アクア そしてオルタネイト


 私が『セレス』『レティシア』『アルフレッド』と様々な人に出会って早くも2週間が経過しました。
 あれから魔物の襲撃も一番心配なドラゴンスレイヤーの襲撃もなく、平穏無事にルーシア探索の旅は続いています。
 セレスには会えないけど、その仲間の方々からいろいろと情報提供をさせてもらっていますが、どうも……。
 ルーシアが国から出るとは思えないからきっと入れ違いなんでしょう。
 早く会えるように頑張っていきたいと思っています。


 夜の闇。
 すべてを包み込み、その姿を覆い隠す。地上の生き物は闇の中で安らぎの時間を得ている。
 その中、月明かりを受けながら空を飛ぶ一匹の竜。ルドラである。
 その背にはアクア。そしてレティシアを乗せ、闇の中を悠々と飛行している。
 やむを得なく昼に移動する際には森の中だが、夜の場合はこうして月明かりをバックに飛んでいる。
 ルドラもそのほうがいいのか、翼を時折気持ちよさそうに大きく羽ばたかせる。
「さて、これからどうする?」
 会話をするときは羽音が邪魔になるので羽ばたかせることはしない。
 それでも、ルドラの太い、威圧感のある声は夜の闇の中に通っていく。
「うん、当てもないし。近くの街でいいと思う。そこでまた考えるよ。セレスの仲間の人もいるかもしれないし」
 ややルドラに顔を近づけるようにして答える。
 すると身体が若干前のめりになるので、腰にしがみついているレティシアは少し危なげにバランスを崩してしまう。
「あ、ゴメン。大丈夫だった?」
 すぐに体勢を元に戻し、レティシアを気遣う。それに対して、
「うん、大丈夫だよ。でも、ちょっと気をつけてね」
 と笑顔で答える。
 アクアの前では努めて明るく振舞っているレティシアだが、野営のときなどしばらく哀しみの表情をしているときがある。
 恐らく両親のことを思い出しているのだろう。そんな彼女には気づいていたが、アクアにはどうすることもできない。
 無責任かもしれないが、時間がどうにかしてくれる、アクアはそう考えることにした。
 自分が両親の代わりになれるとは思わないが、せめて一緒にいる間はいい『姉』でいたいと思っているのが本音だ。
「近くの街か。この辺りだと……」
 首を回し、周囲の地形と自分の中にある地図と照らし合わせる。
「ふむ、ラークが比較的近いか。だいたい2時間も飛べばたどり着けるぞ」
「!!」
 その街の名前を聞くと同時にアクアが驚きの声をあげる。
 彼女にしては珍しいのでルドラ、レティシアの両名がいぶかしげに見る。
「あ、…ごめんなさい。でも、……その街は止めにしない?」
 珍しく街に入ることを拒否してきた。いつもなら喜び勇む、まではいかないが喜ぶはずである。
 少し様子がおかしいとは思うが、聞かれたくないこともあるのだろう、ルドラはそのことを追求することはなかった。
 レティシアも同様のようで不思議には思うものの聞いたりはしない。
「ごめんね。ラーク以外ではどうかな?」
 心底すまなさそうに答える。特にレティシアには本当に申し訳ないと思っているようだ。
 なにせここ最近は野営が続いているので、レティシアもベッドで寝たいと思っているだろう。
 が、そんな不満をレティシアは決して表に出したりはしていなかった。
「以外か…。少し遠くなるが、それでも構わないか?」
「うん、大丈夫。ごめんね。我が侭いっちゃって」
「なに、気にすることは無い。むしろお前は素直すぎるというか、無理するところがあるからな。そのくらいが丁度いい」
 そういってルドラが笑う。つられて後ろのレティシアも笑い出した。


 オルタネイトの街。アクアが家を出ていってからすでに一ヶ月と2週間。
 自宅はもっと汚れていると思われていたが、意外と綺麗になっていた。
「はぁ、なんだってアタシはこんなことしてんだろうねぇ」
 掃除を終えた赤毛の女性。少し細めの優しい目つき。
 人の世話を焼くのが趣味という変わった女性だ。名前はレイナ。
 今も例によって、アクアの家の掃除を終えたところだ。中は鍵がかかっていてさすがに入ることができない。
 仕方なく玄関周りや芝の手入れなどをやってあげている。別に頼まれたというわけではないのだが。
「まったくアクアもいい根性してるよ。勝手にでていっちゃった男を捜しにいくんだから。よっぽと気にいったのね」
 額を滑る汗を手の甲でぬぐい、一息つく。
「二人して戻ってきてくれれば嬉しいけどな〜」
 地面に下ろしていた腰を上げると、繁華街に向けて歩を進める。行き先は水晶の森亭。


 カラン♪ カラ〜ン♪
 いつもと変わらないカウベルが優しい音色でレイナを出迎える。
「いらっしゃいませ」
 中から聞こえる元気な声。背中の中ほどまでの金髪。その綺麗な髪から飛び出した耳。キーシャだ。
「や。頑張ってるね〜」
 軽くキーシャに手を振るといつもと同じカウンタ席に座る。
「はい、コーヒーね」
 すでに常連と化しているので注文は決まっている。座るとほぼ同時にコーヒーがレイナの前に差し出された。
「ありがと。どう? 仕事慣れた?」
 キーシャが水晶の森亭に入ってそろそろ3週間。アクアが無断で止めてしまったための補充だ。
 丁度バイトを探していたというのと、常連というのが重なり面接はあっさりと合格。
 不慣れながらも一生懸命に場に慣れようとしている姿は見ていて気持ちがいい。
「う〜ん、どうだろう? 注文のミスとかは減りましたけど…」
 少し照れを含めた笑い。まだ、慣れた、とハッキリとは言いがたいようだ。
「あせらずにボチボチとね。あせりすぎるといい結果はでないわよ。かといってゆっくりすぎるのもダメ。ほどほどに」
 コーヒーを一口飲むとそう忠告する。
「はい。もう耳にタコができるほど聞いてますよ」
「それにしても、アクアも今ごろどうしてんだろうねぇ」
 背もたれに身体を預け、両手を頭の後ろに組む。
「ホントですねぇ。店長が惜しい逸材を逃した、とかいってましたよ」
「…まあ、そうだろうねぇ。アクア目当ても客も結構いたからね」
「なんにせよ、無事にルーシアを見つけて帰ってきて貰いたいですよ。アクアさんと一緒に働いてみたいし」
「そうだねぇ。早く帰ってきてもらいたいものね。遊び相手が減っちゃって退屈なのよ」
 そういって軽く笑う。
(見つけ出すのもいいけど。無事に帰ってきなさいよ。アクア)




後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第10話『ドラゴン乗りの少女 アクア そしてオルタネイト』掲載完了です。
 本当はアクア・ルドラ・レティシア3人の会話形式で進めようと思っていたんですが、
 上手に間を持たすことができなくて半分半分ということになりました。
 久しぶりのレイナだったけど、どうだったかな? たいして変化はないハズですけどね。
 キーシャがちょっと変わったかな? なんか仕事してるしね。機会があればまたこういう感じで進めたいな。
 状況描写もできうる限り詳しく書けるように頑張っていますが、どうでしょう? 最初に比べるとマシになってきてる気もしますが…(^_^;
 それでわ、次の後書きで(^_^)/~



2000年 8/27 ぱんどら


レティシアの思い・アクアの思い 再会
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