ドラゴンスレイヤー三度


 真昼の明るい太陽の恩恵すら入らないような場所にその遺跡はあった。
 いままでの地下に潜っていくようなものではなく、塔のような形だ。高さはゆうに数百メートルはあるだろう。
 ドラゴンが封印されているという遺跡だけあって、入り口は広い。ドラゴン一匹くらいなら楽に入れる大きさだ。
「帝国はまだきていないようね」
 周囲を見渡しながら、人の気配がしないことを確認する。
 人の気配どころか、生き物の気配すらない。アクアはわずかながらこの場所に恐怖を感じた。
「大丈夫。セレスもルドラも…そして俺がついているから」
 アクアの心情を見抜いたらしい、ルーシアがそっと肩を抱きながらいう。
「うん、ありがとう。そうよね、いまから雰囲気に飲まれちゃダメだよね」
 瞳を閉じ、自分の肩に添えられた手に自分の手を重ねながら元気に答えた。
「みんな! アタシたちはこれから遺跡に突入する!! 帝国がきたら全力死守!! いいわね!!!」
 ふたりの甘いやり取りとはまったく異質の熱気に溢れた声。セレスだ。ハンターの眼前に立ち、さらに士気を高める。
 その声に呼応するかのように、ハンターが吼える。
「さっ、いくわよ」
 二人のほうに向き直るとセレスが近寄ってくる。
「ええ」
「ああ」
 アクアとルーシア、ふたりがそれに同時に答えた。
「ピュィィィィ」
 アクアが指笛を吹く。ルドラへの合図だ。それを聞いたらしく、はるか上空から羽音が近づいてくる。
 突風に森の木々が悲鳴をあげる。ハンターたちもさすがに倒れないように踏ん張っているようだ。
「いよいよか」
 地上に降り立ったルドラがいう。遺跡の奥…いや自分がさっきまでいたと思われる最上階を見ながら。
 ルドラの頭の中にはなにがあるのだろう? アクアは考えを巡らせては見るもののわかるハズがない。
(ルド……。わかったつもりだけど、やっぱり…ツライよ。最後に笑えるかな? 私)
 彼の顔を下から覗き込むような感じで見ながら思う。
 セレス、アクア、そしてルーシアが一歩を踏み出そうとしたとき、
「待て!」
 ルドラが制止した。視線は遺跡ではなく、森のほうを向いている。
「どうしたの? ルド」
 アクアが問い掛ける。が、ルドラは答えない。じっと森の先を見るだけだ。ルーシアとセレスも森を見ている。
 そして……。
「まさかお前らがここに来ているとはな」
 森の中から声。忘れるハズのない声。心の中に直接響くような威圧感。漆黒のマントと身にまとった青年。アルフレッドだった。
「…ア…アル…フレッド…」
 震える声でアクアが呟く。
 腰から剣を抜いたルーシアが彼女をかばうように立つ。セレスも同様に。
「あんたがここにいるってことは、この遺跡のこと知っているのね?」
 油断なく剣のきっさきをアルフレッドに向けたまま、セレスが威圧感を込め質問する。
「まあな。だが、お前たちがいるのならまずはその…」
 いったん区切ると視線をルドラに持っていき、剣を抜く。
「ドラゴンから、殺させてもらう!!」
 叫ぶと同時に地面を蹴り、突進してきた。それにセレスより先に反応したルーシアが彼の斬撃を受け止め、弾き返す。
「邪魔をするな!!」
「そうもいかないんでね。お前こそ、この人数にひとりでかなうと思っているのか」
 アルフレッドの周りにはトレジャーハンター。完全に包囲されているようだった。
「ふん、お前等ならともかく、この程度の雑兵に食いとめられる俺だと思っているのか?」
 剣を構え不適な笑みをこぼしながら挑戦的に言い放つ。
 さきほどの一撃を受け止めたルーシアはわかっていた。アルフレッドのいうことがはったりでないことに。
「…待って」
 ルーシア、セレス、アルフレッドの膠着状態を破る声。
 アクアが一歩前に出て、3人の間に割り込むようにして立ちふさがった。
「アクア!」
「アクア、一体なにを…」
「……」
 二人の戸惑いの声には答えず、アクアがさらに進む。アルフレッドの前まで。
「なんのつもりだ」
 剣を構えるのを解き、きっさきを地面にだらりとたらしている。アクアに闘う意思がないと悟っているのだろう。
「あなたは知っているの? 知恵あるドラゴンの宿命」
 まっすぐにドラゴンスレイヤーの目を見据えながら、ゆっくりとそしてはっきりとした言葉を紡ぎ出す。
「なにをいうかと思えば。そんなことは知っている。ここに眠っているのが破壊のドラゴンだろう。そして!」
 強い殺意が込められた目でルドラを睨みつける。
「ヤツは守護のドラゴン。笑わせる。人を殺すことしかできないドラゴンが守護だと!!」
