森の雑談……そして急変


 さきほどの戦闘域から場所を変え林道沿いの木陰に三つの影。アクア、レティシア、ルーシアの3人だ。
 アクアとルーシアは向かい合い、そしてレティシアは若干の警戒の色を浮かべながらアクアに寄りそっている。
 しばらく無言のふたりを太陽、そして風が見つめている。
「アクアはどうして…ここに?」
 ルーシアが口を開く。その声は分かれたときと、変わりのない懐かしい声。
「そうね。話すわ」
 そういって、自分が旅に出た経緯をぽつぽつと話し始めた。
 ルドラに協力してもらっていること。トレジャーハンターセレスとの出会い。レティシアとの出会い。ドラゴンスレイヤーアルフレッドとの遭遇。遺跡を探検したこと。そこで手に入れた千里鏡のこと。
 包み隠さず、すべてをルーシアに打ち明ける。
 彼はそれを黙って頷きながら聞いている。
 何度風が通り過ぎただろう。アクアの話が終わると、ルーシアがため息をつく。
「ふぅ。素直に留守番しているかと思ったらこんなことになっているとはね。ビックリだ」
 肩をすくめておどけてみせる。
「ふふ、たしかにね。でも、私の旅の目的は達せられたわ。とりあえず、あなたのこと…聞かせてくれない? 記憶は?」
 最後はゆっくりと聞く。
「ああ、一応は戻ったよ」
 心なしか陰りのあるような表情でアクアに告げる。彼女は祝福しようと思うが、表情の陰りを見逃すことはなかった。
「どうして? 嬉しくないの?」
「そうだね。嬉しいことは嬉しいさ、自分がなんなのかわかったから。でも、わかったからこそやらなければいけないこともできる」
「どういうこと?」
「それはあとで話すさ。とりあえず、俺のほうも経緯を話しておくかな」
 地面に一度座りなおすと、ゆっくりと語り始めた。
 オルタネイトを出たあと、記憶を探すといっても当然アテがあるはずもない。街から街へと移動し、情報を得ながら、時には魔物退治をして街から報酬をもらい、それで生活していたらしい。
 旅をはじめて二月ほどだろうか? この辺りの遺跡に人の心にふれることができる「遺産」があると聞き、ルーシアはやってきた。
 だがその遺跡はルーシアの予想をはるかに越えた規模だった。
 潜った階層は50階層までしか覚えていない。ガーディアンも見たことのないような、強力なモノになり、食料も薬も底をつきかけていたとき、道が開けた。
 その部屋の中心には水上球。それの後ろにはなんとも形容のしがたい背の高いモノがそびえたっていたという。
 その水晶に手をかざしてみると、まばゆい光が発生し、そしてルーシアを包んだ。
 そして、自分の身体が自分の身体ではないような感覚と共に記憶を遡ったという。
 オルタネイトに別れを告げ、孤独の旅に戻った記憶。
 オルタネイトで、アクアとともに過ごした日々。
 ラキアでハッサンとともに村の守り手を担っていた日々。
 そして、それよりも古い記憶。
 すべてを見たあと、ルーシアは理解した。自分の過去。そして使命。
「…ということさ」
「へぇ〜、ということは、使命を果たすまで街には帰らない、ということ?」
「そういうことになるかな」
 当たり前のことを当たり前のようにいう彼を見て提案をすることにした。
「その使命ってなに? 私は連れていてくれないの?」
「話してもいいんだけど、絶対についてくるっていうんじゃないの?」
 少しばかり困った顔。アクアをこれ以上、危険なことに巻き込みたくはないのだろう。表情や仕草からその様子が見て取れる。
「当たり前じゃないの。あなたに会えるのを心待ちにしてたのよ。もうついてくるな、といわれても絶対についていくわ」
 わずかに涙ぐんだ瞳で真剣にルーシアに自分の思いをぶつける。
(参ったな。どうすればいいんだろう。彼女の意思は尊重してあげたいけど、危険だし…)
 自分を見つめる視線から逃げながら考えをまとめようとするがいい案は浮かばない。
 結局のところ、つれていくか、つれていかないか、のふたつしか選択肢はないのだから。
「…わかった……」
 その次の言葉を紡ごうとしたとき、一頭の馬がすごい勢いで彼らの後ろを通りすぎていった。
 ルーシアは言葉を飲み、そちらに注意を向ける。アクアもそれに習う。
 しばらくして……。
「アクア、みっけ!」
「!?」
 いきなり背後から声をかけられたと同時に肩をがっしりを掴まれる。
「…セレス?」
 さすがに奇襲も二度目となると耐性ができるのか、冷静に答える。
「…なんだ、つまんないわね」
 そういって掴んでいた肩から手を離した。後ろを振り向くとそこにはいつものラフな格好をしたトレジャーハンター。
「ん〜、見慣れない人がいるわね」
 ルーシアのことだろう。頭のてっぺんから足の先までジロジロと見ている。
「あ、うん。彼がルーシアよ、セレス」
「お〜、お〜、良かったじゃないの。見つかったんだ」
 アクアの背中をバシバシと叩きながら、彼女らしい言いかたで祝福の言葉を贈った。
「……。初めまして。ルーシアです」
 多少面食らったものの平静を取り戻し、手を出しながら挨拶をする。
「あら、随分を礼儀正しい人ね。こんなこといわれたの初めてだわ」
 ケラケラと笑いながらいうと、彼の手を取ろうとすると…。
「違う! 違う! こんなことしにきたんじゃなかった。アクア、すぐに一緒にきてくれない、大至急!!」
 いつものあっけらかんな彼女らしかぬ真剣な顔、そして口調で迫ってくる。
「どうしたの? なにかあったの?」
「あったどころじゃないの! 説明も面倒だわ。あとで説明するから、レティシアちゃんもルーシアクンもきて」
 早口でまくしたてると、街道に戻ろうとする。ルーシアをアクアは顔を見合わせ、ついていくことにする。もちろんレティシアもだ。
「で、どこにいくの?」
「ルドラのところに決まっているでしょ。彼の協力も必要なのよ。だから、どこ?」
「ルドラ? うん、それならこっち」
 アクアは、ルーシア、レティシア、そしてセレスを伴い森の中を移動していく。

