ラキア
レティシアの手をとって、ゆっくりと林道を歩く。
木々の隙間から木漏れ日が差しこみ、緑の匂いを運ぶ風が二人の身体を撫でて行く。
同じ森ではあるのだがジュンケの森とはだいぶ違うな、そんなことを思いながらラキアへと続く道を行く
「見つかればいいね」
隣のレティシアがアクアの顔を見上げながら聞いてくる。当然ルーシアのことだろう。
「うん、そうだね。…あっ、村が見えてきたよ」
そういって先のほうを指差す。そっちの方角には木でできた門構え。そして家畜、家屋は見える。
千里鏡で見たときは上空からだったが、今度は地上からのラキア。
見える風景は上と下では随分違うのは当たり前だが、それでも初めて来たという感じがしない。
「早くいこうよ」
レティシアが引っ張り急かす。
「はいはい、わかってるわよ」
村は至って平和な様相を見せていた。
家畜である、鶏、牛などが放牧されており、元気に走り回っている。
奥の方は農場なのだろう。数人の男女が作業しているのがぼんやりと見える。
外見だけ見ると、遺跡に囲まれ、帝国とやりあっているような村には見えない。
「ちょっと」
足を踏み入れると同じに、隣から声をかけられる。レティシアではなく、男の声だ。
ふたりがそっちを向くと、褐色の肌に後ろ髪をひとつにたばねた青年が立っていた。
腰の剣。威圧感のある目。恐らくは戦士なのだろう。
「見たところよそ者のようだが、ここに何のようだ?」
あきらかに警戒の色を宿した瞳で聞いてくる。
(やっぱり帝国と…っていうのはホントなのかな。いままでこんなことなかった)
自分の身体にしがみついているレティシアの頭を撫でながら思う。
「ええ、旅の者よ。人を探しているの」
「旅人に見えないぜ。女の子ふたり。ましてやそんな軽装じゃな」
アクアを値踏みするかのようにジロジロと見てくる。
思わず半歩あとずさるが、
「よくいわれるわ。旅人らしくないって。見た目で人を判断するのは失礼よ。それよりも質問いい?」
「……。まあ、いいだろう。なんだい?」
先ほどより態度を軟化させると、腕を組んで聞いてきた。
「さっきもいったように人探しをしているの。名前はルーシア。顔は…」
名前をいったあと、しょっていたバッグからルーシアの絵を取り出そうとする。
しかしそれよりも先に男の声で遮られた。
「ルーシアだって。あいつがどうかしたのか?」
男は驚きの声を上げるでもなく、いたって平静な声で言った。
あまりに普通の口調でいわれたものだから、アクアは理解するのにたっぷり数十秒を費やす。
「…。あなた、ルーシアを知ってるの!?」
彼女は男のほうに詰め寄り、その肩をつかむと真剣な眼差しで見る。
「おいおい、どうしたんだよ。落ち着けって」
肩に置かれた手をどけると、なだめるような口調で話しかけてくる。すでに最初の頃のような警戒感はなくなっていた。
「あっ、ごめんなさい」
さっきまでいた場所にあとずさるようにして戻ると、少し顔を紅潮させる。
「ん、まあいいさ。しかしなんでまたルーシアを?」
「あ、はい。それよりもあなたとルーシアの関係、聞かせてもらえません?」
「構わないぜ。それよりも場所をかえよう」
そう提案すると手で、ついてきな、というジェスチャーをしてからすたすたと村に入っていった。
「さっ、私たちもいきましょう」
アクアはレティシアの手を取ると男のあとを歩いていく。
村に一軒だけあるという喫茶店でふたりは向かい合うようにして座っている。
店内は木でできていて、ちょっとしたログハウスのような感じだ。
他に客の姿は見えない。たいていが仕事にでていっているのだろう。
「さて、ルーシアのことだったな」
男の問いかけに黙って頷く。
「それを話す前に自己紹介かな? オレの名前はハッサンだ。『さん』はつけなくていいぜ。ややこしいからな」
軽く笑いながら言う。もうすでに警戒心は解いているのだろうか?
「ええ、わかったわ。私はアクア。こっちがレティシア」
そういって互いの自己紹介を済ませるとハッサンが本題に入る。
「あいつのことね。正直にいうとオレもよくわからないんだよ」
期待をしていたアクアを裏切るような言葉が彼の口から出てくる。
「……」
残念なような、呆れたような表情をしているアクアを見て、言葉を進める。
「あいつのことはこの村で過ごした間のことしか知らない。あいつは元々流れ者だったんだ」
「流れ者?」
「ああ、そういうことだ。その経過を話す前にあんたに聞きたい。ルーシアとは?」
突然に質問を振られて戸惑いを隠せない。
わたしとルーシアの関係? 知り合い? 家主と下宿人? 様々な思いが渦巻くがどれも答えにならず、一番無難と思われる答えを出した。
「知り合いよ」
「なるほどね。好きなわけだ」
腕を組みながら妙に納得した感じで、うんうんと頷いている。
それを聞いてアクアが赤面すると、
「ちょっと、誰もそんなことはいってないでしょ。決めつけないで」
「おいおい、顔を赤くしていっても説得力がないぜ」
彼女の勢いを静止するように、組んでいた両手を解くと、手のひらを前方に差し出す。
「ただの知り合いならわざわざ、探す、なんてことはしないしな。まあいいさ。んじゃ、オレとルーシアのことでも話そうか」
アクアはまだ納得していないという感じだが、ここでさらに口だしするとまたこじれてしまいそうなので止めにし、椅子に座りなおすと、彼の話を聞く体勢を取った。
それを見ると、ゆっくりとぽつりぽつりと語りはじめた。
ルーシアの過去の一部を……。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第30話『ドラゴン乗りの少女 ラキア』掲載完了です。
とりあえず話の核心にきたという感じかな? まだ一部んですけどね。
これから矛盾点が出てくる恐れがあります。ハッキリいって怖いです。なんとか出さないようには考え入るけどね。
今回も例によってレティシアの会話が少ないです。まぁ、人見知りするということでひとつ勘弁。
さってと来週に掲載が間に合うように時間を調整しなければ。
それでは、次回の後書きで(^_^)/~