ガーディアンドラゴン
(3)


 アクアは正直驚きを隠せずにいた。それはセレスの戦闘能力についてだ。自分の予想を遥かに越えていた。
 過去に一緒に戦った守護者戦。それがセレスの限界だと、アクアは考えていた。だが、それは大きな思い違いだという現実を目の当たりにしている。あの守護者も強かったが、ドラゴンとは比べ物にならない。
 まさかドラゴンと対等に戦えるだけの実力があるとは思いもしなかった。
 ルーシアやアルフレッドはドラゴンスレイヤーである以上、ドラゴンよりは強いはずであろう。だが、アクアは彼らの戦っているところを見たことが無い。
 きっとこれ以上なのだろうな、アクアは矢を構えたままセレスの戦い振りを見ながら思う。
 セレスが見せるいくつもの剣技。ただ、剣に魔法を乗せるだけでなく、一番威力が効果的に発揮されるように工夫がなされ『技』としてなりたっていた。
 火炎、風、水、雷撃。どれをとっても一撃必殺の威力を有しているに違いない。現に硬いドラゴンの皮膚が、わずかずつではあるが傷つき始めている。だが、それでも致命傷には至らない。
 セレスはなおも、剣を振るう。これだけ魔法剣を連発しているとなると、身体のマナも尽きてしまうのは自明の理だ。
 遠めで見ているアクアにもはっきりと彼女の疲れが見える。
(セレス、あなた大丈夫なの?)
 必死になって剣を振るいつづけるセレスを見ながら考える。持久戦となったら人間であるセレスが圧倒的に不利になってしまう。
 だからこそ、セレスはなんとかドラゴンの動きを封じようと様々な技を繰り出していく。
「くらえ!! 迅雷!!」
 空間にセレスの叫びが弾ける。
 セレスの放った技が見事にドラゴンを捕らえた。
「アクアー!! 今よ、狙って!!!」
 その声にハッとする。意識を覚醒させ、自分の発揮できるマナ、すべてを注ぎ込んだ矢をドラゴンの一点に向け放った。
 ゴゥ!! シューー!
 矢は光を身にまとい、風を切りドラゴンめがけて走る。
(…いかん…矢をは……弾かなければ…)
 ガーディアンドラゴンが自分の顔に向かって飛んでくる矢を弾こうと手を動かそうとする。
 だが、迅雷の雷撃により自由に身体を動かすことができない。
(グッ…これが……狙いか)
 ドラゴンは矢が自分にヒットする瞬間まで抵抗を続けたが、それは徒労に終わった。彼の抵抗空しく矢はドラゴンの眼球に突き刺さる。
 ドガッッ!!
「…グガガァァァアァアィィ!!!!!!」
 ドラゴンの絶叫が部屋に充満し、木霊する、それだけで戦意を破壊されてしまいそうな声だ。
 アクアはそれで腰が抜けてしまったのか、ペタンと地面に座り込んでしまう。立とうとしても足が言うことを聞いてくれない。
 禍禍しい、恨みに満ちた瞳がアクアを射抜く。狙いを変更したらしい。
 だが、傷の痛みと狙いを変えたせいで、自分のすぐ側にいたハンターの接近を許してしまう。
「…ハァァァ!!」
 ドスッ!!!!
 セレスの剣がドラゴンの喉に深深と突き刺さった。止めど無く溢れる血がセレスの全身を濡らす。
 だが、セレスはそれを止めとせず、追い討ちをかける。
「ハッ! 雷撃刃!!!」
 セレスの全魔力、そして剣の全魔力を注ぎ込んだ雷がドラゴンの身体を駆け巡る。
 ババババ!! バリバリ!!
「グガァァァ!!!」
 再びの耐えがたい苦痛にドラゴンが叫ぶ。手を休めることなくセレスは電撃を送り続ける。
 バリバリバリバリ!!!!!
 雷撃が止む。血に塗れた顔を上げ、ドラゴンの様子を伺う。
 弱々しくはあるが、まだ息をしている。仕留めていない。
 その事実はセレスをさらに突き動かす。
「…もう…一発!! 雷撃刃!!!!」
 カッ! バイバリバリバリ!!!
 瞬間の発光と共にさきほどを上回ると思われる電撃がドラゴンの体内に入りこむ。
「ガガガァァアァ!! グオオォォオ!!!」
 ガーディアンドラゴンが身体をくねらせ、首を大きく振り、その痛みから逃れようと足掻く。
 だが、迅雷の雷撃、そして雷撃刃。さらには目を射抜かれた痛みで身体が思うように反応してくれない。
(グッ、このオレが人間にやられる。…おかしい、誰にも倒されないとヤツラはいったハズだ)
 朦朧とした意識の中、ガーディアンドラゴンが考える。
 彼は元々は山に生きる普通のドラゴンであった。だが、旧時代の人間に捕まり、身体の強化改造を施され、この部屋のガーディアンとして魔法で縛られたのだ。
(…逃げたい……。昔のように自由…気ままに……い、生きたい)
 バババババリバリバリ!!!!!
 しかし彼の思いとは逆に電撃は強くなる一方だ。セレスがさらに出力を上げている。
 そのせいか、彼女の顔色が悪くなってきている。マナが限界に達しているのだろう。
(もう…限界? まだよ、こいつを倒さないと先にはいけない。……父さん、力を…力を借して!!)
 消えかけていた瞳に生気が戻るのをアクアは見た。セレスはアクアを見ると……笑った。
「これで…最後だあぁぁぁ!!」
 爆風、火炎、水刃、そして雷撃。
 様々な魔法効果が吹き荒れる。周囲の壁を破壊し、石畳をめくる。
 アクアは危機を察し、本能的にマナの防護壁を造る。
 ガガガガーーン!! バリバリバリ!! ドォォ……オオォォォ…ォォォ。
 音は次第に小さくなり、やがて消えていった。
「う…うん……」
 防護壁内にいたアクアにも少なからずの衝撃が伝わっていたようで、身体の節々が痛む。
 部屋の惨状にしばらく声を発することもできなかったが、
「!? そうだ!! セレス! セレス、どこ!!」
 瓦礫をひっくり返しながら、自分の相棒の名前を叫び続ける。
 死んでいるとは思いたくなかった。それに彼女がそう簡単に死んでしまうとも思えない。
「セレス!!」
「…は〜い……」
 弱々しいが、確かにセレスの声が聞こえた。
 すぐに声が聞こえたところに飛んで行き、その細い腕で一生懸命に瓦礫をどかす。
 ガラ…
「…よっこいしょ」
 ガラガラガラ。
 そして瓦礫の下から傷だらけのセレスが姿を現した。




後書き

 どうも、筆者のぱんどらです。  オリジナル小説第2章・第48話『ドラゴン乗りの少女 ガーディアンドラゴン(3)』掲載完了です。
 うむ、冒頭の文章。うまく書けませんでした。
 頭の中で構想を練っているときは結構上手くいきそうだったんですけどね。なんか支離滅裂になってしまった気がします…。
 今回はちょっと書き方を変えて、前回の話の完全な続きというのではなく、少し時間を戻して見ました。
 こういったのは初めてだったと思うので、いかがなものだったでしょうかね?
 なんにせよ、バトルも無事に終わり、いよいよクライマックスです。
 上手く書けるよう精進したしますので、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。
 では、次の後書きで会いましょう(^-^)/~


2001年 6/24 ぱんどら

ガーディアンドラゴン(2) 封印の間へ
書庫に戻る トップページに戻る