嵐の前の…
「全員集まったわね?」
昨日とは違う別の広い部屋。机も椅子もない。そういった意味では倉庫とたいして違わないだろう。違いがあるとすれば、部屋の場所が倉庫と異なることと、セレスの立っている位置が壇上になっていることくらいだ。
セレスの眼前には、数百の男女がいる。どちらかといえば、男のほうが多いだろう。
今日の作戦に集まったトレジャーハンターたちだ。本来ならもっといるのだが、地理的な都合で間に合わなかった者もいるらしかった。
彼女の隣にはふたりの男女。そして少女。ルーシア、アクア。そしてレティシアだ。
「おおまかな話はわかっていると思うから省略するわ。今日、破壊のドラゴン殺しを決行する!」
ひときわ強い声で、そしてよく通る声で言う。その言葉にハンターたちは決意を現すかのように吼えた。
「斥候からの連絡では、帝国はすでに遺跡に向かっている。一刻の猶予もないわ。アタシたちもいますぐに出るわよ!」
彼女の演説を聞く一方で、アクアはルーシアに話しかける。
「それにしてもビックリしたわ。まさかセレスがトレジャーハンターの首領だったなんて」
ハンターたちに激を飛ばし、士気を高めているセレスを見る。
その姿は普段のおちゃらけたセレスではななく、リーダーシップに満ち溢れた彼女がいた。
「ああ、まったくだ。ところで……」
「ん? なに?」
ルーシアがさらに声を潜め言う。それにつられてアクアも一回り声が小さくなった。
「レティシア、どうするんだい? まさか連れて行くわけにも…」
「そうなのよね。でも、きっとついてくるっていうに決まってるわ」
「ああ、確かにね。でも……」
「ええ、なんとか説得はしてみるわ」
二人はそれきり話すこともなく、セレスの話を聞くことに集中する。
「作戦は至って簡単。突入するのは、アタシと…」
いったん区切り、そして、隣に並んでいるものの名を順に呼んで行く。
「アクア、ルーシア。そしてこの場にはいないけど、ルドラ」
(やっぱり私はダメなのかな? そうよね、いっても足手まといだし)
セレスの発言を聞き、わずかながらに顔を曇らせるレティシアに誰も気がつくことはなかった。
「残りのメンバーは全力で帝国軍を阻止! この数ではつらいだろうけど、なんとか踏ん張ってちょうだい!」
作戦会議が終了し、各人が武器などの最終チェックに入った。
アクアに与えられた一室にレティシア。
「レティシア、あなたには悪いんだけど……」
次を言おうとする前に少女が制した。
「お姉ちゃんの言いたいことはわかるよ。私はここでお留守番してるから」
ニコリと笑って言った。前のように駄々をこねることもなく。ごく自然に。
「……そう。ありがとう」
そんな彼女に少し面食らうもののそれだけを言う。
「でもね……」
視線を地面に移し、そして何事かを考えたあと、再び視線を戻すとアクアに、
「お姉ちゃんとお兄ちゃん。そして緑のお姉ちゃん。無事に帰って来て。私のお願いは…それだけ……だから…」
涙目になりながら告げた。自分の願いを。
だが、挙げられる名前にルドラはなかった。直感である程度は理解しているのだろう。ルドラがいなくなることに。
少女の目から涙がこぼれ落ち、地面を濡らす。
アクアはゆっくりと歩み寄ると、その胸にレティシアを抱き入れる。
「ええ、約束する。きっと無事に戻ってくるわ。だから、安心して」
あえてルドラの名は言わず、抱きしめながら髪を撫で続けた。
「あと、もう少しよ。気合いを入れて行きなさい!」
先頭を歩くセレスがことあるごとに激を飛ばし、ハンターの士気を高める。
セレスに隣にはアクア、そしてルーシアだ。ルドラは姿隠しを使い、上空にいる。
「ねぇ、セレス」
控えめにアクアが話しかける。いつもと雰囲気が変わっているために話しづらいのだろう。
「ん? なーに? アクア」
が、彼女の考えを余所にセレスはお茶らけた感じで返したきた。
もうアクアにはどっちが本当のセレスなのか、正直言ってわからなくなってしまっている。
冗談を飛ばし、場を和ませるセレス。そして、集団を指揮し、遺跡に向かっていくセレス。
しかし、今はそんなことを考えているときではないのはアクアも承知だ。
「うん、帝国ってやっぱり強いんだよね。大丈夫なの?」
「まあね。旧時代の兵器を使用できるしね。アタシたちもある程度までは使用可能にしているけど、いかんせん設備がね」
「そう」
バン!
うなだれる感じになったアクアの背中を急にセレスが叩く。
背中をさすりながら恨めしそうにケラケラ笑っているセレスを睨む。
「そんなに心配しなさんな。大丈夫。アタシたちはそう簡単にやられないわよ。どんな手を使ってでも生き延びるのがハンターの鉄則だからね」
両腕を頭の後ろで組み、いつもの調子でアクアに喋りかける。
「そ・ん・な・ことより」
一語一語切りながら、普段よりもさらにふざけたような喋り方で話しかけてきた。
「なに?」
なにかよからぬ不安を感じながら問い返す。
「昨夜」
短くそれだけ。ルーシアをアクアを交互に見ながらいった。
「ぁ……」
言葉が喉に詰まる。ついで顔が赤くなってくるのが自分でも感じ取れる。
「アハハハ。正直ねぇ。この仕事、無事に終わるといいね。二人のためにも。そしてレティシアちゃんのためにも」
「うん! わかってる」
「よし、良い返事。……あっそうそう」
思い出したかのようにポンと手を打つ。そして…、
「式には呼んでね」
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第35話『ドラゴン乗りの少女 嵐の前の…』掲載完了です。
いやー、ゲームにハマっててピンチでした。今週。久しぶりに一発で書きましたよ
なんといいましょうか、今回から戦闘の予定だったんですけどね。セレスのせいで長引き……。
つうか、もうあのキャラは自分でもわからんです。勝手にしてくれ、という感じでほっといてます。
セレスはねぇ、真面目なシーンのハズなのに……あれでいいんでしょうか…?
とりあえず、レティシアは戦線離脱。いってもしょうがないし、セリフもないしね(キッツー!)
ルーシアのセリフも今回はほとんどないですけどね。彼には頑張ってセレスとともに戦闘シーンを盛り上げてもらいましょう。
あ…、なんか途中から次回予告みたいな感じになってしまっているのはオレの気のせい?
ということで、次の後書きで会いましょう(^-^)/~