「違う!! ルドはそんなんじゃない! 確かに昔はそうだったかもしれない! でも…いまは……」
「ふん、俺に泣き落としは通用せんぞ。今も昔も関係ない。私怨の為に俺はそいつ、そしてもう一匹を狩る!!」
 飛び出そうとするアルフレッドの進行方向に立ちふさがり、それを邪魔する。
「待って! ルドが破壊のドラゴンを封印する。それで二人の知恵あるドラゴンはこの世からいなくなる。そうすればあなたの目的は達せられるんじゃないの?」
「なるほどな。だが、それでは意味がない。ドラゴンは俺が狩る。例え相手にならないとわかっていてもな! さあ!! そこをどけ!! さもないと貴様から斬る!!」
 頭上で巨大な刀身を振りまわし、地面に突き刺す。嘘の目ではない。それはアクアにもわかった。しかし、彼女はどかない。
「……そうか、それが答えか。あわよくば俺を味方に…と考えたのかもしれんが、俺はあいにくそんなに甘くはない」
 ゆっくりと地面から剣を引き抜く。
 そして、またゆっくりと最上段に構え、
「ふん!!」
 振り下ろした。アクアは固く目を閉じ、その瞬間を待つ。
 ガァァァァーーン!!!!!
 森中に響き渡る金属音。異様なその音にゆっくりと閉じた瞳を開く。そこには……。
「ル…ルーシア……」
 見ると、ルーシアの剣がアルフレッドの一撃をぎりぎりアクアの頭上一歩手前で受け止めている。
「…ハ!」
 鋭く放った呼気の気合と共に剣を振り、自分の武器にのしかかっていた巨大な剣をさばく。
「いつからこんな無茶をするようになったんだい? こいつは俺にまかせて、セレスとルドラと共に遺跡へ! 急いで。そろそろ帝国もくる」
 アクアに背中をみせた状態でそれだけいうと、アルフレッドに向かっていく。
「うぬ! こしゃくな!!」
 ルーシアの連続攻撃の前にアルフレッドはルドラに攻撃する余裕が持てない。防戦一方となっている。
 ポン。
 呆然としているアクアの肩を叩く手。セレスだ。
「ほら、彼の行為を無駄にしちゃダメ。いくわよ」
 セレスに手を引っ張られ、遺跡に向かって小走りにかけていく。
 その様子はアルフレッドの目にしっかりと映っていた。
「貴様! 邪魔するな!!」
 ルーシアの一撃をさばき、仕切りなおしの体勢とする。
「邪魔するなといわれて、邪魔を止めるわけにもいかない。俺はお前を全力で阻止する。彼女等が役目を果たすまで、お前は俺とチャンバラで遊ぶんだな」
 そして、二人のドラゴンスレイヤーの死闘が始まった。
 その頃、アクアとセレス、そしてルドラは遺跡の入り口までやってきていた。
 彼女等の背後からは魔法の爆発音。そして剣撃の響き。耳慣れない爆音がしている。
 いつのまにか帝国もここについたようで、いままさに帝国対ハンターの闘いが繰り広げられていた。
 後ろを振り返ったアクアはルーシアをアルフレッドが戦っているであろう場所を見る。
 バン!!
「大丈夫! ルーシアの心配はしなくてもね。それより、あなたは自分のやることを考えなさい」
 彼女の心のうちを見透かしたセレスが勢いよく背中を叩き、まくしたてる。
「うん! そうだね。……いこう! 封印しに!!」
 アクアの決心の言葉と共に3人が遺跡へと突入していった。
(ルーシア……無事でいて。この闘いが終ったら私……)



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第36話『ドラゴン乗りの少女 ドラゴンスレイヤー三度』掲載完了です。
 今回もなんかギリギリっぽかったような…。今度の理由もゲームなんだけどね。
 さって、いろいろと表現方法を頑張っているつもりではあるけど、どうもね…。緊迫感が出ていればいいんだけど。
 書いてて思ったんだけど、オレの表現って基本的にひとつかふたつしかないような気がしてきた。
 それらを順番に使っているだけで。もっといろいろと語いを増やさせないといけないかな? さらに緊迫感がいる展開になるだろうし。
 本来なら帝国登場の下りを詳しく書きたかったんだけど、アルフレッドによって裂かれました。
 かなりな勢いで唐突となっているけど許して…(そうもいかないけどね)
 では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~


2001年 3/25 ぱんどら

嵐の前の… ドラゴンの遺跡(1)
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