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「見てみて!、これスゴイでしょ!」 「ん?」 土曜日の昼食時。乙女がお皿の上にキレイな三角形の焼きおむすびを差し出した。別になんてことなはい食べ物である。 「これがどうした?」 「あのね、この間、結婚式の引き出物でもらったホットサンドメーカがね、焼きおむすびも出来ちゃうのよ!」 「それは良かったな」 大地は素っ気ない。それぐらいで、喜んでいる乙女を可愛いと思うどころか、少し情けない気もした。しかし、母親想いの大地である。父や祖父と接する時よりは、気を使っている。だが、乙女はそんな大地の様子に気がつくこともなく、ほぇほぇ笑いながら、 「ワッフルも作れるみたいだから、今度はそれでも作ってみようかしら?、大ちゃん、甘いもの好きだもんね」 「別に...どうでも良い」 またしても素っ気なく答えながら、乙女が差し出したそれを、ぱくりと食べた。やや硬かったが、なかなか美味かったので、2,3個ぺろりと食べてしまった。しかし、食べ終わった後、 「ん?」 大地は怪訝そうな表情になった。乙女は、「?」顔で大地のことを見ていると、大地がぽつりと呟いた。 「取れてしまった」 「えっ?」 「歯につめてあるものが取れてしまった」 「あらま」 大地は小学校6年生まで虫歯がなかったが、やはり食事が影響したのであろう。食事を担当してくれていた祖母が亡くなってから、サプリメントに頼る生活の影響か、「虫歯」が出来てしまったのだ。無論、その後は注意していたので、一箇所のみであるが。 「取れちゃったのは、どうしたの?、もしかして...」 「うむ、食べてしまったようだな」 「えっ?、大丈夫かしら?」 「まぁ、口内に入れていくものであるから、毒にはならないだろう」 「そうね、そのうち出てくるでしょうから」 「...」 乙女はけろっと言う。その通りであるが、大地としては何となく気恥ずかしい気分である。 「あっ、じゃあ、今日の午後、歯医者さんに行った方がいいわね」 「うむ、だが予約をしていないぞ」 「あら大丈夫よ、緊急なら診てくれるから」 「それほど緊急ではないが」 「でも、そんなに放っておけないでしょ?、2時に始まるから、その時間に行った方がいいわね」 「あぁ、わかった、そうする」 大地は、舌先で穴の開いた歯をいじって、(確かに早めに治療しておいたほうが良さそうだな)と思った。 乙女に言われたとおり、歯科医院に行くと、快く治療してくれた。予約順番待ちの患者の隙間に、大地の順番を入れてくれたのだ。治療してくれたおかげで、ぽっかり空いた穴が塞がって、違和感が薄れた。来週には、ちゃんと治療してくれる。今日のは、仮止めだ。それでも、食事には困らない。そう思っていたが...。 「むっ?」 夕飯が終わって、またしても、舌先に感じるこの感触は...。 「どうしたの?」 乙女が食器を片付けながら、大地の顔を覗きこんだ。 「また、外れた」 「えっ?、外れたって...仮止めの歯?」 「あぁ、正確いえば、また食べてしまったようだ」 「あらら」 乙女が、ふぅっと息を吐いた。 「大ちゃん、おなか、こわさないでね」 「...日頃、乙女の料理で持ち堪えているのだから、心配ない」 「えっ!、そんな、ヒドイ!」 泣きそうな表情の乙女。だが、大地の言い分は間違っていないから、乙女もそれ以上は何も言えなかった。しかし、乙女は、ふいにポンと手を叩いた。 「じゃあ、これからは、渋沢くんに大ちゃんのこと、お願いしようかしら?」 「おい、自分の息子を何だと思っている?」 ほぇほぇと笑う乙女。大地は少しだけ頬を赤く染めながら、無意識であろうが、穴の開いた歯の方の頬を摩っていた。 なんとなく、ついていない日であった。 おしまい ☆ ―――――――――― ☆ コレ、自分の話です(ごめん、不破。君に虫歯なんてないだろう、うん、ホントにゴメン!)。 ぽっかり空いた歯を、無意識のうちに、舌先でいじってます(子供みたいです)。 歯型(?)は取ったから、来週には完治予定ですが...それまで、冷たいものが染みます。 けれど、缶チューハイは飲んじゃいます。あれっ?、禁酒活動中だったんだけど...意思が弱すぎる(反省)。 date:2004.02.23 ☆ ―――――――――― ☆
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