新たな友人とともに


 翌朝。
 太陽が東から昇り、世界に平等に光の恩恵を与える。夜露で濡れた森の木々や草木がその光に反射する。
 森の動物たちは小鳥のさえずりで目を覚まし、朝食を求めて森を駆け巡る。
 木々の隙間から入り込む木漏れ日が二人の旅人の眠るテントを照らし出した。
「…ん…ん」
 テントの布越しから差し込んでくる太陽の光でアクアが軽く寝返りをうつ。しばらくした後、そのつむった両の目が眠たそうに開かれる。
「もう…朝なんだ?」
 半分寝ぼけている状態で寝袋から這い出るとセレスを起こさないようにテントから外に出る。
 出ると同時に冷たい湿った空気がアクアの顔をなでていく。空を見上げると太陽がしっかりと顔を覗かせている。
「うん、今日もいい天気になりそう」
 ひとつ大きく伸びをすると相棒の所へと歩いていく。
「おはよう、ルド」
 いつものように笑顔で相棒であるドラゴンに微笑みかける。
「おはよう。セレスはどうした?」
 隣に姿が見えず、尋ねる。
「うん、まだ寝てる。いろいろと私に教えてくれたから疲れちゃったのかな? それともやっぱり昨日の…」
「恐らく後者のほうだろうな。見たところあの魔物は森の魔物じゃない。渓谷地帯に生息している魔物だ」
「渓谷って…ここから結構あるんじゃないの?」
「うむ、馬だと3時間くらいはかかるだろう。それだけの距離を逃げてきたんだ、疲れてもおかしくない」
「そっか、トレジャーハンターって思ってたより危険なんだね。話を聞いたけど何度死を見たか忘れたってさ」
「それはそうだろうな。旧時代の遺跡は今のものとは比べ物にならないほどの高度の罠がしかけられている。
それらをくぐり抜けているとなるとセレスはかなりの腕のトレジャーハンターだろう。あの若さでたいしたものだ」
 と、本心から感心するように言う。
 そんな会話をしているとテントの中から寝ぼけ眼のセレスが出てきた。
「う〜、おはよう〜〜〜…」
 低血圧なのか傍目から見てわかるほどにボォォっとしながらの朝の挨拶。
「おはよう、セレス」
 苦笑まじりで挨拶を返す。
「朝食はどうする?」
 バッグから携帯用の食料を取り出すとセレスにそれを見せる。
「うん、食べる。…朝は身体の資本だからね〜…」
 アクアから食料を受け取ろうとするがその手は見事に空をきる。
「ふふ、ほら」
 セレスの手を持つとその手のひらに乗せてあげる。
「あ〜、ありがとう〜。どうも、朝は苦手でねぇ〜」
 その缶詰を開けようとするがうまく力が入らないのかカチカチと音を鳴らすだけだ。
 その低血圧振りにあきれると同時に仕方なくセレスの持っている缶詰を開けてあげる。
「本当にありがとう〜」
 起きているのか寝ているのかわからないような感じの口調で礼をいうと地面に腰を下ろす。
 アクアも自分の分の缶詰を取り出すとセレスの隣に腰を下ろした。


「さってと、お腹も膨れたし、これからどうしようか?」
 さきほどの様子が嘘だったかのような元気さでセレスがいう。
「呆れた。低血圧ってホントなの? ただ単にお腹が減ってただけじゃぁ…」
 空になって缶詰を片付けると、そんなことを言う。
「あら、ホントよ。朝は苦手でねぇ。ってそんなことはどうでもいいでしょ。これからよ、こ・れ・か・ら」
「これからって、セレスも一緒にくるの!?」
 こんな展開は予想をしているはずなく、当然の反応で驚く。
「ずっと一緒ってわけじゃないわ。この森の先にある街まで連れてってもらえないかな? 仲間との合流地点なのよ、そこが」
「う〜ん、どう? ルド?」
 と、隣のドラゴンに聞く。
「うむ、別に構わないだろう。どうせその街が目的地だからな」
「そうだったね、そういえば」
「やった、決まりね。あたしってドラゴンに乗るの始めてなの」
 と始めておもちゃを買ってもらった子供のように瞳をランランと輝かせる。
(こんな軽い人が凄腕のトレジャーハンターなんて思えないなぁ)
 嬉しそうに空を飛んだときの感覚などをルドラに聞いている様子を見るとそんなことを考えてしまう。