「おお、無事にルーシアが見つかったらしいな」
 なにもない空間から声が聞こえる。見えはしないがまぎれもなくルドラの声だ。
 しばらくして声のした付近の場所の空間が歪みはじめる。
 姿隠しを解くと、4人に姿を見せた。
「ルドラ、なんでアクアを…」
「久しいな、ルーシア。変わりがなくてホッとしたぞい」
「そんなことはいい。質問に答えてくれ」
 ルドラに詰め寄るルーシアを制してのはセレスだった。いつにもなくあせっているように見える。
「はーい、はいはい。そんなことはあとでいいの。こっちのが大事なんだから」
「…。わかった。それでどうしようっていうのかな?」
 遮られたせいか、少し不機嫌な声でセレスに聞く。
「いまから向かうところで説明するわ。ルドラ」
 耳を貸して、という感じで指を動かすとなにやらゴソゴソを耳打ちしている。
「なに話しているんだろうね」
「さあ、これからわかるんじゃないのか」
 しばらくするとふたりの相談も終わったらしい。セレスが3人を手招きしてそっちに呼ぶ。
「いまからルドラのアタシたちの里に連れていってもわうわ。話はそこで」
 それだけいうと、質問の余地も許さず、ルドラにひょいっとまたがる。
 ここで話を聞くことを諦め、仕方なくいまはセレスに従い、3人ともルドラに乗る。
 ルドラは全員が乗ったことを確認すると、一気に上昇し森の外にでる。
「ちょっと、ルドラ。いくら夕方になったからといってこんなに上昇するのは…」
 しっかりとレティシアを自分の胸に置きながらアクアが言う。
「セレスの話を聞いたらそんなこともいってられん。急ぐぞ」
 ひとつ大きく羽ばたくといつもの倍のスピードで山岳地帯へと飛び立っていった。



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第33話『ドラゴン乗りの少女 森の雑談……そして急変』掲載完了です。
 なんとなくヤバかった今週。ゲームばっかで書いていなかったからなー。間に合ったからよしとしよう。
 今回はいつもよりちょっと長いです。うまくまとまりきらなかった。長いといっても大した事はないでしょうけどね。
 危惧していたことが発生しました。レティシアのセリフがない!!!
 4人も登場したとあってはしょうがないのかな? うー、バランスは難しいって前からいってるな…。
 にしてもルーシア書くのは久しぶりだ。性格が変わっていないか不安だったりする…。ほとんどあの頃は忘却の彼方だからなー。
 ルーシア見つけて、はいおしまい、とおもいきやこれから波瀾ですね。はてさてどうなることやら。
 それでは、次の後書きで(^-^)/~


2001年 3/4 ぱんどら

出会い・再び 明かされる真実
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