明かされる真実


 帝国とトリスタンの国境付近の山脈より西に進んだ山のふもと。
 そこに注意しなければわからないような、こじんまりとした建造物がある。
「そこよ。入り口はルドラでも余裕で入れるわ。入ったらすぐに右の部屋にいって。倉庫になってるから」
 その建造物の入り口を指し示しながらセレスが言った。そこがハンターの里らしかった。

「はぁー、随分と広々としてるねー」
 通された倉庫をグルリを見渡す。セレスの言う通り、入り口は余裕で通過。
 そしてこの倉庫もドラゴン一匹といわずに5匹は収容できそうな広さだ。
 すでに全員がルドラから降り、セレスの説明を待っている。
「さて、話を聞かせてもらおうかな?」
 口を開いたのはルーシア。一時的に注目がルーシアに注がれるが、すぐにその視線はセレスに向かう。
「ええ、わかってるわ」
 そういって全員を一望できるように、最前列に立つ。
「回りくどくいってもしょうがないから、結論からいうわね。もう一匹のドラゴンが目覚めようとしてる」
 その言葉を聞いて、ルドラ、そしてルーシアのふたりが眉をつりあげた。アクアとレティシアはなんのことだかわからない。
「どういうこと? もう一匹のドラゴンって…」
 天井にぶらさがったランプの明かりに照らされながら、アクアが当然の疑問点を口にする。
「そうね。アクアはなにも知らないのよね。いいわ、それも説明する」
 一呼吸おくとセレスは説明を始めた。

 彼女の話によるとこういうことらしかった。
 この世界には知恵あるドラゴンが2匹。すなわち、ルドラともう一匹。それぞれが違う使命をおびて生きていた。
 ルドラは守護。そしてもう一匹は破壊。
 世界のバランスの天秤が傾いた時、破壊のドラゴンが眠りから覚め、すべてを破壊しまたやり直される。
 そうならないためにルドラが人間、そして魔物を適度に排除し、バランスを保っていた。
 しかし、途中で例外が起こった。ルドラが人に味方したのだ。それでも、なんとかギリギリの位置で天秤は傾かずに済んでいたらしい。
 魔物が適当に村や街を襲い、人間を殺していたのがその大きな理由だという。
 だが、ここ最近、帝国が旧時代の遺跡の発掘を大規模に行い、いくつかの兵器を使用可能としていた。
 それらを使い、世界を手中に収めるようとするだけに飽きたらず、破壊のドラゴンさえも手に入れようとしているのだという。
 そして、バランスが壊れ、ドラゴンが目覚めようとしているらしかった。
「……」
 そこまでの説明を聞き、アクアは絶句した。自分の知らないところで話が大きくなっている。
 ルーシアを探す旅だったはずがいつのまにか大きな事に巻き込まれているのだ。
「…そのドラゴンを倒す方法は?」
 なんとかそれだけ、声を絞り出す。
 いつのまに降ってきたのか、外からの雨音がこの広い空間に響き渡っている。
「……ええ、それは…」
 言葉を濁しながら、チラリをルドラを見る。ドラゴンの顔をすべてを了承しているようだった。
 その顔を見て、セレスを決める。
「ルドラに封印してもらうの。人間では知恵あるドラゴンを倒すことは不可能。同族である彼にしかできないわ」
「封印って…?」
「…ええ。ルドラがその身と引き換えに…ね」
 アクアを思ってか、控えめにゆっくりといった。
 そして彼女はその言葉の意味を噛み締め、理解すると同時に、
「ちょっと待って! 冗談じゃないわ。それってルドラが死ぬっていうことじゃないの!?」
 セレスにくってかからんばかりの勢いでアクアは立ちあがる。側にいたレティシアはそんな彼女を見て怯えてしまっている。
「仕方ないの…。方法はそれしかないのよ…」
「それしかないって…。もっと他にあるんでしょう! もっと詳しく調べて! あなたならできるんでしょう!!」
 セレスの肩を掴み、叫ぶ。
 パァン!
 倉庫に響き渡る雨音とは明らかに違う音が聞こえた。
 ルーシア、レティシア、ルドラの視線の先。
 頬を叩いたセレス。そして叩かれたアクアがいた。
「アタシだってこの方法以外にもなにかあるんじゃないかって必死になって探したわよ! 確かにルドラを見た時、これで大丈夫って思った。でも、あなたたちと数日を共に過ごして、思ったわ。このドラゴンは犠牲にできないって。でも…他に方法がないの……」
「セレス……」
 一瞬だったがアクアは見た。一筋の光がセレスの頬を伝うのを…。
「ごめん。そうだよね。セレスも私の知らないところで頑張ってたんだよね…」
 ルーシアにひかれながら、セレスから離れる。
「ううん、いいのよ。あなたの気持ちももっともだわ。…そういうことだけど、ルドラ」
 アクアにそういってから、今度はルドラに話しかける。
「ああ、わかっている。それも昔からわかっていたことだ」
 決心をした、というよりどこか諦めた口調でそれだけいった。
「ルド……」
 涙で顔をクシャクシャにしながら、アクアがボソリをいう。
「すまんな、黙っていて。だが、お前たちと共に過ごした日々は楽しかったよ。最後にいい想い出ができた」
「バカ…。まだお別れをいうのは早いわ」
 ゆっくりとルドラに歩み寄ると、その顔を抱きしめる。
「そうじゃな」
 ふたりがしんなやり取りをしているさなか、ルーシアとセレスも何かを話している。
「ルーシアクンは? もちろん来るんでしょ?」
 彼の目をまっすぐに見据えながら、わずかに笑いかけてくる。
「ああ、そのドラゴンを殺すのが役目だからな。直接手を下せないが、手助けはできる」
 腰の剣の柄を軽く握り締めながら決意のある声答えた。
「ええ、そうね。アルフレッドは来るかしら?」
「恐らくな。どう出るかはわからないけどね。」