 バサバサバサ!!
 二人を乗せたルドラがゆっくりと翼を羽ばたかせる。地上から5mほど上昇すると回りの木々に注意を払いながら進み始めた。
 セレスは当然の事ながらドラゴンに乗るのは始めてのはずなのだが、アクアよりもうまく乗っているようにも見える。
「セレスって乗るの上手だね」
 それに気づき自分の後ろにいるセレスに話し掛ける。
「うん、そうだね。地面との接地感がないこと以外は馬と対して変わらないかな?
馬の蹴り足から伝わってくる情報が感じ取れないのがちょっと怖いけどね」
「ふ〜ん、そうなんだぁ。私は馬にも乗ったことないからなぁ」
「あんなのは慣れよ、慣れ。ところでさ、アクア?」
 唐突に質問をしてくるセレス。
「うん? なに?」
「戦闘のときってアクアはなにしてるの?」
「私? 私はルドラの視界に入らない部分の索敵なんかをやってるけど。戦闘に参加できる能力なんて持ち合わせてないし」
 弓は最近練習してるけど、と最後に付け足す。
「なるほどね〜。魔法とか覚えてみるつもりはない?」
 なんとなく嬉しそうな喜ばしいような雰囲気の口調で話してくる。
「魔法? 無理よ、私には」
「そ〜かな〜。あたしから見る限り才能はあると思うんだけど。ルドラはどう思う?」
 不意に質問をルドラに変える。
「そうだな、セレスの言うとおりに才能はあると思う。ただ…」
「ただ? なに?」
 アクアが聞く。
「いや、なんでもない」
「やっぱりルドラは戦闘には人数が多いほうがいいんじゃないの?」
 こちらは特に気にした風もなくルドラにさらに聞く。
「う〜む。アクアを守るものの意見としては賛成できないな。ただ、戦闘をするものとしてはやはり人手は欲しいと思う。
ある程度の魔物なら20匹、30匹と出てきてもどうってことはないが、さすがに力のある奴に出てこられると厄介だな」
 と自分の正直な意見を二人に聞かせる。
「でっしょ〜。ほら、ルドラのためにも魔法を覚えるべきよ」
 どうやらセレスはなんとしてもアクアに魔法を教えたいらしい。そんな彼女を見ているとレイナを思い出してしまうアクアであった。
「うん、わかった。無駄とは思うけどやってみる」
 こんな調子では断っても無駄と思ったのか、ついに折れた。
「そうこなくっちゃ。大丈夫、絶対に使えるから。それに弓も教えてあげられるし」
「弓もって…セレスってどれだけの武器を扱えるの?」
 あまりにもバリエーションが豊富なのでビックリしてしまう。
「そうねぇ…」
 あごに手を添え、しばらく考え込む仕草をする。しばらくすると計算がついたのか添えていた手を離すと指折り数え始める。
「えっと…、剣でしょ、弓に、鞭、それと簡単な物理魔法を少々ってところかな?」
「へぇ〜、すごいなぁ」
 本心から感嘆の声が出る。
「まあ、こんな商売してるからね。そこそこ使えないとやってけないのよ。一番得意なのは剣だけどね」
「ふ〜ん、やっぱり大変なんだね、トレージャーハンターも」
「そりゃあね、潜っている間は常に危険と背中合わせだし。でも、そんなスリルがたまらないのよね」
「私にはわからないなぁ、やっぱり安全なのが一番じゃない?」
「アクアにはわからないかもね。どう見ても旅人っていうより、お嬢様って感じだもん」
 ケラケラと笑いながらアクアを指差す。
「もう! ひどいなぁ。これでもだいぶマシになったんだからね」
 プイッ! と横を向いて拗ねる。
「ゴメン、ゴメン。謝りついでに魔法の基礎知識も教えたげるからさ」
「基礎知識?」
 横に向けていた顔を元に戻す。
「うん、魔法を使うなら最低限必要な知識よ。ちょっと堅苦しいかもしれないけど、大事なことだから」
 そういって次の街につくまでの間、セレスの魔法のレクチャーは続いた。


後書き

どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第3章・第2話『ドラゴン乗りの少女 新たな友人とともに』掲載完了です。
とりあえず、新キャラ・セレスとの会話形式で進みましたね。
少しでもこのキャラに印象を持ってくれると幸いです。狙いはそれだし(^_^;
でもなんか書いていて新キャラって感じがしないんですよねぇ、セレスって。
自分の中でレイナとダブっちゃってどうにも…。この辺、ひょっとしたら失敗かもしれない…。
書きやすいことは書きやすいんですけどね。以降に出すかもしれない新キャラはできる限りダブらせないように頑張ります。
それでは、次回の後書きで〜(^_^)/~


2000年 7/9 ぱんどら

『セレス』 『セレスの魔法講座』
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