アクア 遺跡へ
(3)
………。
空間の沈黙。二人の沈黙。いままでと同じ、いやそれ以上かもしれない静寂が辺りを包み込んでいる。
ひょっとしたら先ほどの『音』のせいでそう感じるだけなのかもしれない。
カチン。
愛用のロングソードを鞘に収めるとアクアの側にゆっくりと歩いてくる。
「……ぁ…ぁ」
なにかを言おうとしているのだろうが、うまく言葉にならない。
「? どうしたの? アクア?」
こちらはいつもと同じでマイペースだ。このくらいのトラップは予想済みだったのだろう。もちろん起動するであろう事も。
「ぁ……ぃ…いま・・のは?」
喉の奥からかろうじでそれだけを搾り出す。顔は血の気を引いてしまい真っ青だ。
たいまつの明かりがその顔色をさらに不気味に演出している。
「簡単よ。トラップね」
予想していた通りの答えをじつにあっけらかんと言う。
「トラップってなんの? それになんでここだってわかったの? それと、それと…」
一気にまくし立てる。そうすることで紛らわそうとしているのだろう。
「はいはい、質問はひとつずつね」
肩で息をしているアクアの両肩にそっと手を置く。
「はい、深呼吸〜。吸って〜〜」
合図とともにアクアが遺跡内の空気を吸う。
「吐いて〜」
ゆっくりと吸った空気を吐き出す。
それらの行動を5.6回ほど繰り返すとアクアの顔色も戻り、落ち着きを取り戻してきた。
「うん、落ち着いたみたいね。それで?」
先ほどの質問を促す。
「あ、うん。まずいまのはなんだったの?」
アクア自身もわかっているのだろうが、聞かずにはいられないのだろう。
「あれは侵入者防止のトラップよ。あれを合図に戦闘型ガーディアンがやってくるわ」
答えと同時に、ああ、やっぱりね、という顔をするアクア。
「それじゃあ、ここにいるのは危険なんじゃ……」
若干の怯えの色を示した顔でセレスに言う。
「うん、わかってる。でも手遅れかもしれないわね。解除に時間がかかりすぎたわ」
(かかりすぎ? ものの5分と立っていないと思うんだけど)
「どういうこと?」
そう思いつつの質問。
「聞こえる。なにかのうめきみたいなの。きっと戦闘型よ。恐らく魔獣タイプね。地上に近い階層だし」
言われると同時に耳を澄ます。
……グ…ォォォ…ォォ!
確かに聞こえた。地の底から唸るような声が。
「あれが…魔獣?」
「そ。きっと見覚えがあると思うわよ」
そういって口元を歪める。まるでいまの状況を楽しんでいるかのようだ。
「見覚えってどういうこと?」
「そうね。どうせ戦闘は避けられないし、教えてあげる。魔物とガーディアンというものをね」
………
「いまこっちに向かっているのは分かりやすいように言えばオーガーと同じようなものよ」
「どういうこと?」
「簡単。魔物とガーディアンはもともと同じなのよ。なにがあったのかは知らないけど、地上にでたかったヤツがいたのね。
それらが地上の環境に適応して、遺跡を守る、という本来の目的を忘れたのが、地上で魔物と呼ばれる存在よ
もちろん、もともと地上に生息していたものもいたらしいけどね。」
「……」
セレスの口から語られる、ガーディアンと魔物の関係。アクアには突飛のない話に違いない。
「地上にいる魔物は遺跡の上の階層にいるものがほとんどね。さらに地下のヤツラは滅多なことではあがってこないわ」
それでセレスの話は終わった。
「そう……」
すぐには理解できていないようだ。こんな事を考えたことはもちろんのこと、魔物との戦いすら経験していないのだから。
「ま、難しく考える必要はないわ。そんな関係なんだ、程度に思ってくれれば。アタシも詳しいことはわからないから」
鞘から愛用のロングソードを取り出し、刃を入念にチェックする。
その刃には見た事もないような不思議な文字らしきものが刻まれている。
「どうしたの?」
セレスの様子が変わったのに、気づき、恐る恐る聞いてみる。
「来たわ。準備して。アタシが先陣を。アクアは後方支援をお願い。幸いにもここは行き止まりだから挟み撃ちの心配はないわ」
「え、そんなまだ心の準備が……」
慌てふためくアクアを余所に自分だけはしっかりと準備を済ませ、すでに通路の闇を見据えている。
「ほら、早く準備をして」
首だけを後ろに向け、アクアを促す。
「あ、うん。……ところで後方支援ってどんなことを?」
弓を手に持ち、矢筒から一本取り出すと、れをつがえる。
「その辺は自分の判断でやって頂戴。さすがに指示までは出させないからね」
「そんな…」
(さて、この戦闘でアクアにもちょっと教えてあげないとね。冒険っていうのはどんなものなのかということを)
ロングソードを正面に構えて、ガーディアンを待つ。
アクアもなんとか準備を終えたらしく、闇に向かって弓を構えている。
「………。来た…」
ボソリとセレスが呟く。
その呟きから数分後。3体のガーディアンが姿を現す。先が暗いので確認しづらいが、確かにその外見はオーガーに酷似している。
外のオーガーの体長は2メートルという大きさだが、ここでは人間と同じ位のようだった。
体つきも外ではまさに野獣といって面持ちだが、ここでは洗練されている雰囲気が見出せる。
「さて、暗いとこっちが不利だし。明かりをつけるよ!」
言うと同時に両手を頭上に掲げ、何か呪文のようなものの詠唱が小声で始まる。
ガーディアンが迫ってきた瞬間。セレスは作り上げた光の球体を軽く前にほおり投げる。
すると、その球体ははじけ、辺り一面を光で照らし出す。
そして、光が周囲を照らし出したと同時にセレスが一足飛びに一体のガーディアンに飛びかかった。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第16話『ドラゴン乗りの少女 アクア 遺跡へ (3)』掲載完了です。
やっぱり、難しい。ずっと同一場面が続くから、状況描写も使いまわしになってしまう。
この辺の表現力の乏しさが恨めしいです。もっといろいろな表現もあるんだろうけど、なんか思いつかない。
まだまだ探査の話は続くから、もっと表現力をつけるようにしないとな。
そいう意味ではこの話は勉強になるかも……。
裏設定? のようなものも書いて見たし。どうかな? この辺、モロに某ゲームって感じがしないでもないが……。
モチーフはソレだからいっか。