VSガーゴイル
ヴァサ! ヴァサ!!
石像から完全に生体へと姿を変えると、翼を羽ばたかせ空を舞う。それが2体。
2体のガーゴイルは二人の冒険者を舐めるように見る。
「…なんだかこっち見てるんだけど…」
矢を構えたアクアが不安げな声で言う。そうガーゴイルはアクアを直視していた。
「なるほど。アタシをアクアを総合してアタシのほうが手強いと判断したのね」
両腕のチャクラムを弄びながら言う。
「大丈夫。接近戦は明らかに不利だから、ヤツの動きを良く見てかわして。隙があれば矢をぶち込んでやりなさい!」
「うん、わかっ……た!?」
了解の返事を返す前に2体のガーゴイルが急降下攻撃を仕掛けてきた。鋭い爪がアクアを襲う!
ズサァァ!
間一髪でその攻撃を横転しながらかわす。その勢いのまま中腰になると、矢を番え、放つ。
ヴァサ!
地に下りたっていたガーゴイルは再び翼を動かすと浮上し、その矢をなんなくかわした。
逃すまいと次、そして次を放つが、空は自分の独壇場だ、といわんばかりの動きで矢をかわしていく。
次を放とうとしたとき、セレスの手がそれを遮った。
「あせってもダメよ。落ち着いて」
「ごめん」
「あやまらなくていいって。さっ、いくよ」
チャクラムをくるくるを回しながら、アクアの前に出る。
ガーゴイルは狙いをアクアからセレスへと変更すると、また急降下攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃を横っ飛びでかわすと同時にブーツに仕込んであるダガーを投げつける。
ヒュ! ドス!
空を切る音と、ダガーがささる音。セレスの攻撃をガーゴイルのわき腹にヒットする。
負傷したガーゴイルの一瞬の怯みを逃さず、アクアが矢で追撃。
今度はかわされることなく、矢はガーゴイルの胸に刺さる。
「ハァァ!」
剣を鞘から抜き放ち、鈍く光る刃を最上段に構え、振り下ろそうとする。
カッ! ズドォォン!!!
今まさに剣を振ろうとした瞬間、負傷したガーゴイルとセレスの間に風が走る。風がやってきた方向を見るともう1体のガーゴイルがいた。魔法を使ったらしい。
咄嗟の判断でセレスはバックステップで間を取り、魔法攻撃をかわす。爆風で巻き上げられた石が彼女を襲う。
「しまった!」
石つぶてを埃が邪魔して前が見えない。このままではやばいと感じ、そこからさらにバックステップで間を取る。
ヒュン!
後ろに下がった途端にさっきまでセレスがいたところと風が切る。
ドス!
「クワァァ!」
アクアの矢だ。その攻撃はセレスを追い討ちしようとしていたガーゴイルに突き刺さっていた。
「ナーイス援護よ。アクア! もう1体のガーゴイルをなんとか抑えておいて!」
嬉しそうな口調でそういうと、剣を鞘にしまい、チャクラムを構える。
「わかったわ」
セレスの指示に意志の強い、ハッキリとした声で答えると魔法を放ったガーゴイルと対峙する。
「集え!」
チャクラムを掲げ、強くそれだけを言う。
しばらくすると、チャクラムがピンク色の光を帯びる。セレスのマナを吸っているのだ。
やがてふたつのチャクラムを完全に覆うと、そのチャクラムの円を中心にいくつかの小さい円ができ始める。それはちょうど花のような形を取った。
「くらえ! 蓮華!!」
両腕を振りかぶり、砂埃の向こうにいるだろう、ガーゴイルに向かってチャクラムを投げつける。
その蓮華は蛇行しながら、ガーゴイルに直進していく。
ザシュ!!!
