ルドラVSアルフレッド
(2)
「トアァァ!!」
アルフレッドの一振り。しかし、それは空を切り、ルドラには命中しない。
大きな身体ではあるが、信じられないくらいの機敏な動作を見せている。
「どうした? 当たらんぞ?」
アルフレッドを挑発するような口調。言うと同時に翼を思い切り広げる。
翼が突風を巻き起こし、再びアルフレッドは間合いの外にはじき出される。
さきほどから小一時間、これの繰り返しだった。ルドラにはアルフレッドと闘うつもりが毛頭ないのだ。
これを繰り返していればいずれは去ってくれるだろう、と淡い期待を抱いているらしく、いたちごっこをしている。
しかし、逆にアルフレッドはやられるたびに、逃げる意思がいずこかへと吹き飛んでいってしまっている。
「クッ! なぜ貴様は攻撃してこない!」
剣を構えたまま叫ぶ。
「最初にいったであろう。わしは無益な殺生をするつもりなどない。勝てぬと悟ったのなら早々に立ち去れ」
太い、威圧感のある声で言う。物静かな言い方ではあるが、いいしれぬ迫力がある。
「ふん、俺は逃げるつもりなど無い!」
一瞬の内にマナを集め、火球を作り上げる。
「ほぉ…魔法が使えるのか。大したスピードで練り上げるものだ」
最初はサッカーボールほどの大きさだったが、それはすぐに余裕でそれを上回る巨大さへと膨れ上がる。
「…才能か。ここまでできるのは、人間にしては珍しい」
アルフレッドの作り上げた魔法の火球は通常の3倍はあろうという大きさだ。
これほどのマナを練れるということは恐ろしいまでの才を彼は持っているということになる。
「食らえ!!!」
放つ。一直線上にそれはルドラへと向かう。回りの木々を焦がしながら……。
「……」
無言のまま、両の翼を動かす。一度ではなく、連続で。
すぐにルドラの回りに風の防御壁が出来あがる。魔法の火球と風の防御壁。
ふたつの衝突の衝撃で風が吹きあれる。ふと、ルドラはレティシアが気になり、そちらのほうを見やる。
危険を察知していたのか、彼女は二人の戦闘域からさらに奥へと脱出していた。
(ふ、心配することはなかったか)
そう思うと同時にさらに一度、強く翼を動かす。それに伴い一層強い風が発生すると同時に火球ははるか上空へと弾き飛ばされた。
すぐに前方を見る。しかし、アルフレッドはいない。
「上? …」
そこにも、いない。
「…背後か!?」
ルドラが振り向いた瞬間!!
「…遅い!!」
さきほどと同じ大きさの魔法をルドラにぶつける。
「グゥ・・・オオォォオオ!!」
叫び。森中にドラゴンの叫びが木霊する。
「……やった…か?」
いつもなら勝利を確信するはずである。しかし、相手は知恵あるドラゴン。この程度で勝てる相手でないことはとうに承知している。
油断なく剣を構える。まっすぐに炎のかたまりを見据えたまま。
「…カァァァアア!!」
気合の声と同時に炎が消し飛ぶ。ルドラがまたもその翼で炎を消し飛ばしたのだ。
「…なかなかやるな小僧。わしも遊んではいられないか…」
「ふん、気づくのが遅すぎる。俺を退けたいのなら本気でこい」
「……では、わしも攻撃に転じるとするかの?」
言った刹那。ルドラの姿が消える。
「!? どこだ!?」
いつでも相手の攻撃に対応できるように、構えをとりながら周囲を見渡す。
しかし、ルドラの姿を確認することができない。あの巨体を見逃すはずはないだろうに。
周囲をキョロキョロとしているうちに、ほんのわずかな風がアルフレッドの顔を撫でた。
「!?」
反射的に身を翻す。そして……。
ヒュッ!!
