しれっと答える。食いっぱぐれるのも癪なので、皆渋々、受け取っていく。そこへ、不破が部室へ入ってきた。後片付けの当番だったらしく、一番最後に入ってきた。 「はい」 小島は不破の前にも差し出した。 「ん?、なんだ、これは?」 「何って...チョコレートよっ!」 「だから?」 「あのね!、人様の善意ってヤツを、少しは理解したらどうなの!」 「むっ?」 不破は本当に理解できないらしく、首を傾げていた。その様子に、小島はぶちっと切れてしまった。 「あんたってば!、もう...ほらっ!」 手を出さない不破に代わって、小島はチョコレートを箱から取り出して、不破の前に差し出した。不破は、それを見て暫く考えてから.... ぱくっ...! 小島が指で掴んでいたチョコレートを、口で受け取った。否、小島に食べさせてもらったような格好になった。 「ちょっ!、ちょっと、あんた、何すんのよぉ!!」 小島は一瞬、唖然としたが、すぐさま、顔を真っ赤にして怒りだした。しかし、不破は全く気にする様子もなく、もぐもぐとチョコレートを食べてしまった。そして、一言、呟いた。 「手が汚れているから、受け取れなかったのだ。しかし、人様の善意だのと煩いので、口で受け止めた、それだけだ」 さらりと言って、不破はロッカーからタオルを取り出すと、手を洗いに行ったのか、部室を出て行った。またしても唖然とする小島だったが、背後から殺気に似た視線に、背中が寒くなる気がした。 (これって、多分、あの連中のよね...) 盛大に溜息を吐くと、小島は残りのチョコレートを「あとはテキトーに食べて」と高井に渡して、部室を後にした。これ以上、あそこにいるのは耐えれらない。 家路を歩きながら、不破のとった行動を思い起こして、小島は一人顔を赤らめる。 (あいつ...ほんとに自分の立場がわかってないんだから!) 小島は怒りながらも、不破が微かに触れた指先をそっと見つめる。 (これくらいは...いいよね、うん、そうよ、バレンタインディなんだし!) 意気消沈しかけた小島は、少しだけ元気になった。足取り軽く家へと帰っていった。 その後、不破がどうなっのか、知る由も無い...というか知りたくなかった。 真冬の星座が瞬き始める夕闇が迫ってきていた。 おしまい ☆ ―――――――――― ☆ はい!、バレンタイディですね!、今年は皆様、どのようにお過ごしなされたのでしょうか? 週末でしたから、楽しく過ごせた方、多かったのでは? ちなみに、自分は...そんなに楽しくなかったです、えぇ、毎年そうですから、今更です!! date:2004.02.16 ☆ ―――――――――― ☆
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