「グガァ!!!」
何かを切り裂く音と、短いガーゴイルの断末魔が聞こえる。チャクラムはヒットしたのだ。
ガーゴイルを倒したチャクラムは、そのままブーメランのようにセレスの手元に戻ってきた。
「よし! アクア!! 今行く!」
チャクラムを腕に通すと、戦っているであろうアクアの方を向く。
彼女は善戦していた。相手に致命傷を与えることは考えていないようで、矢で牽制しながら間を取り、うまく相手の攻撃をかわしていた。
「ハッ!」
ガーゴイルの空からの強襲を横跳びでかわす。地面を転がり、態勢を立て直すと同時に矢を放ち、相手の追い討ちを許さない。
(なんとかかわせる程度か…。悪いけど、セレスに頼るしかないな)
矢を構え、ガーゴイルとの間合いを取りながら考える。彼女は戦いに集中するあまり、セレスのほうが片付いていることに気がついていない。それはガーゴイルも同様のようであった。
「これはチャンスね。うまいこともう少し引き付けておいて」
アクアとガーゴイルの戦いを見ながら、チャクラムを握る。そしてさきほどと同じようにマナを集中させる。
そしてチャクラムに完全にマナが通ると蓮華を形づくる。ガーゴイルの動きから目を離さず、一瞬の隙を探すため集中する。
ヴァサ! ヴァサ!!
ガーゴイルは滞空し、眼下のアクアをその赤い目で睨み付けている。彼女も怯むことなく、睨み返す。
ヒュ! ヒュン!!
横に走り、移動しながら矢を放つ。二本の矢はそれぞれガーゴイルの左右の羽を目掛けて飛んでいく。
ヴァサ!!
ガーゴイルは羽を動かすと、真下に下降し地面に降り立った。そしてそのままアクアに向けて突進する。
ドン!
横に軸をずらし、かわす。だが、一瞬その退避行動が遅く、ガーゴイルの体当たりがアクアの身体をかすめる。
ズシャァ!
たまらずアクアは地面をすべる。かすった程度なので、外傷はない。セレスから貰った防具がしっかりと身を守ってくれていうる。
すぐに起きあがり、ガーゴイルの追撃を矢で追い返す。ガーゴイルは矢を垂直に飛び上がりそれをかわした。
「今だ!!」
チャクラムを放つタイミングを計っていたセレスがチャンスとばかりに垂直上昇したガーゴイルめがけてチャクラムを投げつけた。
フォン!!
チャクラムは蛇行し、寸分たがわずガーゴイルにヒットする。
「ガッ!!!」
断末魔の悲鳴をあげると、身体を切られたガーゴイルは絶命し、床に落ちてきた。
チャクラムは一定距離を飛行したのち、クルリと方向を変え、セレスの手元に帰ってきた。
「よし! 一丁上がりっと」
チャクラムをサイドパックに詰めると、アクアの元へと走り寄る。
「セレス。ありがとう、助かったわ」
弓に番えていた矢を筒に戻すと、セレスにいう。
「何言ってるの。あなたが、ガーゴイルの注意を注意を引き付けておいてくれたからあっさりと終わったの………!?」
途中までにこやかにしていた顔が、突然引き締まる。まるでガーディアンを相手にしているような緊張感のある顔だ。
「どうしたの? セレス?」
その変化に気がついたアクアが恐る恐るたずねる。
「気をつけて。まだ、なにかいる」
「え!?」
セレスの言葉を聞いた彼女は再び矢を構え、周囲を見る。だがガーディアンの姿は見えない。百戦錬磨のセレスに限って勘違いもないだろう。
「!? 危ない!!」
突然セレスがアクアを突き飛ばす。それとほとんど同時に床から拳が飛び出してきた。
「なに!? これ!」
上擦ったような声で、その拳を見ながら叫ぶ。
「ゴーレムよ! 急いで準備して!!」
「は、はい!」
後書き
どうも、筆者のぱんどらです。 オリジナル小説第2章・第43話『ドラゴン乗りの少女 VSガーゴイル』掲載完了です。
さてバトルシーンです。いつもは2対1だったんだけど、今回は2対2にしてみました。
やったはいいですが、割と難しいものですね。どっちに比重を置くか非常に迷います。結果的にセレスだけど…。
セレスにいっちゃうのはしょうがないかもしれないですけどね。戦闘ができるキャラだから。
いくら慣れてきているとはいえ、アクアが大立ち回りしてたら不自然だし。サポートが一番だな。
では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~