アルフレッドの身体があった場所にドラゴンの爪が通り過ぎた。
「ふっ、勘がいい。さすがに死線を潜り抜けているだけはあるな」
いつのまに背後に回ったのか、そこにはルドラが悠然と立っている。
「…まさか…姿隠しか!?」
薄々とそうなのではないかと思っていたが、2度も見せられると可能性はそれしかなくなる。
姿隠し。いまでは使い手のいない、一種の魔法のような存在。
マナを放出するのではなく、マナ自体を周囲に張り巡らせ、光の屈折を起こし、極限まで視覚の誤認識を高めるものだ。
(やっかいなモノをもっていやがるな。しかし、さっきの一撃目をかわしたのは本当に姿隠しか? あんな一瞬で移動できるはずがない。現にいまも、背後を取るまで若干のタイムラグがあった…)
しかし、いまはその真偽を考え込んでいる暇はない。
油断無く、ルドラの一挙一動を見る。姿隠しを使われる前に切りこむつもりなのだろう。
…………。
両者に決め手のないまま、膠着状態が続く。風がふたりの間を、そして木々の間を吹き抜ける。
それは激闘に似つかわしくない穏やかさで二人り身体を撫ですぎていく。
(!?)
ルドラの身体をうっすらとなにかが包み込み始める。マナだ。
「させるか!!」
一足飛びにルドラに猛然とダッシュすると、姿が消える瞬間に一太刀を浴びせる。
それで精神集中が切れたのか、ぼんやりとしていたルドラの身体が鮮明さを取り戻した。
「そうきたか。さすがのお主でも、姿を消されるとどうしようもないらしいな!」
アルフレッドの連続した剣を爪でさばきながら余裕の態度で話し掛ける。
「……」
しかし、その問い掛けに答えず、ただ剣を振り続ける。
だが、すべてはドラゴンの鋭い爪でさばかれてしまい、無意味に終わってしまっていた。
「わしに真っ向勝負は意味がないぞ」
「関係ない。奇襲だろうが、真っ向勝負だろうが、貴様を殺せればいい」
なおも連続で剣を振るいつづける。
自分の身長とたいしてかわらない大剣だというのに、まるでダガーを操るかのようなスピードで切り返してくる。
(この華奢な身体にこんな力を持っているとはな。侮れん。ひょっとしたら隠し玉を持っているかもしれんし。早めにカタをつけんとな)
なおも続く、大剣の連続攻撃を裁きながら、目の前のドラゴンスレイヤーを退ける方法を考える。
ドラゴンが思考を始めたのに気がついたのか、ここぞとばかりに剣を振る。その中で悟られないようになにかの詠唱を始めた。
(なんという持久力だ。普通ならばバテていてもおかしくない時間だぞ)
すでに20分近く、大剣を振りまわしている。しかし、息の切れた気配も無く、ひたすらに攻撃、攻撃、攻撃。
(ここは仕切りなおすか。こやつを間合いの外に弾かねば)
さきほどと同じように翼を広げた瞬間!!
(いまだ!)
「我が名はアルフレッド!! 我が名の元に命ずる。いでよ、イフリート!!」
一瞬の隙をついた、召喚の言葉とともにアルフレッドの背後から巨大な火柱が立ち上る。
それは人の形を取ると同時に、さきほどの魔法とは比べ物にならないほどの巨大な火球を放つ。
「なに!? 精霊魔法!! まさか人間が使うとは!?」
翼の風力では火球を弾けないと悟ったのか、両の腕で受け止めると、上に弾き飛ばす。
(しまった!? 若造は!?)
一瞬の間。アルフレッドは再びルドラの背後に回っていた。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第20話『ドラゴン乗りの少女 ルドラVSアルフレッド (2)』掲載完了です。
いやはや、予定の容量をちょっと越えた……。描く事が多すぎるんだよねぇ。この話って…。
あんまりルドラを優勢にしてアルフレッドを『ザコ』といわれるのはシャクだし、かといってその逆もね……。この辺のバランスって難しい。
この分じゃ、もうちょっと続くかな? どうだろう、とっとと終わらせて本編に進みたいのが本音だけど……。
容量がアレなんで、後書きは短め。
でわでわ、次の後書きで(^_^)/~