ルドラVSアルフレッド
(3)
ルドラの一瞬の隙をついての炎の精霊『イフリート』の召喚。
その攻撃は見事にドラゴンの虚をつき、再び背後を取ることに成功した。
「…今度こそ…もらった!!」
大剣を真一文字に振る。巨大な刀身が円を描き、ルドラに直撃…したかに思えた。
「クッ! またか!?」
そう、大剣の先にはルドラの姿は無く、その攻撃は虚しく空を切る。
(落ちつけ、気配を探ればいい)
自分にそう言い聞かせ、大剣を構えたままの状態で注意を配る。
目線の先、4メートルほどの草原にわずかな風が吹く。明らかに自然ではない風が…。
「そこかぁ!!」
アルフレッドが走る。ルドラが出現する。自分に向けて振られた剣。
「ヌ!!」
大剣を爪で受け止める。
「!!!!」
「この…!!」
力と力のぶつかり合い。両者ともに引かず、押し合う。
ヒュッ!!
その均衡の中、不意に空気を裂く音。
ドガッ!!!
「ガッ!」
それは尻尾だった。ルドラの尾がアルフレッドを弾き飛ばす。チャンスとばかりにルドラはアルフレッドに向かって火球を吐く。
そして弾き飛ばされたアルフレッドは空中で身体を返し、なんとか両足で地面に着地する。
すぐさまルドラの方に向き合った彼の視界にはドラゴンの炎の球が3つ。
「こしゃくな!!」
手に持った大剣を振りまわし、すべての火球を弾く。
弾くと当時に再び間合いを詰めるために走る。
「!!」
しかし、その足が止まった……。いままで傍観の立場だった金髪の少女がドラゴンスレイヤーとドラゴンの間に立ちはだかったのだ。
「……」
レティシアは両手を広げ、微動だにしない。その瞳にはうっすらと涙が見える。
「どけ!」
大剣を一振りし、威嚇する声でレティシアに叫ぶ。
「……」
かぶりを振る。どうあっても動く気がないというのは、彼女の目を見てアルフレッドは悟った。
「…ふん、いらん邪魔のおかげで殺る気が失せた。今日はその小娘に免じて引いてやる」
手に持った大剣を背中の鞘に収め、地面に突き刺さっているロングソードを拾うために二人の場所を離れる。
「そうしてくれると助かる。できることなら殺したくはないからな」
ドラゴンスレイヤーの背中に野太い声が響く。
「そんな甘いことをいっていていいのか? 最初にいった通りに俺はお前を殺すのが目的だ。殺らなければ殺られる」
ロングソードを地面から引き抜くとそれを腰の鞘に収める。
「甘くて結構だ。わしはもう無益な殺生をするつもりはないのでな。ひとつ聞かせてほしい」
レティシアを自分のすぐ側に引き寄せながらたずねる。
「お前に答えられることなどない」
ルドラに質問をさせる間もなく、アルフレッドは森の奥へとその姿を消した。
「やれやれ、せっかちな若造だ。しかし、恐ろしい力の持ち主だったな。ここには火の精霊力は満ちていない。使役しているのか…」
彼の去った先を見つめながらひとりごちる。しばらくの後に身体の中から少女の鳴き声が漏れてきた。
「…ウ…うう……」
レティシアだ。
「レティシア、あまり無茶はしないでくれ。お前になにかあったら、わしはドラゴンスレイヤーでなく、アクアに殺されてしまうでな」
冗談のつもりだったのか、いったあとに軽く笑う。
しかし、レティシアは一向に泣き止む気配がない。繰り返し嗚咽を漏らすだけだった。
(…参ったな。泣く子には勝てんか…)
それ以上はなにもいわず、ただ泣き止むのを待ちつづけた。
そして舞台は再び地下へ。
「さてと、ここが最下層かな?」
すでに何本目になったか、わからないたいまつを片手にセレスが言う。
「そうなの? 随分とかかったね」
いまの階層は20階層。セレスの経験や、地形からいってすでに最下層ということらしい。
「ところでさ、ここってどんなものがあるの?」
お宝のことをいっているのだろう。アクアはなにがあるのかを知らされずにこことまでやってきたのだ。いまさらという質問な気もするが。
「う〜ん、なんだったかな? 確か千里鏡っていったっけ? なんでも自分の思い浮かべた人がいるらしい場所を映し出してくれるらしいわ」
壁や床にあるトラップを解除しながら、アクアの問いに答える。
さすがに階層もここまでくると、トラップの難度、位置などの性格が悪くなってくるようで、さすがのセレスも慎重だ。
「……と、いうことは?」
「そ、愛しいルーシアクンが見つかるかもしれないってことね」
「愛しいは余計なの。ひょっとしてそれで誘ったの?」
「まあね。一人じゃ退屈っていうのもあったけど」
そんな適当な雑談を交わしているうちに、いかにも、という風貌の扉が二人の前に立ちはだかった。
「さてと、ここが最後ね」
「…うん」
緊張しているのか、アクアの声と表情が強張る。
「いっておくけど、すんなりとお宝はとれないわよ。遺跡の最下層。宝物庫には必ず守護者がいる。ソイツはガーディアンとは比べ物にならないからね」
剣を手入れしながら、後ろのアクアにいう。
「…ホント?」
「ウソをいってどうするの。アクアにもしっかりと協力してもらうからね。いままでの闘いぶりなら大丈夫。自信を持ってね」
「うん……頑張る」
「上等。それじゃ、開けるわよ」
探索の際に手に入れた鍵をゆっくりと鍵穴に差し込むと左に回す。
少々のひっかかりはあったものの、扉はさして抵抗を見せずに二人の冒険者を迎え入れた。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第20話『ドラゴン乗りの少女 ルドラVSアルフレッド (3)』掲載完了です。
なんとかルドラとアルフレッドのバトル完了。案はふたつありました。
ひとつはこのレティシア仲裁案。
ひとつはルドラが本気になり、アルフレッドに攻撃をしかけるというもの。
後者にすると一方的な感じになりそうで、それで前回に書いたように『ザコ』と思われるとシャクなんで前者の案を採用。
仲裁案もちょっとアレだったけど。あ〜、こんなにあっさりと退いていいのかな? ということを考えると難しい。
まあ、腹の虫と泣く子には勝てない、ということで勘弁。自分でもちょっと失敗と思っているんで。
言い訳になると、こうでもしないと、堂々巡りを繰り返してしまうんですね。ルドラが本気にならない限りは。
でも、そうすると……ってな感じです。キリがないのでこの辺で止めておこう。
でわでわ、次の後書きで(^_^)/~