アクア 遺跡へ
(1)


 そして次の日。トリスタンより徒歩で半日ほどかかるであろう、遺跡までの道のりをわずか数時間で到着した一行。
 ルドラに乗った、アクア、レティシア、セレスだ。
「さて、ここが目的地よ」
 ドラゴンの背中からピョンと飛び降り、セレスがぽっかりと開いた遺跡の入り口を指差す。
 アクアもルドラから降り、そしてレティシアが降りるのを手伝っている。
「ここ…が……」
 無事にレティシアをルドラから降ろすと、セレスが指差した遺跡の入り口を凝視する。
 入り口は洞窟のようで、地下へ、地下へと降りていく遺跡のようだ。
 地上からでは残念ながら何階層まであるのかは判別できない。
 ただ、地下から吹いてくる風が不気味な唸り声のように聞こえ、周りの薄暗さも手伝って不穏な雰囲気を演出している。
 その唸るような風にすっかり怯えてしまったレティシアがアクアのズボンの裾にしがみつく。
 そんな彼女の頭を撫で、落ちかせようとするが、当のアクアも少しばかり雰囲気に呑まれてしまっていた。
 その二人を引っ張ってきた張本人。セレスはさすがに慣れているようであっけらかんとしている。
 しかし、普段の彼女とは違うなにか厳しいものをアクアは感じていた。
「さて、ルドラとレティシアちゃんはここまでね。アタシとアクアは潜っていくから」
 ルドラの身体を、レティシアをよろしく、といった感じでポンポンと叩く。それにルドラは笑って答えた。
 自分の腰にある剣。そしてナイフ。サイドパックに詰められた道具。それらを確認しながら入り口まで歩いていく。
「あ…待って……」
 アクアもあわててそのあとを追う。背中に弓。腰には矢筒とセレスから護身用にと、もらったナイフが吊ってある。
 後を追おうとしたアクアの背中が不意に引っ張られる。なんだろう? と思い後ろを振り向くとレティシアがしっかりと上着を掴んでいた。
「………」
 無言。だが、瞳がすべてを語っていた。レティシアのいいたいことを理解すると、
「大丈夫。私はちゃんと戻ってくるから。ルドラと一緒にお留守番しててね」
 もう一度、頭を撫でると小走りにセレスのあとを追っていく。その後ろ姿を終始、心配そうにレティシアは見ていた。
「大丈夫だ。セレスがいる。それにアクアはあれはあれでしっかりとしているからな」
 そんなやり取りがなされている中、セレスは遺跡の入り口脇に魔法陣のようなものを描いていた。

 1階。周りは洞窟だけあって土で固められている。横幅5メートル。高さ10メートルほど。ふたりが並んで歩く分には問題のない広さだ。
 たいまつを片手に持ったセレスが先頭。その後ろをアクア。当然と思える陣形で進んでいく。
「遺跡っていうから、もっと石造りとかを想像してたけど、全然違うのね」
 自分の想像の中で持っていた、『遺跡』というモノと実際の遺跡。そのギャップに思わず顔がほころぶ。
「なにいってんの。1階層じゃまだこんなものよ。地下に下っていけば多分想像どおりになると思うけど」
「ふ〜ん。あんまり想像できないな」
「ほらほら、余所見しないの。ここはもう、人の住むような世界じゃないんだからね」
「……」
 セレスのその一言でアクアの表情、そして身体全体に緊張が戻る。
 興味本位で周囲を眺めることを止め、自分にできる範囲内で周りに神経を集中させる。
(う〜ん、やっぱりまだまだだよなぁ。ムリもないけどさ)
 自分の後ろのアクアの気配を感じながらそんなことを思う。
 確かに周りに気を配っているのだが、それが一方通行となってしまっているのだ。
 前に払えば、左右と後ろが無防備に。左右に払えば前後が無防備に。
(この探索で少しはマシになってくれないと困るなぁ。アタシもちょっと頑張ろうかな。まだ安心できないしね)
 周囲への警戒を少し強めると、ゆっくりと遺跡の奥深くへと潜っていく。
 分かれ道のない一本道。迷うことはないが、挟み撃ちにされたら一巻の終わり、という地形。それがアクアの緊張感を高めているようだ。
 しかし、一方のセレスは全然それに動じることもなく、ズンズンと突き進んでいく。
「ねえ? セレス?」
「ん? なに? アクア」
 後ろを振り返ることなく返事を返す。
「やっぱり魔物とかっているんだよね? 挟み撃ちにされたらまずいんじゃないのかな?」
 手はいつでも背中の弓、及び矢筒にいくことのできる姿勢で自分の意見を言う。
「う〜ん、それなら大丈夫よ。余程のことがない限りこの階層には魔物はいないわ」
「? なんでわかるの?」
「トレジャーハンターの仕事はね。遺跡に潜ってから開始じゃないの。遺跡に潜ると決めたときから始まっているのよ」
 笑っているのか、微かに顔が上下運動をしている。
「それからね、遺跡では魔物とはいわないの。ガーディアンと呼ばれているわ」
「ガーディアン?」
 初めて聞く単語に首をかしげるアクア。
「そ。遺跡を守るものでガーディアンね。魔物との違いは後で教えてあげるわ」
 たいまつの炎で少し影ができたセレスの横顔が、普段とは違った雰囲気を演出している。
 喋り方や仕草などは普段と変わらないような感じだが、若干の厳しさのようにものが見え隠れしている。
「もし、戦闘になったりしたら、もちろんアクアにも出てもらうからね。ちゃんと覚悟はしといてよ」
「うん、善処する」
 そのままお互い終始無言のまま一階層は何事もなく探索を終えた。



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第14話『ドラゴン乗りの少女 アクア 遺跡へ (1)』掲載完了です。
 さてさて、今回から舞台は遺跡へと変わっていきます。
 暗闇や閉鎖空間の緊迫感をうまく出せるように頑張っていきたいです。
 それとセレスとアクアね。熟練者と初心者。そういったものの関係もしっかりと書いていければと思ってます。
 一階層で一話、という感じに仕上げていくのが理想です。戦闘シーンが入るとちょっと変わるかもしれないですけどね。
 この遺跡探査で書きたい事もあるんで、それが自分の思い通りにいくように頑張りたいです。
 でわでわ、次の後書きで(^_^)/~




2000年 10/1 ぱんどら

下準備はしっかりと アクア 遺跡へ (2)
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