ドラゴンの遺跡
(2)
フィィィィン……ィン。
エレベータ内を振動させていた、軽い唸るような音がじょじょに小さくなり、やがてその動きを止めた。
カシュ…ウィィィン
続いて今度は入り口が開く音。中心からふたつに分かれ、左右に広がる形で開いていく。
セレスは油断なく剣を構え、突然のガーディアン襲来に備えている。アクアはといえば、同様に後方で弓を絞っている。
出入り口が完全に開くと同時にセレスが飛び出し、前後左右の哨戒を始めた。
「……」
剣を青眼に構えた状態のまま、ガーディアンの気配を探る。
やがてこの付近にはいないと判断したのか、剣を下ろすと手招きで彼女らを呼び寄せる。
「大丈夫なの?」
番えていた矢を筒に戻しながら小走りでかけてくる。
「ええ、とりあえずこの付近はね。でも、いてもおかしくないわ。覚悟はしておいてね」
緊張感のある声、そして顔で告げると再び先頭をかって進んでいく。
アクアとルドラは顔を見合わせ、その後についていった。
カツーン…カツーン……。
ドス! ドス!!。
誰もいないと思われる空間内をさきほどと同じ音が支配する。
二人の人間は極力足音を小さくしようと努力しているのだが、ルドラはそうもいかない。小さくしようとしても人の3〜4倍の音はでる。
にもかかわらず、この階層からはガーディアンの気配がしない。果たしてどういったことなのか? その疑問をアクアが聞く。
「ねえ、セレス。これだけ気配を丸出しだといい加減に気がつかれるんじゃない? なんででてこないのかな?」
セレス同様にいつでも弓を放てるような姿勢を保ったままアクアが疑問を口にした。
「そうね、出てきてもおかしくはないわね。遺跡が眠っている状態なのか、それとも重要拠点で待ち構えているかのどちらかでしょうね」
「セレスはどっちだと思ってる」
「そうね。後者かな? これといった理由はないけど、ハンターとしての勘ってヤツかしら」
ハンターとしての勘。セレスがこの台詞を言うと、言いも知れぬ説得力が生まれる。
その答えにアクアは納得する。自分の経験未熟な勘よりもベテランの彼女のほうが信頼できるのは当たり前だろう。
歩き続けてどのくらいたったのだろう。基本的な一本道の終点は一階層同様エレベータだった。
例によってスイッチを探し始めるがどこにもない。影や形はおろか、『スイッチ』の『ス』の字も見つからない。
「セレス、スイッチはないみたいよ。どうするの? 階段があるのかな?」
中腰姿勢で探し続けたために疲れたのか、アクアがぺたんと地面にしりもちをつく感じで座り込んでいる。
「ん〜〜、違うわね。恐らくは別の場所にスイッチがあるハズよ。途中で分かれ道があったでしょう。そこにいきましょう」
座ることで、休みたい、という意思表示をしている彼女の思惑に気がついているのか、いないのか。さっさともと来た道をもどっていってしまう。
「……もう、少しくらい休みたかったな」
聞こえないように悪態をつくと、両手を支えにして腰を持ち上げる。
「ふふ、エレベータに乗れば休めるさ。それまでの辛抱だ。さっ、いこうかの」
「うん、そうだね」
相棒であると同時に親友であるドラゴンに笑いかけ二人はセレスを追って歩き出した。
……そして。分岐点を曲がり、一度もいっていないと思われる小部屋に到着した一行。
その部屋の扉にはなにやら不思議な、いままで見たことの無いような文様が刻まれている。
「ここ?」
その文様を読み取ろうと前かがみになりながらセレスに尋ねる。
しばらくは一生懸命に読もうとしているのだが、不可能だと思ったのか解読は諦めた。
「ええ、多分ね。そして勘が正しければガーディアンがいるハズよ。油断しないで」
いつも以上に強い口調でアクアに激を飛ばす。
「…開けるわよ」
小さく呟くとゆっくりと扉を押し開けていく。
ガガガガガガガ!!
ものすごい轟音を響かせながら扉が開かれる。
部屋のなかは円筒形でガーディアンの姿はおろか、気配すら見ることができない。
「なにも…いないみたい……?」
入り口から好奇心から顔を覗かせているアクアが呟く。
「いえ、いるわ。危険だから、アタシの10歩後ろくらいをついてきて」
覗かせているアクアを軽く手で制すると、ゆっくりと一歩を踏み出す。
……異常はない…。
アクアはセレスにいわれたとおり、彼女の10歩ほど後ろを慎重に追いかけてゆく。
ルドラに至っては扉をくぐることができないので、お留守番だ。
「……」
「……」
なにもない空間内を二人の足音と息遣いが木霊している。
ゆっくりとそして、慎重に足を部屋の中央へと置こうとした…瞬間!!!
ヒュン!! ドスン!!
空を切る音と、なにか重たいものが地に着地する音。
「きゃあああああ!!」
アクアの甲高い悲鳴が部屋中も響き渡った。
セレスはやはり落ち着いたもので、剣を抜きガーディアンと対峙する。
「…ルピナス」
ガーディアンの通称を口にする。
ガーディアン――ルピナス――はその身体を白い装甲のようなもので覆っている。
巨大な身体を両手足で支え、4足歩行の形だ。禍禍しいまでの赤い目がジッとセレスをにらみつける。
ルピナスのプログラム、侵入者排除システムはひとつの結論を導き出した。
(シンニュウシャハマッサツ)
その結論に忠実に従い、両手を天にかざすと、セレスに向かって思いきり振り下ろした。
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第38話『ドラゴン乗りの少女 ドラゴンの遺跡(2)』掲載完了です。
さらに今回もギリギリでした…(^-^;
いやー、最悪な場合は書けないと思ってましたよ。1時間くらいで一気にいきました。誤字修正はしていません。
ということで、ドラゴンの塔(今、命名)の2階層の探索です。
あんまり分岐とか書くとややこしい(オレが面倒ともいう)のでかなりはしょってますがあしからず。
まあ、急ぎの割にはそこそこ書けたかな? 唐突感がちょっとあるかもしれないですが。
では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~