VSゴーレム


 床から這い出ている拳がだんだんと上昇していく。そして岩で作られていると見られる、人型のガーディアンが姿を現した。
 大きさは2メートルくらい。さきほどのガーゴイルと違い動きは鈍そうだが、パワーがありそうに見える。
 セレスが前衛、アクアは後衛を担当し、ゴーレムに対峙する。
「どうするの? セレス」
 後ろで控えているアクアが、剣を構え隙を伺っていると思われるセレスに問い掛ける。
「そうね、あいつは物理攻撃で倒すことはできないわ」
「え? それじゃあ、どうするの?」
「身体のどこかに『EMETH(真理)』という文字が刻んであるの。それのEを削り『METH(死)』という意味にすれば倒すことが可能よ」
 ゴーレムの様子をうかがい続けながら、アクアのその知識を与えた。
「削るってことは…私の弓じゃ…」
 左手に持った弓と腰に装備している、矢筒を順番に見比べる。そう、矢ではどんなに頑張ったところで文字を完全に削ることは不可能だ。
 セレスもその辺りは十二分に承知しているようで、
「分かってる。あなたは後ろで待機してて。あいつはアタシがやる」
 首だけを振り返り、片目をつぶって見せる。そんなセレスに笑いかけると、アクアは彼女にすべてをまかせることにした。
 アクアの意志を読み取ると、セレスはゴーレムに向かって走り出す。
 一瞬にして間合いが縮まる。だが、ある一定の間合いで立ち止まると、再び様子をうかがい始める。
 動きが鈍いとはいえ、その攻撃力は目を見張るものがある。いくら上級の物を装備しているセレスでも直撃は避けたいだろう。
(さって、まずは弱点を探すことが先決ね。動き回ってかく乱するしかないか)
 チャ…。
 剣を構えなおし、一歩前にでる。すでにその位置は両者の攻撃がすぐに届く間合いだ。
 ゴーレムが腕を振りかぶり、両手を組んでセレスに叩きつけてきた。
 その攻撃を見切ると、サイドステップで交わし、ゴーレムの側面に回る。次の攻撃、そして次。繰り出されるゴーレムの攻撃を紙一重で避けながら、セレスはゴーレムの身体を観察する。どうやら側面にはなにもないようだ。
「ハッ!」
 手に炎を作り出し、それをゴーレムの足元へと放つ。石畳がめくれ、つぶてがゴーレムを襲う。全身が石のかたまりで造られているゴーレムはそのつぶてを避けようともせず、真正面から受ける。
 セレスはその隙に背面へと回る。そして側面と同じようにしてゴーレムの唯一の弱点を探り始める。
「!? あった!」
 丁度背中。真ん中あたりに彫られている『EMETH』の文字を見つける。
 ブゥン!!
 その弱点に向かって切りかかろうとした瞬間、ゴーレムの腕が回転し、セレスを襲う。
「うわっ!」
 とっさに身を沈め、その攻撃をすんでのところでかわす。地に身体を沈めた状態で剣を振る。
 ヒュ!! ガン!!!
 空気を裂く音。そしてなにかにぶつかる音。
 セレスの剣をゴーレムは手で受け止めていた。その手には傷ひとつついていない。
 ゴーレムはそのまま剣の切っ先をつかむと、剣ごと思いきりセレスを投げつける。
「クッ!!」
 空中で身体を捻り、なんとかすんでのところで背中から叩きつけられるのを回避する。
「ふう、危ない、危ない」
 手の甲で額の汗をぬぐうと、溜め息をひとつ。
「風よ、吹き荒れる嵐となり、すべてを吹き飛ばせ!!」
 風のマナを集め、暴風を作り出すとそれをゴーレムめがけて放った。放つと同時にセレスは地を蹴る。
 ドーーーン!!
 ゴーレムは両手を広げ、その風を受ける。例によって傷はない。
 風で舞いあがった砂埃に紛れ、セレスはゴーレムの背後に瞬時にして回り込むと、剣を一閃する。
「グォォ!!」
 ゴーレムがうめき声をあげる。セレスの剣はゴーレムの生命の源である、文字を切っていた。だが、その活動を停止させるほどではない。
 すぐに態勢を立て直したゴーレムは背後のセレスに向け、豪腕を叩きつける。
「しまっ!!」
 ガァァーーン!!!
 凄まじい音がすると同時に、セレスの細い身体が宙に舞う。
 だが、先ほどと同様に空中で身体を動かし、またも背中の激突を避ける。
(ふぅ、危ない、危ない。剣で防御して、後ろに飛ばなかったら気絶コースだったわ)
 それを想像したのか、セレスの頬を冷や汗を伝う。  再び間合いが離れ、両者が互いの出方をうかがう形となった。だが、ゴーレムは動こうとしない。待ちの態勢だ。
(しょうがない、なんとかもう一度バックを取って一撃で仕留めるしかなさそうね)
 唇を吊り上げるような感じで笑うと、彼女は腹を決めた。
 タッ!
 両の足で地面を蹴り、走る。みるみる内に間合いを詰める。
 近づいてきたセレスにタイミングを合わせ、ゴーレムが腕を振る。
 ブォォゥン!!
 唸りを上げ、セレスの身体ほどの太さの腕が襲い掛かる。その攻撃を読んでいたセレスはかがんでそれをかわす。
 頭上の腕が通りすぎた瞬間、足に力をため、跳躍する。
 ゴーレムの肩に足をかけ、そのまま背後へとまわり、剣を一閃する。
「ハァァァ!!」
 剣が鋭い、風きりの音を発し、ゴーレムの弱点を切り裂いた。
「…グ・…グワァァォア!!」
 ゴーレムは断末魔の叫びをあげると、砂へとその身体を変化する。魔力がなくなったのだ…。



後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第44話『ドラゴン乗りの少女 VSゴーレム』掲載完了です。
 連続バトルシーンです。今回もセレスが主役です(前もそうかもしれないけど)
 やっぱ表現が似通ってしまうのが欠点かなぁ? 前々からいってることだけど、表現の幅を持ちたい。この系統書いてると痛感します。
 ゴーレムの『EMETH』ですが、ちょっと迷ったんですよね。物理攻撃でも倒せるようにするか。結局こっち取りましたけど。
 まあ、ゴーレムを製造する過程でこういった文字を使ってやるらしいです。なんかで読んだ。
 もっと巧妙なとこに隠しても良かったんですけどね、弱点。それだと時間がかかるので……。
 では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~


2001年 5/27 ぱんどら

VSガーゴイル そして最上階…
書庫に戻る トップページに戻る