帰還



「セレス? セレス?」
 アクアと守護者との魔法の衝撃で壁まで弾き飛ばされたセレスの身体を揺する。アクアが気絶したときとは逆の状況だ。
 彼女の魔法の威力を物語るように部屋中に瓦礫が散乱している。宝物庫ということで造りが強固なのか、崩壊まではいかなかったようだが、やはり歩くのが困難になるくらいの量は軽く散らばっている。
「……ン…ゥ…」
 うめきとともにセレスが寝返りをうつような格好をする。意識が戻ったのだろうか。
「セレス!」
 いっそう激しく身体を揺さぶり、呼びかける。
「…ん〜、な〜に〜?」
 思わずコケてしまいそうな気だるい声でセレスが答える。まるで起き抜けの状態だ。
 これにはアクアも意表をつかれたようで肩をがっくりと落とし、ペタンと床に座り込んでしまった。
「あ…あのね。寝てたの?」
「ん? 冗談よ、冗談」
 さっきとは正反対のしっかりとした口調でいうと、ハンドスプリングで立ちあがる。
 そして、右手を額に当てると、眺めるようにして室内の観察。
「……にしても凄まじいね〜。アタシでもこんな芸当はムリだわ…」
 セレスの言う通り、室内はそれはすごい惨状となっていた。
 壁のいたるところがはがれ落ち、天井からは瓦礫。足の踏み場もないとはまさにこのことだ。
「いや〜、運がいいわ、アタシたち。こんな状況で怪我がないんだからね〜」
「うん、それはいえてるかも…」
 そう、正に奇跡だろう。アクア、そしてセレスの周りには巨大な瓦礫はなく、小石程度のものが散乱しているだけだ。
「は〜、アクアの魔法は凄いね〜。才能はあるだろうと思っていたけど、本気でやればここまでとはね」
 ひょいと肩をすくめる仕草をする。心底驚いているのだろう。
「うん、ただ倒すつもりはなかったんだよね。ただ、もうセレスを助けたい一心で放っただけなの」
「ふ〜ん、それだけ思いが強かったのかな? まっ、おかげで助かったけどね」
 そういってアクアに手を差し出す。その手を取ってアクアが床から立ち上がった。
「それで、千里鏡は?」
 目的のお宝のことを聞く。そうだろう、その千里鏡の効果を知らされたからにはそれが気になるのは当然のことだ。
「あっ、そうね。多分、守護者が出てきたところにあるハズよ」
 手で、ついてきて、というジェスチャーをすると、祭壇の方へと歩いていく。
 その途中でも瓦礫が邪魔をする。守護者とアクアの魔法の激突の結果だ。
「さってと……」
 祭壇にたどり着いたセレスがその守護者が出てきた穴の中をさぐる。
「…罠とかはないの?」
 その後ろからアクアが恐る恐る聞く。
「ん? 大丈夫よ。罠はないから」
 妙に自信のある口調で作業を進めながら答える。
 待つこと数十秒。セレスからの一声。
「見つけたわ」
「ホント!?」
 すぐにアクアが飛び出す。ムリもないだろう。ようやく見つけたルーシアの手かがりなのだから。
「は〜いはいはい、がっつかないの。とりあえずここから出ましょ」
 今にも飛び掛らんばかりのアクアを手で制するとそう提案する。
「出るってまた昇っていくの?」
 ウンザリした顔。もちろん戻るのがかったるいというのもあるだろうが、ガーディアンとの戦闘もあるだろう。
「大丈夫。ちゃんと手は打ってあるから。ほら、そば寄って」
「キャ!」
 アクアの肩を持つと、グッと自分の側に引き寄せる。
 そして腰のサイドパックからなにか透明な球体を取り出す。
「それは?」
「帰還魔法が封じ込めてある魔法球よ。遺跡に入る前に出口を示す魔法陣は描いておいたから大丈夫」
「へぇ〜、やっぱり抜け目がないのね」
「まあね。でなければこんな商売はやってられないわ。……じゃ、いくわよ」
 最上段から思いっきり魔法球を叩きつける。
 ガシャーーーン!!
 ガラスが割れる音と同時にまばゆいばかりの光が溢れ出す。その光はアクアとセレス、二人を包む込むようにして球体となった。
 そして、次の瞬間!!!
 球体は一条の光を残し、部屋から消えた……


 ……そして地上。
「遅いの〜、かれこれ4.5時間は経過しとるぞ」
 ドラゴン・ルドラはひとつ大きなあくびをすると、その頭を地面に預ける。
「…うん、そうだね」
 そして、そのドラゴンに身体を預けている少女・レティシア。
 もうすでに泣き止んでいるようで、いつもの喋りに戻っている。だが、眼のあたりは若干ではあるが、はれぼったくなっている。
 そんな会話が交わされていると、遺跡入り口付近に白い光が集まり出した。
「ルドラ、あれ……」
 ソレに気がついたレティシアが指差しながらルドラに聞く。怯えがあるのだろう、小さな両手はしっかりとルドラに添えられている。
「どうやら帰還魔法だな。セレスのアイテムだろう」
 次第に光は強くなり、そして大きな球体となった。
 しばらくその状態で浮遊していたが、やがて白が四散し、二人の冒険者がゆっくりと地面に降り立った。
 レティシアは眼をパチクリとさせている。が、その瞳にアクアの姿を映すと同時に一目散に駆け出す。
「アクアお姉ちゃん!!」
 まるで、相手ごと地面に倒さんばかりの勢いで少女が飛び付いてきた。
 アクアは彼女を両手を開いて受け入れる。受け止めたさいに2.3歩あとずさるが、倒れることもなく無事、胸の中に収めた。
 そして、胸の中で泣いているレティシアに一言。
「ただいま」



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第25話『ドラゴン乗りの少女 帰還』掲載完了です。
 ということで今回で戦闘シーンは終わりですね。う〜ん、いいものが書けたのかどうはそんなに自信がない……。
 今後はまた戦闘シーンが減るかな? うまく回りの描写を加えつつ、キャラを表情豊かにしていきたいですね。
 それは戦闘シーンのみならず、普通のシーンでもいえることなんですが…(^-^;
 あと一話でこの展開(オレは遺跡探索編といってる)は終了となります。
 第3の展開はどんな感じになるのかな?  でわでわ、次の後書きで(^_^)/~



2001年 1/7 ぱんどら

遺跡の守護者 (3) 千里鏡
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