 ひととおりの説明も終わり、さらに詳しい作戦は明日ということで、今日は解散になった。
 その日の夜。ハンターの里の外。山の景色が一望できるところにアクアはいた。
「大丈夫か? アクア?」
 いつのまにきたのだろう。ルーシアが声をかけてきた。
「ええ、なんとかね。突拍子もない話でだいぶビックリしたけど、もう大丈夫」
 聞きなれた声。驚くこともなくクルリと振りかえるとそう返した。
「それで…俺の使命のことだけど……」
 いいかけたルーシアをアクアは手で制した。
「もう一匹のドラゴンを倒すこと。そうじゃない?」
 意外なアクアの言葉。ルーシアは驚きを隠せなかった。
「気づいていたのか」
「気づいたというよりはなんとなくね。ここまできたら、もうなにを言われても驚かないわ」
「ハハ、確かにね。君からすれば驚きの連続だろうし…、ただ……」
「ただ?」
「ああ、俺はドラゴンスレイヤーだけど、アルフレッドとは違う。ルドラに危害を加えるつもりはない。それだけは信じてくれ」
 アクアの両肩を優しく掴むと、真剣な眼差しでいう。
 肩に添えられた手を彼女はゆっくりとほどくと、優しく微笑み言った。
「私があなたを疑うとでも思ってるの? 私はあなたを信じる。どんなことがあってもね」
「そうか。ありがとう。アクア…」
「ふふ、お礼をいわれるほどじゃないわ。私が勝手にそう思っているだけ。あなたが……」
 言いかけた言葉を飲む。まだ言う時期ではないと思っているのだろうか。
「オレが…なんだい?」
 その言葉の先はわかっているのだろうが、彼はあえて聞く。彼女から直接聞きたいのだろう。
「さあ? 明日…すべてが終わったら…ね。だから…いまは」
 影が動く。そのひとまわり小さいその影が背伸びをすると同時に、ふたつが…重なった……。



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第34話『ドラゴン乗りの少女 明かされる真実』掲載完了です。
 がぁぁぁぁ!! 今回は難しかったです、マジデ。
 もっとセレスの表現をうまくやりたかった。頭の中の想像と実際の文章は違いますね。思い知りました…(T-T)
 この分じゃ次回、そのまた次もやばかったりして…。自分なりに頑張るしかないかー。
 例によってレティシア、出番なし。これからセリフなくなるかも、ホントに。しゃーないね。諦めてもらいましょう、あの娘には。
 それでは、次の後書きで(^-^)/~


2001年 3/11 ぱんどら

森の雑談……そして急変 嵐の前の…
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