旅立ち・そして遭遇
早くも一週間。街での十分な休養を終え、旅立ちのときがやってきた。
この街では主に休息、そして旅に必要な装具の購入など。
薬草などの薬を買う分には問題はなかったのだが、武器である「矢」を買うときは苦労をした。
なにせアクアの外見が外見である。どこからどうみても、冒険者、そして武器を扱うようには見えない。
しかも傍らには、レティシアというオプションつきだ。それでも、武器屋の主人は渋りながらも売ってくれたのだから良いのだが…。
そんなこんなで、いろいろとあったのだが、無事にすべての用を済ませ、ルドラとの待ち合わせ場所へと二人は歩を進めた。
「ルド」
森の中にたたずんでいるドラゴンを見つけるとアクアが声をかける。
「おお、アクアとレティシアか。久しぶり、といっていいのかな?」
軽く表情を歪ませながら、言うと、翼を広げ伸びをする。
「うん、そうだね。久しぶりだね」
二人は笑顔でそのドラゴンと会話してる。
はたから見たら異様な光景であろう。史上最悪の魔物であるドラゴンと普通に会話しているのだから。
「そうそう。目的地がきまったぞ」
「えっ、思い出したの!?」
さすがのルドラも千里鏡で写し出された風景だけでは判断がつかなかったのだ。
それがここにきて思い出したということは、目的地が近いのかもしれない。
「話は移動しながらにしよう。乗るがいい」
そういってドラゴンは姿勢を低くした。
ヴァサ!! ヴァサ!!!
ドラゴンの羽音が静かな森に響き渡る。相変わらずの低空飛行で獣道を突き進む。
「それで…ルドはどう思っているの?」
ルドラの首の部分にまたがったアクアが尋ねる。さっきの続きだろう。
「うむ、恐らくラキアだな」
結論からいう。無論アクアをはじめ、レティアシアにもその詳しいことはわからないので、そういったのだろうが。
「ラキアね。そこってどんなところ?」
「ん…、自給自足で慎ましく生活しているところだ。これといった特徴はない。ただ……」
「ただ? なに?」
先を促す。
「うむ、あのあたりは遺跡が多くてな。それで昔から帝国との衝突が絶えない。知っているかはわからんが、帝国はここ何年か前から旧時代の研究を大々的に進めているんじゃ」
「へぇ〜。それで? その先もあるんでしょ?」
「…まあな。そのせいかラキアでは戦士が多くいるところで有名だ。それはわしが姿を隠していればいいんじゃが、問題は帝国じゃな」
「森の中にいても、見つかる可能性があるから?」
アクアの腰にしがみついているレティシアが言う。
「うむ、その通りじゃ。冴えているな、レティシア」
「へへぇ〜」
自分の考えが当たったのが嬉しいのか破顔する。
「でも、それじゃあ、どうするの?」
アクアの意見はもっともだろう。いつも通りの森に姿を隠すことはできない。かといってラキアにつれていけるわけもない。
「それについては考えがあるから大丈夫じゃ。それより、お客さんのお出ましだ」
そういって、進行方向に対して、右に顔を向ける。
そこには魔物の群れが飛行している。何十匹といるがあれでひとつなのだろう。
「ナックか。わしは手を出さん。実地もかねてアクアがやってみればいい」
突然のルドラの言葉に正直いって驚きを隠せない。
「ちょっと、あんな大勢の群れを私ひとりで! それは無茶よ!」
「心配するな。中央付近に赤いヤツがいるだろう。アレが群れのボスだ。アレを倒せば離散する。わしはお前の指示どうりの動く」
ルドラはがんとして手伝う気はないらしい。
(確かにルドのいうこともわかるかな? いつも一緒ってわけじゃないしね。よし、やってみよう)
そう決心するとルドラにいう。
「わかったわ、やってみる。もう少し接近してくれる?」
「了解だ」
翼をひとつ大きく羽ばたかせると、進路を若干右側に取る。
いままでは遠目だったので、鳥のような姿の魔物なのだろう、とアクアは思っていたが違った。
身体はあるようには見えず、翼だけが飛んでいるような感じだ。目があるのかもわからない。
「さてと、レティシア、ちゃんと捕まっててね」
アクアがそういうと、返事の代わりに腰に巻いた手の力が増す。
それを確認した後、矢筒から矢を取り出し、持っている弓につがえる。
(こんなものじゃ一撃では仕留められないな。いざとなったら魔法か)
「ルド、アレの回りを旋回して」
「わかった。それと、ヤツに対して背後は見せないほうがいい。攻撃に転じるぞ。それ以外は基本的に安全だ」
「そうなの? わかったわ」
魔物に関しては当然のことながら、ルドラのほうが知識が深い。いままでも、その知識はアクアも見てきたのだから知っていた。
ルドラがナックの回りを一周する。もちろん、前方へ回ったときは停滞しなかったが。
「思ったよりも中心にリーダーがいるようね。こんな矢で射れると思う?」
矢を弓につがえたままの状態でルドラに聞く。
「大丈夫だ。身体の中心を狙え。そこを破壊すれば、羽がもげるはずだ」
「もげ……、わかったわ」
否定の言葉が飛び出しそうになるが、それを飲み込む。いまはそんなことをいっていられる場合ではないのだから。
ルドラに指示を出し、背後に回る。もちろん矢はまっすぐにナックのリーダーに向けられている。
しかし、向こうもじっとはしていない。自分の射程に彼女等を捉えようと移動している。
(あー、もう! じっとしててくれないかなぁ)
そんなことも思うがおとなしくじっとしているわけがない。さかんに動き回り位置どりをしてくる。
自分の指示通りにルドラを動かし、矢をかまえながらチャンスを待つ。
ふと、そのときアクアの頭の中にイメージが沸き起こる。
自分の放った矢がナックのリーダーにヒットするイメージ。
「いまならいけるかも。ルド、左に旋回して!」
自分のそのイメージの直感に従い、ルドラを左に回す。
そして、矢じりとナックが重なった瞬間!!
アクアがその右手を放した。
ヒュ!!
短い空気を裂く音ともに矢はまっすぐにナックを捕らえた!
ルドラの助言通りに放った矢は寸分たがわず、ナックの中心を射る。
そしてリーダーを失った群れは離散していった……。
「ふふ、だいぶ度胸もついたし、腕もあがっているようだな」
ナックを撃退し、そのまま相変わらずの飛行を続けるルドラが言う。
「…うん。本音をいえばやりたくないことだけど、そんなことをいってられる状況じゃないしね」
「確かにそれはそうだな。わしも常に助けられるとは限らん。自分のことは自分でできたほうがいい」
「そうね。ところで結構進んだけど、目的地はまだ?」
「もう目の前じゃ。そろそろ降りて進んだほうがいいな」
そういって、ゆっくりと地上に舞い降りた。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第29話『ドラゴン乗りの少女 旅立ち・そして遭遇』掲載完了です。
本来なら戦闘は入れる予定ではなかったのですが、間を持たせるためにいれました。結果的には良かったのかな?
にしてもこの戦闘シーン。やばいです。某ゲームに影響されすぎです。わかる人にはすぐわかるだろうから突っ込まないで…。
まあ、やっちゃったものは仕方ないので諦め。自分ではまずまずかと…。アッサリ感がちょっと強いかもしれないですけどね。
しっかし相変わらずレティシアのセリフがないのもヤバイですね。もっと両立したいんだけど、容量の問題もあるし、ホントに難しい。
今回に限っていえば、「戦闘中」だったからという「言い訳」ができるんですが、やっぱりなんかつっかかるものがある。
それでは、次回の後書きで(^_^)/~