ドラゴンの遺跡
(3)
セレスとルピナスが対峙する。
部屋の中は暗かったが、幸い奥まで見えないほどではない。照明魔法は使わないで済みそうだ。
彼女は剣を構え前方を見据えたまま、後方のアクアに手で下がるように指示する。
腰を抜かしてはいないものの、突然のガーディアンの出現に足がすくんでしまっている。
(ふう、やれやれ。しばらくは使い物にならないかしらね)
ため息をひとつつくと、油断なくルピナスとの間合いを詰める。
セレスの一挙一動をガーディアンの赤い瞳が追っている。無機質なためか何を考えているのか想像もつかない。
「キシャーー!!」
甲高い奇声をあげると、太く、そして大きな両腕、いや前足か。それを振り上げる。
次の瞬間! ルピナスのその前足の中から鈍く光る刃が出現した。
「な!? 折りたたみナイフのようにしまってたのか!」
その刃が一瞬にいしてセレスの眼前にせまってくる。
ガキィィィィン!!!!
考えるよりもセレスのハンターとしての経験、そして勘が身体を動かした。
ギリギリのところで刃を受け止めている。
しかし、力では圧倒的に向こうのほうが上だ。受け止めている自分の剣がゆっくりと身体に近づいてきている。
「セレス!!」
後ろのほうでアクアの悲痛な叫びが響き渡る。
が、セレスはルピナスの刃を止めるのに精一杯で声を出す余裕すらない。
ヒュ! ヒュ!! ヒュ!!!
風を切り裂く音が三つ。アクアの放った矢だ。
カン! カン!! キン!!!
だがそれらの矢はすべて硬い装甲に阻まれ、傷をつけることさえかなわない。
「…どうしたら……」
矢は無駄と判断してのか、次を番えることもなく考えをめぐらす。
しかしいい案は浮かばない。魔法。セレスを巻き込んでしまっては意味がない。
ナイフ。セレスですらかなわぬのに、自分が相手になれるワケがない。
(ふふ、いろいろと考えているわね。魔法を使ってもいいのに、アタシを巻き込むことを恐れてる。…しょうがない、自力で脱出ね」
剣を持つ手によりいっそうの力を入れる。
そして、相手の刃を受け止めつつ、剣を地面に突き刺すと同時に跳躍した。
地面に突き刺さった剣は主がいなくなったことで抵抗を止め、ルピナスの刃に引きずられていく。
そしてセレスは宙を舞った状態で腰からもう一本の剣を抜き取ると、切っ先をルピナスの目に定める。
ザシュゥゥ!!
セレスの刃がルピナスに目に突き刺さる。
「クワァァァァ!!」
悲鳴を上げ、のた打ち回る。しかし柄をしっかりと握り、セレスは放さない。
ドン! ドシン!
上に乗っかっている異物を振り落とそうとルピナスが部屋中を走り回る。
限界に近づいてた彼女はついにたまらずガーディアンの上から振り落とされた。
「うわっ!」
さっきとは違う形で宙を舞い、壁に叩きつけられる。
ズダン!!
「…っぅ……」
背中を押さえながらゆっくりと立ち上がる。いい防具を身につけているとはいえ、さすがにこたえるのだろう。
「セレス! 大丈夫!!」
慌ててアクアが彼女の元に駆け寄る。その瞳はいまにも涙があふれんばかりに潤んでいる。
「アタシなら大丈夫よ。それよりもしっかりと援護を頼むわよ」
「援護っていわれても…。矢がきかないんじゃ…」
「なにいってるの。魔法があるじゃない。それで注意を引き付けて。そのスキに剣を拾うから」
そういって地面に突き刺さっている剣を指差す。距離にして5メートルほど。
「うん、わかった。なんとかやってみる」
入れ替わりに今度はアクアがガーディアンの前にたつ。セレスは後方で剣を拾いにいくタイミングを掴んでいる。
精神を集中し、手にマナを集め、それを炎、そして水として具現化する。
「…ハッ」
それが完全な形を取ると、短い呼気とともに放つ。
ふたつの火球と水球はまっすぐにルピナスへと向かい、そしてヒットした。
火球は足元、そして水球は身体の上部。だが、効いている気配がない。
「ダメよ。そんな基礎魔法では傷もつけられない。いいこと、炎と水、ふたつを混ぜなさい! あなたならきっとできる!!」
走るタイミングをうかがったままアクアにアドバイスをする。
「水と炎を?」
呟きと同時にもう一度、炎を水を作り出す。
「ええ、そうよ。そのふたつを合成するの。そうすれば電光を作り出すことができる。それが複合魔法よ! その電光でヤツの足元を狙って!」
「わかったわ」
こちらに向かってくるルピナスを見据えたまま、ゆっくりを水と火を混ぜ合わせる。
途端にアクアの両手の中から電光が発生したかと思うと、鞠ほどの玉となった。バチバチと放電を繰り返している。
「足元ね」
ルピナスの移動速度を見極めながら、放つ心構えをする。
一歩、二歩、三歩。着実にガーディアンは近づいてくる。まだ、アクアにタイミングはとれない。
両者の距離、8メートルほど。ルピナスが両腕を振り上げ、前足から刃を出現させた。
「今だ!」
その叫びと同時に手の中の雷光をルピナスの足元めがけて投げつける。
ルピナスは刃を振ろうとする直前だった。前方から飛んできた雷光は自分の足元に着弾すると、大きな爆発を起こし、足場が崩れる。
ガーディアンがバランスを崩した一瞬を狙い、セレスが剣に向かい飛び出す。
素早く剣を両手に迎え入れると、そのまま止まらずルピナスへと走る。
アクアは援護のため、もう一回雷光を作り出していた。
「もう片方の目、もらった!!」
ザシュ!!
剣を下から上へと切り払い、ルピナスの両目を不能とする。
「アクア! もう一発、足元へ!」
背後のアクアに指示を出すと同時に自分はその場を飛びのき難を逃れる。
セレスが後方へと飛びのくと同時に電光が寸分たがわず、ルピナスの足場を崩した。
2発の雷光を受けた床はその衝撃に耐え切れず抜け落ちる。
足場を失ったルピナスはそのまま、奈落の底へとその身を落としていった…。
「ふう、疲れたー」
ぽっかりと開いた闇を覗き込みながらセレスが言う。
「ホントだね。あんなに魔法を連発したのは初めてだから私も疲れた」
「さっ、今のうちにエレベーターのスイッチを入れて、上の階に向かいましょう」
「ええ、そうね」
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第39話『ドラゴン乗りの少女 ドラゴンの遺跡(3)』掲載完了です。
例によって今回もギリギリでした。練習中に書いていた不届き者です。
今回は久しぶりにバトルシーン。いかがだったでしょうか?
私的にちょっと言葉が難しかったかな? セレスなら違和感がないような台詞もアクアだと……。
それ以外は前にも書いたとの対した違いはないと思います。
もうちょっとガーディアンを強くしたほうが緊迫感も出るんだろうけど、そうするとバランスが…。この辺ムズカシイです。
では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~