アクア 遺跡へ
(2)
2階層。
セレスがかざすたいまつのみが、行く道を照らし出してくれる闇。
まるで時が止まってしまったかのような錯覚を覚えるような空間を二人の足音だけがそれを打ち消してくれている。
ふとなにかに気づいたのか、アクアが自分の足元を見る。
「どうしたの?」
背後の気配に気づいたのだろう。セレスが立ち止まり、振り返る。
「うん。やけに足音が響くと思ったら、いつのまにか石畳になっているのね」
そういって2度、3度と石畳と変化した地面を靴で叩く。
コツーン、コツーン。
二人の息遣いしかなかった空間に乾いた音が響き渡る。
「ええ、そうみたいね。……ほら、いつまでも遊んでないで、先に進むわよ」
「あ、ごめん」
床を叩く行為を止めにして、すぐにセレスの後ろについて歩き出した。
………そのとき地上では……。
「そんなに心配か?」
自分の身体にもたれかかるように座り、さきほどから一切口を開いていないレティシアに聞く。
「…うん、あの緑のお姉ちゃんて大丈夫なのかな?」
レティシアの頭の中に頼りなげなセレスの顔が浮かぶ。
「大丈夫だ。そんなに心配する事もない。あいつが遺跡のなかでもちゃらんぽらんなら、いままで生きてきたのが不思議なくらいだ」
「…そうなの?」
まっすぐに遺跡の入り口を見据えていた両の眼がルドラに向けられる。
「ああ。それにアクアが、信じていろ、といったのだろう。お前がそれを信じてやらないでどうする」
「……うん…そう……だね…」
そして、遺跡内……。
カサカサカサ…カサ。
壁をひとつ隔てた向こう側からなにかが這いずる気配がした。
敏感に反応したアクアはすぐに武器をとって準備しようとするが、手がもつれてしまってなかなかうまくいかない。
そんな彼女を手で制すると、ジッと壁の向こう側にいる、ナニカ、に意識を集中させる。
…………。
「ふぅ、大丈夫。哨戒型のガーディアンよ。見つからない限り人畜無害だから」
そういって警戒をとく。
「哨戒型?」
聞きなれない単語。オウム返しに尋ねる。
「その名の通りよ。遺跡内の警備役といったところね。さっきもいった通り、見つからなければ大丈夫」
「もし、見つかったら?」
「侵入者排除システムを起動させて、その場に戦闘型のガーディアンを呼び寄せるの」
「侵入者排除システム?」
「そっ。遺跡内に不適当とみなされたものがいた場合に起動されるの。この場合はアタシたちということになるわね」
「それじゃあ、どうすればいいの? 哨戒型に出会ったら逃げるわけ」
若干の怯えの色をしている表情でセレスに問う。たいまつの明かりに照らされ、ほの赤く染まっている。
「そんなんじゃ、解決にならないわ。答えは簡単。起動される前に倒す、よ」
いままでもそうしてきたのだろう、自信を持って、そして胸を張って答える。
「でも、私はできることなら戦闘はしたくないな」
少しうつむき加減に答える。当然のことながら自信がないのだろう。
「こんなことにきてまで、そんなことが言えるの? 何度も言うけどここは人の住む世界じゃないの。やらなければやられるところなのよ」
いつものセレスの口調とはまったく違う厳しい言葉。それだけいうとすぐに前方に向き直り、進んでいく。
「…あ…待って……」
慌ててそのあとを追う。
(やらなければやられる世界か……。私には理解できないな。いつかは理解できる日がくるのかな? あんまり理解したくないけど……)
周囲の状況を注意深く探りながら、進んでいくセレスの背中を見ながらふと思う。
街にいるときの彼女は自分と変わらない、普通の娘。
しかしいま、ここにいる彼女はまったく別の世界にいるように思える。
(これが…セレスの仕事…)
いつにない緊迫感をその背中から感じながら思う。
(足を引っ張らないようにしないとね)
改めて気を引き締めなおし、彼女の後ろについて歩いていく。
………
カチリ…。
アクアがついた壁。そこから何かのスイッチが入ったような音が響く。よく見るとその部分がくぼんでいるように見える。
「……」
二人して無言。しばらくすると警報のようなけたたましいサイレンが遺跡中に響き渡る。
洞窟内を反響するように響くそれは、神経に障るイヤな音だ。
「走って!!」
すぐに状況を察知するとアクアの手を引っ張る。
「え? え? え?」
元凶のアクアは状況がわからずに右往左往としている。彼女の背後に回ると、バン! と背中を叩く。
「!?」
「ほら! ボォっとしているんじゃないの! 急いで!」
そういってそのまま走り出してしまう。
アクアは背中の痛みで現実に戻ったのか、すぐにあとを追った。
右へ左へ。道を知ってか知らずが、止まる事もなく突き進んでいく。
(え〜と、一階層の構造から考えると……、今度はこっちか)
突き当たりを今度は左へ。そのまま直進していくとだんだんと赤い点滅が目立つようになってきた。
(なに!? この点滅!)
セレスの後ろをしっかりとついていきながら、点滅の元を探ろうとする。
どうやら空中に浮かんだ球体が発生元のようだ。
点滅を繰り返しながら、イヤな音を発生させている。
「アクアはここで待ってて」
球体から10メートルほどのところでアクアを止める。
「え?」
「いいから!」
いいも知れぬ迫力に押し黙る。
アクアが立ち止まるのを確認すると一足飛びにその赤い球体へと走り出す。
球体へと接近した刹那!!!
アクアの目に映ったのは剣を振り抜いた姿勢のセレス。
遺跡内は静寂が戻り、少し遅れて、
…カツーン……。
一刀両断にされた赤い球体が転がっていた。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第15話『ドラゴン乗りの少女 アクア 遺跡へ (2)』掲載完了です。
はぁ〜、今回も変わらずに遺跡探査です。(当たり前)
地下と地上の描写。ガーディアンやらトラップやらを出してみましたが、いかがなものでしょう?
どうも、今回は状況描写が甘くなってしまった感がないような気がしないでもない。
ずっと同じ空間なわけだから、回りの描写はおのずと限られてきちゃうしな。
まあ、会話をしている二人の描写をもっと細かく書ければいいかな? 今後もそれで頑張っていければ良いな。
でわでわ、次の後書きで(^_^)/~