セレスの魔法講座


 ここは、ハーヴェストの街の外れにある森。朝からの晴天続きで森の木々が輝いて見える。
 そんな森の中に女性二人とドラゴン一匹という世にも不思議な取り合わせの集団がいた。
 言わずと知れた、アクア、セレス、ルドラである。
 アクアが魔法を覚えるということを承知したので、セレスが妙に意気込んで熱心に指導している。
「さて、的はこんなもんでいいよね?」
 と麦わらでつくった、かかしのようなものを指差す。
「うん、あれを狙えばいいんだよね?」
「そういうこと。魔法の種類や基礎・元素なんかは教えたでしょ。あとは正確なイメージができるかよ。
あなたに教えたのは基礎中の基礎の物理魔法で、詠唱も必要ないけど、しっかりとしたイメージが必要よ。」
「わかってる。耳にタコができるほど聞いたわ」
「なら大丈夫ね。さ、やってみて」
 とアクアを促すと自分はルドラの隣まで下がる。
「どう? できると思う?」
 隣までくると同時にルドラに話し掛ける。
「そうだな、それなりの魔力はしっかりと感じる。間違いなく才能はあるだろう。ただ…」
 言いかけた言葉をセレスは、知っている、というように手で制する。
「やっぱりルドラもそう思ってたんだ」
「まあ、一応な。それなりに魔法の知識はあるつもりだ」
 と答える。それを聞いてセレスが忍び笑いをする。
「そりゃあ、詳しいわよね。数千年前に絶滅したっていわれてる、『知恵ある竜』の生き残りなんだから」
「気づいていたのか?」
「まあ、商売が商売だからね。古代のこともそれなりの知識は持っているつもりよ」
「そうか…そうだったな」
「それに、それなり、じゃないでしょ。あたしより知ってるはずだし、自分でも魔法は行使できるはずよ」
「まあ、簡単なのを少々な」
「またまた、謙遜しないの」
 とアクアが集中している傍らでそんなやり取りがなされていた。

 ここでセレスがアクアに説明した魔法について少し書いてみたいと思う。
 この世界にある魔法を大別すると、物理魔法、神聖魔法、精霊魔法、召還魔法、に区別することができる。

 まず、物理魔法。
 この魔法は人の体内に内在しているマナ――いわゆる魔力のようなもの――を最大限に活用する魔法である。
 世界に存在する4つの元素。火・水・地・風。これらのどれかをマナを使い自分の体に集める。
 集めた元素をさらにマナの力で目に見えるように、そして破壊力を持つことができるように具現化する。
 そしてそれを放つのが物理魔法だ。
 マナの力がすべてであり、その絶対量が物理魔法の才能となる。これは生まれながらのものなので後からではどうすることもできない。
 マナの絶対量が多ければ多いほどより多くの元素を集めることができ、なおかつより強力な破壊力を持たせることができる。

 次に神聖魔法。
 この魔法もやはりマナを必要とするが、物理魔法ほど必要とはしない。
 どちらかというとマナは補助的な役割を務め、メインとなるのは信仰の力である。
 神に深い祈りを捧げることにより、その力を少しだけ分け与えてもらうことが可能になるのだ。
 当然、信仰心が強ければ強いほどいい。この魔法は主として、怪我や病気の治癒などに適しているものが多い。
 攻撃の手段として使える魔法もあるが、殺傷力は物理魔法ほどは強くはない。
 それでも、骨の2.3本はへし折ることができるくらいの力は作り出すことができる。

 精霊魔法。
 上記のふたつと違ってマナをまったく必要としないのが特徴の魔法。
 が、その変わりに別の才能が必要となる魔法でもある。
 それが、精霊語を話せるということと、精霊と交信することのできる力である。
 どちらかというと精霊との交信のほうが重要となる。そちらの能力さえ飛びぬけていれば精霊語を話さずとも召還は可能となる。
 この魔法はエルフ族が得意としていることが多いが、まれに人間の中にも使えるものもいる。
 注意点としては精霊を呼び出すためにはその精霊を呼び出すために必要な力――精霊力――がその場に満ちている必要がある。
 例えば水の精霊を召還するのなら水が、火の精霊ならば火が、という具合である。
 例外としてその精霊を支配化に置いていれば精霊力がその場になくても召還は可能となる。
 また呼び出した精霊は人間界の住人ではないので、本来の自分の世界――精霊界――ほどの力を行使することはできない。
 それでも中級以上の物理魔法の破壊力を出すことが可能となっている。

 最後は召還魔法。
 現在では使用可能なものがほとんどいないといわれる、古代の魔法の一種。
 召還という点と、マナを使用しないという点では精霊魔法と同じである。
 一番の大きな違いが、召還するものは魔物であるということと、その魔物は力の制限を受けることがない、その2点に集約される。
 そのためか、召還した魔物の制御が精霊の比ではなく、召還した術士が逆に殺されてしまうという例も少なくない。
 魔物を完全に支配化に置く強制力、そして個人の戦闘能力。それらが超一級品のレベルまでいっていないと扱えない代物の魔法。
 それが召還魔法である。

 話を元に戻そう。
 アクアは左手の甲の上に手のひらを乗せ、まっすぐに的であるかかしを狙いをつける。
 そしてセレスの教わった通りに頭の中にハッキリと魔法のイメージを作る。
 ときおり森の木々の隙間からこぼれ出る風がアクアの頬と髪を撫でる。
 その度に髪の毛が宙を舞い、首筋や頬をくすぐる。
 それにも負けずにジッと集中を続ける。
 すると組み合わせた両手の前にバチバチと電光のようなものが走り始める。
 瞬間、焦ったがすぐに落ち着きを取り戻すとそれを具現化するためにさらに集中を続ける。

「驚いた、こんなに早くあそこまで魔法を発現させるなんて」
 その様子を眺めているセレスがポツリと漏らす。
「まったくだ。もったいないな」
「ホントホント。もったいないね」
 両手を組んで頭の後ろに持って来る。

 さらに30数秒を費やすとハッキリと形が現れてきた。
 テニスボールほどの大きさの赤い火球がその両の手の前に出現する。
「はい! それを放って!」
 その形を確認するとセレスが後ろから叫ぶ。
 それに対して軽くうなずくと気合の声とともにその火球を的のかかしに向かって投げつけた。



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第4話『ドラゴン乗りの少女 セレスの魔法講座』掲載完了です。
 さてさて、ついにアクアが魔法を覚えることになってしまいました。
 魔法について少し詳しく書いて、世界観とかがよりハッキリとなってくれるとやっぱり嬉しいかな?
 そういう細かいところって前回ではほとんどなかったような気がするし…。
 魔法の設定あたりは考えててなかなか楽しかったです。
 キャラなんかは書いている内に勝手にできちゃう、という感じでしたけど、魔法はそうでなかったですね。
 多少、影響はされてはいますけど、作ること自体は楽しかったです。
 でも、魔法の紹介だけで半分以上埋められてるんですよね、今回(^_^;
 これでよかったのかどうかはわかりませんが。
 それでは、次の後書きで(^_^)/~



2000年 7/16 ぱんどら

『新たな友人とともに』 『講座終わって…』
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